おじさん薬剤師の日記

調剤薬局で勤務するおじさんです。お薬のはたらきを患者様へお伝えします

FDA承認 抗精神病薬

シクレスト舌下錠の有効成分を含む“貼り薬“を久光製薬がFDAへ申請

投稿日:2018年12月18日 更新日:

シクレスト舌下錠の有効成分を含む“貼り薬“を久光製薬がFDAへ申請

 

久光製薬は統合失調治療薬アセナピンマレイン酸塩の貼り薬タイプ(経皮吸収治療剤)を米国食品医薬品局(FDA)へ新薬承認申請したことを公開しました。

この貼り薬(HP-3070)はTDDS(経皮薬物送達システム)技術が用いられた全身性経皮吸収型製剤です。米国で行われたフェーズⅢ(第三相臨床試験)データによると、617名の統合失調症患者さんを対象として6週間この貼り薬を使用したところ統合失調症の陽性・陰性評価尺度(PANSS)のトータルスコアの変化量において、有意な改善が確認されています。

 

アセナピンマレイン酸といえば「シクレスト舌下錠」の有効成分です。シクレスト舌下錠は、舌下(舌の下)にいれて溶かして使用する薬であり、舌下投与後10分間は飲食してはいけないというルールがある薬です。人によっては使用後の下のしびれ・苦みを感じる方もおりました。このシクレストの成分を貼り薬として米国FDAへ申請したのが今回の貼り薬(HP-3070)です。

久光製薬が経皮吸収型統合失調症治療剤(HP-3070)をFDAへ承認申請

シクレスト舌下錠の成分“アセナピン”をそのまま貼り薬としても、アセナピンは粘着剤組成の成分との接触や加熱・紫外線等の光暴露によって分解されてしまいます。久光製薬はアセナピンの分解を抑えながら、貼り薬の表面(粘着剤層)をつくる工程に関する特許を取得しました。

ジプレキサ(オランザピン)やセロクエル(クエチアピン)を飲むと太る理由

 

久光製薬は貼付剤の粘着剤層にアセナピンマレイン酸金属塩を含有させることで、アセナピンの分解を防ぐことができることを見出しました。さらにこれに脱塩剤を含有させることでアセナピンの分解をさらに抑えることを見出しました。

アセナピン含有貼付剤の製造特許(全25ページ)

以上の経緯から、アセナピンの酸付加塩、アクリル酸エステル重合体及び脱塩剤を混ぜて、均一な粘着剤組成物を作成し、それを支持体(貼り薬)の片方の面上に所定の厚みで塗布した後、必要に応じて加温して溶剤を乾燥除去してアセナピン貼付剤を作成する方法を見出しました。(温度条件は60~120℃、加温時間は2~30分)

sippui

sippui

アセナピン含有貼付剤の製造特許は全25ページからなります。

 

 

-FDA承認, 抗精神病薬

執筆者:ojiyaku


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.

関連記事

tablet-1

統合失調症治療薬シクレスト舌下錠の特徴と味について

統合失調症治療薬シクレスト舌下錠の特徴と味について 明治製菓ファルマより統合失調症治療薬「シクレスト舌下錠」が発売予定となっています。「舌下錠」という特徴的な剤形となっていますので、今回は、患者さんに …

migraine-JPN

片頭痛患者に対するCGRP受容体拮抗薬の飲み薬の有用性について(2023/8/10)

片頭痛患者に対するCGRP受容体拮抗薬の飲み薬の有用性について(2023/8/10) 日本では片頭痛の治療薬として月に1回注射を行う「CGRP受容体拮抗薬)という治療が2021年から開始され、一定の評 …

REXULTI-akathisia

レキサルティ錠はアカシジアの副作用が少ない可能性に関する報告

レキサルティ錠はアカシジアの副作用が少ない可能性に関する報告 2017年末に医薬品として承認されたレキサルティ錠について、オーストラリアの研究グループがアカシジアの発現頻度が低い可能性についてレビュー …

Zyprexa-Seroquel-gain-fat

ジプレキサ錠が糖尿病を引き起こすメカニズムが解明される

ジプレキサ錠が糖尿病を引き起こすメカニズムが解明される 京都大学の研究チームはジプレキサ錠(オランザピン)を服用することで糖尿病が発症するメカニズムを解明したことを発表しました。 ジプレキサ錠を服用す …

tablet2

ラミクタール錠のジェネリック医薬品“ラモトリギン錠”5社の添加物比較

ラミクタール錠のジェネリック医薬品“ラモトリギン錠”5社の添加物比較   ラミクタール錠のジェネリック医薬品が2018年6月に5社から発売されます。先発品とジェネリック医薬品との違い・ジェネ …