おじさん薬剤師の日記

調剤薬局で勤務するおじさんです。お薬のはたらきを患者様へお伝えします

COPD(閉塞性肺疾患) FDA承認

3成分配合COPD治療薬テリルジー100エリプタ

投稿日:2019年2月11日 更新日:

3成分配合COPD治療薬テリルジー100エリプタ

 

3成分配合COPD治療薬“テリルジー100エリプタ”(Trelegy)が2019年2月22日の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会にて承認されました。

テリルジー100エリプタとは

 

テリルジー100エリプタは3成分が配合されたCOPD治療薬です。

テリルジー100エリプタの承認可否が2019年2月22日に審議

フルチカゾンフランカルボン酸エステル:100μg(ステロイド)

ウメクリジニウム臭化物:62.5μg(抗コリン薬)

ビランテロールトリフェニル酢酸塩:25μg(長時間作用性β2刺激薬)

kyuunyu

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テリルジー100エリプタはすでに英国・米国で医薬品承認されています。2月の審議会で承認されれば、2019年5月頃には日本国内でも販売開始となるのではないでしょうか。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)における3剤併用(ステロイドあり)と2剤併用の比較データ

3剤配合治療の有効性について

 

IMPACT試験にて3剤配合治療と2剤配合治療を比較した結果が記されています。

COPD患者10355人を対象として52週間(1年間)、3剤配合または2剤配合を吸入し続けた場合の増悪率について評価しています。

しっかり吸入することができる吸入薬の形はブリーズヘラータイプ(ウルティブロ・オンブレス)/吸入器の形と吸入流速を比較する

COPD

COPD

IMPACK試験の結果

増悪率

3剤(フルチカ100μg/ウメクリ62.5μg/ビランテ25μg)併用群の増悪率:0.91/年

2剤(フルチカ100μg/ビランテ25μg)併用群の増悪率:1.07/年

2剤(ウメクリ62.5μg/ビランテ25μg)併用群の増悪率:1.21/年

アドエアのジェネリック医薬品Wixela InhubをFDAが承認

重度の増悪により入院した割合

3剤(フルチカ100μg/ウメクリ62.5μg/ビランテ25μg)併用群の増悪率:0.13/年

2剤(フルチカ100μg/ビランテ25μg)併用群の増悪率:0.15/年

2剤(ウメクリ62.5μg/ビランテ25μg)併用群の増悪率:0.19/年

 

上記の結果より、テリルジー(3剤併用群)は2剤併用群よりも、中等度または重度のCOPD増悪率および入院率を低く保つことができることが示されました。(有意差あり)。

 

グラクソスミスクラインから販売されている吸入薬との含有比較

 

テリルジー100エリプタ = エンクラッセエリプタ + レルベア100エリプタ

テリルジー100エリプタ = アニュイティ100エリプタ + アノーロエリプタ

 

グラクソスミスクラインから発売されているエリプタ製剤の効能効果を確認してみると、レルベア100には慢性閉塞性肺疾患(COPD)の適応があるものの、レルベア200にはCOPDの適応症はありません。そのためテリルジーは1規格“100エリプタ”のみの発売となります。

米国におけるテリルジー100エリプタの適応症はCOPD患者において

 

・レルベアエリプタ100を使用中に患者において気管支拡張薬の追加を必要とする場合

・レルベア100およびエンクラッセを併用投与している患者

 

上記の既存薬を使用している場合において長期維持療法が承認されています。そのため日本国内でテリルジー100エリプタが承認された場合においても、処方の際には既存薬の使用状況を確認する必要があるのかもしれません。(要確認)

 

テリルジー100エリプタには急性気管支けいれんの緩和や喘息の適応はありません。

-COPD(閉塞性肺疾患), FDA承認
-COPD, テリルジー100エリプタ, 効果, 慢性閉塞性肺疾患, 発売日

執筆者:ojiyaku


  1. 永田弘道 より:

    デリルジー100エリプタを隔日で2週間ほど吸入したら字を書く時の震え(書痙?)が治りました、治って未だ3週間程ですがデルジーによる薬効は考えられますか?偶然とは思えないのですが。

    • ojiyaku より:

      ご連絡ありがとうございます。
      書痙(ジストニア)の治療を行う際に、抗コリン剤という分類の医薬品を使用することがあるのですが、吸入薬のテリルジー100エリプタにはごく少量の抗コリン剤が含まれております。

      ここからは、あくまで想定ですが、テリルジー100エリプタを吸入した際に、テリルジーに含まれる抗コリン成分がどの程度全身にいきわたるかを調べてみました。
      すると、テリルジーを2週間連続吸入した際に、テリルジーに含まれる抗コリン成分は0.025~0.05ng/mlという濃度で全身に広がることが想定されました。(あくまで概算値です)

      上記の濃度で全身に広がった抗コリン成分が、書痙に効果があるかどうかは、不明です。書痙(ジストニア)の程度によってはもしかしたら、軽減するかも?というった期待は抱きますが、想像の域を超えません。

      症状の改善が維持されてばそれでよし、もし再発するようでしたら神経内科医にテリルジーの抗コリン成分を吸ったときに震えがおさまった経緯を伝えると良い治療になるのかもしれません。

      テリルジー100エリプタは、あくまで慢性気管支炎・肺気腫の治療薬であり、肺へ医薬品を到達させるための製剤であることをご了承ください。

      よろしくお願いいたします。
      おじさん薬剤師

  2. イシダヨウイチロウ より:

    呼吸器内科を受診してCOPDのうたがいがあるとゆうことでテリルジ-を吸入しています現状維持で良くなることはないのですかまた冷たい空気はよくないですか

    • ojiyaku より:

      ご連絡ありがとうございます。
      ”COPD疑い”で良くなることはないのか?というご質問ですが、COPDはタバコや大気汚染物質を長期間吸い続けることが原因で、肺の中が慢性的に細くなる病態です。咳・タン・息切れが続く病態です。

      ご年齢にもよりますが、病気の改善・軽減を期待するためには、原因から遠ざかることが求められます。
      その上で、吸入薬などの治療を行い、”悪化させないこと(現状維持)”が生命維持にとって有益かと思われます。

      良くなるかどうかについては、吸入治療を行いながら原因物質から遠ざかった状態で一定期間を過ごしてみて主治医の判断を仰ぐ感じかと思います。

      冷たい空気について
      COPDに似た病気で”喘息”という病気があるのですが、喘息は冷たい空気が肺に入ってくると、その温度差が刺激となり咳を誘発することがあります。一方でCOPDの場合は「肺の炎症が原因で息が十分に息を吸うことができない、息をしっかり吐くことが難しい」という病態ですので、喘息とは異なります。

      そのため、COPDの方で冷たい空気で咳がでることもありますが、間接的な要因と思われます。

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