エディロールカプセル0.75㎍がどの程度骨密度を改善するか
骨粗しょう症治療のためにビタミンD製剤を使用している患者さんがたくさんおられます。私が勤務する薬局では、これまでアルファロールカプセル(ワンアルファ)のジェネリックを主流に調剤するケースが多かったのですが、ここ半年ほど前からエディロールカプセル0.75㎍へ続々と切り替わっている状況が続いていました。
アルファロールカプセルのジェネリックが1錠10円以下なのに対して、エディロールカプセル0.75㎍は1錠100円程度するため患者様の負担金が増します。服用を続けていただくために、この負担金に見合った効果を患者さんにお伝えすることができればと感じましたので今回はエディロールカプセル0.75㎍について記載します。
エディロールカプセル0.75㎍
血清カルシウム上昇作用は軽微でありながら、強力な骨量増加効果が確認されたビタミンD誘導体です。エディロールカプセルは既存ビタミンD製剤であるロカルトロールに比べビタミンD結合タンパクに対して4.2倍の結合能を持っており、半減期が50時間もあるため1日1回の使用で十分効果が期待できます。
骨密度と体格・運動習慣について
骨密度に対するデータ
患者様が一番気にする数値として「骨密度」があります。これが上がっているまたは維持されていることが治療の指針です。骨粗しょう症の本来の目的は”骨折抑制”なのですが骨粗しょう症と診断された初期の患者様は”自分が骨折する”なんて考えていません。そのためとにかく骨密度を上げることに治療意義を感じるように私は思います。
エディロールカプセル服用による骨密度の上昇度合を確認してみます。12か月間、薬を服用しなければ腰椎骨密度が0.7%減少するのに対し、同期間服用をつづけるとエディロール0.5㎍で2.2%、0.75㎍で2.6%上昇することが確認されています。さらに大腿骨近位部に関しては、エディロール0.5㎍では0.8%低下しているものの、0.75㎍では0.6%上昇しています。このためエディロールカプセルの常用量は0.75㎍となっています。0.5㎍という量を使用している患者様は私の体感では数%程度だと感じています。
さらに既存のビタミンD製剤であるアルファロールとの比較データでは、服用3年後の腰椎骨密度データを比較してみるとアルファロールでは0.11%上昇したのに対し、エディロールでは3.42%上昇しています。大腿骨近位部骨密度ではアルファロールで2.3%低下しているのに対し、エディロールでは0.4%上昇することが確認されておりアルファロールからエディロールへ変更することは有用であることがわかります。
これらのデータから骨粗しょう症ガイドラインにおいて骨密度上昇効果はグレードAの評価を得ています(アルファロール、ロカルトロールはグレードB)。
以上のことからエディロールカプセル0.75㎍の服用は骨密度上昇に寄与することが確認されました。一方で、薬を何も飲まないと腰椎骨密度や大腿部近位部骨密度が1年間で0.7~0.8%低下するという経年劣化の事実も確認できました。薬を使用せずに骨密度を維持するためには「適度な運動」という言葉を耳にしますが、具体的にどの程度のことを言うのか曖昧でしたので調べてみることにしました。
骨密度を維持するための運動量
骨の再構築(リモデリング)には荷重刺激が効果的であり運動による刺激が骨量の増加に寄与します。荷重の差が骨密度の増加に寄与する例としては、新体操の選手の踏切足が良い例です。新体操選手の下肢骨密度を計測したデータでは踏切足の骨密度が着地足に比べて優位に高い値を示したというデータがあります。
若年層であれば運動による骨密度の上昇は顕著ですが、閉経後の女性ではそうではありません。骨形成までに必要な運動量が閉経後女性では増えることが報告されています。つまり閉経後女性では、軽い運動程度をした程度では骨密度上昇に有効であるという評価がされていないのです。
ではどの程度の運動であれば骨密度の上昇を体感できるのでしょうか。閉経後の女性136名を対象としたデータでは、ウォーキングを週3回、1回45分、6km/hという運動を1年間継続した結果、骨密度が前年度比で低下しなかった(維持された)というデータがあります。
週3回、1回45分のウォーキングという運動量は、国が指標としている「健康づくりのための運動指針」で示された運動量の2倍です。現在の骨密度を運動療法で維持するためには、週3回、1回45分のウォーキングを続ける必要があるということです。年を経るごと体への負担は大きくなりますので、この運動量を維持することは容易ではありません。さらに、雪が降る地域では足元が滑りやすくなりますので1年を通して続けることは難しいかもしれません。
食事や運動により骨密度を維持することができれば理想かとは思いますが、数値として確認していみると「維持」すること思ったほど容易ではないことが分かりました。既存のビタミンD製剤であるアルファロールやロカルトロールに比べて、エディロールを服用する意義は高く、具体的な骨密度上昇作用も数値として表れているので患者様へお薬をお渡しするときには使用する意義を具体的にお伝えしていこうと思います。