2026年8月後発品承認 2026年12月発売予定:トラゼンタ・インチュニブなどのジェネリック 

2026年8月後発品承認 2026年12月発売予定:トラゼンタ・インチュニブなどのジェネリック 

厚生労働省は2026年8月17日、後発医薬品(ジェネリック医薬品)の製造販売承認審査の結果を公表しました。今回の承認では、計17成分77品目が新たに認可され、その中でも特に注目される「初後発品(初めて承認される後発品)」は5成分に上ります。糖尿病治療薬の大型製品である「トラゼンタ」や「テネリア」、ADHD治療薬「インチュニブ」、パーキンソン病治療薬「ノウリアスト」など、医療現場での需要が高い薬剤が顔を揃えました。本稿では、今回の承認内容の詳細と、特許を巡る製薬各社の戦略、そして今後の薬価収載に向けた課題について詳しく解説します。

注目されるDPP-4阻害剤の後発品参入:トラゼンタとテネリア

今回の承認において、最も大きな動きが見られたのは2型糖尿病治療薬である「DPP-4阻害剤」のカテゴリーです。

まず、日本ベーリンガーインゲルハイムが製造販売する「トラゼンタ錠(一般名:リナグリプチン)」の後発品には、今回の最多となる8社が承認を取得しました。承認を得たのは、全星薬品工業、東和薬品、ダイト、ニプロ、キョーリンリメディオ、沢井製薬、日新製薬、日本ジェネリックです。トラゼンタは1日1回投与の利便性と、腎機能に関わらず同一用量で投与可能という特徴から、臨床現場で広く普及している薬剤です。

一方、田辺三菱製薬(田辺ファーマ)の「テネリア錠(一般名:テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物)」については、沢井製薬のみが単独で承認を取得するという対照的な結果となりました。テネリアに関しては、先発メーカーである田辺三菱製薬が、物質特許、塩結晶特許、製剤・製法特許など多岐にわたる特許を保有していることを強調しており、特許権侵害に対しては法的措置を講じる姿勢を鮮明にしています。沢井製薬が12月の薬価収載に踏み切るかどうかが、今後の大きな焦点となります。

 

ジャヌビアを巡る「無水物」戦略と特許紛争の経緯

DPP-4阻害剤の先駆けである「ジャヌビア錠(一般名:シタグリプチンリン酸塩水和物)」についても、新たな動きがありました。今回、東和薬品、日新製薬、日本ジェネリックの3社が、シタグリプチンリン酸塩(無水物)として新たに承認を取得しました。

ジャヌビアの後発品を巡っては、過去数年にわたり複雑な特許紛争が続いています。2023年には、サワイグループホールディングス傘下のメディサ新薬が、先発品の「水和物」とは異なる「無水物」として承認を取得しました。これに対し、先発メーカーのMSDは特許権侵害訴訟を提起しましたが、2026年2月にサワイ側が「無水物であっても物質特許の効力が及ぶ」と認める形で認諾し、決着しています。

また、2025年には第一三共エスファが先発品と同一の「水和物」で承認を得ていますが、依然として薬価収載には至っていません。今回承認された3社もメディサ新薬と同じく「無水物」での参入となります。12月の追補収載において、既承認分を含めた各社が実際に市場投入を行うのか、あるいは特許期間の満了を待つのか、各社の判断が注目されます。

ADHDおよびパーキンソン病治療薬の多社参入

中枢神経系疾患の治療薬においても、重要な製品の後発品が承認されました。

武田薬品工業の注意欠陥/多動性障害(ADHD)治療剤「インチュニブ錠(一般名:グアンファシン塩酸塩)」には、東和薬品、沢井製薬、辰巳化学、Meiji Seika ファルマ、共和薬品工業、ニプロの6社が参入します。インチュニブは小児および成人双方のADHD治療において重要な選択肢となっており、後発品の登場による医療費抑制効果が期待されます。

また、協和キリンのパーキンソン病治療剤「ノウリアスト錠(一般名:イストラデフィリン)」には、大原薬品工業、日本ケミファ、東和薬品、共和薬品工業、沢井製薬の5社が承認を得ました。ノウリアストは、既存のアデノシンA2A受容体拮抗薬として独自のポジションを築いており、パーキンソン病におけるウェアリング・オフ現象の改善に用いられます。

これら中枢神経系の薬剤は、患者ごとの服薬コンプライアンスや剤形の工夫が求められるため、後発品各社がどのような付加価値を提示するかも注目点の一つです。

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多発性骨髄腫治療薬ポマリストと適応症の限定

希少疾患・難治性疾患の分野では、ブリストル マイヤーズ スクイブ(BMS)の「ポマリストカプセル(一般名:ポマリドミド)」の後発品が承認されました。参入するのは東和薬品と富士製薬工業の2社です。

特筆すべきは、後発品の承認条件です。先発品であるポマリストの用法・用量は、「デキサメタゾン併用」と「ボルテゾミブ及びデキサメタゾン併用」の2種類が設定されています。しかし、今回の後発品については「デキサメタゾン併用」の用法のみで承認されました。このように、特許の関係や再審査期間の影響により、先発品と一部の適応症や用法・用量が異なる「虫食い承認」は、がん治療薬の後発品においてしばしば見られる現象です。処方にあたっては、当該後発品がどの治療ライン・併用療法で使用可能かを慎重に確認する必要があります。

ジクトルテープの高用量製剤における初後発品

経皮吸収型製剤では、久光製薬の「ジクトルテープ(一般名:ジクロフェナクナトリウム)」の後発品が、久光製薬のグループ会社である久光ファーマによって承認されました。

ジクロフェナクナトリウムを含有する貼付剤自体は古くから存在し、既に多くの後発品が流通していますが、ジクトルテープはがん性疼痛などの持続性疼痛を対象とした高用量製剤であり、このタイプ(全身性作用を期待する経皮吸収型製剤)の後発品は今回が初めてとなります。この製品が、先発品と同一の権利関係を持つ「オーソライズド・ジェネリック(AG)」に該当するかどうかは現時点で公表されていませんが、先発メーカーの戦略的なラインナップ拡充の一環と考えられます。

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薬価算定のルールと特許リンケージの壁

今回の承認に伴い、今後の焦点は12月の薬価収載と「薬価」そのものに移ります。

まず、薬価算定には「内用薬で収載希望が7品目を超える場合」のルールが適用される見込みです。トラゼンタのように8社が参入する場合、原則として先発品の薬価の0.4掛け(40%)という非常に低い価格が設定されることになります。これにより、医療費抑制効果は高まる一方で、メーカー側にとっては利益確保が厳しい状況となります。

また、ノウリアストとポマリストについては、革新的新薬の価値を維持するための「新薬創出・適応外薬解消等促進加算(PMP)」が適用されていました。後発品の薬価を算定する際は、このPMPによる加算分をあらかじめ差し引いた上で、0.5掛け(50%)の係数を乗じる計算が行われます。

さらに、審査の過程では「パテントリンケージ(特許連携)」の専門委員制度が活用されたことが報告されています。これは、承認前に特許侵害の有無を確認する仕組みですが、委員会の判断を経て承認されたとはいえ、上市後に先発メーカーから提訴されるリスクが完全に排除されるわけではありません。トラゼンタやテネリアの事例で見られるように、承認=即発売という単純な図式が描きにくい成分が含まれているのが、今回の承認の特徴といえます。

まとめ

2026年8月の後発医薬品承認は、糖尿病治療薬や精神神経系疾患、がん治療薬といった主要な治療領域において、重要な節目となりました。

  1. トラゼンタへの多社参入:8社が承認を受け、最大規模の競争と大幅な薬価引き下げが見込まれます。

  2. 特許戦略の複雑化:テネリアの単独承認やジャヌビアの無水物承認など、特許の網をどう潜り抜けるか、各社の戦略が分かれています。

  3. 希少疾患領域への進出:ポマリストなどの専門性の高い薬剤でも後発品が登場し、治療の選択肢が広がっています。

  4. 供給の安定性と信頼性:承認品目数でトップの東和薬品(18品目)や沢井製薬(12品目)をはじめとする各社には、特許問題をクリアした上での安定供給が求められます。

今後、12月の追補収載に向けて、どの企業が実際に製品を市場へ投入するのか、そして先発メーカーによる新たな法的措置があるのか、業界の動向から目が離せません。医療費適正化と安定供給のバランスをどう取るか、日本の医薬品市場は大きな転換点を迎えています。

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