乳酸カルシウムによる下痢止め作用/カルシウムは止瀉薬、マグネシウムは下剤の作用について(自分まとめ)
小児科の門前の調剤薬局で勤務していると下痢止めとして「タンニン酸アルブミンと乳酸カルシム」の混合製剤が処方されます。
親御さんへお薬の説明をする際に「下痢止めです」と説明すると「どうしてカルシウムが下痢止めなの?」とご質問を頂くことがあります。
そこで今回は「乳酸カルシウム」による下痢止め作用について詳細を理解し、親御さんへ伝わりやすい文言を考えてみました。
乳酸カルシウムによる下痢止め作用
乳酸カルシウムがよく利用されますが、沈降炭酸カルシウムやリン酸水素カルシウムなど、他のカルシウム製剤でも同様の効果が期待されます。
下痢の状態は腸管内に水がジャブジャブある状態です。この状態でカルシウムを含む製剤を飲むと、カルシウムは腸管の粘膜にくっついて、腸管粘膜上にあるタンパク質を固め、炎症を取り除く作用があります。さらに腸管粘膜表面に被膜をつくって腸管を保護します。
それに加えて、カルシウムが腸管の血管を収縮(細く)することで血管から染み出る水の量を減らして、腸管内を流れる水の量を減らす効果も期待されます。
上記の作用により乳酸カルシウムに含まれるカルシウムが下痢止めとして使用されるわけです。
補足ですが、サプリメントとして販売さている「カルシウム補給」タブレット(含量不明)も過剰に摂取すると便秘になりますので注意が必要です。
上記の下痢止め作用は「カルシウム」だけでなくアルミニウムにも備わっており、水酸化アルミニウム製剤に「下痢止め」の効果があります。
しかし、昨今アルミニウムを含有する製剤の使用量は減っており(禁忌・副作用が多いため)、実質的には小児の下痢止めとしては「タンニンサンアルブミン+乳酸カルシウム」が通例かと思います。
カルシウム製剤と似たイメージの薬に「酸化マグネシム」という薬があります。
カルシウムが「下痢止め」の役割があるのに対して、マグネシウムには「下剤」の効果があります。どちらも2価の金属イオンなのですが、薬として服用した場合の効果は真逆です。
最期に「マグネシウムによる排便促進効果」について記します。
マグネシウムによる排便促進作用
酸化マグネシウム(MgO)を飲むと、胃酸(HCl)と反応して塩化マグネシウム(MgCl2)へ変換されます。塩化マグネシウム(MgCl2)は腸内に流れ込み、膵液に含まれる重炭酸(NaHCO3)と反応して炭酸水素マグネシウム(Mg(HCO3)2)および炭酸マグネシウム(MgCO3)と変換されます。
炭酸水素マグネシウムや炭酸マグネシウムは浸透圧が高く、腸内の浸透圧を高めて腸内腔へ水分を引き寄せることで、腸内容物を軟化させるとともに、腸管内容物を膨張させて、腸管へ刺激をあたえ、排便を促す効果が期待されます。
上記の薬理作用を加味すると、胃酸や膵液と反応することで下剤としての役割が発揮されることが見て取れます。そのため食前や食後に使用した方がいいような気もしますが、1日1回寝る前でもよいと添付文書に記載されていますので、飲むタイミングは人それぞれという解釈で良いようです。
まとめ
乳酸カルシウム中に含まれるカルシウムが腸の粘膜にくっついて、保護膜を作ると同時に、腸管粘膜の血管を収縮して、腸管への水分流出を低下させることで下痢止めとしての効果を発揮します。
カルシウムは下痢止め、マグネシウムは下剤(排便促進)としての効果があり、その違いは胃液および膵液の影響によるものであることがわかりました。