2026年6月から「エンシュアHが自費」。処方する際は保険給付の理由を明確化すること

2026年6月から「エンシュアHが自費」。処方する際は保険給付の理由を明確化すること

2026年6月から、医療保険制度に大きな見直しが入ります。
今回のポイントは次の2つ。

  • ① 栄養剤(経口栄養補助食品)の給付制限(エンシュアH、ラコールなど)
  • ② 長期収載品(先発品)の“選定療養”の対象拡大

どちらも「医療費の無駄を減らす」という財務省の方針に基づくものですが、患者や医療現場にとっては影響が大きい内容です。


① 栄養剤の給付制限とは?

まずは、エンシュアH・ラコールなどの 経口栄養補助食品 に関する見直しです。

■ なぜ制限されるのか?

本来、医療用栄養剤は

  • がん治療中で食事が取れない
  • 重度の低栄養状態
    といったケースで使われるもの。

しかし近年、

「食が細い高齢者に“栄養ドリンク代わり”に処方されている」
と財務省が問題視。

医療費の増加を抑えるため、給付対象を厳格化する方向が示されています。

■ 今後どうなる?

厚労省が最終的な基準を定めますが、財務省案では

  • BMIや血液検査など、客観的な低栄養の基準を満たす場合のみ保険適用
  • 医師の裁量による“漫然処方”を抑制
    といった方向性が示されています。

 

今回の改定で、経腸栄養剤の処方は以下の3つのルールに整理されました。

① 原則として「栄養保持目的」の保険給付は不可

単なる食事の代わりや、市販品で対応可能な栄養保持を目的とした処方は、原則として保険給付の対象外(点数算定不可)となります。

② 「手術後」や「経管投与」は、その旨を明記

添付文書通りの使い方である「手術後の患者」や「経管投与(胃ろう等)の患者」については、引き続き保険給付されます。ただし、処方箋およびレセプトへの記載が必須となります。

③ 「医師が必要と判断する場合」は理由を明記(例外規定)

ここが最も重要なポイントです。栄養保持目的であっても、医師が医学的に必要と判断した場合は保険給付が認められます。その場合、具体的な理由を処方箋とレセプトに記載する必要があります。


「医師が必要と判断するケース」とは?

例外的に認められる「医師が必要と判断する患者」とは、具体的にどのようなケースを指すのでしょうか。議事録等の内容から、以下のような状況が想定されます。

  • 低栄養状態が著しい患者(単なる軽微な低栄養を除く)

  • 終末期の患者

  • クローン病やベーチェット病など:腸管の負担を減らし、炎症を抑える必要がある場合

現場の医師が「この患者さんには食品ではなく、医薬品としての経腸栄養剤が必要だ」と判断し、その理由が記載されていれば、これまで通り処方が可能です。

処方する際は、その理由を処方箋および診療報酬明細書に記載することで保険給付の対象とすることを明確化すること。

例として

・手術後の患者

・経管により栄養補給を行っている患者

・他の食事で代用できない患者

・医師が特に医療上、栄養保持を目的とした医薬品の使用の必要があると判断した患者

疾病に「摂食嚥下既往障害」

客観的根拠として身体計測によるBMI、血液検査のアルブミン値

があれば尚よいとしています。

エンシュアHを処方する際は、さらに追加のコメントとして添付文書に記載がある条件の、4つのうち1つを選択することを求めています。

・4つの水分の摂取制限が必要な患者(心不全、腎不全を合併している患者など)

・安静時エネルギー消費が亢進している患者(熱傷患者、感染症を合併してる患者)など)

・経腸栄養剤の投与容量を減らしたい患者(容量依存性の腹部膨満感を訴えている患者など)

・経腸栄養剤の投与時間の短縮が望ましい患者(口腔外科や耳鼻科の術後患者など)

薬局現場での対応

この改定により、薬局での処方箋鑑査のルールが変わります。

  1. 処方理由の記載があるか?

    経腸栄養剤が処方された際、処方箋に「手術後」「経管投与」あるいは「医師が必要と判断した理由」が記載されているかを確認しましょう。

  2. 記載がない場合は疑義照会を

    もし理由の記載がないまま処方された場合、そのまま調剤すると保険給付の対象外となる恐れがあります。速やかに疑義照会を行う必要があります。

  3. レセプトへの転記

    処方箋に記載された理由は、調剤レセプトにも反映させる必要があります(詳細な運用ルールは今後の通知を待ちましょう)。


エンシュアH


② 長期収載品の「選定療養」対象拡大とは?

こちらはすでに2024年10月から始まっている制度で、2026年6月にさらに拡大されます。

■ 選定療養とは?

簡単に言うと、

ジェネリックがあるのに、患者が先発品を選ぶ場合は差額の一部を自己負担する制度

です。

  • 先発品:500円
  • 後発品:250円
    → 差額250円の 1/4(62.5円+税) を追加負担

医師が「先発品でなければならない」と判断した場合は対象外です。

■ 2026年6月からどう変わる?

対象となる先発品の範囲が広がります。

  • 後発品発売から 5年以上経過
  • 後発品の 置換率が50%以上

こうした条件の薬が、より多く「選定療養」の対象になります。

つまり、
“先発品を選ぶ=追加負担” がさらに一般化する ということです。

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なぜこの2つを同時に進めるのか?

背景はシンプルで、
医療費の増加が限界に近づいているため

  • 高齢化で医療費が毎年増える
  • 栄養剤の処方が急増
  • 先発品の使用が依然として多い
  • 後発品の供給不安が改善しつつある

財務省は

「無駄を減らし、新薬開発など必要な分野に財源を回すべき」
と主張しています。


患者への影響は?

■ 栄養剤の給付制限

  • 軽度の低栄養では保険適用外になる可能性
  • 在宅高齢者の負担増
  • 医師の判断より“基準”が優先される場面が増える

■ 選定療養の拡大

  • 先発品を希望すると追加負担
  • ジェネリックへの切り替えがさらに進む
  • 薬局での説明が増え、混乱が起きる可能性

まとめ:2026年6月は医療制度の“転換点”に

今回の見直しは、
「医療費の効率化」 を目的とした大きな制度改革です。

  • 栄養剤は「本当に必要な人だけ」が保険適用
  • 先発品を選ぶと追加負担が発生
  • 医療費の構造が大きく変わるタイミング

患者・医療者ともに、早めに制度を理解しておくことが重要です。

 

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