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“禁忌”ではなく“警告” 糖尿病と抗精神病薬エビリファイについて

“禁忌”ではなく“警告” 糖尿病と抗精神病薬エビリファイについて

添付文書の「警告」欄に“死亡例”や“致死的・致命的”といった文言が含まれる内服薬があります。

・抗癌剤による細胞毒性
・抗凝固剤・抗血小板剤による重篤な出血
・小柴胡湯による間質性肺炎
・ED治療薬による血圧下降
・ユリノーム・ラミシールによる重篤な肝障害
・ラミクタールによる重篤な皮膚障害
・セレコックスによる心血管系血栓塞栓
・リウマトレックスによる呼吸器疾患
・ジプレキサ・セロクエル・エビリファイによる糖尿病性昏睡
・メトグルコによる重篤な乳酸アシドーシス

注射薬を含めると、まだまだあると思いますが、内服薬に限ってみると上記内容が主な例かと思います。いずれも初回投薬時に注意喚起が必要なリストです。

その中で、今回は“糖尿病とエビリファイ”について少し掘り下げてみました。

統合失調症治療薬の中で添付文書の“警告”に糖尿病性昏睡に関する記述がある薬には
・ジプレキサ(オランザピン)
・セロクエル(クエチアピン)
・クロザリル
・エビリファイ
上記4剤があります。

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そのうちジプレキサとセロクエルは糖尿病の患者さんには禁忌とされており、クロザリルは原則禁忌とされています。

しかしエビリファイのみ“慎重投与”とされており、実際に糖尿病患者さんへ注意喚起をしながらお渡しするケースがあります。添付文書の“警告”に記されていながら慎重に服薬しなければならない糖尿病患者さんが安全にエビリファイを使用するための根拠について調べてみました。

~糖尿病性昏睡に関する警告内容とその理由~
・治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ投与し、血糖値の測定等の観察を十分に行うこと。

○理由
・国内で糖尿病性ケトアシドーシス・糖尿病性昏睡を伴う症例が報告された
・海外で死亡例が報告された
・エビリファイを含まない非定型抗精神病薬により高血糖の有害事象リスクが高い報告があるため
・エビリファイが高血糖リスクに関連するかどうかは不明
・類似薬が記載しているので、エビリフィアも警告欄に注意喚起を記載している
・治験段階では糖尿病性昏睡の副作用報告はなかったが、市販後に報告された。
・口渇・多飲・多尿・頻尿・多食・脱力感などの症状が出た場合は、投与を中断し、医師の診察をうけること。

エビリファイインタビューフォームの“安全性に関する項目“には、大きく場所を割いて上記内容が記されています。うがった見方をすると”なかなかな弁解“とも見て取れる内容と捉える方もいるかもしれません。

糖尿病患者さんに対して使用できるか、できないかというのは、この手の薬に限らず医薬品の市場動向が大きく変わる要因の一つです。エビリファイはギリギリのラインで有益性が危険性を上回る場合に使用できる領域にとどまったことが、うかがえ知れます。

薬理作用が違うとはいえ、同じ適応症を持つジプレキサやセロクエルとの差別化にもつながりますので、保険適応ルール上は糖尿病患者さんに使用できる薬という認識は、非常に処方しやすい印象を受けます。

ただし、禁忌ではないものの、警告に記されているように糖尿病昏睡による死亡例が報告されていることを重々認識したうえで取り扱うべきだと私は思います。

2017年にはエビリファイ錠の後発医薬品が発売されます。アリピプラゾール(成分名)として半額以下の薬が市場に流れ出ることを想定すると、患者さん負担減額によりアリピプラゾールの使用量は増える可能性があります。

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新規で糖尿病患者さんにアリピプラゾールが処方される際は、“禁忌”ではない“警告“を意識したいと思います。

エビリファイ使用による糖尿病関連の副作用頻度
・体重増加:5%以上
・口渇:1~5%未満
・多飲症:1%未満
・高血糖:1%未満
・血中ブドウ糖変動:頻度不明
・血中インスリン増加:頻度不明
・低血糖:頻度不明
・糖尿病性ケトアシドーシス・糖尿病性昏睡:頻度不明

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ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業