薬局での支払いが増える?OTC類似薬の一部保険外療養と処方箋の変更点
ドラッグストアや薬局の店頭で誰でも購入できる一般用医薬品(市販薬)と同じような有効成分を含む医療用医薬品について、健康保険の給付ルールを大きく見直す議論が本格化しています。
市販薬と成分や使い道が重なるこれらの処方薬は「OTC類似薬」と呼ばれています。厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)において、2026年(令和8年)9月9日、このOTC類似薬の給付見直しに関する最新資料が公表されました。以下の公開されたPDFファイルを添付します。
今回の見直しでは、対象となる処方薬について、薬剤費の4分の1にあたる金額を患者自身が「別途の負担(追加負担)」として支払う「一部保険外療養」という新たな仕組みが導入される方針です。これに伴い、私たちが医療機関で受け取る処方箋の様式が改定されて専用のチェック欄が新設されるほか、対象となる77成分(1,042品目)のリストや、どのような患者が追加負担を求められ、どのような場合に負担が免除されるのかという詳細な整理が進められています。
制度の全体像、処方箋の変更点、具体的な対象医薬品、費用の計算方法、そして免除対象をめぐる議論の到達点について詳しく紐解いていきます。
OTC類似薬の見直しと「一部保険外療養」の基礎知識
なぜいまOTC類似薬の保険給付が見直されるのか
風邪を引いたときや頭痛がするとき、ドラッグストアで市販の風邪薬や解熱鎮痛剤を購入して自費で治す人がいる一方で、医療機関を受診して保険適用の処方薬を受け取る人もいます。後者の場合、健康保険の適用によって薬剤費の自己負担は原則1割から3割で済むため、実質的な負担額に大きな差が生じていました。
こうした背景から、政府内では以前より「医療機関を受診して保険給付を受ける患者と、自費で市販薬を購入して対応している患者との間で公平性を確保すべきではないか」「軽微な症状に対する処方薬に多額の公費や保険料が充てられている状況を見直し、現役世代を中心とした保険料負担の上昇を抑えるべきではないか」という議論が重ねられてきました。
こうした課題を解決するために創設されたのが「一部保険外療養」という制度です。
「全額自己負担」ではなく「薬剤費の4分の1」を別途負担する
一部保険外療養の特徴は、対象となる薬のすべてを保険の対象外(10割全額自己負担)にするわけではないという点です。
対象となるOTC類似薬を処方された場合、その医薬品の価格(薬価)のうち「4分の1(25%)」を「別途の負担(特別の料金)」として患者が全額自己負担します。そして、残りの「4分の3(75%)」に対して通常の健康保険を適用し、年齢や所得に応じた自己負担割合(1割〜3割)を窓口で支払うことになります。
つまり、診察料や検査料、調剤基本料といった医療技術料には従来どおり保険が適用され、対象となる薬の本体価格の4分の1だけが上乗せされる構造となっています。
施行時期と見込まれる財政効果
この制度は、健康保険法等の一部を改正する法律に基づき、2027年(令和9年)3月の施行が想定されています。
国会審議の答弁によると、本制度の導入によって年間約900億円の医療費削減効果が見込まれています。その内訳は、処方をきっかけに患者が市販薬の利用へ行動を変えることによる医療費の減少が約400億円、従来の保険給付から患者の別途負担へと移行する部分が約500億円と試算されています。これにより、国民1人あたり年間約400円(月額約30円)の保険料負担軽減につながるとされています。
処方箋の様式が変更!新設される「一部保険外療養」欄のルール
処方箋に「一部保険外療養」のチェック欄が追加
制度の導入に伴い、厚生労働省の省令である「保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)」が改正され、医師が発行する処方箋のフォーマットが新しくなります。
具体的には、処方箋の各薬剤の記載欄の横に、新しく「一部保険外療養」というチェック欄が設けられます。対象となるOTC類似薬を処方する際、医師はその薬が「別途の負担を求める対象」であるか「対象外」であるかを判断し、次のように記載することになります。
-
別途の負担の対象である場合:「○」を記載
-
別途の負担の対象外である場合:「ー」を記載
薬局の薬剤師は、処方箋に記載されたこの記号を確認し、調剤時の窓口負担を計算します。なお、全国の医療機関で新しい処方箋用紙への切り替えが滞りなく進むよう、制度施行後も当面の間は従来の処方箋様式を使用できる経過措置が設けられる予定です。
【処方箋記載のイメージ(対象のOTC類似薬を処方する場合)】
--------------------------------------------------------------
変更不可(医療上必要) | 患者希望 | 一部保険外療養 | 処方欄
| | ○ | ○○錠(負担対象)
| | ー | △△錠(負担対象外)
--------------------------------------------------------------
長期収載品(先発医薬品)の選定療養との重なりはどうなるのか
医療現場では、後発医薬品(ジェネリック医薬品)があるにもかかわらず患者の希望で先発医薬品を選んだ場合に特別の料金が発生する「長期収載品の選定療養」が既に導入されています。
もし、処方された医薬品が「長期収載品」であり、かつ「OTC類似薬」にも該当する場合、2つの追加負担が重複して発生してしまうのではないかという懸念が生じます。
この点について厚生労働省は、患者の負担が過度に複雑化することを避けるため、「OTC類似薬の一部保険外療養に該当する場合は、長期収載品の選定療養の特別の料金は求めない」というルールを明確に示しました。処方箋上も、OTC類似薬として「○」が付いた医薬品については、長期収載品としての特別料金は発生しない運用となります。
具体例としては、以下の場合分けを参照ください
ロキソプロフェンの先発品のロキソニンなど、長期収載品の選定療養の対象医薬品であり、OTC類似薬の一部保険外療養の対象となる場合には長期収載品の選定療養と患者から重複して徴取することを避ける。一部保険外療養欄に「〇」の印があれば一部保険外療養のみの負担を徴取。一方で、一部保険外療養に「ー」がついており、「患者希望」欄に〇がついている場合は、長期収載品の選定療養の特別の料金の対象(患者希望)とする。一方で、変更不可(医療上の必要性)に〇がついている場合は、長期収載品の選定療養の特別の料金の対象外(医療上必要)と判断する。
院内掲示やウェブサイト掲載の義務付けは見送り
通常、差額ベッド代や予約診療などの「選定療養」を医療機関が導入する場合、その内容や費用を院内やウェブサイトに掲示する義務が課せられています。
しかし、今回の一部保険外療養については、個々の医療機関が自由に料金を設定する選定療養とは異なり、全国すべての医療機関・薬局で国が一律に定めた割合(薬価の4分の1)で実施される仕組みです。そのため、医療現場の事務負担に配慮し、院内掲示やウェブサイトへの掲示義務は課さない方針が示されました。
対象となる医療用医薬品「77成分」の全体像
77成分が選定された基準
厚生労働省の技術的検討会において、対象となる医薬品の基準が厳格に定められました。選定の基本ルールは、「市販薬(OTC医薬品)と有効成分および投与経路が同一であり、1日あたりの最大用量が異ならない医療用医薬品」を機械的に抽出するというものです。
この基準に基づいて抽出された結果、合計77成分、品目数にして1,042品目(2026年8月1日時点)が対象候補としてリストアップされました。以前の検討段階から、薬価収載の動向や市販薬の流通実態を踏まえて「ポリエンホスファチジルコリン」が除外され、新たに睡眠導入剤の「ラメルテオン」が追加されるなどの見直しが行われています。
日常的に処方される身近な医薬品が多数該当
対象リストには、内科、整形外科、皮膚科、耳鼻咽喉科などで日常的によく処方される薬が幅広く含まれています。
主な症状と代表的な有効成分は以下のとおりです。
-
解熱・鎮痛・消炎薬
-
ロキソプロフェンナトリウム水和物(代表的な解熱鎮痛薬)
-
イブプロフェン
-
ジクロフェナクナトリウム
-
インドメタシン、フェルビナク、サリチル酸メチル配合剤(湿布や塗り薬など)
-
-
胃腸薬・下剤
-
酸化マグネシウム(緩下剤・制酸剤)
-
ピコスルファートナトリウム水和物、ビサコジル(便秘薬)
-
イトプリド塩酸塩、炭酸水素ナトリウム(胃薬)
-
-
アレルギー性鼻炎・抗アレルギー薬
-
フェキソフェナジン塩酸塩
-
ロラタジン
-
エピナスチン塩酸塩
-
ベポタスチンベシル酸塩
-
モメタゾンフランカルボン酸エステル水和物(点鼻薬など)
-
-
風邪症状・呼吸器用薬
-
L-カルボシステイン(去痰薬)
-
サリチルアミド・アセトアミノフェン等の配合剤(総合感冒剤)
-
-
皮膚用薬・外用薬
-
ヘパリン類似物質(保湿剤)
-
尿素(角化症・皮膚軟化薬)
-
白色ワセリン
-
ベタメタゾン吉草酸エステル、デキサメタゾン等のステロイド外用薬
-
テルビナフィン塩酸塩、ブテナフィン塩酸塩(抗真菌薬・みずむし薬)
-
-
その他
-
消毒用エタノール、ポビドンヨード(殺菌消毒剤)
-
トリアムシノロンアセトニド(口内炎治療薬)
-
ラメルテオン(睡眠導入剤)
-
このように、誰もが一度は処方された経験があるような薬が多数含まれていることが、今回の制度改定の大きな特徴です。
実際の負担はどう変わる?薬代の計算方法と具体例
費用の計算構造
一部保険外療養が適用された場合、薬局での支払額はどのように算出されるのでしょうか。厚生労働省が示した計算モデルに従って、具体的な計算の流れを確認してみます。
計算の基本ステップは以下の4段階です。
-
「別途の負担(A)」の計算
-
「対象医薬品の価格(薬価)の4分の1」に「処方された全数量」を掛け合わせます。
-
算出された金額の1の位は四捨五入(10円単位に端数処理)します。
-
-
「保険の対象となる費用(B)」の計算
-
残りの「薬価の4分の3(保険外併用療養費の算出に用いる価格)」をもとに、現行の診療報酬算定ルールに従って薬剤料の「点数(1点=10円)」を算出します。
-
1剤1日分の価格を所定のルールで点数化し、日数分を掛け合わせて合計点数と保険対象費用を求めます。
-
-
「患者の保険自己負担(C)」の計算
-
ステップ2で求めた保険対象費用(B)に、患者の自己負担割合(3割など)を掛けます。
-
-
「患者負担の総額(E)」の確定
-
別途の負担(A)と保険自己負担(C)を合計した金額が、最終的な支払い額になります。
-
具体的な計算例(1日2錠・30日分処方された場合)
資料に掲載されたモデルケースを用いて、自己負担割合が3割の患者が内服薬を処方された場合をシミュレーションします。
-
対象医薬品:薬価 16.50円 / 錠
-
処方内容:1日2錠、30日分(合計60錠)
【価格の分解】
・薬価の4分の1【a】:4.13円
・保険計算に用いる価格(薬価の4分の3)【b】:12.38円
【ステップ1:別途の負担(A)の計算】
4.13円【a】 × 2錠 × 30日 = 247.8円
→ 1の位を四捨五入して「250円」
【ステップ2:保険対象費用(B)の計算】
・1日あたりの薬剤費:12.38円【b】 × 2錠 = 24.76円
・算定告示のルール(15円を超え25円以下は2点)により、1日あたり「2点」
・30日分の点数:2点 × 30日 = 60点
・保険対象となる費用:60点 × 10円 =「600円」
【ステップ3:患者自己負担(C)の計算】
600円 × 0.30 =「180円」
(※残りの420円は健康保険から「保険外併用療養費」として給付されます)
【ステップ4:患者負担の総額(E)】
別途の負担(A)250円 + 保険自己負担(C)180円 =「430円」
見直し前であれば、16.50円×60錠=990円(算定点数100点=1,000円)に対して3割負担で約300円の支払いだったものが、新制度では430円となり、実質的に約130円の負担増となります。
なお、この別途の負担に対する消費税の取り扱いについては、政府内で現在検討が進められています。
主な処方薬における負担増の目安
厚生労働省が公表した3割負担の場合の概算イメージによると、一般的な処方日数における窓口負担の変化は以下のようになります(※薬剤料のみの比較であり、初診料や調剤技術料などは除きます)。
-
解熱鎮痛薬(5日分):見直し前 45円 → 見直し後 72円(市販薬の目安:約500円)
-
去痰薬(5日分):見直し前 45円 → 見直し後 72円(市販薬の目安:約1,500円)
-
便秘薬(30日分):見直し前 360円 → 見直し後 570円(市販薬の目安:約2,000円)
-
抗アレルギー薬(30日分):見直し前 540円 → 見直し後 855円(市販薬の目安:約1,000円)
見直し後であっても、市販薬を全額自費で購入する場合と比べれば依然として自己負担額は低く抑えられていますが、慢性疾患などで長期間にわたり服用を続ける患者にとっては、積み重なる負担を意識せざるを得ない変化といえます。
追加負担を免除されるのは誰?「配慮措置」をめぐる議論と整理
この制度において最も活発な議論が行われているのが、「どのような患者や使い方であれば、追加負担を免除(対象外と)するべきか」という配慮措置の範囲についてです。
2026年8月に公表された中間とりまとめに対しては、897件のパブリックコメントが寄せられ、中医協や社会保障審議会医療保険部会、患者団体ヒアリングでも多数の意見が交わされました。これらを踏まえて厚生労働省が整理した方向性を見ていきます。
1. 外形的に判断される免除対象(子ども・低所得者)
診察室での医師の負担を軽減するため、患者の年齢や資格証などから客観的に判断できる枠組みが整理されています。
-
18歳年度末までの子ども:成長過程にある子どもへの配慮として、一律に対象外(別途負担なし)とされます。
-
生活保護受給者:国会審議の答弁を踏まえ、低所得者への配慮措置として生活保護の医療扶助を受けている患者は対象外と整理されました。なお、一般の低所得者層(非課税世帯など)については、個人の所得情報を診察時に医師が把握することはプライバシー保護の観点から困難であるため、生活保護受給者に限定する方向となっています。
2. 重篤な疾患や特定の治療に対する配慮(がん・難病・入院)
生命や生活に深刻な影響を与える疾患の治療に伴って処方される医薬品については、追加負担を求めない方針が明確にされています。
-
がん患者:がんの治療中、またはがんやその治療に関連して生じた症状に対する医薬品の使用は対象外とされます。診断名に「がん」と直接入っていない悪性リンパ腫、白血病、脳腫瘍、骨肉腫なども当然に含まれます。ただし、がんの確定診断に至っていない「がん疑い」の状態については、基準の設定が難しく医師による判断のブレが生じる懸念があるため、対象外とはせず負担対象とする整理がなされました。
-
指定難病・小児慢性特定疾病の患者:指定難病および付随して発生する傷病に対する処方は対象外となります。医療現場での確認を円滑にするため、受給者証だけでなく「指定難病の登録者証」などを提示することで客観的に確認できる運用が目指されています。
-
入院中の処方:入院患者は医師の管理下で集中的な治療を受けている状態にあることから、退院時の処方も含めて対象外と整理されています。在宅療養患者の扱いについては「外来通院に近い」との判断から一律免除とはされていません。
3. 急性期管理や医療行為に伴う処方(処置・手術後14日ルール)
医療機関での検査や処置に伴って使われる薬についても、以下のルールで整理されています。
-
処置・手術・検査に伴う処方:生検や穿刺などの侵襲を伴う検査、処置、手術に伴う疼痛管理など、急性期管理を目的として処方される薬は「14日分以内」であれば対象外とされます。14日を超える場合は、治癒が遅れている場合であっても原則として負担対象となります。
-
検査中の使用:胃カメラ検査時に服用する炭酸水素ナトリウムや、日帰り手術で使用される消毒用エタノールなど、検査や処置のその場で直接使用されるものは対象外です。
4. 慢性疾患における「長期使用」の判断基準
最も議論が紛糾しているのが、慢性疾患の患者に対する「長期使用」の扱いです。
中間とりまとめでは、内服薬について「1年という単位の中で、医師が年間を通じた症状の持続と治療の継続性を確認し、対象医薬品の長期使用等が医療上必要である場合」として、「年間処方日数がおおむね50週(ほぼ通年)を超える場合」を対象外とする基準が示されました。
しかし、パブリックコメントや学会・患者団体からは「50週の実績を確認するのは医療現場の事務負担が重すぎる」「治療開始から50週経つまでは免除されないのか」といった懸念が相次ぎました。これに対し厚生労働省は、以下の救済的な方向性を示しています。
-
初診から6か月経過時点での適用:少なくとも初診から6か月間にわたって症状の持続や反復、薬の継続的な使用が確認され、医師が「通年(少なくとも50週)の継続使用が医療上必要」と判断した場合は、処方日数が50週を満たしていない段階であっても前倒しで対象外とすることを可能とする整理を行いました。
-
頓服薬や間欠的な使用:月経困難症のように毎月数日間だけ鎮痛剤を服用するケースや、花粉症のシーズン中のみ服用するケースについては、「通年の継続使用」には該当しないため、原則として別途の負担の対象となります。

5. 外用薬(保湿剤・湿布)の経過措置とプロアクティブ療法の扱い
塗り薬や貼り薬などの外用薬は、内服薬と異なる特別な取り扱いが検討されています。
-
湿布・皮膚保湿剤の経過措置:重症患者への配慮として、ヘパリン類似物質などの皮膚保湿剤や湿布薬については、2028年度末(令和10年度末)までの間、別途の負担を求めない経過措置が講じられます。この期間中に診療ガイドラインのエビデンスなどを改めて検証し、恒久的なルールの見直しが行われる予定です。
-
ステロイド外用薬とプロアクティブ療法:ステロイド外用薬は急性増悪時の短期使用が中心であるため、原則として負担対象と整理されています。しかし、アトピー性皮膚炎の診療ガイドラインで推奨されている「プロアクティブ療法(症状が治まった後も定期的にステロイド等を間欠塗布して再発を防ぐ治療法)」について、患者団体などから「長期使用の例外として認めるべきだ」との強い要望が出ており、運用の整理が継続して議論されています。
-
市販薬にない効能効果:医療用医薬品に認められていて市販薬にはない効能効果(例:フェキソフェナジン塩酸塩における湿疹・皮膚炎のそう痒や、ヘパリン類似物質における血栓性静脈炎など)のために処方される場合は、市販薬との代替性がないため別途負担の対象外となります。
医療現場における実務フローと円滑な導入への対策
負担の判断は「薬局」ではなく「医師」が行う
制度の円滑な運用に向けた実務の流れも明確になりました。一部保険外療養に該当するかどうかの判断は、調剤を行う薬局ではなく、診察を行う「医師」が担当します。
【院外処方における実務フロー】
1. 保険医療機関での確認
[ステップ1:外形的な基準の確認]
・処方する医薬品が対象77成分に該当するか
・18歳年度末までの者か、生活保護受給者か
・OTC医薬品に対応していない効能・効果への処方か
↓(すべて「非該当」の場合)
[ステップ2:医師による診察と医学的確認]
・がんや指定難病に関連する治療か
・手術や処置に伴う14日以内の処方か
・通年の服用が医療上必要か
↓
・該当する場合 →「対象外(ー)」を処方箋に記載、レセプトに理由記載
・非該当の場合 →「対象(○)」を処方箋に記載
↓
2. 保険薬局での対応
[ステップ3:患者への説明]
・処方箋の記載に基づき、別途の負担が生じる旨を患者に説明
↓
[ステップ4:会計]
・通常の自己負担分に加え、薬剤費の4分の1(別途の負担)を徴収
システム改修と紙カルテ医療機関への支援
診察室で医師が一つひとつの医薬品について対象かどうかを手作業で調べるのは極めて困難です。そのため、厚生労働省は以下のような支援措置を講じる予定です。
-
電子カルテ・レセコンの改修支援:国が「対象医薬品の薬剤コード」「市販薬と対応しない傷病名の一覧」「レセプト記載理由の標準例」などのマスターデータを公表します。これにより、患者の年齢や公費資格、入力された病名から、システムが自動的に対象外の可能性を表示し、医師が理由を選択肢から選ぶだけで入力できる環境を整備します。
-
紙カルテ医療機関向けのチェックシート:電子カルテを導入していない医療機関向けには、机上に置いて順を追って判定できる「簡易チェックシート」や一覧表を国が作成・配布します。
これらの一覧表やチェックシート、全国共通のQ&Aなどは、制度施行前に十分な準備期間を確保して公表される計画です。
まとめ
2027年3月に導入が予定されている「OTC類似薬の一部保険外療養制度」は、日常的に使われる処方薬の窓口負担のあり方を大きく変える改革です。
改めて重要となるポイントを整理します。
-
制度の基本構造:市販薬と代替性が高い医療用医薬品を処方された場合、薬剤費の4分の1を「別途の負担」として患者が負担し、残りの4分の3に通常の健康保険が適用されます。
-
処方箋の刷新:処方箋に「一部保険外療養」欄が新設され、負担対象なら「○」、免除対象なら「ー」が医師によって記入されます。
-
対象は77成分:ロキソプロフェン、酸化マグネシウム、フェキソフェナジン、カルボシステインなど、日常の診療で頻繁に用いられる医薬品が多数含まれています。
-
配慮措置の方向性:18歳年度末までの子どもや生活保護受給者、がん・難病患者、手術・処置後14日以内の処方などは追加負担の対象外となります。慢性疾患の内服薬についても、初診から6か月間の経過観察を経て通年使用が必要と医師が認めた場合は免除される枠組みが整えられつつあります。
-
保湿剤の猶予措置:ヘパリン類似物質などの皮膚保湿剤や湿布薬については、重症患者への影響を考慮し、2028年度末まで別途負担を求めない経過措置が適用されます。
この制度は、医療保険財政の持続可能性を高め、現役世代の保険料負担を抑える目的がある一方で、通院を続ける患者の窓口負担が増加する側面を持ち合わせています。また、窓口でのトラブルや受診控えを防ぐためには、自分が免除要件に該当するのかどうか、制度の仕組みを正確に理解しておくことが重要になります。
今後も中医協や医療保険部会において、アトピー性皮膚炎のプロアクティブ療法の扱いなど残された論点の議論が続けられ、具体的な運用通知やQ&Aが順次示される予定です。今後の動向に引き続き注目が集まります。

