軽症持続型喘息(喀痰中好酸球数2%以下)治療に吸入ステロイドが効きにくい?
気道内の好酸球数の増加は、慢性的な気道の炎症を引き起こし、気道閉塞・喘息悪化を引き起こす要因と考えられています。そのため喀痰中の好酸球数が多い患者さんにおいては、吸入ステロイドが非常に効果的に作用します。
一方、喀痰中の好酸球数が2%未満である軽症喘息患者さんにおいては吸入ステロイドがおもったよりも効果がないのでは?(プラセボと比較して差がないのでは?)という報告が2019年5月19日のN Engl J Medでなされておりましたので目を通してみました。
喀痰中の好酸球数が2%以下の喘息患者におけるアズマネックス/スピリーバの効果
喘息患者さん295人を対象として、喀痰中の好酸球数を3週間間隔で2回調査し、喀痰中の好酸球数が2%以上の群(74人)と、2%未満の群(221人)に振り分けて吸入薬の効果を検討したデータです。
使用した吸入薬と吸入量
アズマネックスツイストヘラー220μg(または200μg)を1日2回
スピリーバ5μgを1日1回
プラセボ(比較対象としての偽薬)を1日2回
上記の吸入を12週間(3カ月間)行った際の喘息治療の経過を観察し効果を評価しています。
結果
喀痰中の好酸球数が2%未満の群
アズマネックスツイストヘラーを使用して効果が高かった率:34%
プラセボを使用して効果が高かった率:25%
差が感じられなかったまたはデータが確認できなかった率:46%
アズマネックスまたはプラセボで効果が高かったと感じた被験者について効き目を解析した結果、アズマネックスの効果が高かったと感じた割合(57%)とプラセボの効果が高かったと感じた割合(43%)との間に有意差がみられませんでした。この場合の「有意差がみられない」という解釈はさまざまかとは思うのですが、私の感覚としましては「アズマネックスを吸った方が喘息治療に有益である傾向にはあるものの、統計学的にみると差が確認できない状態」という解釈かなぁという感じです。
スピリーバを使用して効果が高かった率:36%
プラセボを使用して効果が高かった率:24%
差が感じられなかったまたはデータが確認できなかった率:40%
スピリーバまたはプラセボで効果が高かったと感じた被験者について効き目を解析した結果、スピリーバの効果が高かったと感じた割合(60%)とプラセボの効果が高かったと感じた割合(40%)との間に有意差がみられませんでした。
喀痰中の好酸球数が2%以上の群
アズマネックスを使用して効果が高かった率:74%
プラセボを使用して効果が高かった率:26%
となっており、アズマネックスの使用が有意差をもって効果があることが示されました。
(スピリーバに関しては効果があった(57%)、プラセボで効果があった(43%)というデータとなり、有意差はみられませんでした)
気道内の好酸球数が多い群では、気道内の慢性的な炎症症状が誘発しておりますので、吸入ステロイドが効果的に作用したことが示唆されます。
まとめ
筆者らは上記の結果のまとめとして、軽症の慢性的な喘息治療(喀痰中の好酸球数が2%未満)において、吸入ステロイド治療は無効あるいはメリットが少ない場合があり、毎日吸入ステロイドを使用する必要性があるかどうかを検討すべきとしています。さらに軽症の喘息患者さんに関しては、吸入ステロイドの維持療法にかかる費用・副作用のリスクも考慮する必要があり、費用対効果・メリット/デメリット比についても調査する必要があるとしています。
喀痰中の好酸球数2%未満の軽症喘息治療におけるアズマネックス・スピリーバの効果