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新規片頭痛治療薬レイボー(成分名:ラスミディタン)が薬価収載。発売間近
米国で2019年10月に医薬品収載されている片頭痛治療薬「レイボー錠」が日本国内でも医薬品承認され、薬価収載されました。発売間近となります。
薬価
レイボー錠50mg:324.7円
レイボー錠100mg:570.9円
「前兆のない片頭痛」あるいは「前兆のある片頭痛」に対して、発作時に1回100mgを経口投与する。
ただし、患者の状態に応じて1回50mgまたは1回200mgを投与することができる。
頭痛の消失後に再発した場合は24時間あたり総投与量200mgを超えない範囲で再投与可能
レイボー錠の作用について
片頭痛が起こっている時、脳内では痛みが広がり、末梢(脳や脊髄以外)の部位では三叉神経の活動が活発になっていると考えられています。
三叉神経とは顔を覆うように広がっている神経のことです。三叉神経は中枢(脳や脊髄)からの指令を顔に伝える神経です。「三叉神経の顔全体の広がり」を大まかに表現しますと、「おでこ~はな」「ほほ」「くち・あご」という3つの領域に枝分かれしています。(三叉:さんさ)
片頭痛発作時には三叉神経の活動が活発になっていると記しましたが、その活性化を誘導するのが「セロトニン」であるという仮説があります(三叉神経血管系仮説)
三叉神経および脳内の視床・大脳皮質には、片頭痛の引き金となる「セロトニン」を受け取る部分(セロトニン受容体)として”セロトニン1F受容体”という部分が広く発現していることが報告されています。
レイボー錠は「セロトニン1F受容体を刺激する」という特性があります。片頭痛時にレイボー錠を飲むと、セロトニン1F受容体が刺激され、セロトニン由来の神経活動が抑制されます。
すると、中枢での痛みの伝わりが抑えられるとともに、三叉神経から炎症や痛みを伝える物質が放出されなくなり、片頭痛発作がおさまるという効果が期待されます。
セロトニンという物質は「幸せホルモン」とも呼ばれており、不安感や不穏感を軽減する働きもあるのですが、レイボー錠は「片頭痛を引き起こすセロトニンの作用」以外には極力影響しないように配慮されて医薬品と考えられます。
(選択的セロトニン1F受容体と呼ばれます)
例えば「不安感・うつ気味」に関与するセロトニン1A受容体に対するレイボー錠の影響力はセロトニン1F受容体への刺激効果と比べて475分の1程度しかありません。
既存の片頭痛治療薬「トリプタン製剤」はセロトニン1B/1D受容体をターゲットとする医薬品ですが、レイボー錠のセロトニン1B/1D受容体への影響力は446分の1および617分の1程度しかありません。
セロトニン受容体には様々な種類が報告されているのでが、レイボー錠は各受容体への影響を極力小さくして、セロトニン1F受容体を選択的に刺激することを可能とした製剤と考えます。
片頭痛発作時に服用すると15分後までに血液脳関門を通過した(ラットでのデータ)という報告があるので、服用後の吸収スピード・効果発現は速そうなイメージです。服用から2時間後には中等度・重度の頭痛が消失した(100mgまたは200mg)ことが報告されています。
副作用(発現頻度1%以上)
不動性めまい(18.8%)、動悸、回転性めまい、悪心、疲労、異常感、筋力低下などが報告されています。
新規片頭痛治療薬レイボー(成分名:ラスミディタン)がFDAに承認(2019年10月20日)
2019年10月11日、新規作用機序の片頭痛治療薬レイボー(成分名:ラスミディタン)がFDAに承認されました。
ラスミディタンは選択的5-HT1F受容体作動薬です。セロトニン受容体に作用するものの、5HT1B受容体と比較して、5-HT1F受容体への選択制が470倍も親和性が高いため、血管収縮関連の副作用が少ないことが報告されております。
従来のトリプタン製剤では虚血性心疾患やレイノー現象(手足の小動脈の収縮現象)のある患者さんでは使用しにくいという難点がありましたが、新薬のレイボー錠(ラスミディタン)では、このあたりが改善・軽減されている製剤となっています。(ラスミディタン錠の最高血中濃度2~2.5時間)
レイボー錠(ラスミディタン)の治験データを確認すると1カ月に1~18回片頭痛発作が生じる被験者を対象としたデータでは、50mg、100mg、200mg、400mgの投与量と相関して頭痛が改善していることが示されています。
FDAの承認時の注意要綱にはレイボー錠服用後、最低8時間は機械の操作や運転作業を避けること・アルコールや中枢神経抑制薬との併用は注意することと記されております。
レイボー錠(ラスミディタン)による明確な薬理作用は不明ですが、5HT-1B受容体への作用が低いにも関わらず片頭痛症状を改善していることから、血管拡張があまり関与しないタイプの薬理作用なのではと示唆されています。
5HT-1F受容体について
5HT-1F受容体は脳幹三叉神経核・脳幹三叉神経核のシナプス前終末および三叉神経節・延髄の三叉神経脊髄路核などに分布する受容体で、その作動薬は神経細胞に対する抑制的な作用を示すことが知られています。5HT-1F受容体は血管収縮に関与していることが示唆されているため、ふらつき・転倒といったリスクを軽減できるのではと期待されています。