富士製薬がシンポニー、ランマークのバイオシミラーを7月発売!リウマチやがん骨病変治療の新たな選択肢を解説
私たちの生活を支える医療の世界では、日々新しい薬が登場し、これまで治療が難しかった病気にも光が差し込んでいます。特に「バイオ医薬品」と呼ばれる、最先端の技術を使って作られた薬は、多くの患者さんにとって欠かせない存在となっています。
そんな中、日本の製薬メーカーである富士製薬工業株式会社から、非常に注目すべきニュースが届きました。2026年5月、同社は国内初となる関節リウマチ治療薬「シンポニー」と、がんによる骨の病変を抑える薬「ランマーク」のバイオシミラー(バイオ後続品)が薬価収載されたことを発表しました。
これらの薬は、2026年7月をめどに発売される予定です。今回は、これらの薬がどのような病気に効き、体の中でどのように働くのか、そしてバイオシミラーが登場することにどのような意味があるのかについて、詳しく解説していきます。
そもそも「バイオシミラー」とは何のこと?
本題に入る前に、これから何度も登場する「バイオシミラー」という言葉について簡単にご説明します。
皆さんは「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」という言葉を聞いたことがあるでしょう。特許が切れた後に、他のメーカーが同じ有効成分で作る安価な薬のことです。バイオシミラーも、大まかな考え方はジェネリックに似ています。
しかし、バイオ医薬品は一般的な薬(化学合成された薬)と違い、細胞や細菌などの生物の力を借りて作られる非常に複雑な構造を持った薬です。そのため、全く同じものを作ることは不可能に近く、高度な技術で「ほぼ同じ(同等・同質)」であることを証明して作られた後発の薬を「バイオシミラー(バイオ類似品)」と呼びます。
バイオシミラーが登場することで、先発の薬と同じような高い効果を保ちつつ、治療費を抑えることができるようになるため、患者さんにとっても、国の医療費負担にとっても非常に大きなメリットがあるのです。
1. 関節リウマチに新たな選択肢を:ゴリムマブ(シンポニーBS)
まずご紹介するのは、「ゴリムマブ(遺伝子組換え)[ゴリムマブ後続1]」というお薬です。これは、先発品である「シンポニー」のバイオシミラーです。
どのような病気に使われるのか?(適応症)
主に「関節リウマチ」の治療に使われます。特に関発リウマチの症状が進み、従来の治療薬では十分に効果が得られなかった患者さんが対象となります。
関節リウマチは、本来なら自分を守るはずの免疫システムが、誤って自分の関節を攻撃してしまう病気です。これにより、関節に強い痛みや腫れが生じ、放置すると関節の骨が壊れて変形してしまいます。ゴリムマブは、この「関節が壊れていくスピード」を抑える効果も期待されています。
どのように効くのか?(薬理作用)
私たちの体の中には、炎症を引き起こす「指令役」となる物質がいくつか存在します。その代表的なものが「TNFα」と呼ばれるタンパク質です。
関節リウマチの患者さんの体内では、このTNFαが過剰に作られており、それが関節を攻撃し続ける原因となっています。
– ゴリムマブの働き:
ゴリムマブは、体内で悪さをしている「TNFα」をピンポイントで見つけ出し、がっちりと捕まえて無力化します。いわば、炎症という火事を引き起こしている「火種」を直接消し止める役割を果たします。火種がなくなれば、痛みや腫れが引き、関節が壊れていくのを防ぐことができるのです。
発売のポイント
富士製薬の発表によると、この薬は「ゴリムマブ BS 皮下注 50mgシリンジ『F』」という名前で発売されます。薬価は67,615円と設定されました。シンポニーのバイオシミラーとしては日本初であり、リウマチ治療を続ける方々の経済的な負担を軽くする大きな一歩となります。
2. がんの骨転移による骨病変を守る:デノスマブ(ランマークBS)
次にご紹介するのは、「デノスマブ(遺伝子組換え)[デノスマブ後続1]」です。これは先発品「ランマーク」のバイオシミラーです。
どのような病気に使われるのか?(適応症)
この薬は、「多発性骨髄腫(血液のがんの一種)」や、「固形がん(乳がんや肺がんなど)が骨に転移したとき」に起こる骨の病変を抑えるために使われます。
がんは骨に転移すると、その部分の骨をもろくしてしまいます。その結果、骨折しやすくなったり(病的骨折)、強い痛みが出たり、背骨が折れて神経を圧迫し、麻痺が起こったりすることがあります。これらを防ぎ、患者さんの生活の質(QOL)を維持することがこの薬の目的です。
どのように効くのか?(薬理作用)
私たちの骨は、常に「新しく作る細胞(骨芽細胞)」と「古くなった骨を壊す細胞(破骨細胞)」がバランスよく働くことで、健康な状態を保っています。
しかし、がんが骨に転移すると、がんは骨を壊す細胞である「破骨細胞」に「もっと骨を壊せ!」という命令を送ります。この命令を伝えるメッセージ物質が「RANKL(ランク・リガンド)」です。
– デノスマブの働き:
デノスマブは、この「骨を壊せ!」という命令(RANKL)を途中で遮断する働きを持っています。デノスマブがRANKLを捕まえることで、破骨細胞が活発になりすぎるのを抑え、骨がスカスカになって壊れていくのを食い止めるのです。
発売のポイント
製品名は「デノスマブ BS皮下注 120mgRM『F』」です。薬価は23,481円となりました。これも国内初のデノスマブ(ランマーク)バイオシミラーであり、がん治療という長期にわたる闘いにおいて、治療費の面から患者さんを支える力強い味方になります。
3. 皮膚や関節の炎症を抑える:ウステキヌマブ(ステラーラBS 90mg)
最後は、「ウステキヌマブ(遺伝子組換え)[ウステキヌマブ後続1]」です。これは先発品「ステラーラ」のバイオシミラーです。
どのような病気に使われるのか?(適応症)
主に「尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)」や「乾癬性関節炎」に使われます。
乾癬とは、皮膚が赤く盛り上がり、銀白色のフケのようなカサカサが剥がれ落ちる病気です。また、関節に痛みや腫れが出ることもあります。これらも免疫のバランスが崩れることで起こる病気です。
どのように効くのか?(薬理作用)
乾癬の炎症を引き起こすのは、「IL-12」や「IL-23」と呼ばれる物質(インターロイキン)です。
– ウステキヌマブの働き:
ウステキヌマブは、これらIL-12とIL-23の両方を同時にブロックします。炎症の元となる物質の働きを抑えることで、皮膚の赤みや盛り上がり、関節の痛みを根本から改善していきます。
発売のポイント
富士製薬はすでにステラーラのバイオシミラーを販売していますが、今回新たに**「90mg」**という高用量の規格(ウステキヌマブ BS 皮下注 90mg
シリンジ『F』)が薬価収載されました。
薬価は254,206円です。注目すべきは、この90mg規格は、実は先発品(ステラーラ)には存在しない、バイオシミラー独自の規格であるという点です。これにより、これまで複数の注射を打つ必要があった患者さんが1回の注射で済むようになるなど、利便性の向上が期待されています。

富士製薬工業の挑戦とこれからの医療
富士製薬工業は、2029年9月期を最終年度とする5ヵ年の中期経営計画の中で、「バイオシミラー事業の成長」を最大の成長ドライバーのひとつとして掲げています。
今回の3製品(ゴリムマブ、デノスマブ、ウステキヌマブ90mg)の薬価収載は、その戦略を具体化する非常に重要なステップです。同社はこれまでも女性医療に強い製薬会社として知られてきましたが、今後はバイオシミラーのラインナップをさらに拡充することで、より幅広い疾患の患者さんに貢献しようとしています。
発売時期について
今回の発表によると、これらの製品はすべて2026年7月の発売を予定しています。現在は医療関係者に対し、適切な情報提供を行うための準備が鋭意進められているところです。
私たちが受ける恩恵
バイオシミラーの普及には、大きく分けて3つのメリットがあります。
1. 経済的負担の軽減: 高額になりがちなバイオ医薬品の治療費を抑えることができます。
2. 治療の選択肢が広がる: 「費用が高くて続けられない」と悩んでいた患者さんが、効果の等しい安価なバイオシミラーを選択できるようになります。
3. 社会保障の持続可能性: 国の医療費を節約することにつながり、将来にわたって誰もが質の高い医療を受けられる仕組みを守ることができます。
まとめ
富士製薬工業による、国内初となる「ゴリムマブ(シンポニーBS)」と「デノスマブ(ランマークBS)」、そして新規格の「ウステキヌマブ(ステラーラBS)」の登場は、日本の医療において歴史的な転換点となるでしょう。
これまで「バイオ医薬品は高価で手が出にくい」と感じていた方や、長く続く治療に経済的な不安を抱えていた方にとって、2026年7月の発売は大きな希望となるはずです。
