抗菌薬の使用量が多いと結腸癌リスクが若干上昇する
抗菌薬(抗生剤)の使用量が増えると、近位結腸癌の発生リスクが“わずかに”高まるというデータが公開されました。しかし、筆者らは文末で結腸癌の発症リスク増大率はわずかであることから、あまり過剰に反応する必要もない(抗菌薬は引き続き慎重に使う必要がある)とまとめています。
抗菌薬の使用量と結腸癌発症リスクに関する報告
期間:1989年~2012年(平均追跡期間8.1年)
対象;結腸直腸がんと診断された2万8980例
(うちわけ:結腸癌1万9726例、直腸がん9254例)
非大腸がん患者(対照群):13万7077人
抗菌薬の使用率
結腸かん群:71.3%
対照群:69.1%
対照群に比べて結腸がん群で有意に多い
直腸がん群:67.1%
対照群:67.2%
対照群と直腸がん群で同等
抗菌薬の使用日数と結腸ガンリスクについて
対照群が結腸ガンを発症するリスクを100としたとき抗菌薬を投与した群で結腸ガンを発症するリスクがどの程度上昇するかについて評価しています。
抗菌薬を1~15日使用した群:108
抗菌薬を16~30日使用した群:114
抗菌薬を31~60日使用した群:115
抗菌薬を60日を超えて使用した群:117
近位結腸がんでは抗菌薬の影響がさらに大きく
抗菌薬を1~15日使用した群:114
抗菌薬を16~30日使用した群:115
抗菌薬を31~60日使用した群:132
抗菌薬を60日を超えて使用した群:109(0.94~1.25)有意差なし
抗菌薬の薬効別解析では、抗嫌気性菌薬の使用で結腸ガンリスクの上昇が確認され、ペニシリン(アンピシリン・アモキシシリン)の処方が結腸癌リスク上昇と関連していたことが報告されています(対照群を100とするとアンピシリン・アモキシシリンで109)
筆者らの考察
経口抗菌薬の使用は結腸と直腸で異なる影響があり、また抗菌薬の種類によっても影響が異なることことが示唆されました。抗生剤の使用により腸内細菌叢のバランスが崩れたことで、発がん性のある細菌が増殖しやすくなる可能性を考察の中で記しています。
一方で、この回のデータには抗菌薬を使用した理由が示されておらず、また食生活や運動習慣などの大腸がんリスクを上昇する要因に関しても情報がないことから、抗菌薬の使用と結腸癌発症リスクについて直接的な影響があるとは限らないとしています。
下部消化管と腸内細菌叢に対する抗菌薬の影響がガンを発症することとどのような関連性があるのか更なる研究が必要としています。
尚、直腸がんに関しては抗菌薬を60日以上使用するとリスクが15%減少することが報告されています。