リリカやタリージェで太る理由は?食欲増進と体重増加の仕組みを徹底解説!
長引くしびれや、刺すような痛み、電気が走るような痛み。これらは「神経障害性疼痛」と呼ばれ、日常生活の質を著しく下げてしまいます。そんな痛みの治療によく処方されるのが「リリカ(一般名:プレガバリン)」や「タリージェ(一般名:ミロガバリン)」というお薬です。
これらの薬は鎮痛効果が高い一方で、患者さんから「飲み始めてから急激に太った」「食欲が止まらなくなった」という悩みをよく伺います。痛みは取れたけれど、体重増加が気になって服薬を続けるのが不安……という方も少なくありません。
今回の記事では、リリカやタリージェがなぜ食欲を増進させ、体重を増加させるのか、そのメカニズムを分かりやすく詳細に解説します。
1. リリカとタリージェとはどんな薬?
まず、これらのお薬がどのような病気に使われるのかを確認しましょう。
リリカの適応症
リリカは、世界中で広く使われているお薬です。日本では主に以下の症状に対して処方されます。
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神経障害性疼痛: 帯状疱疹の後の痛み、糖尿病による手足のしびれ、坐骨神経痛、脊髄損傷後の痛みなど、神経がダメージを受けたことによる痛みです。
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線維筋痛症に伴う疼痛: 全身に激しい痛みが走る原因不明の病気です。
タリージェの適応症
タリージェはリリカに近い特性を持ちながら、日本で開発されたお薬です。
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神経障害性疼痛: リリカ同様、末梢性(手足など)および中枢性(脳や脊髄など)の神経障害による痛みに幅広く使われます。
どちらのお薬も、一般的な「ロキソニン」などの消炎鎮痛剤(炎症を抑える薬)が効きにくいタイプの痛みに非常に有効です。
2. 痛みを抑える仕組み(薬理作用の概要)
なぜこれらのお薬が神経の痛みに効くのでしょうか。その鍵は「カルシウムチャネル」という細胞の門にあります。
私たちの体の中で痛みが伝わるとき、神経細胞から「痛み物質(興奮性神経伝達物質)」が放出されます。この物質が放出されるためには、神経細胞の端にある門(電位依存性カルシウムチャネルのα2δサブユニット)が開いて、カルシウムイオンが細胞内に入ってくる必要があります。
リリカやタリージェは、この「カルシウムの門」にピタッとくっついて、門が開きすぎないようにブロックします。
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門を塞ぐ: お薬がα2δ(アルファ2デルタ)サブユニットという場所に結合します。
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カルシウム流入を防ぐ: 細胞内にカルシウムが入るのを抑えます。
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痛み物質を減らす: グルタミン酸などの「興奮(痛み)を伝える物質」の放出が減ります。
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痛みが和らぐ: 脳に伝わる痛みの信号が弱まり、しびれや痛みが改善します。
このように、神経の「過剰な興奮」を静めるのがこれらのお薬の仕事です。しかし、この「神経を静める」という作用が、同時に食欲や代謝にも影響を与えてしまうのです。
3. 食欲が増え、体重が増加する詳細なメカニズム
それでは、本題である「なぜ太るのか?」について解説します。これには複数の原因が複雑に絡み合っています。
① 脳の「食欲中枢」への直接的な影響
リリカやタリージェの主成分は、脳内にある「GABA(ギャバ)」というリラックス物質に構造が似ています。
脳には「満腹中枢(お腹がいっぱいと感じる場所)」と「摂食中枢(お腹が空いたと感じる場所)」がありますが、お薬の作用によってこのバランスが変化することが示唆されています。
特に、脳の視床下部という部位において、食欲を刺激する神経系が活性化されたり、満腹感を感じるセンサーが鈍くなったりすることで、「いくら食べても満足できない」「常に何かを口にしたい」という状態(食欲亢進)が引き起こされると考えられています。
② 「痛みの緩和」による心理的な変化
これは副作用というよりも、治療の効果による皮肉な結果です。
今まで痛みのせいで食欲がなかったり、食事を楽しむ余裕がなかったりした方が、お薬によって痛みが劇的に改善されると、食事が美味しく感じられるようになります。
「体が楽になったから、美味しいものをたくさん食べよう」という心理的な変化が、結果として摂取カロリーの増加につながるケースが非常に多いのです。
③ 活動量の低下(眠気としびれの影響)
リリカやタリージェの代表的な副作用に「眠気」と「ふらつき」があります。
インタビューフォームによると、タリージェでは傾眠(眠気)が20%以上、浮動性めまい(ふらつき)が20%以上報告されています。
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エネルギー消費の減少: 眠気が強いと、日中の活動量が自然と減ります。動くのが億劫になり、座っている時間や寝ている時間が増えれば、基礎代謝や消費カロリーは低下します。
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運動不足: ふらつきがあるため、散歩や運動を控えるようになります。
「食べる量は変わらないのに太った」という方の多くは、この「無意識の活動量低下」が原因の一つとなっています。
④ 水分を溜め込む「浮腫(むくみ)」の影響
リリカやタリージェには、体に水分を溜め込みやすくする副作用があります。これを「浮腫(ふしゅ)」と呼びます。浮腫の発生率は10%前後の高い頻度で報告されています。
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水太り: 脂肪が増えたわけではなく、体の中に水分が溜まることで、数日で1〜2kg 体重が増えることがあります。
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メカニズム: お薬が血管の壁に作用して、血管の外(組織)に水分が漏れ出しやすくなることが原因と考えられています。足の脛を指で押して跡が残るような場合は、この「むくみ」による体重増加の可能性が高いです。
⑤ 代謝への影響
一部の研究では、これらのお薬が脂肪の代謝に影響を与え、脂肪を燃焼しにくくしたり、蓄積しやすくしたりする可能性も指摘されています。神経の興奮を抑えるということは、体全体のエネルギー消費を「省エネモード」にしてしまう側面があるためです。
4. 体重増加への具体的な対処法
お薬の効果を維持しながら、体重増加を食い止めるためには、以下のようなアプローチが有効です。
まずは「脂肪」か「むくみ」かを見極める
毎日同じ時間に体重を測りましょう。
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短期間(数日)で数キロ増えた場合: むくみの可能性が高いです。靴がキツい、顔が腫れぼったいなどの症状がないか確認してください。
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数ヶ月かけて徐々に増えている場合: 食欲亢進による摂取カロリー過多、または活動量低下による脂肪蓄積の可能性が高いです。
食生活の工夫(食欲亢進への対策)
「お腹が空くのはお薬のせいだ」と自覚することが第一歩です。
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低カロリーでカサのあるものを食べる: キャベツやこんにゃく、海藻類など、噛みごたえがあってカロリーの低いものを食事の最初に摂り、満腹感を得やすくします。
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小分けに食べる: 1日の総カロリーは変えずに、食事の回数を分けることで、空腹感による「ドカ食い」を防ぎます。
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飲み物を見直す: 知らず知らずのうちに甘い飲み物を口にしていませんか? 水やノンカフェインのお茶に変えるだけでも大きな差が出ます。
活動量を維持する(眠気・ふらつきへの対策)
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主治医に相談して服用時間を調整する: 例えば、夕食後や寝る前の量を増やし、日中の量を減らすことで、活動時間帯の眠気を抑えられる場合があります。
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椅子に座ってできる運動: ふらつきがある場合は、無理に歩かず、椅子に座ったまま足首を動かすなどの軽い運動を取り入れましょう。
薬の減量や変更を相談する
どうしても体重増加が止まらず、精神的にストレスが大きい場合は、決して自己判断で薬を止めず、医師に相談してください。
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徐々に減らす: 急に止めると「離脱症状(不眠、吐き気、不安など)」が出ることがインタビューフォームにも明記されています。医師の指導の下、少しずつ量を減らすことで副作用が軽減されることがあります。
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別のお薬への切り替え: 神経の痛みに効くお薬は他にもあります。例えば、サインバルタ(一般名:デュロキセチン)など、作用メカニズムが異なるお薬への変更が検討されることもあります。

5. その他の起こりうる副作用
体重増加以外にも、注意しておきたい副作用があります。これらを知っておくことで、体調の変化に早く気づくことができます。
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眠気・ふらつき: 最も頻度が高い副作用です。特に飲み始めに強く出やすく、2週間ほどで体が慣れてくることが多いですが、転倒による骨折には注意が必要です。
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意識消失: まれですが、意識が遠のく副作用が報告されています。車を運転する方は特に注意が必要(原則、運転禁止)です。
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視覚障害: 目がかすむ、二重に見える(複視)などの症状が出ることがあります。
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便秘: 消化管の動きが緩やかになり、便秘になりやすくなることがあります。
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肝機能・腎機能への影響: 血液検査で数値が上がることがあります。特にお薬は腎臓で排泄されるため、腎臓の機能が低下している方は慎重な投与が必要です。
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深刻な精神症状: 非常にまれですが、気分がひどく落ち込んだり、自傷念慮が出たりする場合があります。
6. まとめ
リリカやタリージェによる体重増加は、単なる「食べ過ぎ」だけではなく、脳の食欲中枢への影響、活動量の低下、そして体内の水分保持(むくみ)といった、薬理学的なメカニズムに基づいた現象です。
これらのお薬は、神経の痛みを抑えるために非常に優れた効果を発揮します。そのため、「太るから」という理由ですぐに服薬を止めてしまうのは得策ではありません。痛みが再発し、さらに動けなくなるという悪循環に陥る可能性があるからです。
大切なのは、以下の3点です。
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「お薬の影響で食欲が出やすくなっている」と意識して食事を管理すること。
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むくみによる急激な体重変化がないかチェックすること。
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困ったときは、主治医に「体重が増えていて辛い」と正直に相談すること。
お薬と上手に付き合いながら、痛みを取り除き、健やかな生活を取り戻していきましょう。医師はあなたのライフスタイルに合わせた調整案(薬の減量や時間変更、種類変更など)を一緒に考えてくれるはずです。
