【不眠症治療】今の薬に満足していない?「デエビゴ」への切り替えで期待できる効果とは
「今の睡眠薬、なんだか効きが悪い気がする…」
「朝、スッキリ起きられない…」
不眠症の治療を続けている中で、現在のお薬に不満を感じている方は少なくありません。
今回は、他の睡眠薬から新しいお薬である「デエビゴ(一般名:レンボレキサント)」に切り替えた際の効果について調査した研究(SOMNUS試験)の結果をご紹介します。
デエビゴへの切り替えで何が変わった?
この研究では、他の不眠症治療薬に満足していない患者さんが、デエビゴに切り替えた(スイッチした)場合にどうなるかを調査しました。その結果、以下のようなポジティブな変化が見られました。
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睡眠の質がアップ: 患者さん自身がつける睡眠日記やアンケートで、睡眠の質が向上しました。
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朝の目覚めと日中の調子: 朝の目覚め(覚醒感)が良くなり、不眠による日中の活動への悪影響が減りました。
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生活の質(QoL)の向上: 睡眠だけでなく、健康に関連する生活の質全体が14週間にわたって改善し続けました。
重要なのは、薬を変えたことによる悪影響(リバウンドや睡眠悪化など)は見られず、むしろ「よく眠れるようになり、日中も元気に過ごせるようになった」と感じる患者さんが多かったという点です。
「ココロ」と「カラダ」への影響
この研究では、SF-8という指標を使って、患者さんの「精神的な健康(メンタル)」と「身体的な健康(フィジカル)」の変化も分析されました。その結果、デエビゴへの切り替えによって、メンタル・フィジカル共にスコアが改善し、国民標準値(50点)に近づく、あるいは超える結果となりました。
ここで興味深い発見がありました。
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単剤療法(デエビゴだけ)の方:
精神的な健康(メンタル)の改善幅が大きかった。 -
併用療法(他のお薬と一緒にデエビゴを使用)の方:
身体的な健康(フィジカル)の改善幅が大きかった。
特に「デエビゴ単剤」に切り替えたグループでメンタル面がより改善した理由として、ベンゾジアゼピン系などの従来のお薬を減らした、あるいはやめられたことが良い影響を与えた可能性が考えられています。薬を整理・減薬することは、心の健康にとって重要かもしれません。
なぜ切り替えで良くなったのか?
今までのお薬(特にベンゾジアゼピン系やZ薬と呼ばれるもの)を長く使っていると、体が慣れてしまい、効果が薄れてくること(耐性)があります。実際、この研究に参加した患者さんの多くが、前のお薬の効果を「弱い」と感じていました。
デエビゴは「オレキシン受容体拮抗薬」という新しいタイプのお薬であり、これまでの薬とは効く仕組みが異なります。そのため、これまでのお薬で効果を感じにくくなっていた方にとっても、効果を発揮したと考えられます。
安全性は大丈夫?
気になる副作用についてですが、デエビゴの安全性はこれまでの大規模な試験結果と一貫しており、大きな問題はありませんでした。
最も多かった副作用は「眠気(傾眠)」で、全体の約7.8%に見られました。これは他のお薬の調査結果と比較しても、同程度と考えられます。
この研究の注意点
最後に、この情報を正しく理解いただくための注意点(研究の限界)もお伝えします。
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プラセボ(偽薬)との比較ではない: 参加者は「デエビゴを使う」と知った上で参加しているため、「新しい薬だから効くはずだ」という期待感(プラセボ効果)が含まれている可能性があります。
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主観的な評価: 脳波測定などの客観的なデータではなく、あくまで患者さんのアンケートや日記に基づいた結果です。
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期間: 14週間という比較的短い期間の調査結果です。
まとめ
研究の限界はあるものの、SOMNUS試験の結果は、「現在のお薬に不満がある場合、デエビゴへの切り替えは有効な選択肢の一つになり得る」ことを示唆しています。
特に、睡眠の質だけでなく、翌日の日中の活動や生活の質(QoL)も改善したいと考えている方にとっては、医師に相談してみる価値があるかもしれません。
他の眠剤からデエビゴ錠へ切り替えた際の有効性についての報告
ベンゾジアゼピン系の睡眠剤やZ薬(マイスリー、アモバン)などの眠剤はいわゆる”耐性”および”依存性”があるため、国としては他剤への切り替えを推奨されています。
私は調剤薬局で20年近く働いています。私の主観で恐縮ですが、”耐性=効かなくなった”を訴える方の多くが、長期服用が要因であるだけでなく、加齢が進むについてれて日中の活動量の低下し、夜間の睡眠の質が低下(不眠症の進行)が「眠れない」要因かなぁと感じております。
問題と考えるかは言及を避けますが、”依存性”はあります。「この薬を飲んでいるので眠れています」と言って良質な睡眠をとり続けて、何十年も生活している方は多数おられます。
「ゾルピデム錠5mgを1錠飲むだけで、入眠が改善されて睡眠に対する不満はなく、増量することなく5mgを10年継続服用して生活している方」
この方は、「依存している」状態と言うケースもあれば、上手に睡眠をコントロールしている方と考えるケースもあり、捉え方は様々です。
今回は「他の眠剤からデエビゴへ切り替えた日本人の不眠症患者61例」に関する報告がありましたので下記します。
調査期間:2020年12月~2022年2月
対象:不眠症患者61例
切替前の睡眠薬:ベンゾジアゼピン系薬、Z薬、ベルソムラ、ロゼレム、リフレックス、レスリン、抗精神病薬
デエビゴ錠への切り替え後3カ月における睡眠状況および切り替え後の薬の量について比較検討をしています。
デエビゴ錠へ切り替えた結果
アテネ不眠症尺度(値が大きいほど不眠傾向にある)の減少が確認されました。
1カ月後:-2.98ポイント
2カ月後:-3.2ポイント
3カ月後:-3.38ポイント
(有意差あり)
エプワース眠気尺度(値が大きいほど日中の眠気がある)は変わりありませんでした。
1カ月後:-0.49ポイント
2カ月後:0.082ポイント
3カ月後:-0.64ポイント
(有意差なし)
PDQ-5スコア(うつ病における認知機能評価:値が大きいほど認知機能低下がある)は減少しました。
1カ月後:-1.17ポイント
2カ月後:-1.05ポイント
3カ月後:-1.24ポイント
また、就寝時の薬の総量をジアゼパム換算量で計算した結果、デエビゴ錠への切り替え前が14.0mgであったのに対し、切替3カ月後は11.3mgまで有意な減少が観察され、デエビゴ錠への切り替えが薬の量の減少および日中の認知機能の改善にとって有益であることが報告されました。
睡眠覚醒障害治療薬「デエビゴ錠」(レンボレキサント錠)発売開始
2020年7月6日、不眠症治療薬(オレキシン受容体拮抗薬)デエビゴ錠2.5mg/5mg/10mgが発売開始となりました。
デエビゴ錠は、既存の処方薬”ベルソムラ錠”と同じような薬理作用の睡眠薬ですので、いわゆる”クセになりにくい睡眠薬”・”処方日数制限がない睡眠薬”という区分になることが想定されます。平成30年の診療報酬改定以降、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬を12カ月以上同一用法・用量で連続処方した場合は処方料の減算ルールが設けられておりますので、デエビゴ錠のように向精神薬に分類しないタイプの睡眠薬の需要は高まっているように感じます。
不眠症治療薬“デエビゴ(レンボレキサント)”に関する臨床報告
エーザイが不眠症治療薬“デエビゴ(レンボレキサント)”はベルソムラと同様の薬理作用を有する薬剤です(オレキシン受容体1と2に対する拮抗作用)。現在、第三相試験のデータまでが開示されているのですが、デエビゴとベルソムラの比較データは公開されておりません。今回は、これまでに開示されているデエビゴの薬理作用の中から睡眠剤としての特徴をまとめてみました。
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デエビゴはたくさん飲んでも寝付きはかわらない
睡眠剤としてのデエビゴ(レンボレキサント)について、一番興味深い記載内容は“10mg以上を服用しても有効性はかわらない”という記述です(第二相試験の報告より)。ベルソムラでも同様の見解かとは思うのですが、デエビゴの薬理作用は、”オレキシン(ホルモン)”という体内の目覚ましホルモンがくっつく脳内の部分である“オレキシン受容体”と拮抗することで、
“目覚ましさせない“=”眠りを促す“
という効果です。
”起きている状態”をオレキシン(目覚ましホルモン)がオレキシン受容体に100%くっついていると仮定した場合、薬によってオレキシン受容体を65%以上ブロックした時に、はじめて「眠いかも」という感覚となります(ベルソムラより)。レンボレキサントやベルソムラのようなオレキシン受容体拮抗薬は、非常に多くのオレキシン受容体を占有しなければ効果を発現しない薬と言えます。
ざっくりとしたイメージですが、デエビゴ(レンボレキサント)を10mg以上使用しても脳内のオレキシン受容体占有率に大きな変動はないため、睡眠薬としての”寝つき(入眠に対する効果)”には変化がないというデータが第二相試験を読んだ私の印象です。一方で、たくさんのデエビゴ(レンボレキサント)を飲むと、体内での代謝に時間がかかるため、日中まで眠気が持続する(睡眠時間が長くなる)という副作用が生じていました(睡眠の質に関してはたくさんのでも変わらない)。
翌朝の眠気持ち越しに関してはデエビゴ(レンボレキサント)1~10mgを飲んだ群では、眠気の持ち越しは無く、15mgや25mg服用群では眠気の持ち越しが報告されています。

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ゾルピデム徐放錠6.25mgとデエビゴ(レンボレキサント)の効果比較
デエビゴ5mg/10mg、ゾルピデム徐放錠それぞれを服用して8時間後の姿勢安定性については、デエビゴ服用群ではプラセボ群と同様に姿勢の安定性に影響はありませんでしたが、ゾルピデム徐放錠服用群では、寝起きのふらつき増が確認されました。(ゾルピデム徐放錠:ベースラインに対する平均変化量:5.0)
中途覚醒後の再入眠までの時間について
デエビゴ5mg群:―22.5分
デエビゴ10mg群:-28.7分
ゾルピデム徐放剤群:-21.0分
デエビゴ10mg群ではゾルピデム徐放群に比較して、有意に再入眠までの時間を短縮した。(-の値が大きいほど、再入眠までの時間が短いというデータです)
デエビゴによる副作用
一般的な副作用は5%以上に傾眠がみられています。
デエビゴ1mg群の傾眠率は3.1%
デエビゴ25mg群での傾眠率は22%
と報告されています。


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