おじさん薬剤師の日記

調剤薬局で勤務するおじさんです。お薬のはたらきを患者様へお伝えします

錠剤剤形 降圧剤

配合OD錠という剤形が少ない理由

投稿日:2019年6月19日 更新日:

配合OD錠という剤形が少ない理由

 

「グルベス配合OD錠がキッセイ薬品工業から発売となります。糖尿病の薬では初の配合剤でありながら口腔内崩壊錠(OD錠)という剤形となっています」というアナウンスを目にしました。

 

たしかに、配合錠であり、かつOD錠というと・・・なかなかパッと思いつく製品がありませんでした。そこで、今回は配合OD錠という製品にはどのような品目があるのかを調べ、今後、配合OD錠という剤形は増えていくのかについて個人的な感想を記します。

2019年6月時点における配合OD錠リスト

 

2019年6月時点で配合OD錠は11品目が7種類が薬価収載されております。

 

・アムバロ配合OD錠「トーワ」

 

・アムバロ配合OD錠「ファイザー」

・アムバロ配合OD錠「日医工」

・アムバロ配合OD錠「TCK」

(ファイザーと日医工とTCKは薬物動態が同じですので同一医薬品です)

 

・エックスフォージ配合OD錠

 

・エスエーワン配合OD錠T20/T25

・エヌケーエスワン配合OD錠T20/T25

(エスエーワンとエヌケーエスワンは薬物動態が同じですので同一医薬品です)

 

・ティーエスワン配合OD錠T20/T25

・エスワンタイホウ配合OD錠T20/T25

(ティーエスワンとエスワンタイホウは薬物動態が同じですので同一医薬品です)

 

・グルベス配合OD錠

 

・ビオスリー配合OD錠

 

配合OD錠が少ない理由

2019年6月時点で303品目の配合錠が薬価収載されており、そのかなで配合OD錠は11品目7種類しかありません。

 

アムバロ配合OD錠に関しては、エックスフォージ配合OD錠が発売されたために、それを追随する形でアムバロ配合OD錠が発売された印象があります(先発品が配合OD錠を発売されたので・・・しぶしぶGEも配合OD錠を作った)。しかし、調剤ルールの変更により、処方箋に記載されている先発品名・一般名が普通錠であったとしても後発品は普通錠・OD錠を調剤することができるルールとなってからは、特に剤形を先発品とそろえてGEメーカーが発売する必要もなくなりました。それ以降発売となったジェネリック医薬品の配合錠ではOD錠を発売しているメーカーはありません。

tab3

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以下に配合OD錠が少ない理由について個人的な感想を記します。

薬物動態の観点

上記11品目7種類の配合OD錠の中で、ビオスリー配合OD錠は腸管内で整腸剤として作用する薬であるため、血中に吸収される必要はありません。そのため血中濃度を考える必要はありません。

 

グルベス配合OD錠にはグルファストとベイスンの成分が含まれているわけですが、ベイスンは腸管内で糖の吸収を抑える作用として働く薬ですので血中濃度を考える必要はありません。グルベス配合OD錠はグルファストについてのみ血中濃度を考えればよい薬です。

 

それ以外のエックスフォージ配合OD錠、アムバロ配合OD錠、エスエーワン配合OD錠、ティーエスワン配合OD錠については、含まれている成分すべてについて血中濃度を測定する必要があり、かつ水で飲んだ場合と水なしで飲んだ場合について薬物動態を調べる必要があります。

 

例えば、

アムバロ配合OD錠「ファイザー」の添付文書の薬物動態欄を確認してみると

 

水で飲んだ場合のアムバロに含まれているバルサルタンの血中濃度

水で飲んだ場合の標準品に含まれるバルサルタンの血中濃度

 

水なしで飲んだ場合のアムバロに含まれているバルサルタンの血中濃度

水なしで飲んだ場合の標準品に含まれるバルサルタンの血中濃度

 

水で飲んだ場合のアムバロに含まれているアムロジピンの血中濃度

水で飲んだ場合の標準品に含まれるアムロジピンの血中濃度

 

水なしで飲んだ場合のアムバロに含まれているアムロジピンの血中濃度

水なしで飲んだ場合の標準品に含まれるアムロジピンの血中濃度

 

上記のように、先発品と後発品の生物学的同等性を示すための確認作業が“水あり・水なし“、”バルサルタン・アムロジピン“という場合分けによって4回も行われております。

 

先発品と後発品の同等性試験は80~125%程度の範囲に含まれていれば医薬品として認可されるわけですが、OD錠は普通錠と比較して薬物動態のバラツキ・差が大きくなる印象がありますので、配合錠かつOD錠という製品は、普通錠と比較して生物学的同等性試験をパスしにくい製品(薬として認可されにくい製品)のように思われます。

 

OD錠の特徴

OD錠は口の中に入れると30秒以内に溶ける薬ですが、持ち運びをするときや保管している状態では壊れてはいけませんのである程度の強度が必要な剤形です。さらに口に入れて溶けた時の味・食感を工夫する必要があるため添加物に香料・人口甘味料・メントールといった成分を添加する必要があります。そのためOD錠は普通錠と比較して開発コストがかかる印象です。

(厚生労働省が決める1錠あたりの薬価は普通錠もOD錠も同じ値段設定です)

錠剤のサイズについて

OD錠は、“口の中で溶けるための添加物“を含む錠剤ですので、普通錠と比較して錠剤のサイズは大きい印象があります。しかし、OD錠は口の中に入れれば溶けますので多少大きくても問題はないという印象を持っています。

 

配合錠は2剤を合わせた製剤ですが、含まれる成分によっては、ひと回り大きくなることもあります。配合OD錠となると、更にひと回り大きくなることが懸念されるケースもあるかもしれません。

 

市場動向

Aという成分が医薬品として使用されていて、Bという成分も医薬品として使用されている現状でAとBの配合錠であるAB配合錠を売り出した場合の市場動向を考える場合、AB配合錠がとびぬけて売れるといったことは起こりません。そのような薬に製造コストをかけて製造ラインを1本追加してAB配合OD錠を開発する意味があるか・・・となると利点が見出せないのかもしれません。

 

まとめ

配合OD錠という剤形が少ない理由

 

・水あり・水なし/成分A・成分Bについての生物学的同等性を示す必要があるため

 

・OD錠は製造コストがかかるため

 

・錠剤サイズが大きくなってしまう可能性があるため

 

・AB配合錠を売り出している現状でAB配合OD錠を売り出すほどではないため

 

ただ、個人的な意見ですが、調剤をしていて配合錠を手に取ることが当たり前となった現状において、高齢化社会が今以上に進んでいくことを考えますと嚥下困難患者さんが増えていく傾向があるのであれば、錠剤サイズの大きい配合錠に関しては配合OD錠を望む声が出てくる可能性はある気がします。

 

特に人気商品であるレザルタスHDのような錠剤サイズの大きい配合錠のGE製品が発売されるのであれば、配合OD錠が検討されるかもしれません。

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-GE, ジェネリック, , 血圧, 配合OD錠, 配合錠

執筆者:ojiyaku


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