ニューロタン錠(ロサルタン錠)はグレープフルーツジュースとの併用で降圧効果減弱(自分まとめ)
ニューロタン錠(ロサルタン錠)の添付文書が2022年11月16日に更新されました。
更新内容は
グレープフルーツジュースとの併用注意でした。
グレープフルーツジュースに含まれる成分の CYP3A4 阻害作用によりロサルタンの活性代謝物の血中濃度が低下するため、本剤の降圧作用が減弱されるおそれがある。
ということです。
降圧剤とグレープフルーツジュースとの飲み合わせと言えば、ご存じ「カルシウム拮抗薬とグレープフルーツ」を併用すると「降圧作用が強くなる」ですよね。
本来、カルシウム拮抗薬は肝臓のCYP3A4で代謝(分解)されて、体の外で排泄されるわけですが、グレープフルーツジュースがCYP3A4という酵素の働きを抑制するために、カルシウム拮抗薬の分解が遅くなり、体内に長く滞在するために降圧効果が延長するという作用となります。
今回更新されたニューロタン錠(ロサルタン錠)の場合は、「効き目が弱くなる」ということですので、このあたりを間違えて覚えないように自分まとめを記します。
ニューロタン錠の特徴
ニューロタン錠をごくんの飲み込むと、小腸から吸収されて血液中に取り込まれ体内をめぐるわけですが、飲み込んだままの形では降圧作用は非常に弱いことが報告されています。しかし、ニューロタン錠は小腸から吸収されたあと肝臓を経由した時に肝臓の酵素CYP2C9とCYP3A4により代謝をうけて「活性代謝物」となります。この「活性代謝物」と変貌することで、もともとのニューロタンよりも10~40倍も降圧効果が強い物質(カルボン酸体)に生まれ変わり、血液中に取り込まれ全身をめぐることで、降圧作用を示すわけです。
つまりニューロタン錠(ロサルタン錠)は肝臓の酵素によりパワーアップされることにより、血圧を下げる効果がある医薬品というわけです。
グレープフルーツジュースには「肝臓のCYP3A4」のはたらきを弱めてしまうことが報告されています。そのため、グレープフルーツジュースとニューロタン錠を摂取すると、ニューロタン錠がパワーアップすることができずに、期待する降圧効果が得られないというわけです。
ちなみにですが、CYP3A4を阻害する作用について、グレープフルーツジュース250mlとグレープフルーツ1玉に含まれる果肉が同程度と報告されていますので、ニューロタンやカルシウム拮抗薬を定期服用されている方には、グレープフルーツジュースだけでなくグレープフルーツの摂取も控えるようにご説明することが治療に有益と考えます。
またグレープフルーツジュースによってCYP3A4が阻害する作用は、「不可逆的阻害(一度阻害したら回復しない)」であるため、グレープフルーツジュースによって阻害された肝臓のCYP3A4は復活しません。復活するためには新しく「CYP3A4」を作る必要があります。
私たちの体がCYP3A4を新たに作るためには、しばしの時間が必要です。
グレープフルーツジュースをごくごく飲んだ場合、CYP3A4の機能を75%まで回復するまでに3日間、90%まで回復するためには4日間かかるという報告があります。降圧剤は1日1回、毎日飲む薬であることを踏まえると、グレープフルーツ類の摂取は難しいことがわかります。
添付文書にグレープフルーツジュースとの併用が注意と記されている医薬品は2022年12月時点で650品目あります。(先発後発を含む)
全部覚えることは難しいですね。私は内科・皮膚科・脳外科などの処方箋を手に取ることが多いので、自分にとっての身近な医薬品だけをピックアップして下記します。(抗がん剤を除く)
私調べで恐縮ですが、グレープフルーツジュースと併用した場合、ニューロタン錠とビラノア錠のみ作用が減弱し、それ以外の薬は作用が増強することがわかりました。
カルシウム拮抗薬:降圧作用が強くなる
レルパックス錠:レルパックスの作用が増強する
コルヒチン錠:コルヒチンの作用が増強する
テグレトール錠:テグレトール錠の血中濃度が上昇
サムスカOD錠:サムスカの作用が増強する
シクロスポリンカプセル:シクロスポリンの血中濃度が増強する
プレタールOD錠:プレタールの作用が増強する
リポバス錠:リポバスのAUCが上昇する
セララ錠:セララのAUCが1.2倍になる
タクロリムスカプセル:タクロリムスの血中濃度が上昇する
リピトール錠:リピトールの効果が強くなる(AUC2.5倍)
ルパフィン錠:ルパフィン錠の血中濃度が増強する
ビラノア錠:ビラノアのAUCが0.6倍に低下した
ワソラン錠:ワソラン錠の血中濃度が上昇する
ハルシオン:ハルシオンの効果が増強する
ラツーダ:ラツーダの効き目が増強する
ロナセン錠:ロナセンの血中濃度が上昇し、効果が増強する