「インスリン抵抗性」の意味を調べてみました。
血液中の糖が多いとき、膵臓はインスリンを分泌することで肝臓などの臓器・筋肉・脂肪への糖の取り込みを促します。「インスリン抵抗性」とは、上記の糖の取り込みが低下している状態のことです。(インスリン抵抗性を有する患者さんが、健常者と同じ量の糖を取り込むためには、より多くのインスリンが必要となります。)
「インスリン抵抗性」についての具体的な解明は、なされていないのですが、仮説として唱えられている説をいくつかしらべてみました。
脳がインスリン抵抗性を指示している
脳は24時間365日、生命活動を維持するためにブドウ糖を必要とする組織ですので、血液中のブドウ糖を一定量維持する必要があります。
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肝臓は100~120g、筋肉では300g程度のグリコーゲン(ブドウ糖のかたまり)を蓄えることができるのですが、肝臓に蓄えられたグリコーゲンは、血液中のブドウ糖量を検知して、必要に応じて肝臓に蓄えられていたブドウ糖を血液中に供給することが可能です。(血液中のブドウ糖は肝臓および血液中へ行き来することができます)
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一方、筋肉組織で蓄えられたグリコーゲン(ブドウ糖のかたまり)は、ブドウ糖へ戻ることができず、血液中から筋肉へ移行したブドウ糖は、再び血液中に戻ることができません。
ブドウ糖を常時必要としている“脳”は血液中のブドウ糖が枯渇することを非常に懸念します。そのために筋肉組織へ移行するブドウ糖の量を減らすための作戦として
「インスリンの効き目を低下させる」=「インスリン抵抗性を指示する」
と命令します。この状態を「インスリン抵抗性がUPする」として仮説を立てている報告があります。インスリン抵抗性がUPすると、肝臓や筋肉へのブドウ糖の取り込み量が減りますので、血液中のブドウ糖は高い状態で維持されることになります。
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上記の状態の具体的な例としては、妊娠中の女性です。母体および胎児の脳に十分量のブドウ糖を供給する必要がありますので、脳はインスリン抵抗性をUPさせることで筋肉や肝臓へのブドウ糖の移行を抑えるとい仮説を唱えている報告があります。
血液中の脂肪酸濃度が高いとインスリン抵抗性がUPする説
健常人へ遊離脂肪酸(中性脂肪が分解されたもの)を血液中に投与したところ、90分後に筋肉組織におけるブドウ糖の量が減少した。遊離脂肪酸投与3時間後以降、筋肉組織におけるグリコーゲン(ブドウ糖のかたまり)の合成速度が50%に減少した。このことから、血液中の遊離脂肪酸(中性脂肪が分解されたもの)の濃度が高くなると、インスリン抵抗性がUPし、血液中のブドウ糖が筋肉組織へ取り込まれる量が低下するという報告があります。
「インスリン抵抗性」がUPした状態は“インスリンの効き目が低下”した状態とも言えます。そのため血糖値を下げるためには血液中を流れるインスリン量を増やす必要があります。インスリンは脂肪組織の形成を刺激する要因でもありますので、インスリン量が増えると脂肪組織も増え、脂肪細胞へのエネルギー貯蔵もUPします。そのためインスリン抵抗性がUPすると、それに依存して体重増加も増えることが示唆されます。
まとめ
・脳は血液中を流れるブドウ糖をエネルギーにしているため、筋肉組織へのブドウ糖の取り込みを抑制させて、血中を流れるブドウ糖量を維持するためにインスリン抵抗性をUPさせるという仮説がある
・遊離脂肪酸(中性脂肪の分解産物)が血液中を大量に流れると、インスリン抵抗性がUPして(インスリンの効き目が下がって)、筋肉組織に取り込まれるブドウ糖の量が減り、筋肉組織で作られるグリコーゲン(ブドウ糖のかたまり)の産生量が50%に下がるという報告がある
・インスリン抵抗性がUPすると、インスリンの質が下がります。質がさがるのでインスリンの量を増やすことで対処します。インスリンは脂肪組織を形成する因子でもあるため、インスリンが増えると脂肪が増えます。すると体重が増加します。