注射と点鼻で何が違う?インフルエンザワクチンの採用株を徹底比較!
秋から冬にかけての季節になると、毎年の恒例行事としてインフルエンザワクチンの接種を検討される方が増えてきます。これまでは「腕にチクッと注射をする」という方法が当たり前でしたが、近年では鼻にシュッと吹き付ける点鼻タイプのワクチン「フルミスト点鼻液」が広く選べるようになりました。
この2つのワクチンについて調べていくと、接種方法や痛みの有無だけでなく、実は「中に含まれているウイルスの株」に違いがあることにお気づきの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
2026年度の構成を見ると、従来の皮下注射ワクチンである「ビケンHA」と、点鼻ワクチンである「フルミスト点鼻液」では、一部同じ株が採用されている一方で、異なる株が選ばれている部分があります。
「含まれている株が違うということは、効果にも差があるのでしょうか?」
「どうして同じインフルエンザ予防のためのワクチンなのに、違うウイルス株が入っているのでしょうか?」
このような疑問を持つ方に向けて、本記事ではビケンHAとフルミスト点鼻液のインタビューフォームに記載されている正確な情報をもとに、両ワクチンの製造株の違い、選定される仕組み、そしてワクチン自体の性質の違いについて詳しく解説していきます。
1. 2つのワクチンの最大の違いは「生」か「不活化」か
ウイルス株の比較に入る前に、まず整理しておかなければならない重要な前提があります。それは、ビケンHAとフルミスト点鼻液では、ワクチンの根本的な仕組みそのものが大きく異なっているという点です。
ビケンHA皮下注ワクチンは不活化ワクチンであるのに対して、フルミスト点鼻液は不活化ワクチンではなく、「弱毒生(せい)ワクチン」製剤です。
まずはこの根本的な違いについて確認しておきましょう。
皮下注射ワクチン(ビケンHA)は「不活化ワクチン」
ビケンHAをはじめとする従来の皮下注射ワクチンは、「不活化ワクチン(HA画分)」と呼ばれるタイプです。
培養して増やしたインフルエンザウイルスを薬品(エーテルなど)で処理し、ウイルスの粒子を分解して感染力を完全に失わせています。その中から、人間の免疫細胞がウイルスの目印として認識する表面タンパク質「ヘムアグルチニン(HA)」の部分だけを取り出し、精製して作られています。
ウイルス自体は完全に死んでいる(感染力がない)状態ですので、体の中でウイルスが増殖することはありません。皮下に注射することで、血液中にウイルスを迎え撃つための抗体(主にIgG抗体)を作らせます。
点鼻ワクチン(フルミスト点鼻液)は「弱毒生ワクチン」
一方、フルミスト点鼻液は、生きたインフルエンザウイルスの毒性を極限まで弱めた「弱毒生インフルエンザワクチン」です。
フルミストに使われているウイルスは、特別な改良が施された「リアソータント(遺伝子再集合)ウイルス」です。具体的には以下の3つの大きな特徴を持っています。
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低温馴化(ていおんじゅんか):ヒトの体温(約37℃)よりも低い温度(鼻腔内の温度など)で効率よく増殖します。
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温度感受性:温度の高い場所では増殖しにくくなります。A型株は39℃以上、B型株は37℃以上になると増殖が強く抑制されるため、肺などの深部(下気道)に入り込んで重い肺炎などを引き起こすことが基本的にありません。
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弱毒化:インフルエンザを発症する動物モデルにおいて、インフルエンザ様の病原性を示さないように弱毒化されています。
鼻の中にスプレーされた弱毒ウイルスは、鼻やのどの粘膜(上気道)の表面でごくわずかに増殖します。これにより、実際のインフルエンザに自然感染したときと非常に近い形で免疫が刺激されます。血液中の抗体だけでなく、ウイルスの侵入口である鼻の粘膜表面に「IgA抗体」というバリアを作り出し、さらに細胞性免疫と呼ばれる全身の免疫部隊も活性化させることができます。
このように、ビケンHAは「ウイルスの部品だけを注射する不活化ワクチン」、フルミストは「弱めたウイルスを鼻粘膜で軽く増やす生ワクチン」という決定的な違いがあります。
2. 2026年度における製造株の比較
それでは、本題である「2026年度のワクチンに含まれるウイルス株」について、具体的に比較してみましょう。
インフルエンザウイルスには大きく分けてA型とB型があり、毎年の季節性インフルエンザワクチンは、A型2種類とB型1種類(以前はB型2種類を含む4価でしたが、近年の国際的な動向に合わせて3価が主流となっています)の合計3株で構成されています。
採用されている株の一覧
| ウイルスの種類・系統 | 皮下注射:ビケンHA(不活化) | 点鼻:フルミスト点鼻液(弱毒生) | 株の一致状況 |
| A型(H1N1亜型) | A/スイス/6849/2025 | A/スイス/6849/2025 | 完全に一致 |
| A型(H3N2亜型) | A/ミシガン/105/2025 | A/ダーウィン/1369/2025 | 異なる株 |
| B型(ビクトリア系統) | B/東京/EIS13-175/2025 | B/パース/115/2025 | 異なる株 |
各株の比較と明確な違い
上の表から明らかなように、2026年度の両製剤を比較すると、3株中1株は全く同じ株が選ばれていますが、残りの2株(A型H3N2とB型ビクトリア系統)は異なる株が選ばれているという明確な違いが存在します。
それぞれどのような特徴の違いがあるのか、細かく見ていきましょう。
1. A型(H1N1亜型):完全一致
両者ともに「A/スイス/6849/2025(H1N1)」が選ばれています。
この株は、2009年に世界的大流行(パンデミック)を起こした新型インフルエンザに由来する系統の最新株です。この系統については、注射製剤と点鼻製剤で標的としているウイルスのターゲットが完全に同一であることが分かります。
2. A型(H3N2亜型):ミシガン株 vs ダーウィン株
ビケンHAでは「A/ミシガン/105/2025」が選定されているのに対し、フルミスト点鼻液では「A/ダーウィン/1369/2025」が採用されています。
A型H3N2は、一般に「香港型」と呼ばれてきたウイルスで、毎年変異のスピードが速く、地域や年によって流行するウイルスの枝分かれが激しいという特徴があります。ここでは、アメリカのミシガンで分離された株と、オーストラリアのダーウィンで分離された株という、異なる分離地の株がそれぞれ選択されています。
3. B型(ビクトリア系統):東京株 vs パース株
ビケンHAでは「B/東京/EIS13-175/2025」が選定されているのに対し、フルミスト点鼻液では「B/パース/115/2025」が採用されています。
B型インフルエンザには「ビクトリア系統」と「山形系統」の2大系統が存在しますが、山形系統は近年世界的に検出されなくなったため、現在のワクチンはビクトリア系統の単独株が採用されています。ビケンHAには日本の東京で分離された国内由来株が、フルミストにはオーストラリアのパースで分離された国際的な株が選ばれています。
3. なぜ注射と点鼻で選ばれる株が異なるのか?
同じ2026年度の冬の流行に備えるワクチンであるにもかかわらず、なぜこのような「株のズレ」が生じるのでしょうか。そこには、ワクチンの選定プロセスと製造上の理由が存在します。
日本の国内選定(ビケンHAなどの不活化ワクチン)
ビケンHAのような国内で製造・流通する不活化ワクチンは、日本の厚生労働省(国立感染症研究所)が毎年検討を行い、国家として統一した株を決定しています。
その決定プロセスは以下の通りです。
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世界保健機関(WHO)が毎年春頃に公表する「次シーズンにおける北半球推奨株」の勧告を受け取ります。
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国立感染症研究所が、日本国内での直近の流行状況、国民が持っている抗体の保有状況、ウイルスの変異傾向などを詳細に分析します。
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同時に、国内のワクチンメーカーが「そのウイルス株を使って有精卵で大量に培養できるか」「抗原としての安定性や製造効率(収率)が十分か」という製造適合性試験を実施します。
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これらを総合的に評価し、最終的に厚生労働省が「今年度の製造株」として正式に告示したものを、国内すべての不活化ワクチンメーカーが共通して使用します。
ビケンHAのB型株に「東京」という名前が付いているのは、国内の流行実態に最も合致し、かつ国内での製造効率に優れた代表株として選ばれた結果です。
海外開発とグローバル供給(フルミスト点鼻液)
一方、フルミスト点鼻液は、もともとアメリカのアストラゼネカ(MedImmune)グループで開発され、日本では第一三共株式会社が承認を取得して供給しているグローバル製剤です。
フルミスト点鼻液のインタビューフォームの「製剤に関する項目(製法の概要)」には、以下のような注記が明確に記されています。
「製造株は、企業が世界保健機関(WHO)推奨株又は類似株の中から選定している。(厚生労働省が国内で選定するインフルエンザ HA ワクチン製造株と異なる可能性がある)」
フルミストの株選定には、次のようなグローバル製剤ならではの事情があります。
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世界規模での共通選定:世界各国(アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア等)に向けて大量製造される製剤であるため、日本単独の事情ではなく、WHOが世界に向けて推奨した国際的な代表株(グローバル株)をベースに選定されます。
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生ワクチン特有の製造上の制約:フルミストは生ワクチンであるため、単にウイルスを培養して殺せばよいというわけにはいきません。あらかじめ作られている「低温でしか増殖せず、毒性を持たない親ウイルス(マスター株)」に対して、流行予測株の表面抗原(HAとNA)の遺伝子を掛け合わせる「リアソーティング」という高度な遺伝子再集合技術を用いて製造用ウイルスを新しく作り出す必要があります。すべての野生株がこの操作に素直に適応できるわけではないため、生ワクチンとしての製造が技術的に成功し、安定して増殖できる株でなければ採用できません。
このような「国内の流行と製造効率を最優先に決定する厚生労働省のプロセス」と、「WHOの国際推奨株に基づき、生ワクチンとしての適合性を重視してグローバルに決定するプロセス」という背景の違いがあるため、結果としてA型H3N2やB型において採用される株に明確な違いが生じるのです。
4. 株が違うと、予防効果に大きな差は出るのか?
株が異なっていると聞くと、「どちらか一方が効かなくて、もう一方はよく効く、というような大きな差があるのではないか?」と不安に感じるかもしれません。
しかし、結論から申し上げますと、「株の名称が異なっていても、同じ系統・グループに属していれば、どちらかが極端に劣るということは基本的にない」と考えられています。
その理由を、インフルエンザウイルスの抗原性と免疫の仕組みから紐解いてみましょう。
「交差免疫(クロスプロテクション)」という仕組み
インフルエンザウイルスの表面にあるヘムアグルチニン(HA)タンパク質は、年々少しずつ形を変えていきます。これを「抗原ドリフト(連続抗原変異)」と呼びます。
地名が付いたウイルス株の名称(ミシガン株、ダーウィン株、東京株など)は、ある特定の時期に特定の場所で採取されたウイルスであることを示していますが、これらは全く別のウイルスになったわけではありません。同じ亜型(A/H3N2など)や同じ系統(B/ビクトリア系統など)に属している限り、ウイルスの表面の基本的な骨格や特徴には多くの共通点があります。
人間の体は非常に柔軟に作られており、ワクチンによってある特定の株に対する抗体を作ると、その抗体は目標とした株そのものだけでなく、「形がよく似た親戚のような株」に対しても結合して攻撃する力を持っています。これを免疫学の用語で「交差免疫(交差反応性)」と呼びます。
2026年度に選ばれている「ミシガン株」と「ダーウィン株」、「東京株」と「パース株」は、いずれもそれぞれの系統の中で近い関係にあるウイルスです。そのため、どちらのワクチンを接種したとしても、そのシーズンに流行する同系統のウイルスに対して十分な交差防御効果が発揮されるように設計されています。
免疫の誘導ルートの違いによる防御の広がり
さらに注目すべきなのは、株自体の名前の違いよりも、「どのような免疫を誘導するか」というワクチンの種類の違いです。
ビケンHA(皮下注射)の免疫
皮下に注射された不活化ワクチンは、主に血液の中に抗体(IgG)を作ります。
ウイルスが鼻やのどを突破して体内に深く入り込もうとした際、血液中の抗体がウイルスを中和して、インフルエンザの重症化や肺炎などの合併症を防ぐ効果に優れています。
フルミスト点鼻液(弱毒生ワクチン)の免疫
鼻の中にスプレーされた生ワクチンは、実際のウイルス侵入経路である鼻や上気道の粘膜表面に局所抗体(分泌型IgA)を誘導します。
このIgA抗体は、血液中のIgG抗体に比べて「ウイルスの形の多少の違い(変異)を大目に見る」という性質、すなわち交差免疫の幅が広いという特徴を持っています。多少の抗原ドリフトが起きて流行ウイルスの形がワクチン株からズレてしまった場合でも、粘膜表面でウイルスの侵入そのものをブロックしやすいとされています。
また、生ワクチンの増殖刺激によって「細胞性免疫(ウイルスに感染した細胞そのものを破壊するT細胞の働き)」も誘導されるため、総合的な防御の厚みが期待できます。
つまり、「株の名称が違うからどちらかが効かない」ということではなく、それぞれのワクチンがそれぞれのメカニズムによって、流行ウイルスに対する防御力を発揮するのです。
5. ビケンHAとフルミスト点鼻液の総合的な比較
ワクチン株の違いをご理解いただいたところで、実際に接種を検討する上で欠かせない「対象年齢」「接種回数」「副反応」「注意点」など、製剤面での違いを総合的に比較してみましょう。両製剤のインタビューフォームには、それぞれの特性が詳細にまとめられています。
基本情報と使用方法の比較
| 項目 | 皮下注射:ビケンHA | 点鼻:フルミスト点鼻液 |
| ワクチンの分類 | 不活化ワクチン(HA画分) | 弱毒生ワクチン |
| 剤形 | 水性注射剤 | 点鼻液剤(スプレー容器) |
| 接種経路 | 皮下注射(通常は上腕部) | 鼻腔内噴霧(両鼻へスプレー) |
| 対象年齢 | 生後6か月以上(年齢上限なし) | 2歳以上 19歳未満 |
| 接種量・回数 | ・6か月〜3歳未満:0.25mL × 2回 ・3歳〜13歳未満:0.5mL × 2回 ・13歳以上:0.5mL × 1〜2回 |
0.2mL(各鼻孔に0.1mL)を1回 |
| 接種間隔 | 2回接種時は2〜4週間(4週間推奨) | 1回のみで完了 |
| 保存方法 | 10℃以下で保存(凍結を避ける) | 2〜8℃で保存(凍結を避ける) |
対象年齢と回数のポイント
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ビケンHAは、生後6か月の乳児から高齢者まで、あらゆる年齢層に広く接種可能です。ただし、13歳未満のお子さんは原則として2回の接種が必要です。
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フルミスト点鼻液は、日本国内の承認上、「2歳以上19歳未満」の小児および青少年に限られています。成人や高齢者、また2歳未満の乳幼児には接種できません。一方で、対象年齢であれば「年1回の鼻スプレー」だけで完了するという大きな利便性があります。
6. 安全性と副反応の違い
体に入れるワクチンの性質が異なるため、起こりうる副反応や注意すべき点にもはっきりとした違いがあります。
副反応の現れ方の違い
ビケンHA(皮下注射)の副反応
注射部位の局所反応が中心となります。
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よくある症状:注射を打った場所の赤み(紅斑)、腫れ(腫脹)、痛み(疼痛)、硬さ(硬結)、熱っぽさ、かゆみなど。
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全身症状:発熱、だるさ(倦怠感)、頭痛などが現れることがありますが、通常は数日以内に自然に治まります。
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添加物に関する注意:安定剤としてのゼラチンは含まれていません(ゼラチン未添加)が、保存剤としてごく微量のチメロサール(有機水銀化合物)が含まれています。また、製造工程で鶏卵を使用しているため、卵由来の微量成分が含まれます。
フルミスト点鼻液(弱毒生ワクチン)の副反応
鼻の粘膜で弱毒ウイルスが増殖するため、風邪(上気道炎)に似た症状が多く見られます。
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よくある症状:鼻水・鼻づまり(臨床試験では約50〜60%に発現)、のどの痛み、せき、頭痛など。注射ではないため、注射部位の痛みや腫れは当然ながら一切ありません。
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全身症状:発熱(38℃以上が約6〜10%)、活動性の低下、食欲減退など。
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添加物に関する注意:安定剤として精製ゼラチンが含まれています。また、製造工程由来の卵成分(卵白アルブミンなど)やゲンタマイシン(抗生物質)がごく微量含まれています。ゼラチンアレルギーがある方は注意が必要です。
接種を受けることができない方(禁忌)と特別な注意点
ここが最も重要な部分です。生ワクチンであるフルミスト点鼻液には、不活化ワクチンにはない特別な制限がいくつか設けられています。
1. 免疫機能が低下している方
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ビケンHA:免疫不全のある方でも接種可能です(ただし免疫がつきにくい場合があります)。
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フルミスト点鼻液:接種できません(禁忌)。明らかに免疫機能に異常のある疾患をお持ちの方、または免疫抑制剤やステロイドの大量投与など免疫を抑える治療を受けている方は、弱毒ウイルスであっても体内で増殖して重い症状を引き起こす危険があるため使用できません。
2. 妊娠中の方・妊娠の可能性がある方
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ビケンHA:医師が必要と認めれば接種可能です。
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フルミスト点鼻液:接種できません(禁忌)。妊娠していることが明らかな女性には接種してはならないと規定されています。また、妊娠可能な女性が接種する場合は、あらかじめ約1か月間避妊した上で接種し、接種後約2か月間は避妊する必要があります。
3. 重度の喘息をお持ちの方
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フルミスト点鼻液:重度の喘息を有する方や、現在喘鳴(ぜんめい:ゼーゼー・ヒューヒューする呼吸)の症状が出ている方は、「接種要注意者」に指定されています。海外の試験において、2歳未満で喘鳴や入院のリスクが増加したことなどから、喘息発作を誘発する可能性に注意が払われています。
4. 周囲への「ウイルスの水平伝播(うつること)」への配慮
フルミスト点鼻液を接種すると、鼻の粘膜で弱毒ウイルスが増殖するため、接種後数日から数週間にわたって鼻汁などからごく微量のワクチンウイルスが排出されることがあります。
そのため、インタビューフォームの「重要な基本的注意」において、以下の注意喚起がなされています。
「ワクチン接種後 1~2 週間は、重度の免疫不全者との密接な関係を可能な限り避けるなど、必要な措置を講じること」
同居しているご家族の中に、抗がん剤治療中の方や骨髄移植後の方、重い免疫不全の方がいる場合、あるいは生後間もない乳児がいる家庭では、接種後の接触に十分な配慮が必要です。

5. お薬との飲み合わせ(サリチル酸系・抗インフルエンザ薬)
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アスピリン(サリチル酸系製剤):小児がアスピリン等を服用している期間にインフルエンザにかかると「ライ症候群」という重い脳症・肝障害を起こすリスクがあります。フルミストは生きたウイルスであるため、アスピリンなどを日常的に服用している小児には併用を避ける必要があります。
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タミフルなどの抗ウイルス薬:接種前後にインフルエンザ治療薬(タミフル、リレンザ、イナビル、ゾフルーザなど)を使用すると、ワクチンウイルスが死んでしまい、免疫が十分につかなくなります。
7. どちらを選ぶべき? 選択のための判断のめやす
ビケンHA(注射)とフルミスト点鼻液(点鼻)は、どちらかが一方的に優れているというものではなく、それぞれに明確な長所と適した対象があります。ご自身やお子さんに合わせて選ぶためのポイントを整理しました。
フルミスト点鼻液(点鼻)が向いているケース
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年齢が2歳以上19歳未満であること
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何よりも注射の痛みが苦手で、毎年病院で大泣きしてしまうお子さん
注射針を刺さないため、通院の心理的・身体的ストレスを大幅に軽減できます。 -
忙しくて2回通院するのが難しいご家庭
13歳未満であっても1回のスプレーで完了するため、スケジュールの調整がしやすくなります。 -
鼻やのどの粘膜でしっかりウイルスを防ぎたい方
集団生活でウイルスを吸い込みやすい環境にいる小児において、粘膜免疫(IgA)による感染防御が期待できます。
ビケンHA(皮下注射)が向いているケース
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生後6か月〜2歳未満のお子さん、または19歳以上の成人・高齢者の方
(フルミストの適応年齢外となります) -
気管支喘息の持病があり、発作を繰り返しているお子さん
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ゼラチンに対する重いアレルギーがある方
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本人や同居するご家族に、免疫力が大きく低下している方がいる場合
(抗がん剤治療中の方、免疫抑制剤を服用している方、生後数か月の乳児など) -
妊娠中、または近いうちに妊娠を希望されている女性
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副反応として鼻水やせき、微熱などの風邪症状を出したくない方
(注射部位の局所反応は出やすいものの、呼吸器症状は生ワクチンより出にくい傾向があります)
まとめ
2026年度のインフルエンザワクチンについて、皮下注射製剤である「ビケンHA」と、点鼻製剤である「フルミスト点鼻液」のウイルス株の違い、および製剤特性をまとめます。
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ワクチンの本質的な違い
ビケンHAはウイルスの病原性を完全に無くして部品のみを取り出した「不活化ワクチン」であり、フルミスト点鼻液は低温でのみ増殖するように設計された「弱毒生ワクチン」です。 -
製造株の明確な違い
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A型(H1N1亜型):両製剤ともに「A/スイス/6849/2025」で完全に一致しています。
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A型(H3N2亜型):ビケンHAは「A/ミシガン/105/2025」、フルミストは「A/ダーウィン/1369/2025」と異なる株が選ばれています。
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B型(ビクトリア系統):ビケンHAは国内由来の「B/東京/EIS13-175/2025」、フルミストは国際的な「B/パース/115/2025」と異なる株が選ばれています。
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株が異なる理由
ビケンHAなどの国内不活化ワクチンは厚生労働省が日本国内の流行状況と製造効率をもとに選定するのに対し、フルミスト点鼻液は企業がWHOの国際推奨株や生ワクチンとしての製造適合性をもとに世界共通規格として選定するためです。 -
効果への影響
株の名称や分離地に違いはあるものの、同じ系統・グループのウイルスであるため、免疫の「交差反応」によって同等の感染予防・重症化予防効果が期待されます。また、フルミストは粘膜免疫や細胞性免疫を誘導するため、多少の変異に対しても幅広い防御力を発揮します。 -
選択にあたって
フルミストは「注射の痛みがなく1回で済む」という大きなメリットがある一方、対象年齢が2歳以上19歳未満に限られ、妊婦や免疫不全の方には使えない、周囲への水平伝播への配慮が必要などの注意点があります。従来の注射ワクチンであるビケンHAは、幅広い年齢層に長年使用されてきた確かな実績と安全性の基盤があります。
このように、それぞれのワクチンには異なる特徴や選定背景があります。年齢や体質、持病、ご家族の健康状態などを考慮し、かかりつけの医師と相談しながら、納得のいく最適な予防接種を選択してください。

