マンジャロとトルリシティの比較結果を徹底解説!心血管リスクと効果
2型糖尿病の治療において、注射製剤の進化は目覚ましいものがあります。その中でも、現在多くの医療現場で処方され、注目を集めている薬剤が「トルリシティ」と「マンジャロ」です。
これまでトルリシティは、週に1回の投与で確実な血糖改善効果をもたらし、心血管疾患への安全性が確立された代表的なGLP-1受容体作動薬として、長年にわたり広く信頼されてきました。一方、その後登場したマンジャロは、従来のGLP-1受容体に加えてGIP受容体にも同時に作用する新しい作用機序を持ち、非常に強力な血糖降下作用や体重減少作用を持つ薬剤として大きな話題を呼んでいます。
今回、医薬品医療機器総合機構(PMDA)より、マンジャロの添付文書における「臨床成績」の改訂情報が公表されました。この改訂では、心筋梗塞や脳卒中などの病歴を持つ2型糖尿病の患者さんを対象として、マンジャロとトルリシティを直接比較した大規模な臨床試験(I8F-MC-GPGN試験)の結果が正式に追記されています。
実績あるトルリシティと、新世代のマンジャロを直接比較したとき、心臓や血管に対する安全性、そして血糖値を下げる効果や副作用にはどのような違いが見られたのでしょうか。今回の改訂で開示された公式データをもとに、その詳細な内容を順を追って紐解いていきます。
1. 今回の添付文書改訂の背景と臨床試験の概要
まずは、今回どのような目的で試験が実施され、添付文書のどの部分が改訂されたのか、その全体像を確認していきましょう。
なぜ「直接対決」の試験が必要だったのか
糖尿病の治療において、血糖値を良好にコントロールすることは失明や人工透析、神経障害といった細小血管の合併症を防ぐために欠かせません。しかしそれと同時に、命に直結する大きなリスクとなるのが、心筋梗塞や脳卒中、閉塞性動脈硬化症といった心血管疾患(大血管障害)です。2型糖尿病の患者さんは、糖尿病のない方と比べて動脈硬化が進みやすく、心筋梗塞や脳卒中を発症する確率が高いことが知られています。
そのため、新しい糖尿病治療薬が登場した際には、「単に血糖値を下げるだけでなく、心臓や脳の血管に対して悪影響を与えないか」「むしろ血管事故を防ぐ効果があるのか」という点が極めて厳格に審査されます。これが「心血管アウトカム試験(CVOT)」と呼ばれる大規模な臨床試験です。
多くの臨床試験では、効果のない偽薬(プラセボ)を比較対象として安全性を検証します。しかし今回の試験は、すでに国内外で心血管イベントの抑制や安全性について豊富なエビデンスを持つ「トルリシティ」を対照薬(比較相手)に選び、直接比較を行いました。これは製薬企業や医療界にとっても極めて挑戦的であり、世界中から結果が待望されていた試験です。
試験デザインと参加した患者さんの特徴
今回追記された「I8F-MC-GPGN試験」は、第III相国際共同試験として実施されたイベント主導型の二重盲検比較試験です。
試験の主な設定は以下の通りです。
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対象患者数:合計13,209例(世界各国の大規模集団)
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マンジャロ群:6,606例(うち日本人47例)
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トルリシティ群:6,603例(うち日本人46例)
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対象患者の条件:心血管系疾患の既往歴がある2型糖尿病患者
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参加者の47.2%が心筋梗塞の既往
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参加者の19.2%が脳卒中の既往
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参加者の25.3%が末梢動脈疾患の既往
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観察期間:中央値で210.4週(約4年を超える長期観察)
このように、参加した患者さんは全員が過去に心筋梗塞、脳卒中、あるいは足の血管が詰まる末梢動脈疾患などを経験している、心血管リスクが非常に高い方々でした。平均して4年以上の長い年月にわたり、患者さんの経過を追跡調査しています。
投与方法と用量の設定
試験における薬剤の使い方は以下のように定められていました。
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マンジャロ群:
週1回2.5mgから投与を開始し、4週間ごとに2.5mgずつ段階的に増量しました。最大用量である15mg、または患者さんが副作用などに無理なく耐えられる最大維持用量まで増量されました。最終的な用量分布を見ると、15mgまで増量できた方が62.4%、5mgが23.4%、10mgが9.3%となっており、過半数の患者さんが最高用量の15mgを継続して使用していました。 -
トルリシティ群:
投与開始時から週1回1.5mgを皮下投与し、途中の漸増や用量調整は行いませんでした。日本の保険診療におけるトルリシティの通常開始用量は週1回0.75mgですが、患者さんの状態に応じて1.5mgまで増量できる規定になっており、今回の世界的な試験では高用量である1.5mgが選択されました。
両群ともに食事療法や運動療法、各国のガイドラインに基づいた標準的な糖尿病治療・心血管疾患治療(血圧の薬やコレステロールの薬など)を並行して継続しています。ただし、他のGLP-1受容体作動薬の併用は禁止されていました。
2. 心血管イベントの比較:マンジャロの安全性と非劣性の証明
この試験の最大の目的は、マンジャロがトルリシティと比較して、心臓や脳の血管に対する重大な事象(心血管イベント)を起こすリスクにおいて劣っていないこと(非劣性)を証明することでした。
主要評価項目「主要な心血管系事象(3P-MACE)」の結果
試験の主要評価項目として設定されたのは、「主要な心血管系事象(MACE)」の最初の発現までの時間です。具体的には、以下の3つの事象のいずれかが初めて起きた時点を計測しています。
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心血管死(心臓や血管の病気が原因で亡くなること)
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非致死性心筋梗塞(命を取り留めた心筋梗塞)
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非致死性脳卒中(命を取り留めた脳卒中)
この3項目を合わせた複合指標に関する試験結果は以下の通りです。
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マンジャロ群(6,547例):
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イベント発生数:798例
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発生率:100人・年あたり3.25件
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トルリシティ群(6,533例):
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イベント発生数:859例
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発生率:100人・年あたり3.54件
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ハザード比(HR):0.92[95.3%信頼区間:0.83~1.01]
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事前設定された非劣性マージン:1.05
統計学的な解析の結果、ハザード比の信頼区間の上限(1.01)があらかじめ設定されていた基準(1.05)を下回ったため、「トルリシティに対するマンジャロの非劣性」が明確に証明されました。
「非劣性」が証明されたことの臨床的な意味
医学研究において「非劣性」という言葉を聞くと、「相手に勝てなかったのか」「劣っていないだけで、優れているわけではないのか」と感じるかもしれません。しかし、心血管安全性の試験における非劣性の証明には極めて大きな意義があります。
トルリシティは、先行する大規模臨床試験(REWIND試験など)において、心血管イベントの発現リスクを低下させることがすでに証明されている薬剤です。いわば、心血管に対する保護作用が確立されている「強固な標準薬」といえます。
そのトルリシティを相手にして非劣性を示し、ハザード比が0.92(イベント発生リスクが数値の上では約8%低い傾向)という成績を収めたことは、マンジャロがトルリシティと同等に、高い心血管安全性を備えていることを力強く裏付けています。心筋梗塞などの既往があるハイリスクな糖尿病患者さんに対しても、マンジャロはトルリシティと遜色なく安心して長期使用できる薬剤であることが確認されたといえます。
各構成要素の内訳と傾向
主要評価項目を構成する「心血管死」「心筋梗塞」「脳卒中」の3つの要素を個別に分解したデータも開示されています。
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心血管死:
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マンジャロ群:366例(100人・年あたり1.43件)
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トルリシティ群:407例(100人・年あたり1.61件)
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ハザード比:0.89[95%信頼区間:0.77~1.02]
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心筋梗塞:
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マンジャロ群:310例(100人・年あたり1.24件)
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トルリシティ群:355例(100人・年あたり1.44件)
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ハザード比:0.86[95%信頼区間:0.74~1.01]
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脳卒中:
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マンジャロ群:228例(100人・年あたり0.91件)
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トルリシティ群:248例(100人・年あたり1.00件)
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ハザード比:0.91[95%信頼区間:0.76~1.09]
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すべての個別の指標において、ハザード比が1.0を下回っており、マンジャロ群でイベント発生数がトルリシティ群よりも少なくなっています。統計学的な優越性(明らかな有意差)として結論づけられたわけではありませんが、どの項目においても一貫してトルリシティと同等以上の良好な傾向を示していることが分かります。
3. 血糖コントロール(HbA1c)の比較:マンジャロの圧倒的な降下作用
心血管イベントの安全性と並んで、今回のデータで極めて鮮明な差が現れたのが血糖値の指標である「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」の変化です。
144週(約3年)時点におけるHbA1cの変化量
試験開始時(ベースライン)と、投与開始から144週が経過した時点でのHbA1cの数値の変化は以下の通りでした。
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ベースライン時のHbA1c:
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マンジャロ群:8.40 ± 0.92%(6,443例)
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トルリシティ群:8.38 ± 0.93%(6,399例)
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投与後144週までのHbA1c変化量:
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マンジャロ群:-1.80 ± 1.37%(5,530例)
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トルリシティ群:-0.93 ± 1.36%(5,390例)
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試験開始時点では、両群の患者さんのHbA1cは平均約8.4%であり、血糖コントロールが不十分な状態にありました。そこから約3年が経過した時点で、トルリシティ群も-0.93%と十分な改善を示し、平均HbA1cは7.5%前後まで改善しています。トルリシティ単体でも、長期にわたって安定した血糖改善効果を発揮していることが分かります。
しかし、マンジャロ群の改善幅はそれをはるかに上回る-1.80%に達しました。元々8.4%だった数値から1.8%低下したということは、平均HbA1cが6.6%前後まで下がったことを意味します。糖尿病治療の一般的な目標値である「合併症予防のための7.0%未満」を平均値として大幅にクリアするレベルまで改善しています。
GIP/GLP-1デュアル作動薬としての強み
なぜこれほどの差が生じるのでしょうか。その理由は、両薬剤の作用の仕組みの違いにあります。
トルリシティは、腸から分泌される消化管ホルモンである「GLP-1」の働きを補う単一の受容体作動薬です。インスリン分泌を促進し、グルカゴンの分泌を抑え、胃の運動を緩やかにすることで血糖値を下げます。
対するマンジャロは、GLP-1だけでなく、もう一つの主要な消化管ホルモンである「GIP」の受容体にも同時に結合して働く世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬です。GIPとGLP-1の2つの経路が相乗的に働くことで、膵臓からのインスリン分泌がより強力かつ自然に促されます。さらに、脂肪組織や脳の摂食中枢への働きかけによってインスリンの効き目(感受性)そのものが改善するため、従来のGLP-1受容体作動薬単剤を大きく凌駕する血糖改善作用が発揮されるのです。
今回の試験結果は、心血管リスクの高い糖尿病患者さんにおいて、マンジャロがトルリシティのほぼ2倍に相当するHbA1c低下効果を3年以上の長期にわたって維持できることを明確に示しました。
4. 低血糖および副作用プロファイルの比較
どんなに優れた効果を持つ薬であっても、安全に使用できなければ意味がありません。今回のデータ開示では、低血糖のリスクや日常的な副作用に関する発生頻度も詳細に記載されています。
低血糖の発現リスク:重症低血糖は同等に極めて低い
糖尿病の治療薬を使用する上で最も注意しなければならない副作用の一つが低血糖です。試験期間中の低血糖の発現状況は以下の通りでした。
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重症低血糖(他者の介助が必要となる重篤な低血糖):
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マンジャロ群:49 / 6,605例(0.7%)
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トルリシティ群:48 / 6,599例(0.7%)
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血糖値54 mg/dL未満の低血糖:
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マンジャロ群:484 / 6,605例(7.3%)
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トルリシティ群:417 / 6,599例(6.3%)
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救急搬送や医療機関での処置を要するような「重症低血糖」の発生率は、マンジャロ群・トルリシティ群ともにわずか0.7%にとどまり、両群で全く差がありませんでした。マンジャロがHbA1cを劇的に低下させたにもかかわらず、危険な重症低血糖のリスクをトルリシティと同等の極めて低い水準に維持できていた点は、非常に注目すべき安心材料です。
一方で、血糖値が54 mg/dL未満となる低血糖は、マンジャロ群で7.3%、トルリシティ群で6.3%と、マンジャロ群で約1%高くなっていました。血糖値が正常域近くまでしっかり下がる分、併用しているインスリン製剤やSU薬などの影響によって軽度から中等度の低血糖が起こる可能性がわずかに高くなる傾向があるため、日常的な血糖自己測定や自覚症状への注意は引き続き重要となります。
消化器症状などの副作用の比較
全体の副作用発現頻度や、具体的な症状の内訳には一定の差が見られました。
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副作用発現頻度(全体):
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マンジャロ群:60.3%(3,985 / 6,605例)
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トルリシティ群:50.1%(3,304 / 6,599例)
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全体として副作用を経験した方の割合は、マンジャロ群がトルリシティ群よりも約10%高い結果となりました。
主な副作用の内訳は以下の通りです。
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悪心(吐き気):
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マンジャロ群:23.3%(1,539例)
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トルリシティ群:20.1%(1,327例)
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下痢:
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マンジャロ群:19.6%(1,292例)
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トルリシティ群:14.3%(941例)
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食欲減退:
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マンジャロ群:16.0%(1,057例)
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トルリシティ群:8.9%(585例)
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GLP-1受容体に作用する薬剤に共通して見られる代表的な副作用が、胃腸の動きがゆっくりになることによる悪心、下痢、便秘、食欲減退などの消化器症状です。
データを見ると、悪心や下痢、特に食欲減退において、マンジャロ群のほうが高い発現率を示しています。食欲減退の頻度はトルリシティが8.9%であるのに対し、マンジャロは16.0%とおよそ2倍となっています。
この食欲減退は、体重を減らしたい患者さんにとっては治療上有益な作用として働く側面もありますが、裏を返せば「食事を美味しく食べられない」「吐き気がしてつらい」といった不快感につながるリスクでもあります。マンジャロは作用が強力である分、胃腸障害が出現しやすい傾向があることを事前に理解しておく必要があります。

副作用を軽減するための工夫
今回の試験では、マンジャロは週1回2.5mgの少量から開始し、4週間ごとに2.5mgずつゆっくりと増量する手順がとられていました。これは実際の日常診療でも同様です。
体が薬の作用に慣れる前に一気に増量してしまうと、強い吐き気や胃もたれが生じやすくなります。少量から開始して徐々にステップアップしていくことで、多くの患者さんでは体が徐々に慣れ、消化器症状は自然と軽快していきます。また、無理に最高用量(15mg)を目指す必要はなく、十分な血糖改善が得られており、副作用とのバランスが取れている用量(5mgや10mgなど)で維持することも日常診療では一般的なアプローチです。
5. 臨床現場における2つの薬剤の使い分けと選び方
今回の試験結果を踏まえると、マンジャロとトルリシティの特性の違いがより鮮明になりました。どちらか一方だけが優れているという単純な話ではなく、それぞれの患者さんの健康状態やライフスタイル、治療目標に応じて最適な選択を行うことが大切です。
マンジャロが特に適しているケース
マンジャロの最大の強みは、「トルリシティと同等の確かな心血管安全性を保ちながら、圧倒的な血糖降下作用と食欲抑制・体重管理効果を得られる点」にあります。
以下のような患者さんにとって、マンジャロは非常に有力な選択肢となります。
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従来の治療薬ではHbA1cが目標値(7.0%未満など)まで下がりきらない方:
トルリシティを含め、既存のGLP-1受容体作動薬や内服薬を使っていてもHbA1cが8%台から下がらないような場合、マンジャロへの切り替えや導入によって大幅な改善が期待できます。 -
肥満を合併しており、体重の減量が必要不可欠な方:
GIPとGLP-1の複合作用により強力な食欲抑制と代謝改善が得られるため、体重過多による脂肪肝やインスリン抵抗性を根本から改善したい方に適しています。 -
心筋梗塞や脳卒中の既往があり、将来の再発リスクを抑えながら強力に血糖を管理したい方:
今回の試験により、高リスクな患者さんでもトルリシティに劣らない安全性が証明されたため、心血管への懸念を持つことなく積極的な血糖管理を進めることができます。
トルリシティが引き続き選ばれるケース
マンジャロの強力さが際立つ一方で、トルリシティが長年培ってきた実績と使いやすさも依然として大きな価値を持っています。
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副作用(吐き気や胃もたれ)をできるだけ穏やかに抑えたい方:
トルリシティはマンジャロに比べて消化器症状の発現率が全体的に低く、より体に優しく馴染みやすい薬剤です。胃腸が弱い高齢の方や、過去に他の薬剤で吐き気を感じて治療を中断した経験がある方にはトルリシティが使いやすい選択肢となります。 -
用量調整の手間がなく、シンプルな治療を好む方:
トルリシティは基本的に用量の漸増を頻繁に行う必要がなく、決まった用量で長く安定した管理を続けやすい特徴があります。 -
すでにトルリシティで血糖値が良好に安定している方:
トルリシティで副作用もなくHbA1cが目標範囲(6%台後半から7%未満)に収まっているのであれば、あえて副作用リスクを高めてまでマンジャロへ変更する必要はありません。
まとめ
今回開示されたマンジャロの添付文書改訂データ(I8F-MC-GPGN試験)は、2型糖尿病の注射製剤における位置づけを決定づける歴史的な知見を提供してくれました。
得られた重要なポイントを整理すると、以下のようになります。
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心血管イベントに対する安全性:
心筋梗塞や脳卒中などの既往を持つ高リスクな患者さんにおいて、心血管死・心筋梗塞・脳卒中を合わせた複合イベントの発現リスクは、トルリシティに対して「非劣性」であることが正式に証明されました。ハザード比は0.92であり、長年の実績があるトルリシティと同等以上の安全性を確認できました。 -
血糖改善効果の強さ:
投与開始から144週(約3年)時点でのHbA1c変化量は、トルリシティ群の-0.93%に対し、マンジャロ群は-1.80%と約2倍の低下幅を示し、圧倒的な血糖降下力を証明しました。 -
低血糖と副作用の傾向:
命にかかわる重症低血糖の発生率は両群とも0.7%と極めて低く抑えられていました。一方で、悪心や下痢、食欲減退といった消化器系の副作用はマンジャロ群でやや多く見られるため、少量から慎重に増量していく使い方が重要となります。
糖尿病治療の目的は、単に数値を下げることだけでなく、心筋梗塞や脳卒中などの重大な合併症を防ぎ、健康な人と変わらない豊かな人生を長く送ることにあります。
心血管への確かな安全性が証明された上で、より強力な血糖改善を目指せる「マンジャロ」、そして優れた安全性と穏やかな使い心地で長く愛されている「トルリシティ」。それぞれの薬剤の長所を正しく理解し、主治医と自身の体調やライフスタイルについてしっかり話し合いながら、ご自身にとって最も納得のいく最適な治療を選択してください。
