おじさん薬剤師の日記

調剤薬局で勤務するおじさんです。お薬のはたらきを患者様へお伝えします

痛み止め 痺れ・冷え・末梢神経障害 貼り薬

モーラステープは何枚まで貼ることができるのか

投稿日:2017年11月19日 更新日:

モーラステープは何枚まで貼ることができるのか

「モーラステープは1日何枚まで貼っても問題ないんですか?」と患者様からご質問をいただくことがあります。モーラステープの添付文書には具体的な枚数が記載されておりませんので、同じ成分の内服薬の服用上限値を利用して湿布薬の使用枚数制限を計算してみました。

体内に入ってきた薬の総量(AUC)を排出するために必要な労力を数値化して表示する方法で検討してます。痛み止めとしての効き目の評価ではないことをご了承ください。データはすべてインタビューフォームから引用しております。

モーラステープやロキソニンテープと貼るカイロの併用について

モーラステープをはがすタイミングについて

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血液中のモーラステープ成分の量

モーラステープ(ケトプロフェン)には飲み薬がありません(以前はありました)。国内では坐薬か筋注薬しかありませんので、これを比較対象として考えます。
ケトプロフェン坐剤75mg1本:血中に入ってきた薬の総量15500ng/ml(AUC)
ケトプロフェン筋注50mg1本:血中に入ってきた薬の総量10000ng/ml(AUC)

坐薬は最大150mg(75mgを2本)まで、筋注は適宜増減を含めて4回まで使用可能であることから
ケトプロフェンの最大使用量は10000×4=40000ng/ml
単純計算ではないかとは思いますが、1日40000ng/mlのケトプロフェンを取り込んでも肝臓腎臓を経由して体外へ排泄可能であると解釈できます。

ではモーラステープについて使用枚数について検討します。
モーラステープ20mg8枚(160mg)を24時間貼付すると、血中に入ってきた薬の総量はおよそ18209ng/ml(インタビューフォームのデータ)程度と考えられます。

ケトプロフェンは最大40000ng/mlまで体内に取り入れることが可能ですので、
モーラステープ20mgは1日最大17枚まで貼付しても、一過性であれば肝腎を経由して排泄可能な量であることが分かりました。

添付文書上の計算ではこのような数値となります。しかし、痛み止めの注射と痛み止めの貼り薬では用途がことなります。注射は病院で一過性に投与するものであるのに対し、貼り薬は自宅で毎日貼ることができます。

これだけの枚数は連日にわたり貼付しつづけるとケトプロフェン注射や坐薬の副作用である消化器系の副作用(消化性潰瘍・胃部不快感)や肝機能障害の副作用が出る恐れもあります。体の痛みは一日や二日では解消されないケースが多々ありますので、連日モーラステープを使用する際は、1日貼付枚数を制限したほうがよいと考えます。

モーラステープをはがすタイミングについて

まとめ

腎臓や肝臓への負担を考えたとき、同一成分の内服薬(坐薬)を使用したときに血中に入ってきた薬の総量を比較対象として貼り薬は1日何枚まで貼ることができるのかを検討した結果

ボルタレンテープ100mg:16枚
ロキソニンテープ100mg:54枚
モーラステープ20mg:17枚

という独自の指標を出すことができました。ロキソニンテープに関しては活性代謝物換算の指標なので参考値程度かなと思います。

また、モーラステープ20mg17枚=モーラステープL40mg8.5枚と置き換えますと、モーラステープL40mgを1日6~8枚程度使用している患者さんは、ゼロではない気がします。モーラステープを大量に処方されている患者さんに対しては胃腸障害の副作用や腎機能、肝機能について注意喚起を行うことは有用と感じました。

モーラステープやロキソニンテープと貼るカイロの併用について

モーラステープをはがすタイミングについて

ちなみに最高血中濃度は筋注をすると6700ng/mlまで上昇し、その後すみやかに下降しますが、モーラステープL40mgを8枚貼ると1800ng/mlの血中濃度が24時間続きます。イメージとしては前者は一過性で負荷がかかり、後者は慢性的に負荷がかかることになります。私としては後者の負荷を連日にわたり続けることは避けた方がいい気がします。

 

-痛み止め, 痺れ・冷え・末梢神経障害, 貼り薬
-モーラステープ, 何枚, 毎日

執筆者:ojiyaku


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