2026年8月薬事審議会:乾癬の新薬イコタイドやキイトルーダ皮下注など最新治療薬を解説

2026年8月薬事審議会:乾癬の新薬イコタイドやキイトルーダ皮下注など最新治療薬を解説

2026年8月24日、厚生労働省は薬事審議会・医薬品第二部会を開催し、新薬や、既存薬の新しい使い方についての審議・報告を行います。

本記事では、この審議会で取り上げられる各医薬品の適応症、効能・効果、そしてそれらがどのように私たちの健康に寄与するのかを詳細に解説いたします。以下に対象品目が記されたPDFファイルを添付します。

R80824新薬承認可否


1. 乾癬治療の新たな選択肢:経口薬と小児への適応拡大

皮膚の病気である乾癬(かんせん)の分野では、患者さんの生活の質(QOL)を劇的に向上させる可能性のある薬剤が注目を集めています。

イコタイド錠200mg(一般名:イコトロキンラ塩酸塩)

今回の審議における最大の注目点の一つが、ヤンセンファーマの「イコタイド錠」です。この薬剤は、尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症を対象とした「新有効成分含有医薬品」です。

最大の特徴は、IL-23(インターロイキン-23)受容体を選択的に阻害する、世界初の「標的経口ペプチド」である点です。これまで、乾癬の強力な治療には、生物学的製剤と呼ばれる注射剤が主流でしたが、イコタイドは飲み薬(経口薬)でありながら、注射剤に匹敵する高い有効性が期待されています。臨床試験では、既存の経口薬(TYK2阻害剤)に対する優越性も確認されており、利便性と効果を両立した新たなスタンダードとなる可能性があります。

スキリージ皮下注(一般名:リサンキズマブ)

アッヴィの「スキリージ」は、すでに成人の乾癬治療で使用されている抗IL-23p19抗体です。今回の審議では、これまで成人中心であった適応を小児(子供)へ拡大することが議題となりました。乾癬患者のうち、0歳から19歳の割合は決して少なくなく、成長期にある子供たちが使いやすい用量や剤形(55mgシリンジ)が追加されることで、若年層の患者さんの症状管理がより適切に行えるようになります。

ウステキヌマブBS「明治」(バイオ後続品)

「ステラーラ」という既存の有名薬のバイオ後続品(バイオシミラー)です。乾癬やクローン病、潰瘍性大腸炎の維持療法などを対象としています。バイオ後続品が登場することで、治療の質を維持したまま、医療費の負担を軽減できるという大きなメリットがあります。


2. がん治療の進化:利便性の向上と新たな標的へのアプローチ

がん治療の分野では、免疫チェックポイント阻害薬の利便性向上や、特定の標的を狙い撃ちにする新しいタイプの薬剤(ADC)の進展が目立ちます。

キイジェクト配合皮下注(一般名:ペムブロリズマブ/ベラヒアルロニダーゼ アルファ)

現在、がん治療の最前線で使用されている「キイトルーダ」の皮下注射製剤です。これまでの点滴製剤(キイトルーダ)は投与に約30分を要していましたが、皮下注になることで投与時間が大幅に短縮されます。

悪性黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞がん、乳がんなど、キイトルーダが持つ22の適応症に加え、今回新たに報告された卵巣がんを含む計23の適応をカバーします。患者さんの拘束時間を減らし、病院のベッド稼働効率を高めるなど、医療システム全体にとっても大きな意義があります。

エラヒア点滴静注100mg(一般名:ミルベツキシマブ ソラブタンシン)

武田薬品が申請した「エラヒア」は、葉酸受容体α(FRα)陽性の「白金系抗悪性腫瘍剤抵抗性」の再発卵巣がんを対象としています。

この薬剤は、抗体薬物複合体(ADC)と呼ばれるタイプで、がん細胞の表面にある特定の目印(FRα)を狙って、強力な抗がん剤を直接届ける「ミサイル療法」を実現します。従来の治療薬が効きにくくなった再発卵巣がんにおいて、新しい治療の道を開くものとして、希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)にも指定されています。

エンハーツ点滴静注用100mg(一般名:トラスツズマブ デルクステカン)

第一三共の「エンハーツ」は、HER2陽性乳がんの治療において、これまで「化学療法歴のある」患者さんに限られていた使用を、最初から(1次治療から)使用できるようにする適応拡大が報告されました。非常に高い治療効果を示している薬剤だけに、早い段階から使用可能になることは、多くの患者さんの生存期間やQOLに寄与すると考えられます。

ダトロウェイ点滴静注用100mg(一般名:ダトポタマブ デルクステカン)

これもADCの一種で、TROP-2というタンパク質を標的にしています。今回は、特に治療が難しいとされる「トリプルネガティブ乳がん」の1次治療への追加が申請されました。乳がん治療の選択肢がさらに広がることになります。

第二部会


3. 希少疾患と難治性疾患への挑戦

患者数が少なく、これまで有効な治療法が乏しかった疾患に対しても、画期的な新薬が登場しています。

ガミファント点滴静注液50mg(一般名:エマパルマブ)

マクロファージ活性化症候群(MAS)という、極めて重篤な炎症性疾患を対象とした新有効成分です。この疾患は、免疫細胞が異常に活性化し、自身の組織を攻撃することで多臓器不全を引き起こす恐ろしい病気です。国内でMASに対して承認された医薬品はこれまでなく、ガミファントが承認されれば、救命率の向上が期待される待望の新薬となります。

モデーソカプセル125mg(一般名:ドルダビプロン塩酸塩)

「びまん性正中膠腫(ちゅうしゅ)」という、脳の深部に発生する非常に予後が厳しい難病を対象としています。特定の遺伝子変異(H3 K27M)を持つ腫瘍に対して作用します。これまでは放射線治療が主でしたが、有効な化学療法が少なかったこの分野において、飲み薬としての新薬が登場することは、患者さんとそのご家族にとって大きな心の支えとなるでしょう。

オジェンダドライシロップ・錠(一般名:トボラフェニブ)

子供に多い「低悪性度神経膠腫(グリオーマ)」のうち、BRAF遺伝子の変異や融合があるものを対象とした薬剤です。これまでの治療で効果がなかった、あるいは再発した患者さんに対する新しい治療選択肢となります。

2026年8月後発品承認 2026年12月発売予定:トラゼンタ・インチュニブなど(エクセル・PDFダウンロードあり)
2026年8月後発品承認 2026年12月発売予定:トラゼンタ・インチュニブなど(エクセル・PDFダウンロードあり) 厚...

4. 血液がんおよびその他の領域における進展

テビムブラ点滴静注100mg(一般名:チスレリズマブ)

「上咽頭がん」への適応追加です。鼻の奥にある上咽頭にできるがんは、早期発見が難しく、再発した際の治療選択肢が限られていました。抗PD-1抗体であるテビムブラが使用可能になることで、免疫の力を利用した治療が可能になります。

テクベイリ皮下注(一般名:テクリスタマブ)

多発性骨髄腫という血液がんの治療薬です。これまでは「標準的な治療が困難な場合」に限られていましたが、今回の変更で、より早い段階や、他の薬剤との併用での使用が可能になるよう申請されています。

キャップバックス筋注シリンジ(21価肺炎球菌ワクチン)

肺炎球菌による感染症を予防するためのワクチンです。これまで対象が主に高齢者や成人に限られていましたが、今回「2歳以上」への適応拡大が報告されました。21種類もの型をカバーするこのワクチンが広まることで、子供から大人まで、より広範な肺炎予防が可能になります。


まとめ

2026年8月の薬事審議会で審議・報告されたこれらの薬剤は、単なる既存治療の置き換えに留まりません。

  1. 利便性の劇的な向上:乾癬における「注射から飲み薬へ(イコタイド)」、がん治療における「点滴から皮下注へ(キイジェクト)」という流れは、患者さんの日常生活への影響を最小限に抑えます。

  2. 精密医療(プレシジョン・メディシン)の深化:特定の遺伝子変異(H3 K27MやBRAF、FRαなど)を持つ患者さんに狙いを絞った薬剤(モデーソ、オジェンダ、エラヒア)の登場は、より高い治療効果をもたらします。

  3. アンメット・メディカル・ニーズへの応え:MAS(ガミファント)やびまん性正中膠腫のように、これまで有効な薬がなかった分野に光が当たっています。

医療技術は日々進化しており、これらの薬剤が正式に承認され、臨床の現場で使われるようになることで、多くの病気が「克服できるもの」あるいは「上手く付き合っていけるもの」へと変わっていきます。厚生労働省による最終的な判断を待ちたいと思いますが、今回のリストにある薬剤は、日本の医療を一段階上のレベルへと引き上げる重要な役割を担っていることは間違いありません。

患者さんやそのご家族にとって、最善の選択肢が一つでも多く、一日も早く届くことを切に願います。今後もこうした最新の医療情報に注目し、皆さんの健康維持に役立てていただければ幸いです。

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