おじさん薬剤師の日記

調剤薬局で勤務するおじさんです。お薬のはたらきを患者様へお伝えします

抗うつ薬

セディール錠(タンドスピロン錠)のパーシャルアゴニストとしての特徴とSSRIとの併用について

投稿日:2017年11月21日 更新日:

セディール錠(タンドスピロン錠)のパーシャルアゴニストとしての特徴とSSRIとの併用について

精神科の処方箋を多くうける薬局に勤務することがあるのですが、定期服用薬に「セディール錠」が追加されることがあります。私のイメージとして、セディール錠には同類薬がなく、併用禁忌薬もなく、血中濃度の閾値もない薬であるため、「追加しやすいメンタルの薬」なんだろうなぁという程度の印象で考えていました。今回は、セディール錠についての知識を深めるために、その機序および報告例をまとめてみました。

 

~セディール錠のはたらき~

非ベンゾジアゼピン系の抗不安薬で、セロトニン5HT1A受容体へのパーシャルアゴニスト作用

インテビューフォームに記載されている薬理作用を確認してみると

① 抗不安作用:大脳辺縁系に局在するシナプス後膜5HT1A受容体に作用して、亢進しているセロトニン神経活動を抑制することにより抗不安作用をしめします。

② 抗うつ作用:セロトニン神経終末のシナプス後5HT2受容体密度の低下が関与していると推測されています。

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「関与していると推測される」という表現から、具体的な機序が未確定な要素が伝わってきます。

国内における5HT1A部分作動薬という分類で承認されている薬にはセディール錠(タンドスピロン錠)しかありませんが、海外ではブスピロンやジェピロン、イサピロンなどが同類薬として使用されています。これら5HT1A作動薬の薬理作用についての詳細をしらべてみると、脳内のセロトニン神経体の大部分が集中している縫線核という細胞集団に対してセディール錠は作動薬(full agonist完全な活性を発揮する)として作用し、5HT1A自己受容体の脱感作を介して5HT神経系を活性化します。

一方で、神経伝達部位(シナプス前膜、シナプス間隙、シナプス後膜)においては5-HT活性が高いとき(シナプス間にセロトニンが大量にあり、セロトニン機能が亢進しているとき)は薬理作用の①抗不安作用を発揮し、逆に5-HT活性が低下しているときには、その活性を高めることで抗うつ作用を発揮する(パーシャルアゴニスト)として考えられています。
セディール錠(タンドスピロン錠)の臨床効果についてはベンゾジアゾピン系に近い抗不安効果を示しますが、眠気やめまい、薬物依存、反跳症状などがなく安全に使用できるというメリットがあります。(作用発現が遅いというデメリットもあります)

さて、ここまでの作用機序だけを目にすると、シナプス間隙内のセロトニン量を上昇させる役割があるSSRI(パキシル、ジェイゾロフト、レクサプロ、ルボックス)とセディール(タンドスピロン)を同時に服用すると、SSRIがシナプス後膜周辺のセロトニン量を増加させて、セロトニン活性を上昇させる薬理作用であるのに対して、セディール錠は5HT1A受容体へ直接作用して、亢進しているセロトニン神経活動を抑制するパーシャルアゴニストとしての作用がでてしまい、お互いが拮抗作用(相反する作用)となる可能性が想定されます。

この点についてはアメリカの国立精神衛生研究所主催で行われた「STAR Dプロジェクト」を確認してみると、シタロプラム錠(SSRI)を服用しても抗うつ治療が改善しない患者さんを対象としてシタロプラムから5HT1A部分作動薬であるブスピロン錠へ切り替えた場合の寛解率は25.5%であるのに対し、シタロプラム錠(SSRI)にブスピロン錠(5HT1A)を追加した場合は32.9%にまで寛解率が上昇を示したというデータがあります。

国内の承認薬に、セディールを追加したときに臨床データを確認してみると、アナフラニールを服用しているうつ病患者さんに対してセディール錠または、ホリゾン(ジアゼパム)を併用した群とアナフラニールを単独群とを比較したデータでは2週間後の時点でセディール併用軍の方が、わずかに効果が高い傾向を示すというデータがでています。

さらに、国内での報告例において、パロキセチンまたはフルボキサミンを使用している強迫性障害患者さんにタンドスピロンを併用することで改善した例が確認できます。
フルボキサミンはタンドスピロンの代謝酵素CYP3A4を阻害するため、SSRIの中でもタンドスピロンと併用した際に、抗不安、抗うつ効果が現れやすいと考えられています。

これらのことから、国内報告を確認してみても、タンドスピロンとSSRIとの併用は抗不安効果の増強、効果発現を速めることが示唆されます。またSSRI特有の消化器症状や性機能障害などの副作用をタンドスピロンの代謝物が抑制するということも考察されており、併用することの意義が見出されています。

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執筆者:ojiyaku


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