おじさん薬剤師の日記

調剤薬局で勤務するおじさんです。お薬のはたらきを患者様へお伝えします

糖尿病

「インスリン抵抗性」の意味を調べてみました。

投稿日:2018年11月25日 更新日:

「インスリン抵抗性」の意味を調べてみました。

 

血液中の糖が多いとき、膵臓はインスリンを分泌することで肝臓などの臓器・筋肉・脂肪への糖の取り込みを促します。「インスリン抵抗性」とは、上記の糖の取り込みが低下している状態のことです。(インスリン抵抗性を有する患者さんが、健常者と同じ量の糖を取り込むためには、より多くのインスリンが必要となります。)

 

「インスリン抵抗性」についての具体的な解明は、なされていないのですが、仮説として唱えられている説をいくつかしらべてみました。

 

脳がインスリン抵抗性を指示している

 

脳は24時間365日、生命活動を維持するためにブドウ糖を必要とする組織ですので、血液中のブドウ糖を一定量維持する必要があります。

新規糖尿病治療薬イメグリミン(imeglimin)の効果について

肝臓は100~120g、筋肉では300g程度のグリコーゲン(ブドウ糖のかたまり)を蓄えることができるのですが、肝臓に蓄えられたグリコーゲンは、血液中のブドウ糖量を検知して、必要に応じて肝臓に蓄えられていたブドウ糖を血液中に供給することが可能です。(血液中のブドウ糖は肝臓および血液中へ行き来することができます)

ネプリアライシン阻害剤LCZ696(サクビトリルとバルサルタンの合剤)の腎機能保護作用/急性心不全への効果について

一方、筋肉組織で蓄えられたグリコーゲン(ブドウ糖のかたまり)は、ブドウ糖へ戻ることができず、血液中から筋肉へ移行したブドウ糖は、再び血液中に戻ることができません。

 

ブドウ糖を常時必要としている“脳”は血液中のブドウ糖が枯渇することを非常に懸念します。そのために筋肉組織へ移行するブドウ糖の量を減らすための作戦として

 

「インスリンの効き目を低下させる」=「インスリン抵抗性を指示する」

 

と命令します。この状態を「インスリン抵抗性がUPする」として仮説を立てている報告があります。インスリン抵抗性がUPすると、肝臓や筋肉へのブドウ糖の取り込み量が減りますので、血液中のブドウ糖は高い状態で維持されることになります。

ジャディアンス錠(SGLT2阻害薬)による延命/腎症悪化防止に関する報告

上記の状態の具体的な例としては、妊娠中の女性です。母体および胎児の脳に十分量のブドウ糖を供給する必要がありますので、脳はインスリン抵抗性をUPさせることで筋肉や肝臓へのブドウ糖の移行を抑えるとい仮説を唱えている報告があります。

血液中の脂肪酸濃度が高いとインスリン抵抗性がUPする説

 

健常人へ遊離脂肪酸(中性脂肪が分解されたもの)を血液中に投与したところ、90分後に筋肉組織におけるブドウ糖の量が減少した。遊離脂肪酸投与3時間後以降、筋肉組織におけるグリコーゲン(ブドウ糖のかたまり)の合成速度が50%に減少した。このことから、血液中の遊離脂肪酸(中性脂肪が分解されたもの)の濃度が高くなると、インスリン抵抗性がUPし、血液中のブドウ糖が筋肉組織へ取り込まれる量が低下するという報告があります。

ヒトにおける遊離脂肪酸誘発性のインスリン抵抗性メカニズム

 

「インスリン抵抗性」がUPした状態は“インスリンの効き目が低下”した状態とも言えます。そのため血糖値を下げるためには血液中を流れるインスリン量を増やす必要があります。インスリンは脂肪組織の形成を刺激する要因でもありますので、インスリン量が増えると脂肪組織も増え、脂肪細胞へのエネルギー貯蔵もUPします。そのためインスリン抵抗性がUPすると、それに依存して体重増加も増えることが示唆されます。

インスリン抵抗性は脳が指示する説

inslin-resistance

inslin-resistance

まとめ

・脳は血液中を流れるブドウ糖をエネルギーにしているため、筋肉組織へのブドウ糖の取り込みを抑制させて、血中を流れるブドウ糖量を維持するためにインスリン抵抗性をUPさせるという仮説がある

インスリン抵抗性は脳が指示する説

・遊離脂肪酸(中性脂肪の分解産物)が血液中を大量に流れると、インスリン抵抗性がUPして(インスリンの効き目が下がって)、筋肉組織に取り込まれるブドウ糖の量が減り、筋肉組織で作られるグリコーゲン(ブドウ糖のかたまり)の産生量が50%に下がるという報告がある

 

・インスリン抵抗性がUPすると、インスリンの質が下がります。質がさがるのでインスリンの量を増やすことで対処します。インスリンは脂肪組織を形成する因子でもあるため、インスリンが増えると脂肪が増えます。すると体重が増加します。

 

 

-糖尿病
-インスリン, インスリン抵抗性, グリコーゲン, ブドウ糖, 筋肉, 糖尿病, 肝臓, 血糖値

執筆者:ojiyaku


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

関連記事

tab7

DPP4-阻害剤の重大な副作用に「急性膵炎」「類天疱瘡」が追加となる

DPP4-阻害剤の重大な副作用に「急性膵炎」「類天疱瘡」が追加となる   厚生労働省はトラゼンタやスイニーなど、DPP-4阻害剤の重大な副作用に「急性膵炎」「類天疱瘡」を追加することを公開し …

insulin

週1回投与のインスリン製剤「インスリン イコデク」を承認申請(2023/8/11)

週1回投与のインスリン製剤「インスリン イコデク」を承認申請(2023/8/11) ノボノルディスクファーマは週1回投与のインスリン製剤「インスリン イコデク」について「インスリン療法が適応となる糖尿 …

glucokinase-diabetes-ttp399

2型糖尿病治療薬“グルコキナーゼ活性化薬”の効果について

2型糖尿病治療薬“グルコキナーゼ活性化薬”の効果について   2型糖尿病について、新しい作用をもった治療薬“グルコキナーゼ活性化薬”に関する第2相試験の報告がなされました。 グルコキナーゼ( …

oral-semaglutide-1

リベルサス錠が発売開始(2021年2月5日)

リベルサス錠が発売開始(2021年2月5日) 2型糖尿病治療薬であり世界初の経口GLP-1受容体作動薬「リベルサス錠」が2021年2月5日発売開始となりました。 GLP-1受容体作動薬は、これまで注射 …

OZEMPiC

オゼンピック皮下注が1月26日に再承認審査

オゼンピック皮下注が1月26日に再承認審査   薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会が1月26日に行われます。新薬2製品が審議される予定です。 オゼンピック皮下注2mg 対象疾患:2型糖尿病 …

  google adsense




2023年12月発売予定のGEリスト(エクセルファイル)

2023年12月発売予定のGEリスト(エクセルファイル)

2023年4月薬価改定 新旧薬価差比較データ(エクセルファイル)

2022年4月薬価改定。新旧薬価差比較データ(エクセルファイル)

おじさん薬剤師の働き方

how-to-work

薬剤師の育成について

how-to-bring-upo

日医工・沢井・東和・日本ジェネリック・日本ケミファ・アメルの出荷調整リスト

日医工・沢井・東和・日本ジェネリック・日本ケミファ・アメルの出荷調整リスト




how-to-work