1包化予製を調剤薬局でどのように考えるか
予製とは
「錠剤を半錠にしておく」
「約束処方の粉薬のミックスをあらかじめ作っておく」
「PTPシートを28錠、56錠、84錠に輪ゴムでくくっておく」
など不特定多数の患者さんを対象として、調剤薬局で患者様の待ち時間を減らすために事前にお薬の準備しておく作業のことです。
「前回の1包化の処方に基づき、事前に特定の患者様の薬を1包化して用意しておく1包化予製」は処方箋を受け付ける前に調剤を行うことに該当しますので、保健所の立ち入り検査が入ると指摘をうけます。いわゆる“お役所のルール”として、1包化の予製は認められておりません。
とは言ったものの、全自動錠剤分包機が無い1人薬剤師体制の調剤薬局にとって1包化90日という調剤が来た時に、処方箋を応需してから調剤を開始していては非常に患者様をお待たせしてしまいます。さらに混雑が原因となり、調剤ミスも多くなるかもしれません。
そこで今回は、ルールに抵触しない?範囲で1包化予製をどのように考えるか検討してみました。
~1包化予製のメリット~
・患者様の待ち時間を軽減する
・リアルタイムでの作業を減らす
・処方内容がDoであれば調剤過誤のリスクが減る
・混雑を緩和できる
つまり1包化予製の本質は、患者様の貴重なお時間を損なわないための事前準備であると同時に、短時間に多くの患者様へお薬をお渡しすることで薬局の利益を確保するための手段である考えられます。
~1包化予製のデメリット~
・処方変更があれば作り直し
・バラした錠剤がデッドストックになるリスクがある
・患者様が来局しなければ使用されない
・保健所の視察があれば指摘をうける
・バラした錠剤は劣化が進みやすい
上記のメリット・デメリットについて薬局の収益を基準に考えてみます。
1包化予製を事前に準備することで「該当患者様の満足度がUP」すれば「患者様から選んでいただける薬局」となるため薬局の利益が上がる、一方で使用されなかったバラ錠はデッドストックとなり負の遺産として最終的に廃棄処分となる可能性があります。
診療報酬改定で調剤薬局の収益は減ってきている実情がありますので、薬局の損益を回避しつつ、保健所ルールに従い特定患者様の1包化予製は行わないものの、 “1包化予製らしきもの”を準備する方法について考えてみました。
(以下の方法は、バラす錠剤数が多い場合に有用なのかなぁと私は感じております)
①:バラ錠として使用している人数を把握する
2人以上バラ錠として使用している医薬品はPTPをバラしてOK
1人しかバラ錠として使用してない医薬品はバラさない。(PTPで用意または未開封で用意)
チェーン展開している調剤薬局においては、他店舗でバラ錠として使用している品目はバラして用意することができるかもしれません
②:バラした錠剤だけを分包します。バラしていない錠剤はPTPのまま用意します。
③:連なっている分包紙をミシン目で1包ずつカットして下図のようにホチキス(ホッチキス)で留めて予製完成とします。写真は7包ずつホチキスで留めています。
~該当患者様が来局して処方箋を応需~
患者様から処方箋を応需して、前回処方と今回処方の変更点を確認します。DOであれば
下図の点線部分をハサミでカットします。(ホチキスで留められた7包をまとめてカットします)。錠剤分包機に一包ずついれていきます。PTPで用意していた錠剤もバラして錠剤分包機にセットして1包化を完成させます。
尚、分包紙をカットする場合、私としてはAよりもBの方が切断面がカパっと開くため作業しやすいように感じます。Aは切断面がくっついてしまうことがあるので私としてはBが好きです。
~まとめ~
上記の1包化予製方法は、2度手間ですのでトータルの作業量は増えます。さらに1人の患者様の調剤で2回分包(予製と当日)しますので分包紙の消費量は2倍となります。そのため総合的に考えて価値があるかどうかはわかりません。1人薬剤師勤務であり、患者様の集中度合いにバラツキがあって予製を考えている店舗や、とくかくバラ錠のデッドストックは避けたいとお考えの薬局にとってはお試しいただいてもいいかもしれません。
錠散1包化の場合は、粉薬を事前に計量しておいてチャック付きビニール袋に入れておくという方法もあります。(計量レシートを添えておきます)。
お役所さんがたまたま立ち寄った場合は
「1包化調剤でミスったために、これからバラす予定の薬です」
とお伝えして濁しましょうか。
今回は1包化予製についていろいろと考えたのですが、処方内容や時間制限または混雑から考えて、いかんともしがたいケースは多々あります。その際は、患者様のご都合にもよりますが、1週間分ほど調剤して、残りを郵送対応するという標準対応が“吉”かと思います。