再分包された漢方薬の保管術:湿気による変質を防ぎ安全に服用するための全知識

再分包された漢方薬の保管術:湿気による変質を防ぎ安全に服用するための全知識

皆さんは病院や薬局で処方された漢方薬を、どのように保管していますか?

漢方薬は、元々「アルミの袋」に入っていることが多いですが、お子様向けや高齢者の方、あるいは複数の漢方薬や生薬を混ぜて調剤される場合、袋を詰め替えた「再分包(さいぶんぽう)」という状態で渡されることがあります。

実は、この「詰め替えられた漢方薬」は、私たちが思っている以上に湿気に弱く、保管方法を誤ると、わずか数時間で品質が変化してしまうこともあるのです。特に梅雨時期や夏の湿気が多い季節は要注意です。

今回は、ツムラ漢方製剤エキス顆粒を例に、再分包された漢方薬を湿気から守り、安全に飲み切るための正しい保管方法と、絶対に避けるべき扱いについて徹底解説します。

以下に再分包された漢方薬の保管方法についてのPDFファイルを添付します。必要な方はダウンロードしてください。ブラウザはgoogle chromeを推奨します。

漢方薬の湿度対策


1. 「グラシン紙」と「セロポリ」とは? 漢方薬を包む素材を知ろう

まず、薬局で渡される漢方薬の袋(包材)について説明します。「グラシン紙」や「セロポリ」という言葉ですが、一般的に馴染みが薄い言葉ですので、少しご説明いたします。これらは漢方薬を包むための代表的な素材です。

グラシン紙(ぐらしんし)

グラシン紙とは、ツルツルとした光沢があり、少し透けて見える薄い紙のことです。クッキングペーパーや、高級なお菓子の仕切り紙などをイメージすると分かりやすいかもしれません。

漢方薬の「薬包紙」として古くから使われており、油分に強く、粉薬がくっつきにくいのが特徴ですが、「湿気を通しやすい」という弱点があります。

セロポリ

セロポリとは、「セロハン」と「ポリエチレン樹脂」を貼り合わせた素材のことです。見た目は透明なプラスチックフィルムの袋で、中身の顆粒がよく見えます。

グラシン紙に比べると湿気を防ぐ力(防湿性)は高いですが、それでもメーカーが本来提供しているアルミ包装に比べれば、湿気を通しやすくなっています。

これらの袋に入った状態の漢方薬は、アルミ包装から出された瞬間から、外気の影響をダイレクトに受け始めます。そのため、私たちが自宅でどう保管するかが、薬の「質」を左右することになるのです。


2. なぜ湿気に注意が必要なのか? わずか数時間での変化

「少し湿気るくらいなら大丈夫だろう」と考えるのは禁物です。漢方薬、特にエキス顆粒は非常に吸湿性が高く、水分を含むことで以下のようなリスクが生じます。

① 性状(色や形)の変化と品質の低下

ツムラの調査データによると、高湿度(25℃、湿度81%)の環境に漢方薬(抑肝散など)を裸の状態で置いた場合、驚くべき結果が出ています。

  • 開始から4時間まで: 水分量は基準内、色や形に変化なし。

  • 8時間後: 水分量が基準を超え、形が変わり始める。

  • 24時間以降: 水分量が大幅に基準を超え、見た目にも明らかな色や形の変化(ベタつき、固まり)が現れる。

つまり、朝、湿気の多いキッチンに薬を出しっぱなしにしておくと、夕方にはすでに薬の品質が変わり始めている可能性があるのです。

漢方と湿度

② 微生物の繁殖リスク

漢方薬が過度に湿気を吸うと、成分が変質するだけでなく、カビや細菌などの微生物が繁殖しやすい環境になってしまいます。健康を守るための薬が、原因で体調を崩す原因になっては本末転倒です。

「色が濃くなった」「粒が固まってベタベタする」といった変化は、水分を吸いすぎて微生物が繁殖しているかもしれないという「警告サイン」なのです。


3. 【実践】漢方薬を守るための「正しい保管方法」

では、再分包された漢方薬をどのように保管すればよいのでしょうか。実験データに基づいた、最も効果的な方法をご紹介します。

① 基本は「湿気の少ない涼しいところ」

直射日光が当たる場所、湿気の多いシンク周り、温度が上がりやすい車内などは絶対に避けてください。

理想的なのは、「チャック付きのビニール袋」に入れ、さらに「乾燥剤」を一緒に入れることです。

② チャック付きポリ袋+乾燥剤(最強の組み合わせ)

実験では、グラシン紙やセロポリの袋のままでは1週間以内に品質が低下しましたが、チャック付きポリ袋に乾燥剤(シリカゲルや塩化カルシウムなど)を入れて保管した場合、3ヶ月間も品質が保たれたという結果が出ています。

100円ショップなどで手に入るチャック付き袋で構いませんので、必ず密閉して保管しましょう。

③ パッキン付きのタッパーを活用する

袋だけでなく、パッキンがついた密閉性の高い容器(タッパー等)も有効です。ただし、タッパーは蓋を開けるたびに大きな面積で外気と触れ合うため、出し入れは素早く行い、必ず乾燥剤を底に敷いておくのがコツです。

④ 冷蔵庫保管の注意点

「冷蔵庫なら安心」と思われがちですが、注意が必要です。冷蔵庫の中は確かに乾燥していますが、「出し入れの際の結露」が最大の敵になります。

冷えた薬を暖かい部屋に出すと、袋の表面や内側に水滴がつきます。これが原因で薬が湿気てしまうのです。冷蔵庫に保管する場合は、服用する分だけを素早く取り出し、残りはすぐに冷蔵庫に戻すようにしてください。

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4. 湿気てしまった漢方薬の見分け方

もし保管していた漢方薬に変化が見られたら、服用してはいけません。以下のポイントをチェックしてください。

  • 色の変化: 元の色よりも茶褐色が濃くなっている、または黒ずんでいる。

  • 形状の変化: 顆粒同士がくっついて固まっている。袋にベタつきを感じる。

  • 匂いの変化: 本来の漢方の香りとは違う、カビ臭いような、あるいは不快な匂いがする。

「もったいないから」と服用してしまうと、胃腸障害などを引き起こす恐れがあります。肉眼で見て少しでも「おかしいな」と感じたら、その薬は廃棄し、新しいものを処方してもらうか、薬剤師に相談しましょう。


5. 梅雨・夏場に混合調剤された場合の特別対策

冒頭でも触れましたが、特に注意が必要なのは、「漢方薬と生薬を混ぜて、新しく袋に入れ直した(混合調剤)」場合です。

梅雨の時期や夏の長雨の時期は、室内の湿度が簡単に70%を超えます。本来アルミ袋で守られているはずのエキス顆粒が、混合のために開封され、湿気を通しやすいセロポリやグラシン紙に入れ替えられると、その瞬間から劣化のカウントダウンが始まります。

このような場合は、以下のステップで対策を徹底してください。

  1. 薬局で乾燥剤をもらう: 再分包される場合は、薬剤師さんに「湿気が心配なので乾燥剤を付けてほしい」と伝えてみましょう。

  2. 帰宅後すぐに密閉容器へ: 薬局でもらった袋のまま放置せず、すぐに自宅の密閉チャック袋やタッパーに移します。

  3. 乾燥剤の量を確認: 長期保管(例えば90日分など)の場合、小さな乾燥剤1つでは足りないことがあります。計算上、90日分の漢方薬を守るには、約23g〜25g程度の乾燥剤(塩化カルシウムの例)が必要とされています。市販の大きめの乾燥剤を追加することも検討しましょう。


6. まとめ:漢方薬を安全に飲み続けるために

漢方薬は自然の恵みを凝縮した繊細な医薬品です。その効果を最大限に引き出し、安全に服用するためには、私たちユーザー側の「保管の工夫」が欠かせません。

今回のポイントをまとめます。

  • 再分包された薬(グラシン紙・セロポリ)は、アルミ包装よりも圧倒的に湿気に弱い。

  • 湿気を吸うと、わずか8時間程度で品質が変わり始め、微生物が繁殖するリスクがある。

  • 保管は「チャック付きポリ袋」+「乾燥剤」+「涼しい場所」が鉄則。

  • 冷蔵庫保管は「結露」に注意。出し入れは迅速に行う。

  • 色が変わった、固まった、ベタつくといった変化がある薬は絶対に飲まない。

特に、ご高齢の方や小さなお子様が服用される場合は、周りのご家族が保管状態をチェックしてあげることが大切です。

「漢方薬は生き物」という意識を持って、正しい保管方法を実践し、日々の健康づくりに役立てていきましょう。

もし保管方法に不安がある場合や、薬の状態が気になる場合は、遠慮なくかかりつけの薬剤師に相談してください。専門的な視点から、その時期や環境に合わせた最適なアドバイスをくれるはずです。

正しい知識と少しの手間で、漢方薬の品質は守れます。今日からぜひ、お持ちの漢方薬の保管場所をチェックしてみてくださいね。

写真のようなアルミ袋に乾燥剤やシリカゲルを入れると理想的です。

 

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