喘息発作時における吸入ステロイド4倍投与の有用性について
喘息治療で吸入ステロイドを使用している患者さんに対して、発作時に吸入ステロイドを一時的に「4倍量まで増量可能とする治療」に関して有益な報告がありました。
英国の研究チームによる報告では、吸入ステロイドの治療を受けている喘息患者さん(成人または青年:平均年齢57歳)のうち過去12か月以内に少なくとも1回の喘息発作を経験した1922人を対象として、喘息発作時に4倍量まで吸入ステロイドを自己管理で増量して良い群と、増量を行わない群との間で比較検証がおこなわれました。
12か月間の検証の結果、重度の喘息発作を発症した割合は
吸入ステロイド4倍量まで使用可能群:420例(45%)
増量を行わない群:484例(52%)
ハザード比としては自己管理でステロイド吸入を4倍量まで使用すると、重度の喘息増悪のリスクを19%低下させることができるという結果となりました。
吸入ステロイドの局所効果に関する副作用の割合は4倍使用群で高くなっています。
筆者らは結論として喘息コントロールが悪化し始めた時に吸入ステロイドの用量を一時的に4倍量まで自己管理調節することは喘息の増悪率を低下させることができるとまとめています。
国内で使用されている喘息吸入薬の中でいわゆる発作時として処方される薬にはサルタノールインヘラーやメプチンエアーのような短時間型のβ2刺激薬があります。
ステロイドを含む吸入薬の中で「喘息発作発現時の頓服」としての適応を有している薬剤には“シムビコート“だけです。(2018年3月現在)
私の学生時代は“ステロイド吸入は予防薬、短時間β2作動薬は発作治療薬”と習ったものですが、古い記憶は、どんどん新しい情報に切り替えていかねばならないなぁと感じました。