糖尿病性腎臓病改善薬 “バルドキソロンメチル(RTA402)”が先駆け審査指定対象品目に
2018年3月27日、厚生労働省は「先駆け審査指定制度対象6品目」を公開しました。この6品目は通常の新医薬品および新医療機器では審査期間に12か月を要するところを、6ヵ月に短縮して審査が行われることとなります。
糖尿病性腎臓病改善薬“バルドキソロンメチル(RTA402)”について
対象品目の一つバルドキソロンメチル(RTA402)は協和発酵キリンが申請していた品目で、“腎機能改善”というこれまでにない治療効果がポイントとなっています。
バルドキソロンメチル(RTA402)は体内のストレス防御反応における中心的な役割を果たす転写因子(Nrf2)の分解を抑制することで過剰な酸化ストレスおよび炎症から腎臓を保護するという作用となっています。
腎機能に関しては“腎保護”、”腎機能低下抑制“という医薬品はこれまでありましたが”腎機能改善“作用を有する医薬品はありませんでした。バルドキソロンメチルは、末期腎不全による透析や腎移植といった重篤な疾患を回避または遅延させるための有用な医薬品となるかもしれません。
バルドキソロンメチル(RTA402)の第2相臨床試験データ(国内)
バルドキソロンメチル(RTA402)国内第2相臨床試験結果)
被験者:2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)患者さん(CKDステージG3及びG4)
用量:1日1回バルドキソロンメチル(5~15mg)、16週間反復経口投与
ステージG3患者82名をバルドキソロンメチル服用群41名とプラセボ群41名に振り分けて治療を開始した結果、バルドキソロンメチル服用群の16週時点でのGFRがプラセボ群に比して有意な改善(6.64mL/min/1.73㎡)が認められております。
バルドキソロンメチル(RTA402)という成分は、当初はリンパ性悪性腫瘍患者の抗腫瘍活性が着目されて治験が行われましたが、その結果推定糸球体ろ過率(eGFR)の改善が注目されて、その後はCKD患者への有益性についての検討が行われております。(当初の予定では腫瘍に対する治療薬と想定されており、最大投与量は900mg/日と検討されていました。)
海外においては、中等度から重度のCKD患者および2型糖尿病患者を対象として24か月間の第2相試験の治験が行われ、24週間時点においてプラセボに比してバルドキソロンメチル25mg服用群では(8.2mL/min/1.73㎡)、75mg服用群では(11..4mL/min/1.73㎡)、150服用群で(10.4mL/min/1.73㎡)の改善が確認されています。この増加は52週時点においても(25mg群:5.73mL/min/1.73㎡)、(75mg群:10.5mL/min/1.73㎡)、(150mg群:9.3mL/min/1.73㎡)と維持されていまいした。有害事象としては筋痙攣が多く報告されました。(海外第Ⅱ相試験結果)
しかし海外における第3相試験にて、ステージ4のCKD患者および2型糖尿病による末期腎不全患者を対象としてバルドキソロンメチル(1日20mg)の治験が行われたのですが、プラセボに比して心血管リスクが上昇(ハザード比:1.83)したため試験が終了しています。
2型糖尿病患者およびCKD(ステージ4)患者に対するバルドキソロンメチル投与と治験終了
バルドキソロンメチルは上記の理由により2012年10月で海外での治験が終了していましたので、日本で医薬品として認可された場合は、世界初の医薬品となります。
現在、国内における第Ⅲ相試験が計画中となっていますので、海外のような事例を回避するためにも対象となる被験者選択や投与量を検討している感じでしょうか
バルドキソロンメチル(RTA402)国内第2相臨床試験結果)