おじさん薬剤師の日記

調剤薬局で勤務するおじさんです。お薬のはたらきを患者様へお伝えします

小児科 抗てんかん薬 抗ヒスタミン剤

抗ヒスタミン剤が小児の“熱性けいれん”や“てんかん”を誘発する可能性について

投稿日:2018年8月12日 更新日:

抗ヒスタミン剤が小児の“熱性けいれん”や“てんかん”を誘発する可能性について

 

5歳未満の小児2~5%で発症することがある熱性けいれんですが、抗ヒスタミン剤を使用するとその発作時間や発熱から発症までの時間に影響するという報告がなされています。今回は抗ヒスタミン剤と熱性けいれん、てんかんの関係について調べてみました。

抗ヒスタミン剤と熱性けいれん

 

脳内を流れているヒスタミンは痙攣やてんかんの閾値(上限値)をUPさせることで、てんかんや痙攣の持続時間・重症化を軽減するはたらきがあります。てんかんを誘発しているマウスにヒスタミンを投与すると、脳内のヒスタミンレベルが上昇して、てんかん発作を遅らせることができるという報告があります。(2004.12.6、Brain Res Mol Brain Res)

 

脳内の神経においては、ヒスタミン3受容体に、けいれん発作を抑える効果が示唆されており、鼻水止めとして投与された抗ヒスタミン剤が上記の受容体を抑制してしまうと、てんかん・痙攣までの閾値が低下して発作が生じやすくなると考えられております。

 

以下に発熱した小児に対して投与された抗ヒスタミン剤が、どの程度熱性けいれんの誘発に関連するかをまとめます。

痛み止めとして小児に対するカロナール(アセトアミノフェン)を使用する場合の量15mg/kgについて

被験者:250人の乳児および小児(男児:135人、女児:115人、平均年2歳4か月±1.5歳)

 

上記の250人のうち、84人(33.6%)に発熱時に抗ヒスタミン剤が投与されました。抗ヒスタミン剤を投与した群・しなかった群において、発熱の程度には差はみられませんでした。

結果

 

発熱検出から熱性けいれん発症までの時間

抗ヒスタミン剤を使用しなかった群:4.27±1.36分

第一世代抗ヒスタミン剤を使用した群:2.5±0.79分

第二世代抗ヒスタミン剤を使用した群:3.01±0.37分

軟膏が皮膚から吸収されるまでの時間について

熱性けいれんの持続時間

抗ヒスタミン剤を使用しなかった群:4.5±4.3分

抗ヒスタミン剤を使用した群:9±6.1分

 

熱性けいれんが15分以上持続した割合

抗ヒスタミン剤を使用しなかった群:29.5%

抗ヒスタミン剤を使用した群:31%

痛み止めとして小児に対するカロナール(アセトアミノフェン)を使用する場合の量15mg/kgについて

anti-histamine

anti-histamine

第一世代の抗ヒスタミン剤の影響(ポララミン、ネオマレルミン、ジメチンデン)

服用人数:55人

熱性けいれん持続時間:9.3±14.2分(飲まなかった群との間に有意差あり)

15分以上持続した割合:36.7%

 

 

第二世代の抗ヒスタミン剤の影響(ジルテック・ザイザル・クラリチン・ザジテン)

服用人数:29人

熱性けいれん持続時間:6.0±6.1分

15分以上持続した割合:20.7%

 

発熱検出から熱性けいれん発作発症までの時間に関して、第一世代および第二世代の抗ヒスタミン剤を使用することは、使用しない群に比べて熱性けいれんを発症するまでの時間が短くなるという結果がでております。

モーラステープを子供に貼って大丈夫ですか?

以上のデータから、第一・第二世代の抗ヒスタミン剤を使用することは発熱から熱性けいれんを発症するまでの時間を短縮し、発作持続時間を延長するという結果が示されました。

 

別の報告ですが、発熱による熱性けいれんを発症した小児の脳髄液中のヒスタミン濃度と、発作を伴わない発熱をした小児の脳髄液中のヒスタミン濃度を比較したデータによると、

 

発作を伴わない発熱小児の中枢神経内ヒスタミン濃度:0.69±0.16pmol/ml

熱性けいれん小児の中枢神経内ヒスタミン濃度:0.37±0.18pmol/ml

 

という報告があり、中枢内のヒスタミン作動性ニューロン系が小児期の熱発性けいれ発作と関連している可能性が示唆されています。

小児がステロイド軟膏をなめる、少量食べるとどうなるか?

白色ワセリンとプロペト軟膏の違い/ベトベトしないのはどっち?

 

-小児科, 抗てんかん薬, 抗ヒスタミン剤
-てんかん, 小児, 抗ヒスタミン剤, 熱性けいれん, 第一世代, 第二世代, 関係

執筆者:ojiyaku


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

関連記事

tablet2

ラミクタール錠のジェネリック医薬品“ラモトリギン錠”5社の添加物比較

ラミクタール錠のジェネリック医薬品“ラモトリギン錠”5社の添加物比較   ラミクタール錠のジェネリック医薬品が2018年6月に5社から発売されます。先発品とジェネリック医薬品との違い・ジェネ …

powder

乳酸カルシウムによる下痢止め作用/カルシウムは止瀉薬、マグネシウムは下剤の作用について(自分まとめ)

乳酸カルシウムによる下痢止め作用/カルシウムは止瀉薬、マグネシウムは下剤の作用について(自分まとめ)   小児科の門前の調剤薬局で勤務していると下痢止めとして「タンニン酸アルブミンと乳酸カル …

GE

2021年12月10日新発売のジェネリック医薬品リスト(エクセルファイルダウンロードあり)

2021年12月10日新発売のジェネリック医薬品リスト(エクセルファイルダウンロードあり) 追記:2021年12月9日 厚生労働省は2021年12月9日、官報にて後発医薬品薬価収載基準追補収載を告示し …

zayaku

アンヒバ坐剤を入れたのに出てきた/アンヒバ坐剤が溶けて吸収されるまでの時間

アンヒバ坐剤を入れたのに出てきた/アンヒバ坐剤が溶けて吸収されるまでの時間   先日、小児科の門前で勤務していときに「アンヒバ坐剤を子供につかったら10分ほどで便意があり、アンヒバ坐剤が半分 …

rupatadine

抗ヒスタミン剤“ルパフィン錠10mg”とクラリチン錠10mgの違いについて

抗ヒスタミン剤“ルパフィン錠10mg”とクラリチン錠10mgの違いについて 平成29年7月29日に厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会において、抗ヒスタミン剤“ルパフィン錠10mg(ルパタジ …

  google adsense




2023年12月発売予定のGEリスト(エクセルファイル)

2023年12月発売予定のGEリスト(エクセルファイル)

2023年4月薬価改定 新旧薬価差比較データ(エクセルファイル)

2022年4月薬価改定。新旧薬価差比較データ(エクセルファイル)

おじさん薬剤師の働き方

how-to-work

薬剤師の育成について

how-to-bring-upo

日医工・沢井・東和・日本ジェネリック・日本ケミファ・アメルの出荷調整リスト

日医工・沢井・東和・日本ジェネリック・日本ケミファ・アメルの出荷調整リスト




how-to-work