厚生労働省の生活保護部会は生活保護受給者が医療機関を受診した後、薬を受け取る薬局を一元化することや、後発医薬品の使用を原則とする報告書をまとめました。
以下にその内容をまとめます
生活保護受給者の医薬品の使用に関しては、複数の医療機関・薬局より同一の向精神薬の投与を受けている者について、主治医等に確認の上、医療機関と協力して適正受診指導を行っている。それ以外の薬剤の重複投薬に関しては、福祉事務所の取組に委ねられている。
現在、向精神薬に限らず、処方される薬剤の調剤を行う薬局を一ヶ所とするモデル事業が行われており、これにより、併用禁忌薬や重複投薬のチェック等を通じた生活保護受給者の健康確保と医療扶助費の適正化が期待される。
モデル事業として実施している薬局の一元化については、向精神薬以外の薬剤に係る重複投薬の現状把握やモデル事業の結果を適切に評価した上で、指定医療機関・薬局の所在、交通等の地域ごとの事情にも配慮しつつ推進すべきである。
後発医薬品(ジェネリック医薬品)については、医療扶助における取組としては、平成25年改正において医師等が使用を可能とした場合は後発医薬品の使用を促すことを規定し、平成27年の使用割合(数量ベース)は63.8%(医療全体で56.2%)、平成28年で69.3%となるなど着実に取組が進んできている。
他方、都道府県ごとに使用割合に差があると同時に、一部では使用割合の伸びが鈍化してきているとの指摘もある。また、医師等が一般名で処方したにもかかわらず薬局において後発医薬品が調剤されなかった理由として、「患者の意向」の割合が6割以上という調査結果もある。制度に対する国民の信頼を確保するため、更なる取組が求められている。
後発医薬品については、更なる使用促進のため、その使用を原則とすることが適当である。その際、医師又は歯科医師が後発医薬品の使用を可能と認めていることや、薬局等に在庫がなく、すぐに必要な薬剤の取寄せができない等の問題がないことなど、必要な条件を満たした上で実施するよう留意すべきである。
以上のことから、
「生活保護受給者は、指定医療機関・薬局の所在、交通等の地域ごとの事情にも配慮しつつ薬局の一元化を推進するとともに、医師・歯科医師が後発医薬品の使用を可能と認め、薬局等に在庫があれば後発医薬品の使用を原則とすること」
を報告書としてまとめています。
現在の生活保護法における後発医薬品の使用に関するルールを確認してみると
前項に規定する医療の給付のうち、医療を担当する医師又は歯科医師が医学的知見に基づき後発医薬品(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第十四条又は第十九条の二の規定による製造販売の承認を受けた医薬品のうち、同法第十四条の四第一項各号に掲げる医薬品と有効成分、分量、用法、用量、効能及び効果が同一性を有すると認められたものであつて厚生労働省令で定めるものをいう。以下この項において同じ。)を使用することができると認めたものについては、被保護者に対し、可能な限り後発医薬品の使用を促すことによりその給付を行うよう努めるものとする。
とありますので、「可能な限り後発医薬品の使用を促すこと」というルールとなっており、「原則」という記載はありません。そのため、医師又は歯科医師が後発医薬品の使用を促すものの、後発医薬品を使用するかどうかの選択に関しては本人にゆだねられているのが現状です。
厚生労働省の報告書をうけて、政府が国会での審議を経て、現状の生活保護法に記されている内容を変更するかどうかが一つのポイントとなる気がします。