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疥癬 自分まとめ

疥癬治療薬「ストロメクトール」の使用方法(自分まとめ)

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疥癬治療薬「ストロメクトール」の使用方法(自分まとめ)

 

年に数回、ダニ退治として皮膚科からストロメクトール錠3㎎が処方されることがあります。処方頻度は非常に少ないため、自分としては毎回「ポイントはなんだったかなぁ」と調べ直すことになるので、ストロメクトール錠3㎎の自分まとめを記します。

 

ストロメクトール3㎎:服用量は体重に依存します。1回の服用でヒゼンダニ(疥癬虫)を撃退しますが、重症例では初回投与後1~2週間以内に効果を確認し、2回目の投与を考慮します。

 

海外では2回投与レジメンが使用されています。ストロメクトールは生きたヒゼンダニに効果があるものの、卵の状態では効果がありません。そのため1回目の投与で活動性のダニを駆除し、つぎの1週間で卵から孵化したダニを駆除するという治療指針となります。

 

また重度の「角質化疥癬」では寄生虫の量が桁違いに多いため、1カ月に最大7回の投与を推奨しています(CDCの知見です)

 

5歳未満の小児または体重が15㎏未満の小児に関する安全性に関するデータは限定的です。また、血液脳関門が未発達な小児対しては脳症・昏睡などの特定中枢神経系の副作用のリスクが高まる可能性があるとしています。(米国小児科学会)

 

1日1回、空腹時に水のみで服用します。

高脂肪食後に服用すると血中濃度が2.6倍に上昇したという外国人のデータがあるため空腹で使用すること。

投与後4~5時間後の血中濃度が最大となり、血漿中消失半減期は18時間となっていますが、この薬は皮膚への蓄積性が高いという特徴があるため、血中濃度が治療上の有効性の指標とはなりませんのでご留意ください。

 

ある病院の院内規約では服用してから数時間以内は皮膚表面上に薬剤濃度が上がりヒゼンダニをやっつけるために有用な時間であるため入浴は避けることというルールを設けている病院もあるようです。(8時間経過後は入浴OKとされていました)

 

作用機序

ストロメクトールは虫の神経と筋肉の機能を阻害するはたらきがある薬です。具体的には無脊椎動物のクロライドチャネルの流れを促進して細胞膜の過分極を引き起こし、神経系および筋肉の機能のマヒを発生させて駆除する作用です。

 

ストロメクトール錠を飲んだ後、消化管より吸収されて全身循環に入ります。ストロメクトールは血漿タンパクと結合して全身に分布しますが、ストロメクトールは脂溶性が高いために、特に皮脂腺に多く蓄積することが知られています。

 

皮膚表面の毛包や皮脂腺に蓄積されたストロメクトールは徐々に皮膚表面へと分布していきます。

 

ヒゼンダニは毛包内に寄生して、ヒトの皮膚の皮脂や細胞をたべて生きています。皮膚表面に分泌されたストロメクトールは、ヒゼンダニの神経系・筋肉系に作用して神経伝達を阻害し、麻痺・死を引き起こします。

 

上記の作用のためストロメクトールはヒゼンダニの幼生・若虫・成虫に効果がありますが卵には効果がありません。

 

そのため1回目の治療中は卵の状態であるヒゼンダニを駆除することができないケースが想定されるため、2回目の治療が必要なケースがあります。

 

ストロメクトールの投与後、皮膚表面に十分量のストロメクトールがいきわたるまでに時間を要するため、ヒゼンダニの駆除効果が表れるまでには、数日から数週間を要するケースがあります。

dani (1)

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執筆者:ojiyaku

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