新薬16成分が薬価収載へ!レケンビ皮下注やケサンラ値下げを徹底解説

  1. 新薬16成分が薬価収載へ!レケンビ皮下注やケサンラ値下げを徹底解説
  2. 新薬の保険適用
  3. 点滴から皮下注射へ!患者さんの負担を減らす大型新薬の登場
    1. キイジェクト配合皮下注:抗がん剤の投与時間を劇的に短縮
    2. レケンビ皮下注ペン:アルツハイマー病治療の利便性向上
  4. 希少疾患やがん治療に新たな選択肢をもたらす新薬群
    1. エラヒア点滴静注:白金系抗がん剤が効きにくい再発卵巣癌の希望
    2. エトカマ錠:耐性変異を持つ乳癌への内服新薬
    3. オジェンダとモデーソ:小児・若年者に多い脳腫瘍への挑戦
    4. ガミファント点滴静注液:致死的な免疫異常を抑える特効薬
  5. 慢性疾患や身近な病気の利便性を高める新薬
    1. オンスイク注:週に1回の投与で済む持続型インスリン
    2. クライジェファ皮下注:重症筋無力症の自宅治療を支える
    3. 乾癬、片頭痛、てんかんに対する新薬
  6. 薬の値段はどのように決まるのか?薬価算定の舞台裏
    1. 類似薬効比較方式と原価計算方式
    2. 原価開示度と加算係数「ゼロ」のルール
  7. 医療現場からの声:包装単位と投与制限をめぐる議論
    1. エキスコプリ錠:少量包装の必要性
    2. オンスイク注:新薬の「14日処方制限」との兼ね合い
  8. 費用対効果評価による薬価見直し:ケサンラ点滴静注が3.9%値下げへ
    1. 費用対効果評価制度とは
    2. ケサンラの評価結果と引き下げの内容
  9. まとめ

新薬16成分が薬価収載へ!レケンビ皮下注やケサンラ値下げを徹底解説

新薬の保険適用

私たちが病気や怪我で医療機関を受診した際、健康保険証を提示することで、窓口で支払う費用は通常1割から3割程度に抑えられています。この公的な医療保険制度のもとで使える薬は、国が定めた公定価格である「薬価」が決められ、「薬価基準」というリストに収載されることで、初めて保険診療の中で広く患者さんに届けられるようになります。

令和8年(2026年)11月6日、厚生労働省の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)の総会が開かれ、新たに開発された医薬品の薬価収載が了承されました。今回は16成分25品目という非常に多くの新薬が対象となり、いずれも11月13日に薬価収載される予定となっています。

今回の審議では、これまで点滴で長時間の投与が必要だった抗がん剤や認知症治療薬に「皮下注射」という新たな投与経路が加わったことや、既存の治療法では十分な効果が得られなかった難病に対する新薬の登場など、医療現場や患者さんの生活を大きく変える可能性を秘めた新薬が数多く含まれています。さらに、すでに保険適用されているアルツハイマー病治療薬「ケサンラ」の費用対効果評価に基づく薬価の引き下げや、医療現場での使い勝手をめぐる議論など、注目すべき話題が目白押しです。

本記事では、今回承認された注目の新薬の特徴や価格決定の仕組み、医療現場への影響について詳しく整理してお伝えします。

新薬令和8年11月13日収載予定


点滴から皮下注射へ!患者さんの負担を減らす大型新薬の登場

今回の新薬一覧の中で特に注目を集めているのが、すでに多くの患者さんに使われている代表的な点滴薬に、新たに「皮下注射」の製剤が加わったことです。

通常の点滴静注は、血管に針を刺して30分から数時間かけて薬剤を体内に投与するため、患者さんは病院のベッドやリクライニングチェアで長い拘束時間を過ごすことになります。これに対して皮下注射は、皮膚のすぐ下にある皮下組織に薬剤を注入するため、数分から十数分程度で投与が完了します。患者さんの身体的・精神的な負担が大幅に軽減されるだけでなく、医療従事者の作業負担やベッドの回転率など、医療現場の効率化にも大きく寄与します。

キイジェクト配合皮下注:抗がん剤の投与時間を劇的に短縮

がん治療において広く用いられている免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」(一般名:ペムブロリズマブ)に、世界で初めて皮下投与を可能にした「キイジェクト配合皮下注」(395mgおよび790mg)が登場しました。

この薬剤は、ペムブロリズマブに加えて「ベラヒアルロニダーゼ アルファ」というヒアルロン酸分解酵素を一緒に配合しているのが大きな特徴です。皮下組織のバリアを一時的に緩めることで、大量の抗体を短時間で皮下に吸収させることができます。

悪性黒色腫や非小細胞肺癌をはじめ、胃癌、食道癌、乳癌、子宮頸癌など、従来のキイトルーダが適応を持っていた極めて幅広いがん腫に対応しています。薬価は395mg(2.4mL1瓶)が36万8,613円、790mg(4.8mL1瓶)が72万8,172円と算定されました。ピーク時の市場規模予測は、販売開始から5年度目に患者数2.4万人、年間販売額754億円と見込まれており、今回収載される新薬の中で最も大きな市場規模が予測されています。

レケンビ皮下注ペン:アルツハイマー病治療の利便性向上

アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)および軽度認知症の進行抑制薬として注目されている「レケンビ」(一般名:レカネマブ)にも、待望の皮下注射製剤である「レケンビ皮下注250mgペン」が承認されました。

これまでのレケンビ点滴静注は、2週間に1回、医療機関で点滴を受ける必要がありました。今回登場した皮下注製剤は、ペン型の注入器(オートインジェクター)を用いて週に1回、500mg(2本分)を皮下投与する使い切りタイプのキット製品です。薬価は250mg1キットあたり2万7,141円と算定されました。1日あたりの薬価に換算すると7,755円となり、従来の点滴静注製剤(1日薬価7,390円)とおおむね同水準になるよう設計されています。ピーク時の市場規模予測は10年度目で患者数2.2万人、販売金額555億円と予測されており、社会的な関心の高さが伺えます。

2026年8月後発品承認 2026年12月発売予定:トラゼンタ・インチュニブなど(エクセル・PDFダウンロードあり)
2026年8月後発品承認 2026年12月発売予定:トラゼンタ・インチュニブなど(エクセル・PDFダウンロードあり) 厚...

希少疾患やがん治療に新たな選択肢をもたらす新薬群

今回の中医協総会では、治療選択肢が極めて限られていた難病や、特定の遺伝子異常を持つがんに対する画期的な新薬が多数審議されました。

エラヒア点滴静注:白金系抗がん剤が効きにくい再発卵巣癌の希望

卵巣癌の化学療法において、広く使われる白金系(プラチナ系)抗悪性腫瘍剤が効かなくなった再発卵巣癌は、極めて治療が難しい領域とされてきました。武田薬品工業が発売する「エラヒア点滴静注100mg」(一般名:ミルベツキシマブ ソラブタンシン)は、葉酸受容体α(FRα)というタンパク質を標的とした抗体薬物複合体(ADC)です。

がん細胞の表面にあるFRαに抗体が結合し、細胞内に取り込まれた後に抗がん作用を持つ薬剤(ソラブタンシン)を放出することで、がん細胞を選択的に攻撃します。海外の臨床試験において高い有効性が示され、米国のガイドラインでも推奨されるなど国際的にも高く評価されています。

薬価算定においては、新規作用機序や治療方法の大幅な改善が評価され、有用性加算(Ⅰ)35%、希少疾病用医薬品としての市場性加算(Ⅰ)10%という極めて高い加算が認められました。さらに、欧米などの薬価を参考にする外国平均価格調整によって価格が引き上げられ、100mg1瓶あたり50万2,832円(1日薬価換算で7万1,833円)という薬価が決定しました。ピーク時の販売額は5年度目で33億円(患者数313人)が見込まれています。

エトカマ錠:耐性変異を持つ乳癌への内服新薬

「エトカマ錠75mg」(一般名:カミゼストラント)は、アストラゼネカが開発した内服の抗がん剤です。ホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳癌のうち、内分泌療法を行っている最中に「ESR1」という遺伝子に変異が生じ、従来のホルモン剤が効きにくくなるリスクを抱えた患者さんを対象としています。

CDK4/6阻害剤と呼ばれる他の抗がん剤と併用し、1日1回経口投与します。薬価は75mg1錠あたり5万5,103.60円で、ピーク時の市場規模は8年度目に335億円(患者数2.7千人)と予測されています。

オジェンダとモデーソ:小児・若年者に多い脳腫瘍への挑戦

脳腫瘍の一種である低悪性度神経膠腫や、予後が極めて厳しいことで知られるびまん性正中膠腫に対しても新薬が登場しました。

IPSENの「オジェンダ」(一般名:トボラフェニブ)は、BRAF遺伝子の異常を持つ低悪性度神経膠腫の治療薬です。錠剤(100mgで29万9,851.40円)に加え、錠剤を飲み込むのが難しい小さなお子さんのために「ドライシロップ」(300mg1瓶で99万0,880.40円)も用意されています。

大原薬品工業の「モデーソカプセル125mg」(一般名:ドルダビプロン塩酸塩)は、これまで有効な治療法がほとんど存在しなかった「びまん性正中膠腫」に対する国内初の治療薬です。薬価は1カプセル43万9,549.20円で、ピーク時の市場規模は3年度目に75億円(患者数151人)と予測されています。

ガミファント点滴静注液:致死的な免疫異常を抑える特効薬

スウェーディッシュ・オーファン・バイオビトラムの「ガミファント点滴静注液50mg」(一般名:エマパルマブ)は、小児に発症する全身型若年性特発性関節炎(sJIA)や成人のスチル病に伴って発症する「マクロファージ活性化症候群」の治療薬です。

マクロファージ活性化症候群は、過剰な免疫反応によって全身の臓器不全を引き起こし、生命に関わる深刻な病態です。ガミファントは炎症の主原因となる「インターフェロンγ」を強力に阻害する薬剤で、薬価は50mg1瓶あたり224万9,071円と高額ですが、救命率の向上に寄与することが強く期待されています。


慢性疾患や身近な病気の利便性を高める新薬

日々の生活管理が欠かせない慢性疾患の領域でも、患者さんの生活の質(QOL)を高める画期的な製剤が承認されています。

オンスイク注:週に1回の投与で済む持続型インスリン

糖尿病治療においてインスリン療法を必要とする患者さんにとって、毎日の注射は大きな負担となります。日本イーライリリーが開発した「オンスイク注ミリオペン総量1500単位」(一般名:インスリン エフシトラ アルファ)は、なんと「週に1回」の皮下注射で血糖コントロールを維持できる持続型のインスリン製剤です。

薬価は1,500単位1キットあたり7,071円(1日薬価換算で377円)と算定されました。ピーク時の予測投与患者数は12万人、年間販売額23億円が見込まれています。注射回数が劇的に減ることで、患者さんの心理的負担や注射忘れのリスクが大幅に緩和されると期待されます。

クライジェファ皮下注:重症筋無力症の自宅治療を支える

アレクシオンファーマの「クライジェファ皮下注300mg」(一般名:ゲフルリマブ)は、全身型重症筋無力症の患者さんに対する新しい治療薬です。重症筋無力症は、全身の筋力が低下して疲れやすくなり、重症化すると呼吸困難や嚥下障害を起こす難病です。

これまでの類似薬(ユルトミリスなど)は8週に1回などの医療機関での点滴静注が中心でしたが、クライジェファは患者さん自身が自宅で投与可能な皮下注射製剤(オートインジェクターおよびシリンジ)として開発されました。週1回の投与で、薬価は1キットあたり約90万9,010円台、ピーク時には377億円(患者数795人)の市場規模が予測されています。

乾癬、片頭痛、てんかんに対する新薬

そのほか、以下のような幅広い領域で新薬が揃いました。

  • イコタイド錠200mg(一般名:イコトロキンラ塩酸塩):尋常性乾癬などの皮膚疾患に対する内服薬。従来は注射剤が中心だったIL-23阻害作用を飲み薬で実現した画期的な薬剤です。1錠5,930.40円で、ピーク時には263億円の販売を見込みます。

  • エキスコプリ錠(一般名:セノバメート):てんかん患者の部分発作に対する新しい抗てんかん剤。1日1回内服で、ピーク時には12万人、165億円規模が予測されています。

  • ビエプチ点滴静注100mg(一般名:エプチネズマブ):片頭痛発作の発症を抑える点滴薬。12週間に1回の点滴投与で効果が持続します。薬価は1瓶11万6,508円です。

  • キャップバックス筋注シリンジ:高齢者やハイリスク者を対象とした新しい21価肺炎球菌結合型ワクチン。1回1万507円で、脾臓を摘出した患者さんなどの感染症予防に用いられます。


薬の値段はどのように決まるのか?薬価算定の舞台裏

医薬品の価格は、一般的な商品のように製薬会社が自由に値付けできるわけではありません。中医協のもとで厳格なルールに基づいて算定されています。今回の新薬群を通じて、日本の薬価算定方式の仕組みを紐解いてみましょう。

類似薬効比較方式と原価計算方式

薬価の算定方式には、大きく分けて2つのルートがあります。

  1. 類似薬効比較方式

    すでに保険収載されている薬の中に、効能効果や薬理作用、投与形態などが似ている薬(比較薬)がある場合に用いられます。比較薬の「1日あたりの薬価」を基準にして新薬の価格を合わせるのが基本です。既存薬より優れた効果や特徴があれば、後述する各種の「補正加算」が上乗せされます。今回の「キイジェクト」や「レケンビ皮下注」、「エラヒア」などがこれに該当します。

  2. 原価計算方式

    比較できる類似薬が全く存在しない画期的な新薬の場合、薬剤の製造にかかった原価(原材料費、労務費、製造経費など)を積み上げ、そこに販売費、研究開発費、適正な営業利益、流通経費、消費税などを加えて薬価を算出します。今回の「モデーソ」や「ガミファント」、「オジェンダ」などが該当します。

原価開示度と加算係数「ゼロ」のルール

原価計算方式には重要なルールが存在します。それは「原価の開示度」に関するペナルティ措置です。

製薬会社が自社製品の原価データを厚生労働省にどれだけ透明性をもって開示できたかによって、「加算係数」が変動します。開示度が50%未満と低い場合、たとえ臨床的な有用性や希少疾患としての価値が認められて加算(市場性加算や有用性加算など)の要件を満たしていても、加算係数が「ゼロ」と判定され、結果的に加算分が一切薬価に上乗せされなくなります。

今回の審議でも、オジェンダ、モデーソ、ガミファント、キャップバックスといった原価計算方式で算定された医薬品について、有用性加算や市場性加算、小児加算に該当すると判定されたものの、開示度不足により加算係数が0となり、加算額がゼロのまま薬価が決定されるという場面が見られました。医療保険財政を守るための厳格な情報開示ルールが徹底されていることが分かります。

新薬


医療現場からの声:包装単位と投与制限をめぐる議論

中医協総会では、単に価格を決定するだけでなく、実際の調剤や服薬指導を担当する医療現場からの現実的な懸念についても議論が交わされました。

エキスコプリ錠:少量包装の必要性

日本薬剤師会の渡邊大記副会長から問題提起されたのが、抗てんかん薬「エキスコプリ錠」の包装単位についてです。

エキスコプリは、服用開始時にまず12.5mgというごく少量から開始し、副作用に注意しながら2週間以上の間隔を空けて徐々に50mg、100mgへと増量し、最終的に100〜200mgの維持量に到達させる用法となっています。しかし、製薬会社からはすべての規格が「100錠入り」の包装で発売される予定となっていました。

もし12.5mgの錠剤を100錠包装で購入した場合、初期の2週間分(14錠程度)を使用した後は、ほとんどの錠剤が薬局の棚で使われずに余ってしまうことになります。これは調剤薬局にとって深刻な在庫負担・廃棄ロスにつながるだけでなく、計数ミスなどの医療事故のリスクを高める要因にもなります。

厚生労働省の薬剤管理官からは、企業に対して確認を行った結果、12.5mg錠については10錠包装や42錠包装などの少量包装の導入を検討しており、50mg錠についても使用頻度を踏まえた適切な包装単位を精査中であるとの回答が示されました。

オンスイク注:新薬の「14日処方制限」との兼ね合い

もうひとつの議論は、週1回投与の持続型インスリン「オンスイク注」に関するものです。

日本の医療保険制度では、新しく保険適用された新薬に対して、安全性のモニタリングや使いすぎ防止の観点から、発売から原則1年間は**「1回あたり14日分までしか処方できない」**という投与日数制限が課せられます。

しかし、オンスイク注は1キットの中に1,500単位ものインスリンがあらかじめ充填されています。通常の維持量(週30〜560単位)で使用した場合、患者さんによっては1本で数週間から数カ月分に相当してしまうため、「14日制限」のルールと物理的な製品規格が矛盾してしまうのではないかという指摘がなされました。

これに対し厚生労働省は、処方制限がかかる期間中は在宅での自己注射向けに外来で処方するのではなく、まずは「医療機関の院内での使用を前提として準備が進められている」と説明し、理解を求めました。


費用対効果評価による薬価見直し:ケサンラ点滴静注が3.9%値下げへ

今回の総会では、新薬の算定だけでなく、すでに保険適用されている医薬品の薬価見直しについても重要な決定がなされました。それが、アルツハイマー病治療薬「ケサンラ点滴静注350mg」(一般名:ドナネマブ)の薬価引き下げです。

費用対効果評価制度とは

日本の医療制度では、革新的で高額な医薬品について、単に効果があるかどうかだけでなく、「費用に見合った十分な延命・生活改善効果が得られているか」を科学的・経済的に検証する「費用対効果評価制度」が導入されています。

効果を測る指標としては「QALY(質調整生存年:健康で質の高い生活を1年間送れることに相当する指標)」が用いられ、1QALYを獲得するために追加でいくらの費用がかかるかを示す「ICER(増分費用効果比)」という数値が算出されます。この数値が高すぎる(=効果に対して費用が高すぎる)と判断された場合、薬価が強制的に引き下げられる仕組みになっています。

ケサンラの評価結果と引き下げの内容

ケサンラは令和6年8月に費用対効果評価の結果が取りまとめられており、今回はその結果に基づく正式な薬価引き下げが承認されました。

認知機能検査であるMMSE(ミニメンタルステート検査)のスコアによって患者さんを2つのグループに分けて分析したところ、以下のような結果となりました。

  1. MMSE 22〜28点の集団(全体の79.6%)

    比較対照とされた先行薬「レカネマブ」に対して、健康アウトカムの統計的な改善が示されませんでした。

  2. MMSE 20〜21点の集団(全体の20.4%)

    従来の治療法(非薬物療法やドネペジル)と比較した結果、ICERが1,000万円/QALY以上となり、一般的な基準値(500万円/QALY)を大きく上回って割高であると判断されました。

この結果に基づき、基準に適合させるための理論価格(1万5,315円)と現在の価格の差額を調整するルールが適用され、現在の薬価である6万6,948円から3.9%引き下げられ、6万4,315円へと改定されることになりました。医療機関や調剤薬局の在庫への影響を考慮し、改定の適用日は令和9年(2027年)2月1日からとされています。


まとめ

今回の中医協総会で承認された新医薬品と制度見直しのポイントを整理すると、以下の通りです。

  1. 皮下注製剤の登場による治療環境の進化

    代表的な抗がん剤「キイトルーダ」の皮下注版である「キイジェクト配合皮下注」(ピーク時予測754億円)や、アルツハイマー病治療薬「レケンビ皮下注ペン」(同555億円)が登場し、点滴による長時間の身体的拘束から患者さんを解放する大きな一歩を踏み出しました。

  2. 希少疾患・難治性疾患への光

    白金系抗がん剤抵抗性の再発卵巣癌に対する「エラヒア」や、びまん性正中膠腫の「モデーソ」、小児の重症免疫異常に対する「ガミファント」など、これまで有効な手段が極めて乏しかった疾患に対する新薬が薬価収載されました。

  3. 慢性疾患治療のQOL向上

    週1回投与で済む新しいインスリン製剤「オンスイク注」や、重症筋無力症の自宅治療を可能にする「クライジェファ皮下注」など、日々の生活負担を大きく減らす製剤が実用化されます。

  4. 現場目線の運用と適正な薬価調整

    新薬の使いやすさを確保するための包装単位の工夫(エキスコプリ)や投与制限の調整、費用対効果評価に基づく「ケサンラ」の薬価引き下げ、供給停止品目の経過措置期間の見直しなど、医療の質と医療保険財政の持続可能性を両立させるためのきめ細かな取り組みが進められています。

医薬品の進歩は、単に病気を治すだけでなく、通院や投薬にかかる患者さんやご家族の時間的・精神的負担を軽減し、日常生活をより豊かなものへと変えていく力を持っています。新薬が医療現場に適切に行き渡り、多くの患者さんのもとで有効に活用されることが期待されます。

タイトルとURLをコピーしました