尿酸排泄促進薬で尿量は増える?ユリスの作用とSGLT2阻害薬との決定的な違い

尿酸排泄促進薬で尿量は増える?ユリスの作用とSGLT2阻害薬との決定的な違い

尿酸値を下げるために処方される「ユリス」や「ユリノーム」といった尿酸排泄促進薬。これらを服用すると、糖尿病の治療薬であるSGLT2阻害薬のように尿の量が増え、脱水症状に注意が必要なのではないかと疑問に思ったことはありませんか?

本記事では、尿酸排泄促進薬であるドチヌラド(ユリス)を中心に、その薬理作用や臨床データ、服用方法、そして気になる「尿量への影響」について、わかりやすく詳細に解説します。

1. 尿酸排泄促進薬を飲むと尿量は増えるのか?

結論から申し上げますと、ユリス(ドチヌラド)やユリノーム(ベンズブロマロン)などの尿酸排泄促進薬を服用しても、薬の作用によって直接的に尿量が増えることはほとんどありません。

SGLT2阻害薬(糖を尿から出す薬)と比較してみます。SGLT2阻害薬は、尿中に大量の「糖(グルコース)」を排出させます。糖は水分を引き寄せる性質(浸透圧)が強いため、糖と一緒に水分も排泄され、結果として尿量が増える「浸透圧利尿」が起こります。そのため、脱水への注意が必要です。

一方、尿酸排泄促進薬が尿に出す「尿酸」は、糖に比べるとその絶対量が非常にわずかです。そのため、尿酸が水分を引き寄せる力は弱く、薬の作用そのもので尿量が増えることはありません。

ただし、尿酸排泄促進薬の服用中には「意識的に水分を多く摂ること」が強く推奨されます。これは、尿の中に溶け出した尿酸が濃くなりすぎて固まり、尿管結石(石)ができるのを防ぐためです。「薬を飲んで尿量が増えた」と感じる方がいるとすれば、それは副作用ではなく、尿管結石を防ぐために水分をしっかり摂っているという、正しい治療の積み重ねの結果と言えるでしょう。

少し難しい話になるのですが、具体的なmol濃度を用いて尿量についてご説明します。

①. 尿中に排泄される物質のmol濃度の違い

それぞれの薬を服用した際、1日あたりに排泄される物質の量とmol濃度(標準的な尿量2.0Lと仮定した場合)の目安を比較します。

項目 SGLT2阻害薬(糖) ユリス(尿酸)
1日の追加排泄量(重量) 約 50〜100 g 約 0.4〜0.6 g (増分) ※1
分子量 約 180 (ブドウ糖) 約 168 (尿酸)
1日の排泄量 (mol数) 約 280〜560 mmol 約 3.5〜6.5 mmol (総量) ※2
尿中濃度 (2.0L時) 140〜280 mmol/L 約 1.8〜3.3 mmol/L
  • mol濃度の差: SGLT2阻害薬による尿糖のmol濃度は、ユリスによる尿酸の濃度の約50倍〜100倍に達します。

  • ※1:ユリス(2mg/日)等の服用により、血液中から尿中へ移行する尿酸の増分を考慮。

  • ※2:健康な人の通常の尿酸排泄量(約0.6g/日)に薬剤による増分が加わった合計値で算出。

②. 尿量への影響(浸透圧利尿)

物質が尿中に排泄されると、その分子が「浸透圧」を生じ、周囲の水分を尿として引き出します(浸透圧利尿)。

  • SGLT2阻害薬の場合:

    • 尿量の増加: 1日あたり約 400〜500 mL の尿量増加が報告されています。

    • これは尿糖(糖)のmol数が非常に多いため、強力な浸透圧が生じる結果です。このため、服用初期には特に脱水への注意が呼びかけられます。

  • ユリス(尿酸排泄促進薬)の場合:

    • 尿量の増加: 尿酸そのものの浸透圧による尿量増加はごくわずか(数mL〜十数mL程度)であり、体感できるほどの変化はありません。

    • 指導上の尿量増加: 上記にも記しましたが、ユリスの服用時には「水分を多く取って、1日2L以上の尿量を確保するように」と指導されます(尿管結石予防)。そのため、飲水量に比例して尿量が増えることになります。

ユリス

2. 尿酸排泄促進薬「ドチヌラド(ユリス)」開発の経緯と意義

高尿酸血症や痛風の治療において、古くから使われてきたのが尿酸排泄促進薬です。しかし、既存の薬にはいくつかの課題がありました。

例えば、長年使われてきたベンズブロマロン(ユリノーム)は、稀に重篤な劇症肝炎などの肝障害を引き起こすリスクが報告されており、定期的な検査が欠かせません。また、他の薬との飲み合わせ(相互作用)を気にしなければならないケースもありました。

こうした背景から、「より安全に、より選択的に尿酸の通り道だけに働く薬」を目指して日本で創製されたのが、ドチヌラド(ユリス)です。

ドチヌラド(ユリス)は、2020年に製造販売承認を取得した比較的新しい薬です。従来の薬よりも「狙った場所にだけ働く」という特徴を突き詰め、肝臓への負担や他の薬との相互作用を抑えつつ、効率的に尿酸値を下げることを目的として開発されました。これは、高尿酸血症患者の約6割を占めると言われる「尿酸排泄低下型(尿から尿酸を出す力が弱いタイプ)」の患者さんにとって、非常に大きな意義を持つ治療薬の登場でした。

3. 尿酸が体内で動く仕組みと薬の薬理作用

尿酸排泄促進薬の働きを理解するために、まずは腎臓がどのように尿酸を処理しているのかを「リサイクルの工場」に例えて説明します。

腎臓での尿酸のリサイクル

私たちの体では、血液中の尿酸が腎臓の「糸球体(しきゅうたい)」というフィルターを通って、一度は尿の元(原尿)へと放り出されます。しかし、体は「尿酸はまだ使えるかもしれない」と判断し、その約90%以上を再び血液中へと回収(再吸収)してしまいます。この回収作業を行っている「回収車」のような役割をするのが、URAT1(ユーラットワン)という受容体(トランスポーター)です。

ドチヌラド(ユリス)の働き:SURIという新戦略

ドチヌラド(ユリス)は、この回収車である「URAT1」の働きをブロックします。

  • 作用機序: URAT1を選択的に阻害することで、尿酸が血液中に戻るのを防ぎます。回収されなかった尿酸はそのまま尿として体外へ排出されるため、血液中の尿酸値が下がります。

この薬は、SURI(Selective Urate Reabsorption Inhibitor:選択的尿酸再吸収阻害薬)と呼ばれます。「選択的」というのがポイントで、尿酸の「排出」に関わる他の通り道(ABCG2やOAT1/3など)にはほとんど影響を与えず、純粋に「再吸収(回収)」だけを強力にストップさせます。

既存薬ベンズブロマロン(ユリノーム)との違い

従来のベンズブロマロン(ユリノーム)もURAT1を阻害しますが、尿酸を外に出すための通り道(ABCG2など)まで一部ブロックしてしまう可能性がありました。ドチヌラド(ユリス)は、出す力は邪魔せず、戻す力だけを抑えるため、非常に効率が良いのが特徴です。また、細胞内のミトコンドリアに対する毒性が極めて低く抑えられており、これが肝障害のリスク低減に寄与しています。

4. 投与方法と適応疾患:いつ、どのように飲むのか

ドチヌラド(ユリス)は、主に以下の疾患に対して使用されます。

  • 適応疾患: 痛風、高尿酸血症

  • 投与経路: 経口投与(飲み薬)

  • 服用回数: 1日1回(食後などの指定されたタイミング)

適応疾患ごとの具体的な解説

① 痛風・高尿酸血症

血液中の尿酸値が7.0mg/dLを超えた状態が高尿酸血症であり、それが原因で関節に激痛走るのが痛風です。

ドチヌラド(ユリス)は、成人に対して通常、1日1回0.5mgから開始します。

なぜ少量から始めるのでしょうか?それは、尿酸値を急激に下げすぎると、関節に溜まっていた尿酸の結晶が剥がれ落ち、逆に「痛風発作」を誘発してしまうことがあるからです(これを「あぶり出し」と呼ぶこともあります)。

その後、血液検査で尿酸値を確認しながら、2週間以上の間隔をあけて1mg、2mgと段階的に増量していきます。

  • 維持量: 通常は1日1回2mgを服用します。

  • 最大量: 患者さんの状態に合わせて、最大で1日1回4mgまで増量することが可能です。

毎日決まった時間に1回飲むだけで良いため、飲み忘れが少なく、継続しやすいのが大きなメリットです。

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5. 臨床データが示す圧倒的な効能・効果(有意性の差)

ドチヌラド(ユリス)の実力は、多くの臨床試験によって証明されています。具体的な数値を見てみましょう。

① 尿酸値を下げる目標達成率

国内で行われた第Ⅱ相試験(2mg投与時)において、尿酸値の目標とされる6.0mg/dL以下を達成した割合は74.4%という高い数値を示しました。さらに、最大量である4mgを投与したグループでは、100.0%(全員)が目標を達成したという驚くべきデータもあります。

② 既存の有力薬「フェブキソスタット」との比較

尿酸の生成を抑える代表的な薬であるフェブキソスタット(フェブリク)との比較試験(第Ⅲ相非劣性試験)も行われています。

  • 尿酸値低下率: ドチヌラド群は41.82%、フェブキソスタット群は44.00%。

    統計学的にドチヌラドはフェブキソスタットに対して「劣っていない(非劣性)」ことが証明されました。つまり、従来の非常に強力な薬と同等の効果が期待できるということです。

③ 長期的な安定性

58週間にわたる長期投与試験では、投与10週後から58週後まで、44.99%~49.71%という高い尿酸値低下率を維持し続けました。一度下がったら安定してコントロールできることがわかります。

6. 効果発動時間と持続時間

薬を飲んでから、どれくらいで効果が出て、どれくらい続くのかも重要なポイントです。

  • 効果発動時間(血中濃度): 服用後、約2時間から3時間で血液中の薬の濃度が最大になります。

     

  • 効果持続時間(半減期): 薬の濃度が半分になるまでの時間(消失半減期)は、約9時間から10時間です。

尿酸値を下げる作用自体は、1日1回の服用で24時間しっかりと持続するように設計されています。飲み始めてから数日以内には尿中への尿酸排泄が増え始めますが、血液中の尿酸値が目標値で安定するまでには、数週間から数ヶ月かけてじっくりと調整していくのが一般的です。

7. 服用前に知っておきたい副作用と注意点

どのような優れた薬にも副作用のリスクはあります。まとめの前に、ドチヌラド(ユリス)で報告されている主な副作用を確認しておきましょう。

① 痛風関節炎(痛風発作)

前述の通り、尿酸値が急激に下がることで、関節内の尿酸結晶が反応し、一時的に痛みが出ることがあります。これは薬が効いている証拠でもありますが、自己判断で中断せず、医師に相談することが大切です。臨床試験での発現率は、承認用量の範囲内で5.0%〜5.3%程度と報告されています。

② 尿路結石

尿の中に溶け出す尿酸の量が増えるため、尿が酸性に傾いていると、尿酸が結晶化して石(結石)ができやすくなります。

  • 対策: 1日2L程度を目安に水分をしっかり摂り、尿量を確保することが最も重要です。また、医師から尿をアルカリ化する薬(ウラリットなど)が併用されることもあります。

③ 腎機能への影響

ごく稀に、尿中への尿酸排出が急増することで腎臓に負担がかかることがあります。臨床試験では、尿中の白血球陽性(16.7%)や血中クレアチニン増加などが報告されていますが、重篤なものは稀です。

④ その他の副作用

四肢不快感(足の違和感)、関節炎、肝機能指標(ALT, γ-GTPなど)の数値の変化などが報告されています。

8. まとめ

尿酸排泄促進薬「ドチヌラド(ユリス)」について、その疑問と実態を整理しましょう。

  1. 尿量について: SGLT2阻害薬のように薬理作用で尿量が増えることはありません。ただし、副作用の「尿路結石」を防ぐために、自発的な水分摂取が必要です。

  2. 革新的なメカニズム: URAT1という尿酸回収車だけを狙い撃ちする「SURI」という新しいタイプの薬であり、従来の薬よりも効率的かつ安全に設計されています。

  3. 確かな効果: 2mgの服用で約74%の人が尿酸値6.0mg/dL以下を達成し、その効果は1日1回の服用で24時間持続します。

  4. 開発の意義: 肝機能障害のリスクを抑えつつ、既存の強力な治療薬と同等の効果を実現した、日本発の新しい選択肢です。

  5. 注意点: 飲み始めの痛風発作や尿路結石に注意し、しっかりと水分を摂りながら、医師の指導のもとで徐々に用量を調整していくことが成功の鍵です。

尿酸値を下げることは、痛風の激痛を防ぐだけでなく、将来的な腎機能の保護や動脈硬化の予防にもつながります。尿量が増える心配をするよりも、「石を作らないために水を飲む」という意識を持って、最新の治療薬と上手に付き合っていきましょう。

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