おじさん薬剤師の日記

調剤薬局で勤務するおじさんです。お薬のはたらきを患者様へお伝えします

妊婦 抗てんかん薬

父親がバルプロ酸を服用していると出生児の神経発達症の発症リスクが上昇?

投稿日:

父親がバルプロ酸を服用していると出生児の神経発達症の発症リスクが上昇?

デパケン錠/R錠/細粒/シロップ、セレニカR顆粒/R錠の添付文書が改訂されました。(2024/8/28)

本剤に曝露した父親の児における神経発達症に関する海外疫学調査文献を評価した。

専門委員の意見も聴取した結果、以下の「・」の内容を踏まえ、現時点では本剤に曝露した父親の児における神経発達症の発症リスクに関する評価は確立していないものの、父親曝露による児における神経発達症の発症の可能性が否定できないため、使用上の注意を改訂することが適切と判断した。

・北欧観察研究において、受胎前の3カ月間に本剤に曝露した父親の児における神経発達症リスクの増加が示唆されたこと。ただし、欧州ではさらなる検討のため新たな試験の実施が求められている。

・海外観察研究において、受胎前の120日間に本剤に曝露したてんかんを有する父親の児では、統計学的に有意な神経発達症リスクの増加は認められないこと。

 

妊娠中にデパケン(バルプロ酸)を服用すると、出生時の神経発達障害リスクが上昇

フランスで172万人規模の出生時を対象とした報告によると、母親が抗てんかん薬のデパケン(バルプロ酸)を服用した場合、暴露した胎児の神経発達障害に影響を与えることが報告されました。

2011年1月~2014年12月までの間にフランス国内で生まれた児童172万1990人を対象として2016年12月まで追跡調査を行い、母親が抗てんかん薬を使用した場合に出生時への影響が調査されました。

妊娠中にデパケン(バルプロ酸)を服用した場合の、児の神経障害リスクについて

 

結果

母親がデパケン(バルプロ酸)を服用した場合、非使用群と比較すると、出生時の神経発達障害リスクは3.7倍

母親がデパケン(バルプロ酸)を服用した場合、精神疾患がない母親と比較すると、出生時の神経発達障害リスクは5.1倍

(知的障害リスク:5.1倍、心理的発達障害リスク:4.7倍、広汎性障害リスク:4.6倍)

妊娠初期にバルプロ酸を使用してもリスク関連はなく、妊娠13週目以降でバルプロ酸を使用することでリスク上昇が確認されています。

(リスクは用量依存)

ninpu

ninpu

バルプロ酸以外の抗てんかん薬による神経発達障害リスク

ラミクタール(ラモトリギン):1.6倍

テグレトール(カルバマゼピン):1.9倍

リリカ(プレガバリン):1.5倍

リボトリール(クロナゼパム):上昇なし

ガバペン(ガバペチン):上昇なし

イーケプラ(レベチラセタム):上昇なし

オクノベル(オクスカルバゼピン):上昇なし

デパケン錠200mgとデパケンR錠200mgの取り間違い過誤を防止する方法

-妊婦, 抗てんかん薬
-デパケン, バルプロ酸, 妊娠中, 妊婦, 知的障害, 神経発達障害リスク

執筆者:ojiyaku


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.

関連記事

tab3

デパケン錠200mgとデパケンR錠200mgの取り間違い過誤を防止する方法

デパケン錠200mgとデパケンR錠200mgの取り間違い過誤を防止する方法   薬剤師会による調剤過誤関連の報告例・ヒヤリ・ハット事例集・厚生労働省のインシデントに関する医薬品情報集計には …

ninpu

妊婦さんも使用できる喉の痛み止め“アズノールうがい液”の効き目を患者様へお伝えする

妊婦さんも使用できる喉の痛み止め“アズノールうがい液”の効き目を患者様へお伝えする   風邪による喉の痛み止めとしてイソジンガーグルやアズノールうがい液が処方されることがあります。この2剤は …

tablet2

ラミクタール錠のジェネリック医薬品“ラモトリギン錠”5社の添加物比較

ラミクタール錠のジェネリック医薬品“ラモトリギン錠”5社の添加物比較   ラミクタール錠のジェネリック医薬品が2018年6月に5社から発売されます。先発品とジェネリック医薬品との違い・ジェネ …

ninpu

炭酸リチウムを妊婦に使用した症例について

炭酸リチウムを妊婦に使用した症例について   炭酸リチウムは躁病時の気分を安定させるために処方される薬です。しかし胎児における心臓奇形や催奇形作用(動物実験)が報告されているため妊婦には禁忌 …

smoking-SUID

妊娠中の喫煙は予期せぬ乳幼児突然死と相関する

妊娠中の喫煙は予期せぬ乳幼児突然死と相関する tabako-ninpu 米国の研究チームは、妊娠中の喫煙が予期せぬ乳幼児突然死のリスクを2倍以上に増加させることを報告しました。   2007 …