OTC類似薬の追加負担が決定!仕組みや対象薬と除外条件を徹底解説
1. 令和9年3月から始まる医薬品負担の新たなルール
病院や診療所を受診した際、医師から処方されるお薬について、令和9年(2027年)3月1日から新しい負担のルールが導入されることになりました。
対象となるのは、薬局やドラッグストアなどで処方箋なしに購入できる市販薬(OTC医薬品)と成分や効能が同等であると位置づけられる医療用医薬品、いわゆる「OTC類似薬」です。この制度が始まると、対象となるOTC類似薬を保険診療で処方してもらう際、これまでの窓口負担(1割から3割)に加えて、原則として「薬剤費の4分の1」に相当する金額を患者自身が別途支払うことになります。
「病院でもらうお薬の自己負担が増えるのか」「どのような薬が対象になるのか」「持病がある場合はどうなるのか」といった疑問や不安を持たれる方も少なくありません。この制度は単に自己負担を引き上げるだけでなく、一定の配慮が必要な方や重い病気の治療に対しては負担を求めない詳細な例外規定が設けられています。
この記事では、制度が導入される背景から、具体的な追加負担の仕組み、対象となる77成分の医薬品リスト、そして追加負担が免除される条件まで、制度の全体像を詳しく解説していきます。
厚生労働省が公開したルールについては以下のPDFファイルをご参照ください。
2. なぜ見直しが行われるのか?制度導入の背景と目的
日本は、国民全員が何らかの公的医療保険に加入し、いつでもどこでも一定の自己負担割合(原則1割から3割)で高度な医療を受けられる「国民皆保険制度」を長く維持してきました。しかし近年、少子高齢化が急速に進展し、医療技術の高度化や新薬の開発などに伴って、国全体の医療費は年々増大の一途をたどっています。
限られた公的財源の中で、今後も持続可能で質の高い医療保険制度を守っていくためには、給付の重点化や効率化が不可欠です。その議論の中で長年焦点となってきたのが、市販薬としてドラッグストアなどで手軽に購入できる医薬品と、ほぼ同じ成分・同じ効果を持つ医療用医薬品に対する保険給付のあり方でした。
病院で診察を受けてお薬を処方してもらう場合、健康保険の適用によってお薬代そのものは3割(高齢者などでは1〜2割)の負担で済みます。そのため、「ドラッグストアで市販薬を定価で買うよりも、病院を受診して処方してもらったほうが安上がりである」というケースが頻繁に生じていました。
しかし、日常的な軽い症状に対して、市販薬でも代替できるようなお薬に多額の公的保険財源を充て続けることは、公費や現役世代の保険料負担を重くする一因にもなっています。そこで、市販薬との代替性が極めて高い医薬品を使用する場合には、保険給付の範囲を一部見直し、一定の負担を患者自身に求めることで、医療保険財源の持続可能性を確保しようというのが今回の見直しの大きな狙いです。
一方で、医療が必要な患者が経済的な理由で受診をためらったり、適切な治療から遠ざかってしまったりしては本末転倒です。そのため、今回の制度設計では、医療上どうしてもそのお薬を使い続ける必要がある患者や、重篤な疾患を抱える患者へのきめ細かなセーフティネットが用意されています。
3. 「一部保険外療養」の仕組みと実際の費用イメージ
一部保険外療養とはどのような仕組みか
今回の見直しによって導入されるのは、「一部保険外療養」という仕組みです。
日本の医療保険制度では、保険診療と保険外の自由診療を併用することを原則として禁止していますが、国が特別に認めた特定の医療行為や薬剤については「保険外併用療養費」として、保険診療と保険外の自己負担を組み合わせて受けることが認められています。すでに導入されている「選定療養」(例えば、大病院を大病院以外の医療機関からの紹介状なしで受診したときの追加費用や、後発医薬品があるのに患者希望で先発医薬品を選んだ場合の追加負担など)と似た枠組みといえます。
今回のOTC類似薬の見直しでは、以下のような内訳で窓口での支払いが生じます。
-
基本の医療費(診察料・調剤技術料など)
医師の初診料・再診料や、薬局での調剤基本料などの技術料については、これまで通り保険が適用され、自己負担割合(1割から3割)に応じた金額を支払います。 -
OTC類似薬の本体費用(通常の保険負担分)
お薬代のうち、別途負担分を除く大部分については保険が適用され、患者は自己負担割合に応じた金額を支払います。 -
OTC類似薬の別途の負担(薬剤費の4分の1)
対象となるお薬の価格(薬価)の「4分の1(25%)」が、保険外の特別な負担として全額自己負担となります。
つまり、お薬代の全額が保険適用外になって10割負担になるわけではありません。保険給付は継続して行われつつ、お薬代の25%相当分だけが追加の上乗せ費用として徴収される仕組みです。
窓口での支払い額はどれくらい変わるのか
患者が実際に支払う金額はどのように変わるのでしょうか。厚生労働省が公表している試算例(自己負担3割の場合)をもとに、見直し前と見直し後の金額、そして市販薬を購入した場合の価格水準を比較してみます。
| 医薬品の分類(処方日数) | 見直し前の窓口負担 | 見直し後の窓口負担 | (参考)市販薬(OTC)の実勢価格 |
| 解熱鎮痛薬(5日分) | 50円程度 | 70円程度 | 約500円 |
| 去痰薬(5日分) | 50円程度 | 70円程度 | 約1,500円 |
| 便秘薬(30日分) | 360円程度 | 550円程度 | 約2,000円 |
| 抗アレルギー薬(30日分) | 540円程度 | 790円程度 | 約1,000円 |
※上記のお薬代は、同一成分の中で最も広く使用されている品目の薬価をもとに算出された例です。
※病院や診療所の診察料(初診料・再診料)、検査料、薬局での調剤基本料などの技術料が別途かかります。
※市販薬の価格は、確認できる範囲におけるインターネット上の最安価格帯を参考としています。
この試算からも分かるとおり、見直し後の医療用医薬品の窓口負担額は、解熱鎮痛薬や去痰薬の短期間の処方であれば数十円程度、1か月分の抗アレルギー薬や便秘薬であっても数百円程度の上昇にとどまります。市販薬を定価で購入する場合の費用と比較すると、依然として保険診療を通じた処方のほうが割安であるケースが多いですが、これまでよりは患者の費用負担が確実に増えることになります。
4. 対象となる医薬品:77成分・1042品目の範囲
対象となる条件
今回、追加負担の対象として選定されたのは、厚生労働省の通知時点で「77成分・1042品目」にのぼる医療用医薬品です。対象となるかどうかの基準は厳密に定められており、以下の3つの条件をすべて満たす医薬品が選定されています。
-
市販のOTC医薬品と「有効成分」が同一であること
-
薬を体内に届ける「投与経路」(内服、外用、貼付、吸入など)が同一であること
-
1日に使用できる「最大用量」が異ならないこと
単に製薬メーカーが同じであるかどうかではなく、成分単位で市販薬との完全な重複が確認された医薬品が対象となっています。
生活の中でよく使われる代表的な対象医薬品
対象となる1042品目の中には、日常の診療で頻繁に処方されるお薬が多く含まれています。身近な製品の代表例は以下のとおりです。
-
解熱鎮痛剤:ロキソプロフェンナトリウム水和物(代表的な製品名:ロキソニン錠など)、イブプロフェンなど
-
抗アレルギー薬(花粉症・鼻炎薬):フェキソフェナジン塩酸塩(代表的な製品名:アレグラ錠など)、エピナスチン塩酸塩(アレジオンなど)、ロラタジン(クラリチンなど)、ベポタスチンベシル酸塩(タリオンなど)
-
去痰薬・せき止め:L-カルボシステイン(代表的な製品名:ムコダイン錠など)
-
便秘薬・胃腸薬:酸化マグネシウム(代表的な製品名:マグミット錠など)、ピコスルファートナトリウム水和物、ビサコジル、イトプリド塩酸塩
-
皮膚用保湿剤:ヘパリン類似物質(代表的な製品名:ヒルドイドゲル、ヒルドイドローション、ヒルドイドソフト軟膏など)、白色ワセリン、尿素
-
ステロイド外用薬(塗り薬):ヒドロコルチゾン酪酸エステル(代表的な製品名:ロコイド軟膏など)、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル
-
抗菌・抗真菌・抗ウイルス外用薬:クロラムフェニコール(クロロマイセチン軟膏など)、オキシコナゾール硝酸塩(オキナゾール腟錠など)、テルビナフィン塩酸塩、アシクロビル、ビダラビン(ゾビラックス軟膏など)
-
湿布薬・消炎鎮痛外用薬:ジクロフェナクナトリウム、フェルビナク、インドメタシン、サリチル酸メチル配合剤
風邪をひいたときに処方される解熱鎮痛薬や痰切り、花粉症の時期に処方される抗アレルギー薬、乾燥肌に対して処方される保湿剤など、多くの人が一度は手にしたことのある定番のお薬が網羅されています。
対象となる有効成分の一覧(77成分)
令和9年3月1日施行時点で対象として指定されている77成分の全名称は以下のとおりです。
-
アシクロビル
-
アシタザノラスト水和物
-
アスコルビン酸
-
アンモニア水
-
イソコナゾール硝酸塩
-
イソプロパノール
-
イトプリド塩酸塩
-
イブプロフェン
-
イブプロフェンピコノール
-
インドメタシン
-
エタノール
-
エピナスチン塩酸塩
-
L-カルボシステイン
-
塩酸テトラヒドロゾリン・プレドニゾロン
-
オキシコナゾール硝酸塩
-
オキシテトラサイクリン塩酸塩・ヒドロコルチゾン
-
オキシドール
-
オリブ油
-
希ヨードチンキ
-
クロトリマゾール
-
クロラムフェニコール
-
クロラムフェニコール・フラジオマイシン硫酸塩・プレドニゾロン
-
クロルヘキシジングルコン酸塩
-
ケトチフェンフマル酸塩
-
サリチルアミド・アセトアミノフェン・無水カフェイン・プロメタジンメチレンジサリチル酸塩
-
サリチル酸
-
サリチル酸メチル・dl-カンフル・トウガラシエキス
-
サリチル酸メチル・l-メントール・dl-カンフル
-
サリチル酸メチル・l-メントール・dl-カンフル・グリチルレチン酸
-
酸化マグネシウム
-
酸化亜鉛
-
次亜塩素酸ナトリウム
-
ジクロフェナクナトリウム
-
消毒用エタノール
-
静脈血管叢エキス
-
精製水
-
炭酸水素ナトリウム
-
沈降炭酸カルシウム・コレカルシフェロール・炭酸マグネシウム
-
チンク油
-
デキサメタゾン
-
テルビナフィン塩酸塩
-
トコフェロール酢酸エステル
-
トリアムシノロンアセトニド
-
尿素
-
白色ワセリン
-
ハチミツ
-
ピコスルファートナトリウム水和物
-
ビサコジル
-
ビダラビン
-
ヒドロコルチゾン酪酸エステル
-
フェキソフェナジン塩酸塩
-
フェキソフェナジン塩酸塩・塩酸プソイドエフェドリン
-
フェルビナク
-
ブテナフィン塩酸塩
-
複方ヨード・グリセリン
-
ブドウ酒
-
フラボキサート塩酸塩
-
フルチカゾンプロピオン酸エステル
-
プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル
-
ベタメタゾン吉草酸エステル・フラジオマイシン硫酸塩
-
ヘパリン類似物質
-
ベポタスチンベシル酸塩
-
ペミロラストカリウム
-
ベルベリン塩化物水和物・ゲンノショウコエキス
-
ベンザルコニウム塩化物
-
ホウ砂
-
ホウ酸
-
ポビドンヨード
-
マルツエキス
-
ミコナゾール硝酸塩
-
無水エタノール
-
モメタゾンフランカルボン酸エステル水和物
-
ヨウ素
-
ラメルテオン
-
ロキソプロフェンナトリウム水和物
-
ロラタジン
消毒薬や軟膏の基剤(精製水や白色ワセリン)、ビタミン剤(アスコルビン酸)から睡眠導入に関わる成分(ラメルテオン)まで、幅広い成分が含まれていることが確認できます。
5. 追加負担を支払わなくてよい例外規定(対象外となるケース)
今回の制度において極めて重要なポイントが、「追加負担の対象外となる場合」の明確な規定です。
厚生労働省は、必要な医療のアクセスを阻害しないよう、患者の年齢や疾患、治療状況に応じて、77成分の医薬品であっても「薬剤費の4分の1の別途負担」を免除し、従来通りの保険給付のみとする除外基準を定めています。除外される主なケースは以下の8つに分類されます。

① 子ども(18歳到達後の最初の3月31日まで)
高校を卒業する年齢(18歳に達する日以後の最初の3月31日)までの子どもについては、一律で別途負担の対象外となります。子どもの発熱やアレルギー症状、皮膚トラブルなどで対象医薬品が処方された場合でも、保護者に追加の金銭的負担が生じることはありません。
② 生活保護の受給者
生活保護法に基づく医療扶助を受けている患者についても、経済的な困窮度を考慮し、追加負担は求められません。
③ がん治療および関連する症状の治療
がんと診断され、がんそのものの治療を行っている場合や、がんの治療に伴って発生した副作用・症状(例えば、抗がん剤治療に伴う便秘に対する酸化マグネシウムの処方や、放射線治療に伴う皮膚炎に対する保湿剤の処方など)に対して使用する場合は、追加負担の対象外となります。ただし、がんとは直接関連のない全く別の症状に対して処方された場合は、通常通り負担の対象となります。
④ 指定難病・小児慢性特定疾病の治療
国の指定難病に罹患している患者、あるいは小児慢性特定疾病(18歳から20歳までの患者に限る)の患者が、その病気や病気に関連して生じた状態の治療のために対象医薬品を使用する場合も除外されます。これもがん治療と同様に、指定難病等と無関係な日常症状に対する処方は負担の対象となります。
⑤ 国の公費負担医療における使用
感染症法や自立支援医療など、国や自治体の公費負担医療制度のもとで対象医薬品が処方される場合は、追加負担は免除されます。公費負担医療の枠外で処方された場合は負担が生じます。
⑥ 入院中や処置・手術に伴う短期使用
病院や有床診療所に入院している期間中の使用(退院時に持参薬として処方される分を含む)は、重症管理の一環であるため追加負担の対象外です。また、外来受診であっても、体を傷つけるような侵襲を伴う検査、外科的な処置、手術などに伴って処方される対象医薬品については、「検査等の後、14日以内の使用」に限り除外されます(例:内視鏡検査後の鎮痛薬や、抜歯などの小手術後に処方される消炎鎮痛薬など)。
⑦ 年間を通じた長期使用が医療上必要な慢性疾患患者
長期間にわたって症状が持続し、継続的にお薬を使用しなければ病状を維持できない慢性疾患の患者については、一定の基準のもとで追加負担から除外されます。内服薬(飲み薬)と外用薬(塗り薬など)で以下のように基準が分かれています。
-
内服薬の場合
「年間50週(ほぼ1年間)」を超える長期使用が医療上必要であると医師が認めた場合に対象外となります。具体的には、過去に少なくとも半年以上の継続使用実績があり、今後も1年を通じて処方を継続する必要があると医師が判断した場合が含まれます。これにより、重度の慢性便秘症で長期間お薬を服用し続けている患者などが保護されます。 -
外用薬の場合
外用薬についても年間を通じた使用が基本となりますが、漫然とした処方を防ぐ観点から「長期使用に明確なエビデンス(医学的根拠)がある場合」に限定して対象外とされます。具体例として、アトピー性皮膚炎に対する皮膚保湿剤の継続使用や、湿疹の再発を予防するために定期的にステロイドを外用する「プロアクティブ療法」などが挙げられます。 -
経過措置(令和10年度末まで)
「重度の変形性膝関節症に対する湿布薬の使用」や、「アトピー性皮膚炎以外の重症皮膚疾患に対する皮膚保湿剤の使用」については、現場での長期使用の実態を考慮し、令和10年度(2029年3月末)までの経過措置として別途負担の対象外とされます。この期間中に診療ガイドラインのエビデンス蓄積状況を踏まえて、その後の取り扱いが再検討される予定です。
⑧ OTC医薬品では対応できない「効能・効果」に対する処方
処方される医療用医薬品自体は市販薬と同じ成分であっても、市販薬として承認されている「効能・効果」と、医療用医薬品として承認されている「効能・効果」の範囲が一致していない場合があります。この場合、市販薬ではカバーできない病気や症状を治療する目的で処方されるのであれば、代替性がないと判断され、追加負担の対象外となります。
【代表例:フェキソフェナジン塩酸塩(アレグラなど)】
-
医療用医薬品の効能・効果:アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症、アトピー性皮膚炎)に伴うそう痒
-
市販薬(OTC)の効能・効果:花粉、ハウスダストなどによる鼻のアレルギー症状の緩和(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)
フェキソフェナジン塩酸塩を「花粉症による鼻水や鼻づまり」の治療目的で処方してもらう場合は、市販薬でも対応可能なため、原則として追加負担の対象となります。しかし、「蕁麻疹」や「アトピー性皮膚炎によるかゆみ」の治療目的で医師が処方した場合は、市販薬の効能・効果の範囲を超えているため、追加負担の対象外(通常の保険給付のみ)として扱われます。
⑨ 妊婦・妊娠の可能性がある女性・授乳婦への配慮
市販のOTC医薬品の添付文書(説明書)において、「服用しないこと」と明確に記載されているお薬を、医師の慎重な判断のもとで妊婦や授乳婦に処方する場合(例:胃腸薬のイトプリド塩酸塩など)、市販薬で自ら対処することが不可能なため、追加負担の対象外となります。
6. 私たちの受診行動はどう変わる?賢く医療と付き合うポイント
令和9年3月から制度が導入された後、私たち一般の患者はどのように医療機関や薬局と向き合っていくべきでしょうか。意識しておくべき実践的なポイントを整理します。
「受診してはいけない」わけではない
最も誤解してはならないのは、この制度は「軽い風邪や花粉症で病院を受診することを禁止・制限する制度ではない」という点です。
つらい症状がある場合や、病気の原因が分からない場合に医療機関を受診し、医師の診察を受ける権利は何ら制限されません。受診の結果として医師が判断し、対象医薬品が処方された場合にのみ、お薬代の4分の1が追加で精算されるというルールです。自己判断で受診を我慢し、重大な病気の見逃しや重症化につながることは絶対に避けなければなりません。
診察を受けるメリットと費用のバランスを考える
市販薬を薬局で購入することと、医療機関を受診して処方箋をもらうことには、それぞれ異なるメリットがあります。
-
医療機関を受診するメリット
医師による問診・聴診・検査を通じて正確な診断を受けられること、他の合併症や重大な病気が隠れていないかを確認できること、症状の変化に応じてお薬の変更や組み合わせの調整を行ってもらえることが挙げられます。また、追加負担が発生したとしても、公的保険による給付があるため、長期間の治療では処方薬のほうが総額で安価になるケースも多く存在します。 -
ドラッグストア等で市販薬を購入するメリット
病院の待合室で長時間待つ必要がなく、仕事帰りや休日など自分の都合の良い時間帯に速やかに購入できること、初診料や調剤技術料などの診察費用がかからないことが挙げられます。
ごく初期の軽い風邪症状や一時的な頭痛などであれば、まずは市販薬を上手に活用して様子を見るセルフメディケーションを選択し、症状が数日経っても改善しない場合や症状が重い場合には速やかに医療機関を受診するといった、メリハリのある選択がより重要になってきます。
7. 医療現場での運用の流れと今後の見直し方針
制度の円滑な導入に向けて、厚生労働省および医療現場ではさまざまな準備が進められています。
医療機関や薬局のシステム改修と負担軽減
診察を行う医師や、調剤を行う保険薬局の薬剤師が、処方箋を交付・精算するたびに対象かどうかを手作業で判定していては、医療現場が混乱し、患者の待ち時間が大幅に増加してしまいます。
そのため、国は電子カルテやレセプトコンピューター(レセコン)の開発事業者に対し、対象医薬品の一覧データや、除外対象となる傷病名コードの一覧情報などを事前に公開し、システム側で自動判定やチェックができる仕組みの改修を進めています。医師がカルテに入力した診断名や患者の年齢、処方歴などから、システムが自動的に「追加負担の対象」か「対象外」かを判定・計算する運用の整備が進められています。
施行後の検証と毎年の見直し
このOTC類似薬の追加負担制度は、一度導入して終わりではありません。厚生労働省は、令和9年3月1日の施行後、患者の受診行動にどのような変化が生じたか、市販薬や別の医療用医薬品への処方シフトがどのように起こったかなどを詳細に検証するとしています。
また、市販薬市場では日々新しいスイッチOTC医薬品(医療用から市販薬に転用された薬)が登場しています。そのため、追加負担の対象となる医薬品のリストについては、原則として「毎年4月1日」を基本に見直しを行い、最新の市場状況や診療ガイドラインのエビデンスに基づいて追加や除外を適切に更新していく方針が示されています。
8. まとめ
令和9年(2027年)3月1日から導入される「OTC類似薬の一部保険外療養」は、日本の医療保険制度を持続可能なものとするための大きな転換点となる制度改革です。
本記事の重要な要点は以下のとおりです。
-
制度の基本内容:市販薬と成分・投与経路・1日最大用量が同じ医療用医薬品(77成分・1042品目)を処方される際、原則として薬剤費の4分の1が追加の自己負担となります。
-
窓口負担の変化:全額自費になるわけではなく、基本の診察料や調剤技術料、お薬代の大部分はこれまで通り保険が適用されます。負担の増加幅は短期間の処方で数十円、1か月分で数百円程度です。
-
対象となる代表薬:ロキソニン、アレグラ、ムコダイン、マグミット、ヒルドイド、ロコイド軟膏など、日常的によく処方される医薬品が含まれます。
-
手厚い除外規定:18歳年度末までの子ども、生活保護受給者、がん治療、指定難病の患者は負担が免除されます。
-
医療上の必要性への配慮:年間50週以上の長期内服が必要な患者、アトピー性皮膚炎に対する保湿剤やステロイド外用薬、市販薬にない効能・効果を目的とした処方、妊婦への処方なども追加負担の対象外となります。
医療機関での診察そのものが制限される制度ではありません。制度の内容を正しく把握し、普段利用しているお薬が対象になるのかどうかを確認しながら、必要に応じた受診やかかりつけの医師・薬剤師への相談を通じて、ご自身にとって最適な医療の受け方を選択していくことが大切です。

