2024年10月からお薬の値段が上がる?選定療養は生活保護受給者以外が対象
2024年10月から開始される「長期収載品の選定療養」では、いわゆる後発医薬品が存在するのに先発医薬品での調剤を希望する場合に、患者さんの負担金が増えますよと言うルールとなります。
この制度の対象となる患者さんは医療保険に加入している方が対象となります。
国の公費負担療養制度により一部負担金が助成等されている患者さんも該当しますので、ザックリ言いますと医療保険に加入しつつ以下の公費負担医療制度に加入している方は選定療養制度の対象となりますので、負担金が増えます。
1結核医療
2 感染症の入院医療
4自立支援医療(1)
5自立支援医療(2)
6 療養介護医療
7 療育の給付/肢体不自由児通所医療/障害児入所医療
8 小児慢性特定疾病医療支援
9 難病患者への医療支援
10 原子爆弾被爆者に対する医療
11 児童福祉法による措置等に係る医療
12 未熟児に対する養育医療
13 精神保健福祉法による措置入院
14 肝炎治療特別促進事業/B型・C型肝炎治療
唯一、負担金が発生しないのは、生活保護受給者の方です。生活保護受給者は医療保険が適応されず、生活保護法による医療扶助という仕組みで医療が現物支給されているからです。その場合、長期収載品での調剤が不可となり、ジェネリック医薬品でのみ調剤することが可能というルールとなることをご留意ください。
尚、医薬品を混合する際に、後発医薬品を用いることで配合変化により薬が分離する場合であって、長期収載品を用いることにより配合変化が回避できる場合は、必要性があると認められるとしています。例としてはヒルドイドソフト軟膏とアンテベート軟膏の混合はOKですが、ヒルドイドソフトとベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酢酸エステル軟膏(アンテベートのGE)とは分離するため混合できないといった例が挙げられます。
2024年10月スタートの長期収載品の選定療養制度と生活保護受給者の対応が開示(2024/8/28)
厚生労働省は、2024年10月からスタートする長期収載品の選定療養制度について、疑義解釈を公表し、生活保護受給者への対応を開示しました。
結論としては
生活保護受給者である患者が医療上必要性があると認められないにも関わらず、単にその嗜好から長期収載品の処方・調剤を希望する場合は、医療機関、保険薬局で後発品の提供が可能である場合は長期収載品を医療扶助、保険給付の支給対象として処方、調剤できないと説明しています。
そのため、長期収載品を希望した場合であっても、医療扶助の支給対象とはならないため、「後発品の処方・調剤を行う」こととしています。
ただし、長期収載品の処方が医療上必要であると認めらえれた場合は、医療扶助の支給対象となります。
問7 生活保護受給者である患者が長期収載品を希望した場合は、どのように取り扱うことになるのか
【長期収載品の処方等が医療扶助の支給対象にならない場合】
「生活保護法第五十二条第二項の規定による診療方針及び診療報酬」(昭和 34 年厚生省告示第 125 号)第2に基づき、生活保護受給者については、長期入院選定療養以外の選定療養は医療扶助の支給対象とはならないとしている。
このため、生活保護受給者である患者が、医療上必要があると認められないにもかかわらず、単にその嗜好から長期収載品の処方等又は調剤を希望する場合は、当該長期収載品は医療扶助の支給対象とはならないため、生活保護法(昭和 25 年法律第 144 号)第 34 条第3項に基づき、後発医薬品処方等又は調剤を行うこととなる。
【長期収載品の処方等が医療扶助の支給対象になる場合】
長期収載品の処方等を行うことに医療上必要があると認められる場合は、当該長期収載品は医療扶助の支給対象となる。
問8 生活保護受給者である患者が、単にその嗜好から長期収載品を選択した場合、「特別の料金」を徴収するのか。
生活保護受給者である患者について、医療上の必要性があると認められず、かつ、保険医療機関又は保険薬局において後発医薬品を提供することが可能である場合は、長期収載品を医療扶助又は保険給付の支給対象として処方等又は調剤することはできないため、当該患者が単にその嗜好から長期収載品を希望した場合であっても、後発医薬品を処方等又は調剤することとなる。そのため、「特別の料金」を徴収するケースは生じない。
2024年10月スタートの選定療養制度についてポスター開示(2024/8/9)
厚生労働省は、2024年10月から始まる選定療養制度について、同ホームページにポスターを公開しました。
令和6年10月からの医薬品の自己負担の新たな仕組みとして、先発医薬品の処方を希望される場合は、特別の料金をお支払いいただきます。
2024年10月スタートの選定療養制度には対象外の者は設けていません
2024年10月からスタートする長期収載品の選定療養に関する疑義解釈(Q&A)が開示されました。。
長期収載品の処方等又は調剤の取り扱いに関する疑義解釈資料(その1)
色々書いてありますが、ザックリ解釈を記しますと
・処方箋の「変更不可」にチェックが入っていれば保険給付の対象
・長期収載品と後発医薬品とで効能効果さに差異があり、医師が医療上の必要性を認めるものは保険給付の対象
・副作用や相互作用、治療効果で先発品との差異があると医師が販売したものは保険給付の対象
・ガイドラインで長期収載品を使用している患者について後発品を切り替えないことが推奨されていれば保険給付の対象
上記の内容に懸念があれば、医師へ疑義照会をするよう求めらえています。
一方で、以下のような剤形上の治療により医療上の必要性については、疑義照会が不要で、薬剤師の判断で後発品に変更調剤可能というルールとなりました。
・先発と後発の剤形上に治療により、医療上の必要がある場合は保険給付の対象。剤形の好みによる長期収載品の選択は不可。
選定療養制度では、長期収載品を処方した医師等が「医療上の必要性」を判断して必要と認められた場合は保険給付とすることが示されています。
疑義解釈では、医師等が長期収載品を処方した際に「医療上の必要性」を判断する基準を明確化されました。
【医療上の必要性について】
問1 医療上の必要があると認められるのは、どのような場合が想定されるの
か。
(答)保険医療機関の医師又は歯科医師(以下、医師等)において、次のように判断する場合が想定される。
① 長期収載品と後発医薬品で薬事上承認された効能・効果に差異がある場合(※)であって、当該患者の疾病に対する治療において長期収載品を処方等する医療上の必要があると医師等が判断する場合。
② 当該患者が後発医薬品を使用した際に、副作用や、他の医薬品との飲み合わせによる相互作用、先発医薬品との間で治療効果に差異があったと医師等が判断する場合であって、安全性の観点等から長期収載品の処方等をする医療上の必要があると判断する場合。
③ 学会が作成しているガイドラインにおいて、長期収載品を使用している患者について後発医薬品へ切り替えないことが推奨されており、それを踏まえ、医師等が長期収載品を処方等する医療上の必要があると判断する場合
④ 後発医薬品の剤形では飲みにくい、吸湿性により一包化ができないなど、剤形上の違いにより、長期収載品を処方等をする医療上の必要があると判断する場合。ただし、単に剤形の好みによって長期収載品を選択することは含まれない。
また、保険薬局の薬剤師においては、
・ ①、②及び③に関して、医療上の必要性について懸念することがあれば、医師等に疑義照会することが考えられ、また、④に関しては、医師等への疑義照会は要さず、薬剤師が判断することも考えられる。なお、この場合においても、調剤した薬剤の銘柄等について、当該調剤に係る処方箋を発行した保険医療機関に情報提供すること。
さらに開示されたQ&Aには、国の公費負担医療制度によって一部負担金が助成されている患者が長期収載品を希望した場合の対応も記されているのですが、今般、対象外の者は設けておらず、国の公費負担医療制度の対象となっている患者が、長期収載品を希望した場合につても、他の患者と同様に、長期収載品の選定療養の対象となる。
尚、医療上の必要性があると認められる場合に該当する場合は、従来通りの保険給付として差し支えない。
としています。
ヒルドイド軟膏の負担金が増額。2024年10月から開始される長期収載品の選定療養の対象1095品目が公開、差額計算エクセルシートあり