2026年から負担金増!「ジェネリックは効かない」に対する薬剤師の対応
2026年6月より、医療費に関する制度が大きく変わります。患者様がご自身の希望で先発医薬品を選択した場合、後発医薬品(ジェネリック医薬品)との価格差の50%を「選定療養費」として患者様自身が負担するルールが導入されます。2024年10月に25%の上乗せルールが適応となったばかりですが、2026年にはこの比率が50%にまで増えるという話です。
この制度改正により、家計への負担増を懸念される方も多い一方で、「ジェネリックは安かろう悪かろうで、効き目が弱いのではないか?」という不安から、あえて先発品を選び続けている方も少なくありません。
今回は、現役薬剤師の視点から、ジェネリック医薬品についての客観的な知見をご説明を致します。
結論からお伝えしますと
「先発医薬品の効果・吸収率を100%とすると、ジェネリック医薬品は・・・」
という薬剤師の前提説明が的確ではなく、ジェネリック薬品の普及の足かせとなっている
というのが私の解釈です。それでは以下の詳細をご覧ください
2026年6月から始まる「選定療養」の仕組みとは
現在も一部で始まっている「選定療養」の仕組みですが、2026年6月からはさらに強化されます。先発医薬品を希望した際の自己負担額が、ジェネリックとの差額の50%へと引き上げられる予定です。
例えば、これまで3割負担で済んでいたお薬代に加えて、高額な先発品を選び続けると、お財布へのダメージは無視できないものになります。国がこの施策を推進するのは、ジェネリック医薬品の信頼性が科学的に担保されているからです。
ここで、誤解のないようにお伝えしますが、先発医薬品を選ぶのも、ジェネリック医薬品を選ぶのも患者様の権利です。そのため飲みたい薬は自分で選ぶのが本質です。
ジェネリックは効かない!という思い込みにより「睡眠薬」「痛み止め」「かゆみ止め」などの効果発現が早い薬は、服用後の効果に差はあります。
薬を飲むという行為は、その後の治療に安心感をもたらす行為でもありますので、「効かないという思い込み」のバイアスが設けられてしまうと、
「どうせ効かないであろう」→「やっぱり効かない」
という結論となるもの頷けます。
「ジェネリックは効かないバイアス」を持っている方は、負担金は増えますが「これまで通り先発医薬品を飲めばいい」というも一つの解釈です
但し、負担金が増えて、ジェネリック医薬品を試してみようかな?と考えている方には、適切な情報提供が必要かと私は考えます。
ジェネリック医薬品の「薬理作用」は先発品と同一です
まず、根本的な点として、ジェネリック医薬品の「主成分」は先発医薬品と全く同じです。
お薬が体に作用する仕組み(薬理作用)は、主成分が特定の受容体に結合したり、酵素の働きを阻害したりすることで発揮されます。ジェネリック医薬品はこの「主成分」の含有量、分子構造、純度が先発品と同一であるため、理論上、体の中で起こる化学反応(薬理作用)に違いは生じません。
「添加物が違うから効かない」という声もありますが、添加物はあくまでお薬の形を整えたり、保存性を高めたりするためのものです。これらは主成分の吸収を妨げないことが事前に厳格に審査されています。
(添加物が原因で湿疹・アレルギー反応が生じるという話は、効能効果とは別の話ですのでご了承ください)
臨床データが証明する「生物学的同等性」の数値
厚生労働省の承認を得るために、ジェネリック医薬品は「生物学的同等性試験」をクリアしなければなりません。これは、先発品とジェネリックをそれぞれ服用した後の、血液中の薬物濃度を比較する試験です。
具体的な数値で見ると、以下の基準を満たす必要があります。
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血中濃度曲線下面積(AUC): 全体的な吸収量
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最高血中濃度(Cmax): 吸収のピーク値
これらの指標において、先発品と比較した際の「90%信頼区間」が**80%〜125%**の範囲内にあることが条件です。この「80〜125%」という数字を見て、「20%も差があるのか」と驚かれるかもしれませんが、実はこれは統計学的な許容範囲です。
実際の臨床データにおける平均値の差は、わずか3.5%程度に収まっているという報告があります(※国立医薬品食品衛生研究所のデータより)。
この数パーセントの差は、先発品を「ロット違い(製造時期の違い)」で比較した際の変動幅と同等であり、治療効果に有意な差(科学的に意味のある差)は認められていません。
つまりですね、「先発医薬品」しか飲まないという患者様が手にしている「先発医薬品」もロットの違い(作られた時期の違い)によって±3.5%程度の吸収率の差はあるんですね。
「先発医薬品の効果・吸収率を100%とすると・・・」という薬剤師の前提説明が的確ではないために、ジェネリック医薬品の普及の足かせとなっている可能性すらあるかも・・・ですね。

既存の治療薬との比較における有意性
例えば、高血圧の治療薬や脂質異常症の治療薬において、先発品からジェネリックへ切り替えた後の血圧値やコレステロール値を追跡した大規模な調査が行われています。
その結果、「降圧効果」や「脂質低下作用」において、統計学的な有意差は見られないことが確認されています。つまり、ジェネリックに切り替えたからといって病状が悪化したり、効果が減弱したりすることはない、ということが科学的に証明されているのです。
もし「ジェネリックに変えてから調子が悪い」と感じる場合、それは薬理学的な差ではなく、お薬の形状や色の変化による心理的な影響や、たまたまその時の体調が重なったケースがほとんどです。
ジェネリックは患者様が理解して選ぶもの
私たち薬剤師はジェネリック医薬品について「適切に」患者様へご紹介することが仕事の一つです。
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同等の治療効果: データが示す通り、効き目は先発品と変わりません。
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飲みやすさの工夫: 先発品よりも錠剤を小さくしたり、味を改良して飲みやすくしたりと、後発だからこその工夫が施されている製品も多いです。
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経済的な安心感: 長期にわたる治療が必要な場合、2026年以降の負担増を避けることで、無理なく治療を継続できます。
- ±3.5%の差:先発品もロットによって±3.5%の薬物動態(飲んだ後の吸収率)の差はあり、ジェネリックも同程度です。
まとめ
2026年6月からのルール変更により、先発医薬品を希望する場合は、価格差の50%という大きな負担が発生します。「ジェネリックは効かない」という先入観は、現在の厳格な承認制度や平均3.5%という微小な血中濃度の差を考慮すると、科学的な根拠に乏しいものであり、先発品でもロットの違いにより平均3.5%の差があるという事実を医療関係者は把握しておくことは、ジェネリック医薬品の説明をする際に、何かの役に立つと思います。
