エビリファイ(アリピプラゾール錠)には睡眠障害の一種である睡眠相後退症候群(DSPS)が改善されるという報告があるものの、その作用機序は不明とされていました。
筑波大学の研究チームは、マウスを使用した実験でアリピプラゾールによるDSPS改善機序を発見したことを公開しています。
マウスに10日間以上、アリピプラゾールを経口投与(12.5、20,40mg/kg/day)して、明杏12時間サイクルで飼育を行った後、明暗サイクルを6時間前進させて時差ボケ状況をつくって実験を行っています。
結果は、アリピプラゾールを飲まなかったマウスと比較して、アリピプラゾールを飲んだマウスでは用量依存的に明暗サイクルへの同調速度がUPしました。
筆者らは「アリピプラゾールを使用するこでDSPS患者の生活リズムが改善させる機序を、体内の概日時計が昼夜の明暗リズムに同調しやすくなるため、生活リズムが正常化する」とまとめています。
2017年2月15日、エビリファイ錠のジェネリック医薬品について、15社113品目が承認されました。しかし、その適応症は15社とも「統合失調症」しかありません。
先発品のエビリファイ錠は2006年1月に「統合失調症」の効能・効果により製造販売承認を取得した製品ですが、発売後に
2012年1月:「双極性障害における躁症状の改善」
2013年6月:「うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果を認められない場合に限る)」
2016年9月:「小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性」
という3つ適応症を経時的に取得してきた経緯がある製品です。
2017年6月に発売予定となっているアリピプラゾール錠/OD錠/内用液は「統合失調症」に関する先発特許が切れたために発売されます。「双極性障害」「うつ病・うつ状態」「小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性」の適応症に関しては、先発品が取得してきた時系列を踏まえると、後発品が取得するまでには、しばらく時間がかかるかもしれません。
頓服薬として使用した時のエビリファイ・リスパダール・ジプレキサの違いの検討する
エビリファイまたはアリピプラゾールが記載された処方箋を応需した調剤薬局では「適応症」はわかりません。新規後発品が発売されると、たびたび話題になる「後発品の適応症不一致」というやつでしょうか。
エビリフィア錠は、4つの適応症それぞれで、初回服用量や併用薬、最大服用量、増量幅、用法が異なるという特徴があります。ジェネリック医薬品を代替調剤するのであれば、過去の薬歴をさかのぼって初回服用量などをチェックしてみることは一つの選択肢となるかもしれません。
~統合失調症~
開始用量:1日6~12mg
1日1回または1日2回に分けて経口投与
MAX:30mg
~双極性障害における躁症状の改善~
開始用量:1日24mg
MAX:30mg
~うつ病・うつ状態~
SSRIまたはSNRIによる治療を行っても十分な効果が得られない場合エビリファイを併用する
開始用量:1日3mg
増量幅:3mg
MAX:1日15mg
~小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性~
開始用量:1日1mg
増量幅:3mg
MAX:1日15mg
エビリファイを服用している患者様の適応症は常に同じとは限らず、「統合失調症」でエビリファイの服用を開始したものの、「双極性障害」へ移行または併発する可能性も考慮する必要があります。そのため上記の初回服用量などの情報は一つの目安として捉えておく程度がいいかと思います。強いて言えるとすれば「統合失調症」のみ1日2回で服用することが承認されていますので
アリピプラゾール12mg 2T/2×
という処方を目にした場合は「適応症に統合失調症を含む処方だなぁ」と捉えていいかもしれません。
ここまでは「統合失調症」で処方されたエビリファイ錠はジェネリック医薬品へ代替調剤できるという体で記載してきましたが、実際の現場対応で「後発品の適応症不一致」をどこまで意識するかは、処方元との話し合い/社内ルール/薬局内ルールによるところが大きいのかもしれません。
「後発品の適応症不一致」に関する厚生労働省の見解としては依然として平成24年1月17日の以下の回答が最新のものとなっています。
厚生労働省保険局長から支払基金理事長にあての回答
「先発医薬品と効能効果に違いがある後発医薬品について、一律に査定を行うことは、後発医薬品への変更調剤が進まなくなること、またそれに伴い、医療費が増える可能性があること等を保険者に説明し、影響を理解してもらうよう努めていただきたい。」
頓服薬として使用した時のエビリファイ・リスパダール・ジプレキサの違いの検討する
また、「支払基金の審査委員会では、先発医薬品とジェネリック医薬品で適応症が異なる場合は当然査定されることがあるわけですが、保険者から査定として戻ってきてもそれは応じない、要するに薬局がジェネリックに変更したことによって適応症不一致となった場合でも、医療機関に差額を求めるようなことはしないことが内規で決まっているそうです。」
という文章が「後発医薬品使用促進協議会」の議事録に残っているので、おそらく支払基金の内規に「適応症不一致はスルーすること」とあるのでしょう。
これらの情報を踏まえたうえで、エビリファイ錠の代替調剤について現場対応できればと思います。