おじさん薬剤師の日記

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パーキンソン病治療薬

ヴィアレブ配合持続皮下注のはたきについて(2022/12/31)

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ヴィアレブ配合持続皮下注のはたきについて(2022/12/31)

2022年12月23日、ヴィアレブ配合持続皮下注が新医薬品として承認されました。

ヴィアレブ配合持続皮下注が新医薬品として承認される

ヴィアレブ配合持続皮下注とは

ヴィアレブ配合持続皮下注とはパーキンソン病の症状の日内変動(wearing-off 現象)の改善を目的に開発された皮下注射剤です。

この分野の治療薬としては画期的な新薬であると個人的には感じています。

 

これまで、パーキンソン病のメインの治療薬は「内服薬」か「経腸用液」のいずれかでした。

内服薬は服用後の効果持続時間が限られており、徐放製剤はありません。また、1回の服用量を増やしてしまうと効き目が強くなりすぎで不随意運動が増してしまうため、1日のうちで少ない量を何回かに分けて服用する必要があります。(例:1日6回/起床時・朝食後・昼食後・15時・夕食後・寝る前)

1日に何度も飲まなければならないという服用の煩わしさや、薬剤の血中濃度の上下動による不随意運動のデメリットを改善する目的で2016年に発売されたのが「デュオドーパ経腸用液」です。デュオドーパ経腸用液は胃ろうを通じて、空腸に直接薬剤を持続的に投与する製剤です。薬剤を持続的に投与することが可能となり、1日を通して安定した薬剤効果を得られるようになりました。その一方で、投与には経皮内視鏡的胃瘻造設術により空腸チューブを留置しなければならないため、治療に踏み切るには一つの超えなければならないハードルとなっていました。

そこで登場するのが今回新薬として承認された「ヴィアレブ配合持続皮下注」です。デュオドーパのように治療開始までに〇〇をしなければならないという縛りがありません。投与部位は臍(ヘソ)から半径5cm部位を避け、腹部に持続皮下投与することが望ましいとされています。

24時間ごとに新しいバイアルおよびシリンジに交換し持続的に投与する製剤です(投与から24時間後、シリンジ内に残薬があれば廃棄する)

(臨床データでは腕や大腿部から投与しても吸収量は変わらないと記載されていますが、長期の安全性・有効性は確立していないと記されています)

 

内服薬および経腸用液で使用されている薬剤は「レボドパ・カルビドパ水和物」という成分であるのに対し、ヴィアレブ配合持続皮下注で使用されている薬剤は「ホスレボドパ・ホスカルビドパ水和物」ということで「ホス」という2文字がくっつきました。この経緯としては、レボドパ・カルビドパという薬剤は生理的pH(ヒトへ投与可能な点滴の酸性・アルカリ性の度合い)では水の溶けにくいという特徴があり、点滴製剤には不向きとされていました。

しかし、米国アッヴィ社はレボドパ・カルビドパの分子構造を改良し、リン酸エステル化することでが水に溶け製剤として「ヴィアレブ配合持続皮下注」を開発したという経緯です。リン酸エステル化することをphosphate(ホスフェート)と言いますので、その頭文字をとって「ホスレボドパ・ホスカルビドパ水和物」と命名されています。

 

リン酸エステル化されたレボドパ・カルビドパ水和物(ホスレボドパ・ホスカルビドパ)に効果があるのかな?という疑問が出てきますが、ホスレボドパ・ホスカルビドパは皮下注で投与されるとすぐに体内の「アルカリフォスファターゼ」という酵素により速やかに「レボドパ・カルビドパ」へ変換されて効果を発揮します。

 

また、ホスレボドパ・ホスカルビドパは水に対してよく溶けるため、薬剤濃度を高めることが可能となり高濃縮液として携帯注入ポンプを介して腹部への持続皮下注が可能となりました。(10ml中にホスレボドパ2400mg、カルビドパ120mg相当)

ヴィアレブ配合持続皮下注の1日の最大投与量は16.67ml(レボドパ換算量として2840mg)を超えないことと使用量が定めれらています。

(注入速度は0.01ml/時間(レボドパとして1.7mg/時間に相当)単位で調整可能)

注意)レボドパの分子量が197.19、ホスレボドパの分子量が277.17ですので、ホスレボドパ2400mg中にレボドパが1707mgが含まれます

投与に必要な専用の投与システム(輸液ポンプ(ヴィアフューザー)、輸液セット、シリンジ、バイアルアダプタ)については、2022年12月時点では画像が公開されておらず、確認できませんでした。

 

ということで、ここまででヴィアレブ配合持続皮下注が開発された経緯と既存の治療薬との違いを記しました。次にヴィアレブ配合持続皮下注の有効性について臨床データを確認してみます。

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ヴィアレブ配合持続皮下注の有効性について

1日あたりの平均オフ時間の変化量

投与前(ベースライン):5.9時間

ヴィアレブ配合持続皮下注投与後52週時点:2.25時間

 

1日当たりの日常生活に支障のあるジスキネジアのない平均オン時間

投与前(ベースライン):9.14時間

ヴィアレブ配合持続皮下注投与後52週時点:12.99時間

 

1日当たりの日常生活に支障のあるジスキネジアを伴わない平均オン時間のベースラインからの変化量(投与から12週後)

経口レボドパ/カルビドパ投与群:0.97時間

ヴィアレブ配合持続皮下注投与群:2.72時間

 

ということで、ヴィアレブ配合持続皮下注投与を投与することでオン時間の延長が確認されることが確認されるとともに、内服薬と比較してもオン時間の有意な増加が確認されることが示されました。

ヴィアレブ配合持続皮下注「適正使用ガイドライン」

ヴィアレブ配合持続皮下注投与における副作用は?

これまではヴィアレブ配合持続皮下注の有用性を記載しましたが、これ以降は有害事象について記します。

24時間連続皮下注をし続ける場合の投与部位関連の副作用頻度はどの程度起こりうるのかが一つのポイントとなります。

内服薬(ネオドパストン配合錠)とヴィアレブ配合持続皮下注の副作用比較

まずは投与部位関連の副作用は除外して、それ以外の副作用頻度を確認してみます。

内服薬(ネオドパストン配合錠)

不随意運動:5.61%

悪心:5.56%

食欲不振:3.3%

嘔吐:2.3%

幻覚・妄想・錯乱:1.98%

口喝:1.64%

起立性低血圧:.094%

 

 

ヴィアレブ配合持続皮下注の副作用(投与部位以外)

幻覚:13.8%

ジスキネジア:7.5%

不動性めまい:7.2%

幻視:6%

体重減少:5.7%

オンオフ現象:5%

悪心:5%

不眠症:4.7%

不安:4.4%

起立性低血圧:3.8%

転倒:3.5%

疲労:2.5%

ビタミンB6減少:2.5%

 

ネオドパストン・ヴィアレブ配合持続皮下注について比較的多めの副作用を列記しました。

ネオドパストン配合錠を使用している患者さんとヴィアレブ配合持続皮下注を使用している患者さんとでは、パーキンソン病の進行度合いが異なります。

パーキンソン病の治療に必要なレボドパの投与量にはかなりの差が生じるため、ヴィアレブ配合持続皮下注の副作用発現頻度が多いことを考慮する必要があります。

 

上記を踏まえて副作用発現頻度を見てみると、ヴィアレブ配合持続皮下注を使用した場合の胃腸障害関連の発現頻度が低いかなぁと私は感じました。

後はヴィアレブ配合持続皮下注を使用することでON時間が増加したことによる、転倒・起立性低血圧・疲労感といった副作用が増加した可能性が示唆されます。

ビタミンB6欠乏症に関して、一般的にレボドパ製剤は末梢にてレボドパをドパミン変換する際の補酵素として働きますが、24時間にわたり持続的にホスレボドパを投与し続けることにより、ビタミンB6が常に使用され、欠乏症となる頻度が高まる機序が予想されます。

レボドパに影響を与えるビタミンB6摂取について

 

という感じで、ヴィアレブ配合持続皮下注の副作用に関しては、投与部位関連の副作用を除外して、内服薬と比較した場合は、想定の範囲内の副作用頻度であるが見て取れます。(投与量に依存して、副作用頻度も高まるため)

 

では、投与部位関連の副作用についてみてみます。

注射部位紅斑:44.7%

注射部位結節:23.6%(注射部位のコブ)

注射部位蜂巣炎:22%(ほうそうえん:皮膚とその下の組織に細菌が感染し炎症が起こる)

注射部位浮腫:16.4%

注射部位疼痛:15.7%

ということで、注射部位関連の副作用発現頻度が非常に高いことがわかります。

 

実際の治験データを見てみると

ヴィアレブ配合持続皮下注を使用して有害事象が発生したために中止に至った割合は

注射部位蜂巣炎5.4%、注射部位疼痛4.1%、注射部位内出血2.7%、注射部位出血2.7%、注射部位浮腫2.7%

という感じで、注射部位関連の副作用発現にて治療を中止した症例が一定数いることが確認できます。

 

また、ヴィアレブ配合持続皮下注を投与する際の輸液セットの不具合関連の有害事象(注射部位疼痛)が12.2%報告されていることから、継続使用していくためには注射部位のケアを行う必要があることが示唆されます。

パーキンソン病患者の脳へ遺伝子を投与しドーパミンの産生を促す治験が開始(2022/10/18)

 

 

 

 

 

 

-パーキンソン病治療薬
-パーキンソン病, ホスレボドパ, レボドパ, ヴィアレブ配合持続皮下注, 持続皮下注

執筆者:ojiyaku


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