ニフェジピン(アダラート)の効果がでるまで

ニフェジピン(アダラート)の効果がでるまで

 

ニフェジピン(アダラート)にはCR錠、L錠と2種類の剤形があります。国内の使用量を確認してみるとニフェジピン(アダラート)CR錠の使用量が群を抜いて高い値となっています。今回はニフェジピンCR錠、L錠を服用した後の降圧効果について調べてみました。

ニフェジピン(アダラート)CR錠の効果について

 

ニフェジピン(アダラート)CR錠の構造は“肉まん“の「皮部分」と「肉部分」のような二層構造をしております。ニフェジピン(アダラート)CR錠1錠をゴクンと飲むと、最初は「外側の成分(皮部分)」が腸内で溶出して吸収されます。その降圧効果は、服用後2~3時間後にピークとなり、その後は低下していきます。

 

次いで「内側の成分(肉部分)」が腸管で溶出して吸収されます。その降圧効果は服用後8~12時間後にピークとなり、その後は低下していきます。

 

ニフェジピン(アダラート)CR錠を飲む回数は1日1回ですが、上記の薬物動態を考えますと、実際の腸管内および血液中での薬の動きとしては1日2回薬を飲んだ感じと同じような薬物動態をとることがわかります。(朝食後に肉まんの皮部分を食べて、夕食後に肉まんの肉部分を食べるようなイメージです)

 

腸管での吸収速度をコントロールすることで、24時間にわたる降圧効果を持続させることに成功した製剤がニフェジピン(アダラート)CR錠です。逆に言いますと、腸管から血液中に吸収された後は、半減期3~4時間程度で血中濃度の上がり下がりを繰り返す製剤と捉えることもできます。(添付文書やいたビューフォームには半減期7~11時間程度と参考値が記されていますが、実際の血中消失半減期は2~4時間程度です)

アムロジピン服用時の24時間血圧の推移について(アムロジピンのジェネリック医薬品の比較データあり)

nifedipine-effect

血中での消失半減期3~4時間とは

 

血中半減期が短い薬=効き目が早い薬

と言えます。例えば同じ降圧剤のノルバスクは血中半減期が36時間ほどあります。そのため初めてノルバスクを飲む方の場合、初日の降圧効果は30%ほどしか効き目がありません。血中半減期が長いノルバスクのような薬の場合、6日間連続で服用し続けることで100%の降圧効果が現れます。(効き目がでるまでに時間がかかる薬と言えます)

一方で、ニフェジピン(アダラート)CR錠の場合は、効き目が非常に早いタイプです。ニフェジピン(アダラート)CR錠の服用を開始した初日の2時間後で80~90%ほどの降圧効果が現れます。ニフェジピン(アダラート)CR錠は血液中を流れると半減期が短い(分解される速度がはやい)製剤ですので、服用から24時間後の蓄積性が認められない製剤(翌日に効き目を持ち越さない製剤)という特徴もあります。

 

注:実際にニフェジピン(アダラート)CR錠の服用を開始した1日目と連続服用した7日目との効果を比較したデータでは1日目と比較して、7日目のデータが10~20%ほど高い血中濃度となっています。連続服用により血中濃度が上がる理由としては、血液中及び腸管に残存するニフェジピンの残渣が翌日に持ち越されたためであると示唆されます。

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ニフェジピン(アダラート)CR錠の特徴まとめ

外来を受診して血圧が非常に高いために、初めて降圧剤を飲む患者さんの場合、ニフェジピン(アダラート)CR錠を服用すると初日から十分な降圧効果が期待できます。自宅に血圧計がある方でしたら、ニフェジピンを飲んで数時間後の血圧を測定してみると、血圧が下がって安心するかもしれません。

 

注意:十分な降圧効果が現れるということは血圧が下がることによる「めまい・ふらつき」といった一過性の副作用も生じる可能性がありますので、注意喚起をおこなうこが大切です。(めまい・ふらつきに関しては継続的に薬を飲み続けることで改善します)

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Ca拮抗薬という降圧剤の使用量としてはノルバスク(アムロジン)とアダラートCR(ニフェジピンCR)の使用量が1位、2位となっていますが、効き始め、持続性、蓄積性といった観点から2剤を比較すると、全くことなる薬物動態を示すことがわかります。ただし、降圧剤としての効果はどちらの薬剤も非常に有用な薬剤です。

ニフェジピン(アダラート)L錠の特徴

 

半減期が3.5時間ほどの降圧剤です。1日2回飲みます。

 

アダラートL10mgを1日2回、朝夕食後に使用すると、アダラートCR20mgを1日1回飲んだ時と同じような血中濃度となります。

 

アダラートL20mgを1日2回、朝夕食後に使用すると、アダラートCR40mgを1日1回飲んだ時と同じような血中濃度となります。

本来、ニフェジピンという成分が血液中を流れると90分で半減する分解されやすい薬という印象があります。しかし、ニフェジピンL錠は製剤を工夫することでその半減期を3.5時間に延長した製剤と私は考えています。とは言え、3.5時間で半減しますので、1日2回飲む必要があります。(目にすることは非常に少なくなりましたが、アダラートカプセルの半減期が1~2時間程度です)

アムロジピン服用時の24時間血圧の推移について(アムロジピンのジェネリック医薬品の比較データあり)

アダラートCR錠、アダラートL錠のジェネリック医薬品の特徴

 

アダラートCR錠、L錠にはたくさんのジェネリック医薬品が発売されております。どの製剤も製造承認を取得していますので、先発品の効き目と比較すると80~125%の範囲内にあります。とは言え、製品によって先発品との厳密な効き目には極わずかながら違いがあります。販売されているニフェジピンCR錠、ニフェジピンL錠について、添付文書の薬物動態をもとに、先発品との効果を比較したデータを添付いたします。

ニフェジピンのジェネリック医薬品についてAUC(血液中を流れるニフェジピンの総量)を確認してみると先発と比べて94.5%~107%まで多用な数値を確認することができます。一般名で記された処方せんを調剤薬局が応需した場合、薬局ではどのメーカーのジェネリック医薬品を使用しても良いわけですが、例えばニフェジピンCR錠40mg「トーワ」(AUC比97.7%)とニフェジピンCR錠40mg「サワイ」(AUC比107%)では、効果に10%の違いがある可能性が示唆されます。

注:ジェネリック医薬品のルールとしてAUCの値が80~125%以内の数値ですので、どちらも問題ない製剤です。

 

AUCやCmaxの値については、高すぎても低すぎても良くないと私は考えますので、可能な限り先発に近い製品が良いジェネリック医薬品のように私は思います。

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ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業