高血圧症に対する酸化マグネシウムの効果について
高血圧症に対するマグネシウムの効果に関しては「効果がない」と記している報告もあれば、「マグネシウムは血圧をさげることができる」と報告しているものもあります。2018年5月「酸化マグネシウムは本態性高血圧症に効果がある」と記された報告をみつけましたので、読んでみました。
1990年代に「マグネシウムは血管平滑筋を弛緩することで血管を広げて血圧を下げる効果があるのでは?」と報告されて以来、高血圧症に対する効果が検証されてきましたが、いまだ「血圧を下げる」「効果なし」に関してさまざまな報告がなされています。
2018年5月に「血圧を下げる派」の報告がありましたので、その詳細と私の感想を記します。
被験者: 68人(男性:27人、女性:41人)
服用している高血圧の薬
ACE阻害薬:23人(48%)
Ca拮抗薬:35人(73%)
チアジド系利尿薬:24人(50%)
β遮断薬:35人(73%)
ARB:10人(21%)
上記の降圧剤を服用している方を対象として1日300mgのマグネシウムを服用することで、その降圧効果を確認しています。
結果
1ヶ月間マグネシウム製剤を300mg服用したことによる血清中のマグネシウム濃度を比較した結果、有意な差は見られませんでした。
開始時:0.858mmol/L(0.74-0.94)
1ヶ月後:0.47mmol/L(0.69-0.96)
一方で血圧の変動に関しては1ヶ月後に有意な低下が確認されました。
収縮期血圧
開始時:139.74mmHg
1ヶ月後:130.77 mmHg
拡張期血圧
開始時88.05mmHg
1ヶ月後:82.19mmHg
平均血圧
開始時:102.13mmHg
1ヶ月後:94.07mmHg
筆者らは、この結果に対して、マグネシウに服用による末梢動脈の拡張作用が全身の血管抵抗正を改善することで血圧低下をもたらした可能性を示唆しています。
これに似たような報告としては1日370mg程度のマグネシウムを摂取することで平均血圧が2〜3mmHgほど下がると報告しているもの、370mg以上のマグネシウムを摂取した群は、370mg未満のマグネシウムを摂取した群よりも降圧効果が大きかったなどの報告も上がっていました。
私の感想なのですが、医薬品にはしっかりとした効き目が確認されている降圧剤がたくさんありますので、それらを使わずに「効くかどうかわからない“マグネシウム”」を降圧目的で使用しなくてもいいのかなぁと思います。
ただし、300mg程度の低用量マグネシウムに“降圧作用”があるかもしれない。マグネシウムは用量依存的に(飲めば飲むほど)血圧が下げるかもしれないということは念頭に入れておく必要があります。
なぜならば、15年ほど前であれば酸化マグネシウムなどの下剤の服用をいったん開始すると継続して飲み続けるケースが多かったように思うのですが、最近はアミティーザ・グーフィス・リンゼス・スインプロイクなど新しい作用機序の下剤が次々と発売に至っています。その結果として
1日2g服用していた(2g/3✕)酸化マグネシウムを中止(または減量)してグーフィスに変更
といった処方の可能性も十分に考えられる時代となりました。あくまで可能性という程度の話ですが、酸化マグネシウムに降圧作用があったと過程した場合、酸化マグネシウムを中止して他の下剤を服用した結果、血圧が上昇する可能性がゼロではないということになるからです。
まとめ
- 酸化マグネシウムに降圧作用があるかどうかはわからない
・マグネシウムは低用量(330mg)程度でも降圧効果があるかもしれない
- 酸化マグネシウムを中止して、他の下剤が開始となった場合は下剤の説明をすると同時に酸化マグネシウムを中止することよって血圧が上昇する可能性がなくはないということを頭にいれておく