おじさん薬剤師の日記

調剤薬局で勤務するおじさんです。お薬のはたらきを患者様へお伝えします

パーキンソン病治療薬 味覚異常

薬局にて「食べ物の味がわからない」(味覚異常)の訴えがあった場合

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薬局にて「食べ物の味がわからない」(味覚異常)の訴えがあった場合

taste-disorders

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60歳代~70歳以降の方で「食べ物の味がわからない」(味覚異常)といったお話を薬局でされる患者様がおります。もしかしたら心の中で「薬が原因で食べ物の味がわからなくなったのでは?(薬剤性の味覚障害)」ということをお考えなのかもしれません。

 

薬学部では薬剤性の味覚障害/味覚異常を生じる薬剤として

・味覚異常を生じる薬剤(アモバン・ルネスタ・ラシックス・ボルタレン・ザイロリック)など

 

・唾液分泌量を低下させることで味覚を低下させる薬剤(抗コリン薬、抗ヒスタミン剤)など

 

・鉄剤やカルシウム剤を飲んでいることで亜鉛吸収率が下がることによる味覚障害

(薬として陽イオンを摂取することで、亜鉛(陽イオン)の吸収率が下がるため)

 

などを習います。しかし、「食べ物の味がわからない、感じにくくなった」などの味覚障害の発生率を確認してみると、薬剤性の味覚障害発生率は10~15%程度です。味覚障害を発生する要因の多くは

・特発性味覚障害(原因不明):40%程度

・感冒罹患後の味覚障害:30%程度

・鉄欠乏性味覚障害:10%程度

 

といった感じです。これらを踏まえまして薬局にて「食べ物の味がわからなくなった、感じにくくなった」というご相談をいただいた場合に、調剤薬局勤務の私にできることを考えてみました。

口腔衛生

まずは、口の中の状態を確認させていただきたいです。歯垢がびっしりついていたり、舌が真っ白だったりした場合、口腔内の乾燥が進み、唾液も出にくくなりますので、食べ物の味がわからなくなります。口腔内の衛生環境を改善したことにより味覚が改善した報告は多数あり、90名の高齢者を対象として、口腔ケア(特に舌のブラッシング)を行った群と行わなかった群で塩味・酸味・甘味・苦みの調査をおこなったところ、口腔ケアを行った群で塩味・酸味の感度がUPしたという国内報告があります。

 

また、最近の報告(海外)では、入院患者さん75名を対象として、看護師が口腔内衛生管理として平均5.3分間を費やした結果、味覚異常・口腔内の乾燥が改善したことが報告されています。

口腔ケアによる味覚異常改善

 

ということで、薬局で働く私としても、まずはお口の中がきれいかどうかを確認することが大切だと思います。歯垢がたまっていたり、舌が白くなっている場合は、歯医者さんを受診するよう勧めます。

 

においを感じるかどうか

口の中がきれいな方の場合は、次に“におい”を感じるかどうかを伺います。味覚異常のランキングで2位になっているように風邪を引いたあとや風邪を引いた直後は、鼻づまりが原因となって“におい”を感じないために味覚が低下することが考えられます。慢性鼻炎の方や季節性のアレルギーを持っている方でも“におい”が感じにくいために味覚も感じにくくなることがあります。

 

食事内容を確認

味覚異常を訴える方の60%以上が60代~70代以降の高齢者の方という統計があります。この年代の方々は食べ物に関する嗜好はある程度ですが固定化されてくるのかもしれません。(スーパーマーケットで購入する食材が比較的ですが似通ってくるという意味です)

 

味覚異常でパッと思いつく成分として亜鉛欠乏症がありますが、味覚異常を訴える方の6割で亜鉛が欠乏しているという報告がなされています。

 

これらのことを踏まえますと、味覚異常を訴える方の食事内容を確認してみ、亜鉛を含む食品(貝類・肉類・魚類など)の摂取頻度・長期的な食事内容を確認することは原因を知るうえで何かのポイントになるかもしれません。病院を受診した時に栄養士さんから亜鉛に関する食事指導をしていたくことが改善のカギとなる可能性があります。

 

また体重変化(特に筋力の変化)は摂取しているタンパク質を推測することができますので、有益な情報となるかもしれません。

 

亜鉛を含む食品を意識的に摂取することが難しい場合の対策として、亜鉛を含む薬(プロマック錠など)を飲むことで亜鉛を補充していくという治療はあります。

薬剤性の味覚異常

これまでの内容を患者様にお伺いしてみて、日常生活において該当する箇所がない場合に薬剤性の味覚異常の可能性を検討してみます。

口の中が苦く感じることで味覚異常を訴えるケース

・アモバン(ゾピクロン)、ルネスタ(エスゾピクロン)、アレジオン(頻度は低いです)などの薬剤を飲んでいる

・粉薬を味わって飲んでいる

・錠剤をかみ砕いて飲んでいる(フィルムコートをはがして飲んでいる)

・錠剤を水に溶かしてから飲んでいる

 

医薬品を飲んだ後に苦みを感じる薬剤はアモバンやルネスタなどがあります。それ以外に薬を飲むときに舌が刺激されて苦みが続くというケースも考えられます。薬を飲むときの刺激を緩和するのであればオブラートで包むことが対策となります。

 

薬を飲むことで唾液量が低下(口喝)して味覚異常を訴えるケース

鼻詰まりや皮膚のかゆみ止めの薬として“抗ヒスタミン剤”を飲んでいる方

抗うつ剤を飲んでいる方

パーキンソン病の薬を飲んでいる方

 

上記の薬剤を使用している方はこまめな水分補給が口喝防止の対策となります。

 

70歳以上の方の中には、「あまり水分を摂らない」「トイレが近くなるから水分摂取を控えている」「ご飯の時しか水を飲まない」といった方がおられまが、できれば口喝対策として水分補給を心がけていただきたいです。

 

頻度はそれほど多くないものの、多くの薬の副作用には「口喝(口の渇き)」が記されております(血圧の薬やコレステロールの薬に頻度は低いものの記載されております)

「子供の粉薬の飲ませ方」は舌の甘みを感じる味覚に狙いを定める

まとめ

薬局で「食べ物の味がしなくなった、感じにくくなった」という患者様は“薬剤性の味覚異常”を気にしておられるかもしれません。その場合に薬局勤務の私が患者様にお伝えできることは

・まず初めに、お口の中がきれいであることを確認する

・においを感じることができることを確認する

・長期的な食事内容(肉・魚・貝類・豆類)を定期的に摂取していることを確認する

・体重が減っていないか確認する

・糖尿病にかかっていないか、腎機能の低下がないかをお伺いする

・薬剤性の味覚異常の可能性を検討する

 

といった項目をご確認できれば患者様のお力になれるのではと感じます。

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執筆者:ojiyaku


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