新型コロナウイルス感染症予防にエビスタ錠・アクトス錠が有効か?
理化学研究所と京大iPS細胞研究所らの報告によると、エビスタ錠(骨粗しょう症治療薬)、アクトス錠(糖尿病治療薬)に、新型コロナウイルス感染予防効果(抗ウイルス効果)があることが細胞レベルの実験で報告がありました。
注意)以下は細胞レベルの実験での話なのです。
Vero E6細胞(アフリカミドリザル腎臓上皮由来細胞)という細胞に新型コロナウイルスを入れて培養した群と、Vero E6細胞に新型コロナウイルスと既存で発売さている色々な薬を一緒に培養した群を比較して、新型コロナウイルスの発現を抑える既存薬はないものか、と調査した結果
「エビスタ錠(ラロキシフェン)」
「アクトス錠(ピオグリタゾン)」
上記2成分に関して、新型コロナウイルスの感染を予防する効果が示されたというデータです。
具体的には、エビスタ錠を振りかけたVero E6細胞では、エビスタ錠の用量依存的に新型コロナウイルス(SARS-CoV2)の感染率が低下したことが示されました。
(対象として、他のウイルス(VSV-G)の感染予防には寄与しませんでした)
筆者らは、エビスタ錠が新型コロナウイルスの感染を抑えた要因として、ウイルスタンパク質を介した細胞へのウイルスの侵入経路を遮断したためと推測しています。またエビスタ錠は炎症促進サイトカインの放出抑制効果も報告されており、サイトカインストームによる重篤な症状も阻害・軽減できるのではと示唆されています。
ピオグリタゾンによる新型コロナウイルスの感染予防効果については、炎症性サイトカインの減少を引き起こす効果・ウイルス複製阻害効果が示唆されており、特にIL-6、INFγなどの炎症性サイトカイン減少作用がウイルス複製の阻害作用に寄与していると記されています。
また、筆者らはエビスタ錠ぴアクトス錠は、Vero E6細胞にたいする新型コロナウイルスの感染を相乗的に抑制したことを示しており、1剤よりも2剤使用することが、より感染を防ぐことができることを示唆しています。
新型コロナウイルスの感染をエビスタ錠・アクトス錠が予防?
新型コロナウイルス感染症の治療に「コルヒチン」が有効
2021年2月8日
ブラジルで中等症~重症の新型コロナ感染者75名を対象として、標準治療にコルヒチンを上乗せした場合、プラセボ群と比較した際の臨床データを公開しました。
中等症~重症新型コロナ感染患者に対するコルヒチンの上乗せ効果
新型コロナ感染の中等症~重症患者75名に対して
アジスロマイシン
ヒドロキシクロロキン
ヘパリン
メチルプレドニゾロン
が投与されている状態で、コルヒチンを1~5日目は1日3回・1回0.5mgを投与し、6~10日目は1日2回・1回0.5mgを投与した群と、プラセボ群を1:1に割り付けて効果を確認しています。
結果
酸素投与期間
コルヒチン投与群:4.0日(中央値)
プラセボ群:6.5日(中央値)
治療7日目に酸素投与が必要だった割合
コルヒチン群:9%
プラセボ群:42%
入院期間
コルヒチン群:7日間
プラセボ群:9日間
治療10日目に入院していた割合
コルヒチン群:9%
プラセボ群:39%
副作用:有意差はないもののコルヒチン群で下痢の頻度が高かった。
上記の結果を受けて、筆者らは中等症~重症の新型コロナ感染患者に対して、標準治療へコルヒチンを上乗せすることは安全性と忍容性が高く、有益であるとまとめています。
2021年1月21日
カナダモントリオール心臓研究所は2021年1月21日、「コルヒチン」(痛風治療薬)が新型コロナウイルス感染症治療に効果的で、合併症のリスクを減らすことを発表しました。
コルヒチンを服用し患者は、プラセボを服用した型と比べて、死亡や入院に至るリスクが21%減少したとしています。
4488例を対象とした研究によると、新型コロナウイルス陽性患者4159例にコルヒチンを投与したと懲り、入院に至った割合が25%低下し、呼吸器使用を必要とする割合が50%低下、死亡に至る割合は44%低下したとしています。
これまでの研究によると、新型コロナウイルス感染者の重症例では、体内の免疫細胞が過剰に活性化してしまいウイルスだけでなく自分自身の細胞までも標的として傷つけてしまう状態(サイトカインストーム)が起こり、多臓器不全に至ってしまう症例が多数報告されています。コルヒチンを服用するとインフラマソームと呼ばれる炎症の惹起を制御する細胞内の分子複合体の活性を阻害することで、サイトカインの生産を減少させる効果が示されています。インフラマソームに対するコルヒチンの具体的な作用機序は現在も調査中なのですが、おそらくは、コルヒチン服用により、インフラマソームの活性化が抑えられ、IL-1βの産生が減少し、IL-6とTNFの誘導や好中球とマクロファージの活性が妨げられることでサイトカインストームを抑えることができるのでは?と示唆されています。
新形コロナワクチンが国民にいきわたるために必要な時間は?
英国が12月8日から、米国は12月14日から新型コロナワクチンの接種を開始しています。それ以外にも中国、ロシア、イスラエル、バーレーン、カナダ、チリ、メキシコ、コスタリカなどの国々でワクチン接種が開始されております。
では、英国、米国では、1日当たりどれくらいの人がワクチン接種を行っているのか調べてみました。
英国:12月8日から12月24日までの17日間で62万5981人がファイザーワクチン1回目の接種を終えています。1日当たり3万6822人が接種している計算となります。英国の人口が6600万人ですので、1日当たり0.056%の国民がワクチン接種の1回目を行っている計算となります。
米国:12月14日から12月27日までの13日間で194万4585人がワクチン1回目の接種を終えています。1日当たり14万9583人が接種している計算となります。米国の人口が3億3000万人ですので、1日当たり0.046%の国民がワクチン接種の1回目を行っている計算となります。
上記2か国の平均値として、1日当たり0.05%の国民がワクチン接種を行ったと仮定すると、国民全員が1回目のワクチンを行うためには2000日(5年)くらいの年月が必要という計算になってしまいます。ワクチン製造もさるうことならが、接種地域・スタッフの増員も必要不可欠な気がします。
米国に割り当てられているワクチン量は1104万2450回分であり、そのうち194万4585回分が13日間の間に投与された計算となります。ニュース報道では、ワクチンの製造量に注目されており米国はファイザー社・モデルナ社から購入するワクチンの総量を8億回分(4億人分)と発表しています。
ワクチンを製造する会社も大変でしょうが、ワクチン輸送を行う業者や現地でワクチン接種を行う医療従事者の状況を考えると、国民にワクチンがいきわたるまでには年単位の時間がかかりそうです。
イギリスで広がる新型コロナ変異ウイルスに対するmRNAワクチンの効果について
追記:2020/12/24
イギリスロンドンで広がっている新型コロナ変異ウイルスVUI-202012/01について、英国と米国で接種が行われているファイザー社・モデルナ社のワクチンが有効であるかについて、現時点の解釈をまとめます。
製薬会社および専門家による見解では「現在のワクチンが新型亜種(VUI-202012/01)に対して機能しないという兆候はない。現在、新型亜種に対して有効であることを確認するためのショットテストを実施している」
ということです。
コロナウイルスは1カ月に2度ほどの変異を繰り返して現在に至っていますが、両社が作成しているワクチンは、これまでのウイルス変異種に対しても有効であることを述べています。
ファイザー社が開発しているワクチンに関して、BioNTechのCEOは「ウイルス変異種に対しても有効であると科学的な自身を持っている」と述べ、完全なデータを2週間以内に示すとしています。
一方で、新しいウイルスの変異種が今後も登場していくることを想定すると、各国の予防接種率を上昇させる必要があるかもしれないとの見解を示しています。というのも、変異種(新型亜種)の登場がファイザー社・モデルナ社のワクチン有効性を95%以下に低下させる可能性があると考えており、ワクチンの有効性が「劇的な効果ではなく、有効」程度まで低下する可能性が示唆されています。
国単位で考える集団免疫という考えでは60~70%の国民が予防接種を行えばウイルス拡散を防止できるという議論がなされていますが、新型の変異種が今後も登場することを予想すると、各国の予防接種率を高めることが防衛策となるかもしれません。
イギリスで広がる新型コロナ変異ウイルスは子供で拡散しやすい?
追記:2020/12/23
イギリスで感染拡大を続けている新型コロナ変異ウイルス(N501Y)についての報道によると、政府関連のウイルス研究チーム(Nervtag)のメンバーが以下の様な調査報告および可能性について示唆しています。
「新型コロナ変異ウイルスは既存のウイルスと比較して、子供たちに感染しやすい可能性がある」
イギリスで広がっている新型コロナ変異ウイルスは子供に広がりやすい?
最初に中国で発見された新型コロナウイルスは子供に比べて、大人に感染しやすいという特徴がありました。その要因としてウイルスがヒトの体内に感染する入口として使用している(ACE2受容体)の数が、大人に比べて子供に少ないことが見出されているためです。
しかし、イギリスで広がる新型コロナ変異ウイルス(N501Y)は既存のウイルスと比べて、子供と大人で平等に感染している可能性があること、さらに感染リスクが50~70%早く広がっている現状を踏まえると、より多くの子供が感染するリスクが高いのでないかとの見解を示しています。
上記はあくまでも可能性の話であり調査中の途中経過であるため証明されていないことを筆者らは強調しています。
リバプール大学の教授は現時点では証拠はない」とBBC(英国放送協会)に語っています。
2020年12月に入り、イギリス南東部(イングランド周辺)で新型コロナウイルスの拡大が懸念されおります。ウイルス学的調査が行われた結果、この地方では新型コロナ変異ウイルスが感染拡大の要因であることが確認されました。
新型コロナ変異ウイルス(VUI20201201)はウイルスがヒトに侵入する際に必要な接続部分(スパイクタンパク質)の構造を変異していることが特徴で、現在までに報告されている変異としては
複数のスパイクタンパク質変異(69〜70欠損、144欠損、N501Y、A570D、D614G、P681H)
などの変異種が報告されています。
この変異ウイルスは、既存の新型コロナウイルスよりも感染性が高く、再生産数を0.4以上増加させ、ヒトへの感染率が最大で70%増加する可能性も報告されています。
ただし、現時点での報告では感染リスクは高いものの、重症化リスクについては変異株により増加するという報告はありません。
イギリスに加えてデンマーク、オランダ、オーストラリア、ベルギー、イタリアにて症例が報告されています。
懸念すべき点は、最初に中国で発見された「新型コロナウイルス」と現在イギリスで流行している新型コロナ変異ウイルス(20201201)とでは、23か所もの遺伝子部位が変異しているという点です。
約1年間で23部位(1カ月あたり1~2か所)のペースで変異を繰り返している計算となります。
製薬会社がワクチンを開発から製品化するためには、早くても10カ月程度を要することを考えると、新型コロナ変異株が発生するスピードが、いかに速いかがわかります。
ウイルスがヒトに感染する際に使用する「スパイクタンパク質」がコロコロと変異することを考えると、スパイクタンパク質をターゲットしていているワクチン開発には限界があるようにおもえます。
新型コロナウイルとインフルエンザを同時に検査できるキットの開発
今年の冬に新型コロナウイルスやインフルエンザが流行する可能性があることから、タカラバイオは唾液でコロナとインフルエンザを同時に検査できるキットの開発を行っていることを開示しました。同社社長は「唾液でコロナとインフルエンザを同時に検査できるキットを開発することは技術的には可能だと説明しつつ、感度や制度、取り扱いの容易さなどについて、医療現場などのニーズを見極める必要がある」という認識を示しました。
新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの同時検査の開発に関しては、金沢市の機械メーカー「渋谷工業」が「唾液を検体として、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスを同時に短時間で検査できる”PCR検査装置”を開発する」と表明しています(鹿児島大のベンチャー企業との共同開発)。PCR検査装置でありながら従来1時間以上かかっていた前処理作業が3分間で済むため、20分程度で結果がでるとしています。同社は年内の販売開始を予定しているとしています。
製薬会社「ロシュ」が新型コロナウイルス15分で判別する検査キットを9月末に発売
製薬会社「ロシュ」は新型コロナウイルスを15分で判別するキット「SARS-CoV-2迅速抗原検査キット」を9月末に発売すると発表しました。
(米国食品医薬品局FDAに緊急使用許可(EUA)を申請する予定となっています)
ロシュは新型コロナウイルスの迅速キットを使用することで、月間4000万件の検査をすることができるとしており、今年中にはこの数を2倍以上に増加して検査需要に対応できるようにしたいとしています。
SARS-CoV-2迅速抗原検査
ヒトの鼻咽頭のぬぐい液を使用して新型コロナウイルスの特異的抗原を検出するキットです。
新型コロナウイルスの初期スクリーニングを目的としており、その検査感度は96.52%、特異度は99.68%と報告されております(426サンプルを用いた結果です)
検査結果は15分で得られます。
このキットは抗原検査(病原体の蛋白質を検出するキット)ですので、PCR検査のような感度はありません。そのため陰性の場合でも新型コロナウイルスへの暴露歴、臨床症状、診断結果を踏まえて、追加の検査などを加味する必要があるとしています。
https://www.roche.com/media/releases/med-cor-2020-09-01b.htm
新型コロナウイルスに対する口腔ケア効果について(8/12)
新型コロナウイルスに対して「イソジンが有効では?」といった報道がなされましたが、それとは別にして「口の中をきれいに保つこと」は新型コロナウイルスの重症化を予防するという考えを大阪大学教授がWEBセミナーで行いました。
新型コロナウイルスがヒト細胞内に侵入するための入り口となっている「ACE2受容体」は口腔内の唾液腺に多く発現しており、新型コロナウイルスが唾液腺を経由して口腔粘膜に侵入すると、唾液腺が新型コロナウイルスの貯蔵庫となり、肺への感染リスクが上昇する可能性を懸念されます。
その対策として口腔ケアをしっかり行うことが重要としています。これまでの報告では、口腔細菌は肺へ移行しやすいことが報告されており、口腔ケアをしっかり行うことで誤嚥性肺炎が10%低下することが報告されております。新型コロナウイルスが唾液腺で増幅するのであれば、感染リスクを下げるためにも日常的な歯磨き・うがいが大切になります。
一部で報道された「イソジンうがい液」も口腔内の殺菌には有益ですが、日常的な歯磨きを丁寧に行うことで十分に代用可能と考えます。
コロナウイルス感染から回復後の後遺症について(2020/7/16)
コロナウイルス感染から回復した方を対象に、その後の後遺症がないかどうかをイタリアの研究グループが報告しています。
結果はコロナウイルス発症から2カ月時点において87.4%もの方で何かしらの症状がでていることがわかりました。
被験者:コロナウイルスに感染後、回復して退院した143例(平均年齢56.5歳(男性90例、女性53例))
コロナウイルス感染から平均60.3日後の体調を確認した結果です。
無症状:12.6%
1~2つ程度の症状あり:32%
3つ以上の症状あり:55%
主な後遺症
倦怠感:53.1%
呼吸困難:43.4%
関節痛:27.3%
胸痛:21.7%
その他、咳・鼻炎・味覚異常、喀痰・食欲低下など
上記の報告は対照群がない報告(被験者のみのデータ)であるため、一概にコロナ感染から回復した方の87.4%に後遺症が残るということではありませんが、いずれにしても感染回復後においても経過観察が必要であることが示唆されます。
コロナウイルスは空気感染のような経路で感染拡大するかもしれない(7/8)
WHOは、新型コロナウイルスの感染経路として「咳やくしゃみなどの飛沫感染か、ウイルスが付着した表面を触り、鼻や口から取り込まれる接触感染が主な感染経路としてり、ウイルスが空気中を漂って感染する「空気感染」については確認されていない」としています。
それに対して、オックスフォード大学出版局は感染症学会に「空気感染のような経路で感染する可能性がある」ことを提示し、WHOに対してガイドラインの改定を求めています。
「新型コロナウイルスは空気感染のような経路で感染する可能性がある」
新型コロナウイルスは、感染者から1~2m以上離れた場所にいる場合でもウイルスに暴露する危険性があります。例えば5μm以下の飛沫において、RNAが空気中で検出されており、コロナウイルスはこのサイズでも感染性を維持することが示されています。また他のウイルスについてのデータですが、エアロゾル中では、表面上の飛沫と以下とはいえ、同じように生き残ることが確認されています。
以上のことから、感染者から離れた場所においても、飛沫が漂い感染を拡大する可能性が示唆されており、これを広い定義での「空気感染の一種」と考えてもいいのでは?とWHOに対してガイドラインの改定を求めています。
新型コロナウイルス感染に対するマスク・メガネ・人との距離についての報告(2020/6/13)
新型コロナウイルス感染予防に関して、人との距離(フィジカルディスタンス)、フェイスマスクおよび保護メガネの有効性に関する報告がありました。
(患者総数2万5697例、16カ国が参加した研究解析の結果です)
人との距離が1m以上の場合は感染リスクが82%減少
フェイスマスク着用で感染リスクが約85%減少
保護メガネ着用で感染リスクが約78%減少
また、世界的に見て新型コロナウイルスの封じ込めに成功しているといわれている台湾での報告では
新型コロナウイルスの保菌者がマスクをしていない場合、マスクをしている健康な人へ感染させる率は70%
新型コロナウイルスの保菌者がマスクをしている場合、健康な人(マスクをしていない)へ感染させる率は5%
新型コロナウイルスの保菌者がマスクをしている場合、マスクをしている健康な人へ感染させる率は1.5%
と報告しております。
新型コロナウイルスは症状を呈さない“無症候性”の保菌者も多く報告されていることを踏まえると、保菌者かどうかを問わずマスクを着用して生活することで感染リスクを1.5%まで低下させることができると報告しています。「マスクをしていればウイルス対策は大丈夫」という安易な考えは危険であると提唱しながらも、台湾の人々が感染の有無を問わずマスクを着用して感染拡大を抑えた(感染リスク1.5%まで低下)実績は有用なデータかと思います。
マスクを着用することが生活の新指標となるかはわかりませんが、台湾CDC(疾病管制署)は以下の8項目を感染拡大を防止するため生活スタイルとして推奨しています。
#頻繁に石けんをつかった手洗い
#目や口や鼻を手で触らない
#咳せきエチケット
#使用済みマスクの正しい捨て方
#ソーシャルディスタンスを守る、できない場合はマスク着用
#実名制のイベント参加
#体調に合わせた在宅休養・診療を受ける
#前向き防疫(親切、寛容、差別しない、正直に申告)
2歳未満のこどもにマスクは不要、むしろ危険!(2020/5/26)
日本小児科医会は2020年5月25日に「2歳未満の子どもにマスクは不要、むしろ危険!」という保護者むけの注意喚起をホームページ上の公開しました。
・乳児の呼吸器の空気の通り道は狭いので、マスクは呼吸をしにくくさせ呼吸や心臓への負担になる
・マスクそのものや嘔吐物による窒息のリスクが高まる
・マスクによって熱がこもり熱中症のリスクが高まる
・顔色や口唇色、表情の変化など、体調変化への気づきが遅れる
など乳児に対する影響が心配されます。
☆世界の新型コロナウイルス小児感染症から次のような点がわかってきました。
・こどもが感染することは少なく、ほとんどが同居する家族からの感染である
・子供の重量例は極めて少ない
・学校・幼稚園や保育園におけるクラスター(集団)発生はほとんどな
・感染した母親の妊娠・分娩でも母子ともに重症化の報告はなく、呉氏感染はまれです。
子どもの新型コロナウイルス感染症は今のところしんぱいが少ないようです。
2歳未満の子どもにマスクを使用するのはやめましょう。
といった内容が記されています。
中国では、マスクを着用したまま体育の授業を行ったことで3名の学生がなくなっています
4/14:マスク着用で1500メートルを走っていた男子学生
4/24:マスク着用でグラウンドをはしっていた中学3年生(気温20度)
4/30:高性能マスク(N95マスク)を着用して1000メートル走のタイムを測定していた中学3年生(14歳)
BCG接種歴と新型コロナ感染リスクとは関係なし(2020/5/20)
新型コロナウイルス感染拡大時期に”BCGを接種すると新型コロナにかかりにくいかも”といううわさが広がったことがありました。実際、ドイツやアメリカでは新型コロナウイルス感染予防にBCG接種が有益かどうか調査が行われております。以下はイスラエルにおける報告ですが、どうやらBCG接種は新型コロナウイルス感染には影響しないようです。
イスラエルでは国家予防接種プログラムとして1955~1982年までの間、新生児にBCGワクチンを投与しており90%以上が接種されています。一方で1982年からは結核の有病率が高い国からの移民のみにワクチンが投与されるようになりました。イスラエルではこのような背景があることから1982年以前に生まれた集団と、以後に生まれた集団を比較することでBCG接種の有無と新型コロナウイルス感染率を検証することが可能となっています。
BCG接種の有無と新型コロナウイルス感染率について(イスラエル)
結果
新型コロナウイルス感染者数
BCG接種群(1979~1981年生:平均年齢40歳):361例/3064人あたり→11.78%
BCG非接種群(1983~1985年生:平均年齢35歳):299例/2869人あたり→10.42%
上記2群間の差は1.3%ですが、統計学的に見ると有意差は確認できませんでした(95%信頼区間:-0.3%~2.9%)
尚、重症化例(人工呼吸器または集中治療室入院例)は各群ともに1例であり、死亡例は報告されておりません。
以上の結果から、イスラエルにおいて、小児期のBCGワクチン接種の有無は、成人における新型コロナウイルス陽性率へ影響を及ぼさない。
新型コロナウイルス感染の重症例に関しては症例数が少ないためBCG接種との関連は不明。
新型コロナウイルス感染有無を唾液サンプルを利用して25分で検出する迅速診断法(2020/5/19)
東京医科大学と日本大学は新型コロナウイルス感染の有無を唾液サンプルを使用して25分程度で目視で判定できる迅速診断法を開発したことを発表しました。
SATIC法と呼ばれる全く新しい革新的な核酸増幅法を用い、対象となる遺伝子を増幅後、ナノ磁性ビーズの凝集の有無によって目視にて検査結果を判定するという非常に有益な検査方法です。(検出危機を必要としません)。さらに検体採取から25分程度で判定可能であるほか、鼻咽頭ぬぐいの綿棒だけでなく、唾液や喀痰からの検出が可能であるため、検体採取に伴う医療従事者の感染リスクを低減させることが可能としています。
SATIC法による検出では、偽陽性反応等の非特異反応がなく、PCR法と同等の高感度を持つため、現行のPCR法に代わりうる方法としています。
PCR法に代わるSATIC法を用い、新型コロナウイルス感染の迅速診断法の開発に成功
新型コロナウイルス感染患者が使用した歯ブラシからは残存ウイルスは検出されず(2020/5/14)
新型コロナウイルス感染後、症状が改善して陰性となるまでにはPCR検査2回連続陰性を確認する必要があります。その際に毎日使用している歯ブラシがPCR検査に影響するかどうかという報告がありましたので記載します。
(歯ブラシのブラシ部分はナイロン製ですが、新型コロナウイルスはプラスチック表面に72時間残存するという報告があるため)
結果は、歯ブラシからはRNAは検出されませんでした。その理由として、使用後にブラシ部分をしっかり洗うことでウイルスが残存しない可能性が示唆されました。
あとは、歯磨き粉に含まれている界面活性剤(泡立てる成分)が、ウイルスを不活化した可能性もあるかもしれません。いずれにしても、歯磨き後は歯ブラシをしっかり洗うことがよいと思います。
(手を洗う際に石鹸でよく泡立てる作業と同じ効果)
新型コロナウイルス感染患者の歯ブラシにウイルスが残存するかどうか
新型コロナウイルス抗原検査キットが国内承認されました(2020/5/13)
厚生労働省は2020年5月13日、新型コロナウイルス抗原検査キット「エスプラインSARS-CoV2」(富士レビオ)を承認しました。
(「エスプラインSARS-CoV2」を保険適用とするかどうかに関しては、今後の中医協総会で話し合われる予定です)
新型コロナウイルス抗原検査キット「エスプラインSARS-CoV2」
「エスプラインSARS-CoV2」は鼻咽頭ぬぐい液中のSARS-CoV2抗原を検出するキットです。咽頭ぬぐいを含む液をカセットに滴下すると、約30分後までにカセット上の判定ラインの有無を確認するというキットです。
エスプラインSARS-CoV2の検出感度について
72例を対象としてPCR法と比較した国内臨床性試験では、陰性一致率が98%(44/45例)、陽性一致率は37%(10/27例)という結果でした。
また、124例の検査検体を用いた試験では、陰性一致率が100%(100/100例)、陽性一致率は66.7%(16/24例)と報告されています。
厚生労働省は、上記の検出感度について
「一定量以上のウイルスを有する検体に対して約8~9割の陽性一致率を示している」
「PCR法よりも感度は低い」
「一定の症状を有する患者に対して、陽性判定をもとに感染診断を行うことの有用性が期待される」
としています。
陽性率に関して、エスプラインSARS-CoV2の検出感度は、鼻水に十分な量のウイルス抗原が存在すれば陽性と判断しますという検出率のように読み取れます。
(抗体検査キットではありません)
中国とヨーロッパにおける新型コロナウイルスの違いと、その致死率について(5/10)
新型コロナウイルスについて第一波、第二波という言葉を耳にするようになりました。
当初、中国で感染拡大を広めていた新型コロナウイルスの構造を確認してみると、その膜表面に突起状に突き出たスパイクタンパク質の中の614位のアミノ酸は「アスパラギン酸」であることが報告されていました。
一方、ヨーロッパで感染拡大している新型コロナウイルスの構造に関する報告を見てみると、スパイクタンパク質の中の614位のアミノ酸は「グリシン」へ変異していることが報告されました。
2020年4月6日時点における報告
614位のアミノ酸がが「グリシン」である割合と平均死亡率
中国:0.89%
日本:20.62%
オーストラリア:17.91%
スペイン:41.3%
フランス:84.82%
ベルギー:88.89%
イタリア:89.66%
平均死亡率
中国:4.07%
日本:5.82%
オーストラリア:1.92%
スペイン:36.43%
フランス:29.83%
ベルギー:29.73%
イタリア:24.93%
世界的パンデミックの初期段階において、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質614位のアミノ酸が「グリシン」に変異していると平均致死率が高いことと相関していました。
以下は筆者らの考察ですが、スパイクタンパク質のアミノ酸が「グリシン」へ変異したことで、スパイクタンパク質がヒト細胞へくっつきにくくなり、感染しにくくなった(感染が不安定となった)ことが予想されます。
「グリシン」へ変異がおこり、感染しにくくなったことでヒトの致死率が高くなった要因として、ウイルス学的な要因ではなく、免疫学的なことが要因なのではないかと考察を広げています。具体的には、ヒトの体内に侵入した「グリシン」新型コロナウイルスは細胞への侵入(感染)率が下がります。すると「グリシン」新型コロナウイルスがヒト免疫から攻撃されるリスクは下がります(ヒト体内で生き延びる率が上がる)。その結果、ヒト免疫は有害な免疫応答を誘発して、免疫学的な理由で致死率が上がることが示唆されています。
実際に、新型コロナウイルスに感染した小児が川崎病(過剰な免疫反応が原因)様症状を呈したという報告がなされていたり、免疫疾患治療で使用さえる薬剤(アクテラムなど)がサイトカインストームを抑えるのでは?として治療薬の候補として臨床試験が行われています。
新型コロナウイルスの第二はとして考えられている「欧米タイプ(614位のアミノ酸がグリシンへ変異型)」をどのように食い止めるか、収束して行くかについて、引き続き各種報告を調べてみたいと思います。
614位のアミノ酸がグリシンとなった新型コロナウイルス感染後の致死率
中国の報告ですが、レムデシビル(ベクルリー点滴)を使用した無作為化二重盲検(プラセボ対象)試験では、レムデシビル群158例、プラセボ群79例に区分され、臨床改善までの期間(中央値)を確認してみると、レムデシビル群は21日、プラセボ群は23日であったもの、有意差は確認されませんでした(95%信頼区間:0.87~1.75)
また、28日死亡率はレムデシビル群で14%、プラセボ群で13%と差はありませんでした。
厚生労働省がレムデシビル(製品名:ベクルリー点滴)を特例承認へ
レムデシビル(ベクルリー点滴)の添付文書が公開されました。
ベクルリー点滴添付文書
薬効薬理
ベクルリー点滴の活性代謝物はアデノシン三リン酸(ATP)の類似体として、SARS-CoV-2 RNA 依存性RNAポリメラーゼによって新たに合成されるRNA鎖に天然基質ATP と競合して取り込まれ、 ウイルスの複製における RNA 鎖の伸長反応を取り込みから少し遅れて停止させる働きがあります。
警告
急性腎障害・肝機能障害があらわれることがあるので投与前および投与中は毎日検査を行い、患者の状態を十分に観察すること。
使用上の注意
・生理食塩液に添加後、20~25℃で 4 時間又は 2~8℃で 24 時間を超えた溶液は使用せず廃棄 すること。
・成人及び体重 40 kg 以上の小児については、初日の投与の場 合は、2 バイアルを用い、各バイアルから 20 mL ずつを、2 日目以降の場合は、1 バイアルから 20 mL をとり、生理食塩液に添加して全量を 250 mL とする。
・静かに 20 回を目安に反転させて混和させるが、振とうは避けること
(米国では5/1に緊急症にされています)
厚労省の新型コロナウイルス感染症対策推進本部は
「日本への供給量が限定的になる可能性がある」
として、国がレムデシビルの供給を管理し、医療機関への配分を行うということです。
ベクルリー点滴静注液100mg
効能効果:SARS-CoV2による感染症
(現時点では原則として重症感染者を対象に投与を行うこと)
用法用量:成人および体重40kg以上の小児には投与初日200mg、2日目以降は100mgを1日1回点滴静注する。体重3.5kg以上40kg未満の小児には投与初日に5mg/kgを、投与2t日目以降は2.5mg/kgを1日1回点滴静注する。そう投与期間は10日までとしているが、人工呼吸器やECMOを必要としない患者には5日までとし、症状の改善が認められない場合は10日目まで投与するとしています。
米国FDAが新型コロナウイルス感染症に対してレムデシビル(点滴)緊急承認(2020/5/1)
米国FDA(米国食品医薬品局)は新型コロナウイルス感染症に対して抗ウイルス薬「レムデシビル」の緊急使用許可を発表しました。
FDAは新型コロナウイルス感染に伴う重症患者(成人および小児)に対して、抗ウイルス薬「レムデシビル」の投与を許可しました。
新型コロナウイルス感染における重症患者とは、血中酸素濃度が低下している患者、人工呼吸器などの呼吸支援措置がおこなわれている患者が該当します。
FDAが新型コロナウイルス感染症に対してレムデシビルの投与を許可
新型コロナウイルス感染症に対するレムデシビルの効果について(2020/4/30)
米国立衛生研究所の報告では、新型コロナウイルス感染症による肺炎患者(1063例)に関する報告としてレムデシビルを投与することで死亡リスクが低下することを報告しています。
レムデシビルを10日間投与した群では、回復期間が11日間であったのに対して、プラセボ群(投与していない群)では回復期間が15日間でした(有意差あり)
レムデシビルを10日間投与した群では死亡率が8.0%であったのに対して、プラセボ群(投与していない群)では死亡率が11.6%(有意差なし)
新型コロナウイルス感染症肺炎に対するレムデシビル10日間投与データ
レムデシビル5日間投与群と10日間投与群では有効性に差は見られない
新型コロナウイルス感染症の治療薬としてレムデシビルに関する報告が上がっていますが、フェーズ3のデータ報告によると投与期間に関しては5日間投与と10日間投与で、有効性に関して大きな差は見られないため、5日間投与の有用性が示されたと報告されています。
新型コロナウイルス感染症による肺炎症状(人工呼吸器を使っていない)患者397例を対象として、レムデシビル5日間投与群(200例)と10日間投与例(197例)に振り分けて、臨床症状の変化を確認したデータによると
投与開始後14日間時点で症状の改善が確認された割合
5日間投与群:64.5%/129例)
10日間投与群:53.8%(106例)
有意差なし
退院した割合
5日間投与群:60.0%/120例)
10日間投与群:52.3%(103例)
死亡率
5日間投与群:8%/16例)
10日間投与群:11%(21例)
新型コロナウイルス感染症の軽症患者用チェックリスト(2020年4月29日)
新型コロナウイルス感染症の無症状原体保有者や軽症者は自宅療養を指示されますが、自宅療養中に症状が急変ケースが報告されています。
厚生労働省は、急変時に対応するためのチェックリストとして「緊急性の高い症状」に関するチェック項目を作成し、自宅療養中の健康観察に使用するようPDFファイルを公開しました。
新型コロナウイルス軽症者の健康チェックリスト
【緊急性の高い症状】
※は家族等が以下の項目を確認した場合
〔表情・外見〕
顔色が明らかに悪い ※
唇が紫色になっている
いつもと違う、様子がおかしい ※
[息苦しさ等]
息が荒くなった(呼吸数が多くなった)
急に息苦しくなった
生活をしていて少し動くと息苦しい
胸の痛みがある
横になれない。座らないと息ができない
肩で息をしている
突然(2時間以内を目安)ゼーゼーしはじめた
〔意識障害等〕
ぼんやりしている(反応が弱い) ※
もうろうとしている(返事がない)※
脈がとぶ、脈のリズムが乱れる感じがする
本人または家族が上記のチェックリストを1日2回~4回行い、症状の変化がある場合は速やかに医師へ相談するよう促しています。
新型コロナウイルスに対するイベルメクチンを投与した臨床報告(2020/4/27)
新型コロナウイルスを発症した患者さんに対して、抗寄生虫薬「イベルメクチン」を投与した臨床報告があります。
イベルメクチン(150mcg/kg)を1回投与した新型コロナウイルス感染症患者(704例)と投与しなかった患者(704例)における死亡率を比較したデータです。
人工呼吸器を必要とした患者について
イベルメクチンを使用した患者の死亡率:7.3%
イベルメクチンを使用しなかった患者の死亡率:21.3%
全患者について
イベルメクチンを使用した患者の死亡率:1.4%
イベルメクチンを使用しなかった患者の死亡率:8.5%
上記のデータより、イベルメクチンを使用することで死亡率の低下および入院期間の減少が関連していると報告されております。
invitro(試験管内のデータ)としては、新型コロナウイルスをVero/hSLAM細胞に感染させて、イベルメクチンを投与したところ、細胞上清のウイルスが93%減少し、細胞内ウイルスが99.8%減少した。投与から48時間までにウイルス由来のRNAが1/5000まで減少したという報告があります。
invitroにおける新型コロナウイルスに対するイベルメクチンの効果
試験管内のデータに関しては、細胞毒性も低く有益なデータが記されていました。
新型コロナウイルスに対するアビガン錠の国内臨床報告
藤田医科大学はwebシンポジウムで新型コロナウイルスに対するアビガン錠の使用効果を報告しました。
(回復度合いの判断は医師の主観であり、対照群も置かれていない報告です)
軽症者に対するアビガン錠の効果(軽症者:酸素投与をしていない患者)
アビガン錠投与開始7日後:70%改善、14日後:90%改善
中等症に対するアビガン錠の効果(中等症:酸素投与はしているが、機械換気がない患者)
アビガン錠投与7日後:66%改善、14日後:85%改善
重症に対するアビガン錠の効果(重症:機械換気がある患者)
アビガン錠投与7日後:41%改善、14日後:61%改善
重症例では投与開始から7日後に34%が悪化、14日後で33%が悪化と報告しています。
有害事象:188人中32人で有害事象が報告されています。
高尿酸血症15人(8%)、肝機能異常12人(6.4%)
新型コロナウイルス感染症に関しては、多くの患者が自然軽快し、一部の患者が急激な悪化をたどる病態であることと、今回の報告では比較対象がないことから現段階では、上記の報告がアビガン錠の効果かどうかについて言及するものではありません。
レムデシビル静注使用における新型コロナウイルス感染の重症肺炎の治癒率(4/13)
レムデシビル静注(エボラ出血熱治療剤)を新型コロナウイルス感染における重症肺炎例53人(日本人9人を含む)に10日間使用したところ、症状発症から28日目までに36人(68%)で呼吸症状の改善が確認されたことが報告されました。
(7人が死亡(70歳以上で致死率が高い)、6人は重症肺炎状態が継続)
レムデシビル静注使用による副作用としては、肝機能悪化、下痢・発疹、腎障害などが報告されています。
新型コロナウイルスに関するQ&Aを厚生労働省が公開(4/10)
厚生労働省のホーム絵ページに新型コロナウイルスに関するQ&Aが公開されました。
Q&Aは以下の3種類が公開されています。
新型コロナウイルスに関するQ&A(医療機関・検査機関の方向け)
英国国立医療技術評価機構(NICE)が新型コロナウイルスガイドライン公開
英国国立医療技術評価機構(NICE)が新型コロナウイルスに関するガイドラインを公開しました。以下にガイドラインの概要を記します。
英国国立医療技術評価機構(NICE)が新型コロナウイルスに対するガイドライン公開
1:外出について
外出は食品・薬・生活必需品などを購入するとき
1日1回の運動をするとき
献血を含む医療上の必要性があるとき
傷害・危険を回避するとき
2:病院への定期受診について
定期受診は可能です。
開業医は、緊急でない健康診断は延期すること
3:犬の散歩
1人または家族と一緒に行うことができます。
1日1回の散歩、ランニング、サイクリングなどの外出は可能です。
家族以外の人からは2メートル以上離れること。
4:自宅にいるべきか?仕事に行くべきか?
自宅内で仕事ができない方は仕事へ行くことができます。
5:在宅勤務ができないものはどうすればいいか?
仕事へ行くことができます。
6:仕事の種類と出勤について
在宅業務ができない人は仕事へ行くことができます。
(重要な仕事であるかどうかにかかわらず、仕事へ行くことができます)
パブや人々が多く集まる仕事を閉鎖するよう政府は求めています。
7:友達との面会について
ウイルス拡散防止のために避けるべき。電話やビデオ通話を推奨します。
8:高齢者・親戚を訪問してもよいか?
同居していない親戚・高齢者への訪問は避けるべき。電話やビデオ通話を推奨します。
親族や高齢者に対する買い出しは玄関先に置いておく(直接の面会を避ける)ことを推奨。またオンラインでのお注文も推奨します。
9:介護を行うための外出は?
支援者が元気であり、咳や発熱がなく家族の中にもそのような症状があるものがいないこと。70歳未満であること。妊娠していないこと。長期的に健康状態であるかどうか
上記の案件を満たしていれば介護を行うことができる。
外出の際は、他人から少なくとも2メートル離れること。
など1~15までのガイドラインが公開されています。
FDAが新型コロナウイルスに対してプラケニル(ヒドロキシクロロキン)を承認(4/5)
FDAは新型コロナウイルス感染症治療薬としてプラケニル(ヒドロキシクロロキン)の処方を許可しました。(ただし、ヒトに対する効果は限定的としています)
今回はプラケニル200mg(ヒドロキシクロロキン)を承認するに至った経緯、新型コロナウイルス感染症に対する臨床データを確認してみました。
FDAが新型コロナウイルス感染症に対してプラケニル錠の使用を許可
FDAがプラケニル200mgを新型コロナウイルス感染症に対して許可した経緯
2020年3月21日、米国トランプ大統領が「ヒドロキシクロロキン(プラケニル)とアジスロマイシン(マクロライド系抗生物質)の併用が「この状況を打開する可能性の1」とTwitterで述べたことで脚光をあびました。
新型コロナウイルス感染症対するプラケニル(200mg)の効果について
In vitro(試験管内のデータ)において、プラケニルはコロナウイルスやインフルエンザなどのウイルスに対する抑制作用が報告されています。しかし、インフルエンザ患者を対象としたランダム比較試験において“効果はない(陰性)”というデータが示されています。
新型コロナウイルス感染症(ヒト)に対するプラケニルを使用したデータとしては、フランスの小規模試験(Didier Raoult氏が主導)が報告されております。新型コロナウイルス感染症陽性と判定された被験者に対して、プラケニルを投与した群(26人)と対照群(16人)における結果をRault氏は「鼻咽頭感染の除去に効果的である」とまとめています。しかし詳細を見てみると、プラケニル投与群のうち1人は死亡、3人が集中治療室へ運ばれ、2人は治療を中断しています。(対照群16人に死亡・中断・ICUケア患者はおりませんでした)
さらにRaulo氏は新型コロナウイルス感染症患者80人を対象としてフォローアップ試験を発表していますが、プラケニル使用における死亡率は13%または2.5%と報告しています。(フォローアップ試験には対照群が示されておりません)
中国で軽症から中等症の新型コロナウイルス感染症を対象としてプラケニル錠を使用した小規模臨床データでは、回復率に差は見られなかったと報告されています。一方でプラケニルを使用したことによる副作用は報告されており、心室性不整脈・QT延長などの心臓毒性については十分注意すべきとしています。
さらに、新型コロナウイルス感染症患者さんへプラケニルが爆発的に処方されることで、本来使用すべきエリトマトーデス患者さんへの薬の供給が枯渇することだけは避けなければなりません・・・と言いながらもトランプ大統領の発言以降、世界的にプラケニル錠の枯渇が始まっています。
プラケニル錠の薬理作用
・抗炎症作用
・免疫調節作用
・抗マラリア作用
が認められています。
細胞内のリソソーム(ライソソーム)の機能を抑制し、それに伴う抗原提示の阻害(免疫抑制)、サイトカイン産生と放出抑制、アポトーシス誘導、アラキドン酸放出抑制などの薬理作用が推察されていますが、いまだ正確な作用機序は不明な薬剤です。
降圧剤ARB、ACE-iを飲むことは新型コロナウイルス感染症罹患後の重症化要因にはならない(4/1)
米国心臓協会・米国心不全学会・米国心臓病学会の3学会は3月17日に連名で「ACE阻害剤やARBを飲むことは新型コロナウイルス感染症罹患後の重症化要因にはならない」とする共同声明を発表しました。
一部の動物実験にてARBやACE-iを使用することで、コロナウイルスがヒト細胞へ感染に利用するACE2受容体が増加するのでは?という議論がなされていましたが、米国3学会は、この懸念を否定するために共同声明を発表しました。
心不全・高血圧・虚血性心疾患などの適応でARBやACE-iを使用している患者さん対して継続服用を推奨しています。(心疾患などの持病がある方はACE-iやARBの使用の有無にかかわらず、新型コロナウイルス感染症後の重症化リスクは高まるとしています)
ACE-iやARBの服用は新型コロナウイルス感染症後の重症化リスクとはならない
新型コロナウイルスに対する抗ウイルス薬「レムデシビル静注」の国際共同治験開始(3/29)
国立国際医療機関センターは新型コロナウイルス感染症の治療薬として抗ウイルス薬「レムデシビル静注」の安全性と有効性を評価する国際共同治験を行うことを発表しました。
レムデシビル静注とは
レムデシビル静注はコロナウイルスなどのRNAウイルスの増殖を抑える効果があります。具体的な薬理作用は未知の部分もあるようですが、私が調べた感じを以下に記します。
新型コロナウイルスはヒトの細胞に入り込んだ後(感染した後)、ウイルス自身を増幅するために、ヒトの細胞内にあるRNA工場を間借りして、ウイルス自身のRNAを、どんどん合成するという作業に入ります(RNA複製という作業です)。RNAをどんどん勢いよく合成する過程で「RNA合成失敗!」「RNA合成に不具合あり!」といったケースは非常に起こりうるのですが、合成ミスをリカバリーする酵素として「ウイルスエキソリボヌクレアーゼ」という酵素が活躍して、合成ミスを減らすことがわかっています。ウイルスエキソリボヌクレアーゼとはRNAを合成する過程で生じるミスを修復する酵素であり、この酵素が活躍することで「RNA合成失敗回数」を非常に減らすことが可能となります。
レムデシビル静注を投与すると、RNAポリメラーゼに作用して、ウイルスエキソリボヌクレアーゼによるRNA合成ミスの校正を阻害することでRNAの合成を抑制することが可能となります。この記述だけを見ると、「RNAがミスなく合成された場合はレムデシビルは効かないのでは?、それほど効果的ではないのでは?」という疑問が浮かびますが、エボラウイルスを用いた実験によると、レムデシビル静注を投与した場合、RNA依存性ポリメラーゼによる合成は、大部分が阻害されることが示されています。
(DNA合成と比較して、RNA合成は1000倍以上ミスが生じやすいということも背景にあると思います)
レムデシビル静注の力価は?
以下はin vitro(試験管内・シャーレ内)の実験データですが、VeroE6細胞に新型コロナウイルスを感染させ、7種類の薬剤をそれぞれ添加して、各薬剤について新型コロナウイルスが50%まで死滅する際に必要な薬物濃度を測定しています。
リバビリン(EC50)=109.5μM
ペンシクロビル(EC50)=95.96μM
ファビピラビル(EC50)=61.88μM
ナファモスタット(EC50)=22.5μM
ニタゾキサニド(EC50)=2.12μM
クロロキン(EC50)=1.13μM
レムデシビル(EC50)=0.77μM
上記のデータより、レムデシビルが一番すくない投与量で、ウイルスを半分に死滅させることが試験管内データとして報告されています。言い換えると少量で良く効く薬と言えます。今後は、実際にヒトへ投与した際の臨床試験データが蓄積され、公開されていくものと思われます。
新型コロナウイルスの空気中および床表面での安定性(感染力価)について(3月22日)
新型コロナウイルスは、せきやくしゃみによる「飛沫感染」と直接触れる「接触感染」が感染経路と考えられています。咳やくしゃみで排泄される多くの飛沫は粒径が5μメートル以上の飛沫であるため、感染者から咳・くしゃみをした際の飛距離はおよそ1~数メートル程度です。5μメートル未満の飛沫は、霧やエアロゾルとなり空気中をフワフラ漂い、すぐに地上に落下することはありません。
今回は、この5μメートル未満のフワフワコロナウイルスに関して、どの程度、感染力が持続するのかという報告がありましたので、記してみます。
評価方法
TCID50という指標を用いて評価しています。細胞にウイルスが感染すると細胞の形が変形します。変形した細胞=ウイルスに感染した細胞と考え、感染力価として50%の細胞に感染するウイルスの量をTCID50と定義して、時間経過とともにどの程度TCID50が減っていくかを評価しています。
新型コロナウイルスでは、空気1L(リットル)あたり10^ 3.5=3162( TCID 50)という感染力価を有しています。時間経過とともにこの値は徐々に減少していき、3時間経過すると、空気1L(リットル)あたり10^ 2.7=501( TCID 50)まで減少することが報告されています。
概算ですが、空気中を漂う新型コロナウイルスは1.5時間ほどで半減していることことが試算されます。
一方で、床に落下した新型コロナウイルスに関しては床の素材によって感染力価が大きく変わってくるようです。
床の素材が「銅」の場合、1時間ごとに感染力価が半減します。
床の素材が「段ボール」の場合、3時間ごとに感染力価が半減します。
床の素材が「ステンレス」の場合、6時間ごとに感染力価が半減します。
床の素材が「プラスチック」の場合、7時間ごとに感染力価が半減します。
今回の報告では、接地面素材として上記の4種類が実験データとして公開されていました。実生活を考えると、ステンレスやプラスチックなどが身近にあるかなあという感じでしょうか。
厚生労働省が推奨しているように、こまめな換気と手指消毒、咳チケット、消エタノールによるふき掃除を行うことが大切であることがわかります。
関節リュウマチ治療薬「アクテムラ」が新型コロナウイルスによる過剰免疫応答を抑制?(3/23)
中外製薬は関節リウマチ治療薬「アクテムラ」について新型コロナウイルス感染症による重症肺炎を対象に第3相試験を開始すると発表しました。
アクテムラによる新型コロナウイルス感染症の重症肺炎臨床試験開始
第3相試験では新型コロナウイルス感染症による重症肺炎患者330例を対象として、プラセボと比較した場合のアクテムラの安全性・有効性を検討するとしています。
アクテムラ注は炎症性サイトカインIL-6受容体を遮断することで過剰免疫を抑制する働きがあります。新型コロナウイルス感染症に由来する重症肺炎における過剰免疫抑制効果を検証するものと思われます。
降圧剤ARB、ACEIの服用と新型コロナウイルス感染リスク(3/20)
新型コロナウイルスの感染に関しては、基礎疾患を有する患者さんほど、重症化しやすいことが報告されています。その中で、信ぴょう性は不明ですが、オックスフォードアカデミックが2020年3月18日に提唱した仮説として
「アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)とアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)は新型コロナウイルスの感染リスクを高めるのでは?」という仮説です。
以下は動物実験でのデータなのですが、ACEIやARBを静脈注射すると呼吸器周辺におけるアンジオテンシン変換酵素2受容体(ACE2受容体)が増えることが報告されています。新型コロナウイルスは、その構造上、ウイルス表面にスパイクタンパク質(Sタンパク質)という突起物をたくさん有しているのですが、このスパイクタンパク質とACE2受容体が結合することで新型コロナウイルスが感染が開始されると筆者らは考えています。l
ヒトにおいても、ACEI(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)やARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)を長期間服用している患者さんにおいては、アンジオテンシン2受容体数の増加が報告されています。筆者らの仮説ではありますが、ACE2受容体が仮に新型コロナウイルス膜表面のスパイクタンパク質と結合するのであれば、感染患者の下気道において新型コロナウイルスの侵入を容易にし、肺炎や致命的な呼吸不全をもたらす可能性が示唆されます。
ARBやACEIを服用すると新型コロナウイルスの感染リスクが増える?
新型コロナウイルスにはイブプロフェンをつかわない?
WHOが3月17日に「新型コロナウイルス感染症の症状がある方にはイブプロフェン(NSAIDS)の服用を避けることを指示したようです。
その発言のおおもとはフランスのオリビエ・ベラン保健相のツイッターで「イブプロフェンは新型コロナウイルス感染症を悪化しうる、解熱剤にはアセトアミノフェン(カロナール)を進める」と発したことが由来です。
この発現に関連する内容を調べたところ、新型コロナウイルスを含む感染症や重症例に対してイブプロフェンではなくアセトアミノフェンを推奨するという意見がいくつか散見されましたので下記します。
レディング大学ウイルス学教授:イアン・ジョーンズ
イブプロフェンの抗炎症作用が免疫システムを減少させ、回復過程を遅らせる可能性がある。新型コロナウイルスは血液中の水分濃度・塩分濃度を調節する酵素を減少させる可能性がある。イブプロフェンを使用すると悪化する可能性があるが、アセトアミノフェン(カロナール)ではその可能性は低いと述べています。
LSHTMの疫学准教授シャーロット・ウォーレンガッシュ
新型コロナウイルス罹患した健康状態の異なる人々に対するNSAIDSの影響については研究が必要です。一方、発熱やのどの痛みなどの症状を治療する際の最初の選択肢はアセトアミノフェン(カロナール)に固執することが賢明
新型コロナウイルスに対してアセトアミノフェンまたはNSAIDSのどちらを使用するかという議論がでた背景としては、南西フランスにおいて、基礎疾患のない若者4例が新型コロナウイルスに罹患し、初期段階でNSAIDSを使用した後、深刻な症状を呈したためといわれています。
新型コロナウイルス感染初期のウイルス侵入を阻止する「フサン」(点滴)
東京大学医科学研究所は、新型コロナウイルスの感染初期にウイルス外膜とヒトの細胞膜とが融合するプロセスを阻害することでウイルスの侵入を阻止する可能性がある薬剤として「フサン」を同ホームページに掲載しました。
フサン(ナファモスタット)とは
フサン(ナファモスタット)とはタンパク分解酵素阻害剤(セリンプロテアーゼ阻害剤)という働きがある注射剤で、臨床では急性膵炎や血液透析時に血液が凝固しないように使用する薬剤です。
新型コロナウイルスの外膜表面には「Spikeタンパク質(Sタンパク質)」と呼ばれる”手”が多数存在しております。ヒトの細胞膜上には「ACE2」と呼ばれる”受容体”(手とくっつく部位)が存在しています。
新型コロナウイルスがヒトの細胞内に入り込むためには2つのプロセスを要します。
新型コロナウイルス外膜のSタンパク質とヒトの細胞膜上にあるACE2がくっつ過程を第一段階です。
次に、ヒトの細胞膜上にあるACE2とくっついたSタンパク質を「TMPRESS2」と呼ばれるたんぱく質が”切断(タンパクを分解)”します。この”切断(タンパクを分解)”するプロセスが第二段階です。”切断”によって新型コロナウイルスは活性化して、ウイルス外膜とヒトの細胞膜が融合し、ウイルスが細胞内に入っていきます(感染スタート)。
フサンはタンパク分解酵素阻害剤という働きがありますので、「TMPRESS2」による”切断”(タンパク分解)を阻害することで、ウイルスの侵入を阻止する効果が期待されます。飲み薬では「フオイパン錠(カモスタット錠)」でも同様の効果が期待されますが、フサン注の方が少量で効果があるということから、フサン注に注目が集まっています。
鼻咽頭ぬぐい液PCRで2回連続陰性となるまでに要する時間(3/18)
ダイアモンドプリンセス号で新型コロナウイルスに感染した患者を対象として、鼻咽頭ぬぐい液PCR検査が2回連続で陰性化するまでに要する時間についての報告がありましたので記載します。
被験者;無症状病原体保有者90名(年齢中央値59.5歳)
1日2回の体温測定・酸素飽和度・自覚症状を確認し、48時間の間隔で鼻咽頭ぬぐい液を採取し、PCR検査を行っています。
連続で2回のPCRが陰性と確認されるまで検査が行われています。
結果
初回PCR検査で陽性と確認された日を0日目とすると
6日目で陰性を確認した累積人数:32人(36%)
7日目で陰性を確認した累積人数:35人(39%)
8日目で陰性を確認した累積人数:43人(48%)
9日目で陰性を確認した累積人数:54人(60%)
と報告されています。
しかし、2回連続PCR検査において、1回目の検査では陰性が確認されたものの、2回目のっ検査では再度陽性と確認された被験者の割合は20%(18人/90人中)
また、2回連続PCR検査陰性となるまでに15日以上を要した患者は12%(11人/90人中)
筆者らは上記の結果を受けて
「陰性確認を行う場合の初回検査は、初回陽性PCRの検体採取日から数えて6日目以降に行い、これが陽性である場合は48時間後に再検するのが適切な可能性がある」
と考察しています。
新型コロナウイルス感染症における診療所・病院の初期診療手引き公開(3/16)
日本プライマリ・ケア連合学会は、新型コロナウイルス感染症における診療所・病院のプライマリ・ケア初期診療手引きを公開しました。
以下にその概要を記します。
新型コロナウイルス感染症における診療所・病院の初期診療手引き
新型コロナウイルス感染症の経過
1. 感染から約5⽇間(1〜14⽇間)の潜伏期を経て,
2. 感冒様症状(発熱,咳,喀痰,咽頭痛,⿐汁等),倦怠感等が出現し,
3. ⼀部の患者では嘔吐,下痢などの消化器症状を呈することもあり,
4. それら症状が⽐較的⻑く,約7⽇間持続す
特に倦怠感については、発熱(体温)がそれほど⾼くないのに倦怠感が強いことがある
さらに、症状が7日間前後続いた後に
5. 約8割の患者は,⾃然に軽快して治癒する
6. 約2割の患者は,肺炎を合併する.特に,⾼齢者や基礎疾患がある場合は肺炎を 合併しやすい
7. 肺炎に進展した患者のさらに⼀部が,重症化して集中治療や⼈⼯呼吸を要する
⼊院を要するような肺炎を約2割という⾼い確率で合併するのが,新型 コロナウイルス感染症の特徴です
クラボウ(倉敷紡績(株))が新型コロナウイルス抗体検査キットを発売
クラボウ(倉敷紡績)が新型コロナウイルス抗体検査キットを発売することを同ホームページに掲載しました。
新型コロナウイルス検査キット(15分)
新型コロナウイルス抗体検査キットは少量の血清を滴下して15分程度で新型コロナウイルス感染の有無を目視で判定できる検査キットです。中国の提携先企業が開発したイムノクロマト法の原理に基づき、「新型コロナウイルス抗体検査試薬キット」を国内に輸入し、販売を開始することとなりました。
PCR法はウイルスのRNAを増幅して陽性かどうかを判定する検査方法であるのに対して、今回クラボウが発売する検査キットは血清中に含まれる「特定の抗体」を検出して陽性か陰性化を判別するキットとなっています。そのため感染初期の患者に対しても判定ができるとしています。
キットは2種類が販売され、感染初期段階で生成される「IgM抗体」を検査するタイプのキットと、感染後に多く生成される「IgG抗体」を検査するタイプのキットが発売されます。
価格は10回分で2万5000円です。
販売開始時期:2020年3月16日
プラケニルの新型コロナウイルスに対する効果
日本感染症学会のホームページに新型コロナウイルスに対するプラケニル錠200mgを使用した臨床報告が記載されておりましたので下記します。
プラケニル錠200mg
被験者:69歳男性、透析患者
新型コロナウイルス感染に加えて、細菌性肺炎・非定型肺炎の合併を考慮し
メロペネム、レボフロキサシンの点滴投与行う。また、インフルエンザ罹患後の新型コロナウイルス肺炎発症であったため、インフルエンザ肺炎合併も念頭にラピアクタを2日間限定で投与。2日目、肺炎増が増悪したためプラケニル200mgの内服を開始。→奏功
抗菌薬およびラピアクタが奏功した可能性や、透析による退役管理が有効であった可能性もあるが、総合的に考えるとプラケニルがそうこうしたkな旺盛が最も高いと判断しています。
プラケニル200mgは古くから存在するマラリア治療薬および予防薬であり、2002年~2003年にりゅうこうしたSARSに使用された経緯があり、新型コロナウイルスに対してもすでに中国で使用され、臨床的に効果が認められたと報告があります。プラニケルはin vitroにおいて新型コロナウイルスにたいする抗ウイルス作用活性が報告されており、免疫調節作用によりin vivoでの治療効果を相乗的に高めている可能性があるとしています。用法用量については皮膚エリトマトーデス・全身性エリトマトーデスに準じて使用したとしています。
新型コロナウイルス治療にプラニケル200mgを使用した報告例
日本感染病学会のホームページに新型コロナウイルスに対するカレトラ配合錠、オルベスコ吸入を使用した臨床報告が記載されていましたので下記します。
カレトラ配合錠(ロピナビル・リトナビル配合錠)
1回2錠(400/100mg)を1日2回、10日間投与した
2/12日に服用を開始した。2/22と2/25日に喀痰検体によるPCR検査を実施し、2回とも陰性となった。
新型コロナウイルスに対するカレトラ配合錠の臨床報告
追記(2020/3/23)
シンガポールでの報告では酸素療法を必要とした5例にカレトラ配合錠を投与した結果、5例中3例は解熱し、3日以内に酸素の必予製が減少した。しかし、残り2例は呼吸不全を伴い悪化がみられた。カレトラ配合錠使用による副作用は、5例中4例(悪心・嘔吐・下痢)、5例中3例(肝機能異常)
オルベスコ(被験者3名)
新型コロナウイルスに感染した3名に対して、オルベスコ吸入を使用した報告例が日本感染症学会ホームページに記されています。オルベスコ吸入を使用した3名中1名(200μg、1日2回吸入)はPCR検査で陰性となっています。2名はSPO2低下のためオルベスコ吸入を(200μg、1日2回吸入)開始し、食欲や倦怠感が改善しています。ただし、咽頭ぬぐい液からのPCR検査で陽性が続いているため1200μg/日を吸入して治療継続中と記されています。
(添付文書の最大投与量は1日800μgです)
オルベスコ吸入はステロイド吸入剤の1つですが、国立感染症研究所村山庁舎のコロナウイルス研究室から「抗ウイルス作用」が紹介され、新型コロナウイルス感染症に伴う重症化に対しての効果が期待されています。
新型コロナウイルスの診断はPCR検査ではなくCT検査?
新型コロナウイルスの診断として口腔内のぬぐい液を使用したPCR法が主流となっていますが、その精度は30~60%と言われています。
武漢での報告では口腔内ぬぐい液によるPCR検査が陰性でも、肛門ぬぐい液または血液検査によるPCR検査が陽性だった事例が報告されています。(口腔内ぬぐい液が陰性であったにも関わらず、5日目に肛門ぬぐい液が陽性となった事例が4例報告されています)
時系列で考えると、感染初期は口腔内ぬぐい液がPCR検査で陽性を示すものの、回復期には肛門ぬぐい液が陽性となるケースがあるということです。
そのため、口腔内ぬぐい液によるPCR検査が確実なものかどうか、難しいところです。
胸部CT検査
武漢での報告では、PCR検査とCT検査の両方を行った1014例を対象として検査を行った結果、胸部CT検査の方がPCR検査よりも検出率が高いという報告がなされました。
結果
PCR検査による陽性率:56%(601例)
胸部CT検査による陽性率:88%(888例)
PCR陰性例(413例)のうち、75%(308例)が胸部CT検査で陽性と判断され、そのうち48%(123例)が感染の可能性が非常に高い、33%(101例)が感染の可能性が高い群と判断されました。
(咽頭ぬぐい液を使用したPCR検査の陽性率が30~60%と報告されています)
新型コロナウイルスへアビガン錠投与を推奨
2月21日、政府は新型コロナウイルス感染者を対象に、アビガン錠(新型インフルエンザ治療薬)の投与を推奨する方針を固めました。
アビガン錠を試験投与された新型コロナウイルス患者軽症患者や、無症状の感染者で効果が確認されたということです。
アビガン錠とは
新型インフルエンザ治療薬として開発されたものの、市場に出回ることはなく、国が使用許可を認めた場合に限り、患者へ投与許可が下りる医薬品です。2014年に医薬品として認可されているものの、薬価はついておらず「薬価基準未収載」とされています。そのため保険医療として投与されたことはないかと思われます。
アビガン錠の薬理作用
RNAポリメラーゼ阻害薬という薬理作用です。RNAポリメラーゼ阻害薬のイメージとしては新型コロナウイルスがヒトの細胞内に入り込んだ後、通常であれば、細胞内でウイルス自身の分身を大量に合成して細胞外へ放出し、他の細胞へウイルス感染を広めることにより発症するところを、アビガン錠を飲んだ場合は、ウイルス自身の複製(大量合成)を抑えることによって増殖を防ぐという働きとなります。
アビガン錠は1日2回、使用します。
1日目は1回1800mgを1日2回(トータル3600mg)服用する
2日目以降は1回800mgを1日2回(トータル1600mg)服用する。
最長出14日間投与する。
注意)対インフルエンザ治療薬としてアビガン錠の添付文書に記されている用法用量とは異なります。
そのため軽症患者では重症化を抑えられ、無症状感染者では発症を抑えられる効果が期待されます。
注意)既存のインフルエンザ治療薬(タミフル・イナビル・リレンザ・ゾフルーザ)は、アビガン錠とは全く薬理作用が異なります。
新型コロナウイルス感染者は指定感染症扱いとなりますので、医療費は公費で負担されます。そのためアビガン錠は引き続き薬価収載されない状態(薬の値段が決まらない状態)で感染者に使用されるのかなぁと推測します。