おじさん薬剤師の日記

調剤薬局で勤務するおじさんです。お薬のはたらきを患者様へお伝えします

糖尿病

厳格な血糖コントロールをしているうちは心血管リスクを低く保つことができるが・・

投稿日:

厳格な血糖コントロールをしているうちは心血管リスクを低く保つことができるが・・

 

2型糖尿病患者さんにおいて、HbA1cを厳格に管理した群と標準管理した群における心血管リスクに関する報告がありました。

中央値5.6年の間、糖尿病の指標であるHbA1cを6.5~7%程度に厳格に管理した群(892例)とHbA1cを8~8.5%程度に標準管理を行った群(899例)における心血管リスクを確認したところ、心筋梗塞・脳卒中・虚血性心疾患といった心血管リスクは、厳格管理群において17%ほど発生率が低いことが示されました。

 

しかし、中央値5.6年間にわたるHbA1cの厳格管理期間を終えた後、3年後には厳格管理群のHbA1cが8%程度まで上昇していることが示されました(標準管理群との差が0.2~0.3%)程度しかありません。)。5.6年間の試験期間を含め15年間にわたって厳格管理群・標準管理群を追跡調査した結果を見ると、15年後の両群における心血管リスク・死亡リスクに差がないことが示されました。

intensive-glucose-control

intensive-glucose-control

つまり、過去に5.6年間も厳格に血糖をコントロール(HbA1c6.5~7%)していた期間があったとしても、厳格管理をやめてしまえばその意味はなくなってしまうということです(レガシー効果はない)。厳格管理を終えた後、HbA1cが上がれば心血管リスク・死亡リスクに関しては、ずーっと標準管理を行っていた群と比較して差はないことが報告されました。厳格管理を行うのであれば、ずーっと厳格管理をし続けなければ意味はないという結果です。

 

私は薬局で働いていると、患者様とのお話の中で血糖値やHbA1cに関するお話をいただくことがあるのですが、今回の報告を読んでみて、「HbA1cが8%を超えると、17%程度、心血管リスクが増える」報告があることを頭に入れておいていい気がしました。また、血糖降下薬を飲み始めたばかりの患者様に対しては、HbA1cを正常域に保ちつづける意義(心血管リスク・死亡リスクが低下する)を明確にお伝えできるなぁと感じました。

新規糖尿病治療薬イメグリミン(imeglimin)の効果について

HbA1cの厳格管理は食事療法・運動療法などを行うケースがあるため、患者様にとってはプレッシャーであり、ストレスにもなりうることかもしれません。 “血液の観点から見た健康“という意味ではHbA1cの厳格管理は有益かと思いますが、”幸せ “という観点からみると、答えは多様にある気もします。

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1806802

厳格な血糖コントロールを過去に行っていても、やめてしまえば効果はなくなる

-糖尿病
-HbA1c, インスリン, 厳格管理, 強化療法, 血糖コントロール

執筆者:ojiyaku


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.

関連記事

tablet

フォシーガ錠に慢性腎臓病の適応症が追加

フォシーガ錠に慢性腎臓病の適応症が追加 フォシーガ錠5mg、同錠10mg 「慢性腎臓病。ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者は除く」 上記効能効果が追加されました。再審査期間は4年間   …

insulin

週1回投与のインスリン製剤「インスリン イコデク」を承認申請(2023/8/11)

週1回投与のインスリン製剤「インスリン イコデク」を承認申請(2023/8/11) ノボノルディスクファーマは週1回投与のインスリン製剤「インスリン イコデク」について「インスリン療法が適応となる糖尿 …

oral-semaglutide-1

リベルサス錠が発売開始(2021年2月5日)

リベルサス錠が発売開始(2021年2月5日) 2型糖尿病治療薬であり世界初の経口GLP-1受容体作動薬「リベルサス錠」が2021年2月5日発売開始となりました。 GLP-1受容体作動薬は、これまで注射 …

type-1-diabates-infant

出生時の体重・在胎週数と、出生後の1型糖尿病発症との関係についての報告

出生時の体重・在胎週数と、出生後の1型糖尿病発症との関係についての報告   1998年空2012年に英国で生まれた383万4405人の小児のうち2969人が幼児期に1型糖尿病を発症しています …

OZEMPiC

オゼンピック皮下注が1月26日に再承認審査

オゼンピック皮下注が1月26日に再承認審査   薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会が1月26日に行われます。新薬2製品が審議される予定です。 オゼンピック皮下注2mg 対象疾患:2型糖尿病 …