おじさん薬剤師の日記

調剤薬局で勤務するおじさんです。お薬のはたらきを患者様へお伝えします

パーキンソン病治療薬

添付文書にはMAO阻害薬禁忌ではなくMAO-B阻害薬禁忌と書いてほしい

投稿日:2022年10月29日 更新日:

添付文書にはMAO阻害薬禁忌ではなくMAO-B阻害薬禁忌と書いてほしい

 

2022年6月にメジコン錠の添付文書が改訂され、禁忌の欄から「MAO阻害剤」の記述が削除されて、併用注意の欄に「選択的MAO-B阻害剤」が追加となりました。

 

私は、エフピーOD錠やアジレクト錠、エクフィナ錠のようなMAO-B阻害薬を頻繁に手に取る薬局で勤務しているため、「MAO阻害剤禁忌」という記載にとりわけ注意を行いながら勤務しています。

 

エフピーOD錠の添付文書には「MAO-B阻害剤」と記されており、MAO-B阻害剤に禁忌となっている医薬品リストが、ずらーっと記されています。それだけを暗記すればOKだと考えてはいるのですが・・・

 

例えば

イミグラン錠50mg

ゾーミッグ錠2.5mg

マクサルトRPD10mg

コールタイジン点鼻液

プリビナ液

トラマゾリン点鼻液

アイオピジンUD点眼液

コレアジン錠12.5mg

サノレックス錠0.5mg

プロチアデン錠25mg

フィンテプラ内用液

上記の薬剤の添付文書にはMAO阻害剤禁忌としるされています。

しかし、エフピーOD錠の添付文書には上記の薬剤名は「禁忌薬剤」に含まれておりません。

アジレクト錠の添付文書には「コールタイジン・プリビナ・トラマゾリン・アイオピジン・サノレックス」が禁忌と記されています。

 

エフピーOD錠の添付文書には「メジコン錠禁忌」という記載はありません。

 

2022年6月まではメジコン錠の添付文書に「MAO阻害剤禁忌」という文字が記載されていましたが、添付文書が改訂されMAO阻害剤禁忌の文字が削除され、相互作用(併用注意)の欄にMAO-B阻害剤:セロトニン症候群があらわれることがある。

という記載が追記されました。

 

そうなんですよ、ポイントはMAO阻害剤禁忌ではなく、MAO-A阻害剤禁忌なのか、MAO-B阻害剤禁忌なのかを明確に記して欲しいと言うことなんですよ!

 

注)日本の医薬品にはMAO-A阻害剤という薬は承認されていません。

米国ではMAO阻害剤(MAO-AとMAO-Bを阻害する)としてフェネルジン,トラニルシプロミン,イソカルボキサジドなどの医薬品が承認されています。

 

ということで、承認されている医薬品の添付文書にMAO阻害剤禁忌とされている医薬品について、MAO-B阻害剤との併用が本当に禁忌なのかについて調べてみました。

 

トリプタン製剤

マクサルト錠(リザトリプタン錠)

イミグラン錠(スマトリプタン錠)

ゾーミッグ錠(ゾルミトリプタン錠)

上記3剤はいずれも体内のMAO-Aによって不活性なインドール酢酸体を生成します。

mao-a

mao-a

mao-a2

mao-a2

上図を見る限り、3剤ともMAO-Aによって「N」→「COOH」へ変換されていることがわかります。

 

上記のトリプタン製剤はMAO-Aで代謝をうけますので、MAO-A阻害剤と上記3剤を併用するとAUCおよびCmaxが2倍程度まで増えてしまうことが報告されています。そのため禁忌なのです。

 

しかし、MAO-B阻害剤のセレギリン10mgを7日間服用し、7日目にゾーミッグ錠を単回併用した場合、「臨床上留意すべき影響が見られなかった」とゾーミッグ錠のインタビューフォームに記されています。

 

また、別の報告ではリザトリプタン錠はMAO-A阻害剤であるクロルジリンによってMAO-Aによる代謝を強く阻害したが、MAO-B阻害薬であるパージリンおよびデプレニルは非常に高濃度でのみリザトリプタンの代謝を阻害した。という報告があります。

“非常に高濃度”とはグラフで阻害剤濃度を確認する限りですが、MAO-A阻害剤の100倍量のMAO-B阻害剤が必要と考えます。(以下の図を参照)

mao-b

mao-b

リザトリプタン錠のMAO-A阻害剤、MAO-B阻害剤による代謝の影響

上記の記載を踏まえますと、イミグラン・ゾーミッグ・マクサルトに関しては、MAO-Aによって代謝をうけるが、同濃度のMAO-Bではごくわずか(1/100程度)しか代謝されない。影響はないと考えれらます。また、エフピーOD錠、アジレクト錠、エクフィナ錠の添付文書にも上記3剤は併用禁忌と記されていないことからも、併用は可能と考えます。

エフピーOD錠やアジレクト錠、エクフィナ錠の併用禁忌とその理由について

アドレナリン関連薬

コールタイジン

プリビナ

トラマゾリン

アイオピジン

 

上記4剤に関しては、アジレクト錠の添付文書に「禁忌」と記されています。

エクフィナ錠、エフピーOD錠の添付文書には禁忌と記されていません。

 

一般的な解釈ではMAO-Aはノルアドレナリン・アドレナリン・セロトニンを代謝し、MAO-Bがドパミン・ヒスタミン・チラミンを代謝するというイメージでしょうか。

 

コールタイジン、プリビナ、トラマゾリン、アイオピジンはアドレナリン関連薬ですのでMAO-Aでしっかり代謝されるのかなぁと思うのですが・・・

 

知りたいことはMAO-Aで代謝されることではなく、「MAO-Bで代謝されないこと」なのですよね。

先に述べたトリプタン製剤のように「MAO-Bで代謝をうけにくい」理由について、アドレナリン関連薬について調べてみたのですが、私には見つけることができませんでした。おそらくですが、MAO-Bでもある程度は代謝をうけると考えるのが自然な気がいます。

 

さらに、アジレクトの添付文書で併用禁忌の欄に「急激な血圧上昇を起こすおそれがある(カテコールアミンの蓄積による)」とバッチリ記載されていますので、禁忌と覚えてしまった方がいいと思います。

 

カテコラミン再吸収阻害薬

サノレックス(マジンドール)

プロチアデン(ドスレピン)

サノレックスの薬理作用は神経終末においてカテコラミンの再吸収を阻害し、シナプス間隙におけるカテコラミンの量を増やす作用です。これのMAO阻害剤をONすると、カテコラミンの代謝が阻害されますので、神経終末におけるカテコラミンの量がさらに増えます。

昇圧作用をもたらすカテコラミンの量が増強されて高血圧クリーゼを発症する可能性がたかまりますので、禁忌ですね。サノレックスが禁忌である理由は、コンサータやリタリンと薬理作用が近いということですので、比較的納得できました。

フィンテプラ内用液

フィンテプラ内用液の添付文書には「エフピーOD、アジレクト、エクフィナとの併用は禁忌」と商品名がバッチリ記載されていますので、そのまま覚えます(セロトニン症候群を発症することがあるため)

 

 

MAO阻害剤禁忌について、網羅的に調べることを目標としてみました。

トリプタン製剤に関しては、一定の解釈が得られたのではないかと思っています。

一方で、点鼻・点眼にしようするアドレナリン関連薬に関しては、禁忌を証明するような明確なデータを見つけることができず、残念に思います。

 

今回、MAO関連の禁忌薬に関して調べた私の感想としては、アジレクト錠の添付文書を基準として覚えることが有益であるなぁと感じました。

 

自分まとめ

エフピーOD錠2.5mg:初回量1日1回2.5mgを朝食後に服用、2週間ごとに増量可能 単独服用可能

アジレクト錠1mg:1日1回1mgを経口投与する(初回量なし)、単独服用可能

エクフィナ錠50mg:レボドパ製剤と併用すること。 1日1回50mgを経口投与する。症状に応じて100mgを1日1回投与できる。

 

-パーキンソン病治療薬
-MAO-B阻害薬, パーキンソン病, 禁忌薬

執筆者:ojiyaku


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