ツイミーグ錠(イメグリミン)とメトホルミンの類似点・相違点について
2021年5月末に新規作用機序の血糖降下剤「ツイミーグ錠」が販売されました。
ツイミーグ錠は濃度依存的にインスリン分泌を促す膵臓での作用と、肝臓や骨格筋での糖代謝を改善する膵臓外作用という2つの機序を有する医薬品です。
ツイミーグ錠の成分名は「イメグリミン」と言い、なんとなくメトホルミンに名前が似ているなぁと思ったので、今回はイメグリミンとメトホルミンの類似点・相違点について調べてみました。
図Aがメトグルコ(メトホルミン)の構造式です。
これにエタンがくっつくとツイミーグ錠(イメグリミン)の構造(図B)となります。
実際にツイミーグ錠(イメグリミン)はメトホルミンをもとにしてワンステップの化学反応を介して合成されます。
そのため、ヒトへの効能効果や服用量に類似点が確認できます。
ツイミーグ錠とメトグルコ錠の類似作用について
ツイミーグ錠もメトグルコ錠も以下の薬理作用は同じです。
1:肝臓に蓄えられている糖分(グリコーゲン)を血液中に放出させないようにして、血糖上昇を抑える
2:筋肉や脂肪組織でのインスリン抵抗性を改善して、糖を組織に取り込みやすくすることで血液中の糖分の量を低くします。さらに筋肉にて取り込まれた糖分の利用を促します。
ツイミーグ錠とメトグルコ錠の相違作用
ツイミーグ錠の単独作用
1:膵臓(インスリンを分泌する臓器)に対して、濃度依存的なインスリン分泌を促す作用および膵臓β細胞の維持作用
(ミトコンドリア機能障害改善作用)
ツイミーグ錠服用後のインスリン分泌作用のポイントは血液中の糖濃度が高ければインスリン分泌をうながし、低血糖状態では分泌を控えるという点です。
ラットでの実験ですが、SU剤(トルブタミド)を服用したラットでは低血糖状態でも膵臓からインスリンが放出されたのに対して、ツイミーグ錠を服用した低血糖状態のラットではベースラインを超えるようなインスリン分泌が検出されなかったと報告されています。
2:膵臓β細胞保護効果
作用機序の詳細は不明ですが、ラットでの実験によると5週間ツイミーグ錠を服用したラットでは、服用していない群と比較して膵臓β細胞が減少する率が低下した(膵臓β細胞が壊れずに残った)ことが報告されています。ツイミーグ錠を服用したラットではβ細胞の適切な増加およびアポトーシス(プログラムされた細胞死)の割合を低下させたことでβ細胞が保護された要因と考えられています。
3:細胞内環境
NAD+合成増加
β細胞内においてグルコースに呼応してCa2+を細胞内へ流入させてインスリン分泌を促す
ミトコンドリアの呼吸低下作用がない
メトグルコ錠の単独作用
1:食事に含まれる糖分が小腸から吸収されるのを抑制します(糖分吸収抑制作用)
ツイミーグ錠の添付文書・インタビューフォームを見てみたのですが、小腸からの糖分吸収抑制作用については言及されていませんでした。
注意)メトグルコ錠による糖分吸収抑制作用については、製造販売している大日本住友製薬のHPに記されています。
ミトコンドリア呼吸低下作用あり
インスリン分泌作用なし
ツイミーグ錠とメトホルミン錠の併用について
治験データではツイミーグ錠1回1500mgとメトホルミン1回850mgを1日2回6日間併用投与したデータがあります。
ツイミーグ錠はメトホルミンの薬物動態に影響を与えなかったとインタビューフォームには記されています。
乳酸アシドーシスの副作用について
腎不全ラットを対象としたデータですが、メトホルミンを50mg/kg/h以上を腎不全ラットへ投与すると、血中乳酸濃度上昇および血中水素イオン濃度上昇が確認され、乳酸アシドーシスによる死亡が生じているのに対して、ツイミーグ錠はでは50mg/kg/h群、75mg/kg/h群、100mg/kg/h群ににおいて、乳酸アシドーシスの惹起は確認されず、乳酸アシドーシスによる死亡は確認されなかったと記されています。
実際の臨床データ、市販後調査などはこれから投与実績が増えるにしたがって報告が増えるかと思います。膵臓β細胞保護作用を有する血糖降下剤という素敵な効果が期待されますので、今後とも臨床報告をフォローしていこうと思います。