半年に1回のプラリア皮下注60mg投与で腎機能改善
半年に1回の骨粗しょう症治療薬“プラリア皮下注”を投与することでeGFR(糸球体ろ過率)の改善が確認されたことが報告されました。
被験者73例の骨粗しょう症患者を対象として2年間にわたり、半年に1回(合計3回)プラリア皮下注を投与した報告によると、投与後2年間で加齢に伴う腎機能低下に逆行し、eGFR(糸球体ろ過率)が2.75±1.2ml/min1.73㎡上昇し、腎機能の改善が確認されました。
腎機能改善のメカニズムに関しては、プラリア皮下注を投与したことで骨の分解が抑制され(骨吸収抑制作用)、骨からのリンの放出が抑えられたことで血液中のリン濃度が減少し、腎機能改善に寄与したのではとされています。
骨粗しょう症治療薬の中で骨吸収抑制薬に関しては、これまでに心血管保護作用は報告されておりましたが、腎機能改善(腎機能低下抑制作用)に関しの報告は初めてのように思います。
骨粗しょう症治療薬プラリア皮下注による腎機能改善作用
ビスホスホネート製剤の継続と中止では、その後の骨折リスクがどの程度違うのか
骨粗しょう症治療薬のビスホスホネート製剤は一定期間服用後の中止・休薬することが往々にしてあります。その理由として、長期間にわたるビスホスホネート製剤の使用により顎骨壊死・非定型大腿骨骨折の発生リスクが上昇することが報告されているためです。
4年間ボナロン(フォサマック)を服用した群はプラセボ群と比較して、脊椎骨折の発症リスクは44%減少し、非椎骨骨折の発症リスクは0.12%減少、股関節骨折の発症リスクを0.21%減少させる報告はありますが、それ以降の長期服用に関する報告をいくつか調べてみました。
ビスホスホネート製剤の長期間服用データを確認してみると、ボナロン(フォサマック)を5年間服用後、さらに5年間治療を継続した(合計10年間)群と、プラセボ群を比較した報告によると、治療継続群では臨床椎体骨折リスクが減少したという報告もあれば、5年間ボナロンを服用した後は、その後中止しても継続しても骨折リスクの有意な増減は確認できないという報告もあり、見解は分かれている感じです。
ボナロン10年間治療群 vs ボナロン5年間治療群
(被験者:閉経後女性1099)
臨床骨折・非椎骨骨折・股関節骨折・X線による臨床脊椎骨折リスクに関しては、差は見られなかったものの、臨床脊椎骨折リスクに関しては5年間群と比較して10年間継続服用した群で、リスクが半分ほどに減少していました(有意差あり:リスクが55%減少)
ボナロン7年間治療群 vs ボナロン5年間治療群
非椎骨骨折に関して有意差はないものの、7年間服用群で発症リスクが13%ほど低下する可能性が報告されています。
臨床脊椎骨折リスクに関しても有意差はないものの7年間服用群で発症リスクが8%ほど低下する可能性が報告されています。
ボナロン10年間治療群 vs ボナロン7年間治療群
非椎骨骨折に関して有意差はないものの、10年間服用群で発症リスクが19%ほど低下する可能性が報告されています。
骨粗しょう症ガイドラインでは、ビスホスホネート製剤治療開始後、3~5年で骨折リスクを評価し、骨折リスクが高い人ではビスホスホネート製剤を継続し、中等度リスクや低リスク群では休薬や中止を検討することが記されています。現状では、臨床的な脊椎骨折の危険性が非常に高い女性は、ビスホスホネート製剤を継続したほうがいいという解釈が一般的かもしれません。ただし、長期服用に関しては有意差が報告されておりませんので、効く効かないには個人差が生じてしまうのが現状です。
日本国内では「骨粗しょう症治療薬」としての適応症はありませんが、点滴のビスホスホネート製剤「ゾメタ点滴静注」に関して長期間使用を続けた群と治療を中止した群における骨折リスクを評価したデータがありましたので確認してみました。
ゾメタ点滴6年間治療群 vs 3年間治療群
(被験者:閉経後女性1233例)
臨床骨折・非椎骨骨折に関しては、差は見られなかったものの、X線による臨床脊椎骨折リスクに関しては3年間群と比較して6年間継続服用した群で、リスクが半分ほどに減少していました(有意差あり:リスクが49%減少)。股関節骨折に関して有意差はないものの、6年間治療群で10%ほどリスクが減少する可能性が示唆されています。
まとめ
ビスホスホネート製剤は3~5年間の連続服用に関しては有意差をもって骨折リスクを軽減させる報告があるものの、それ以降の長期服用に関してはプラセボと比較して差がない報告や骨折リスクは軽減させるものの有意差がない報告が多い。プラセボと比較して有意差が得られていない医薬品を長期継続する必要があるかに関しては、主治医の意向にゆだねられる感じでしょうか。
ボナロン(フォサマック)を継続服用した場合と服用中止した場合の骨折リスクについて