肝臓が悲鳴を上げている?肝臓にとって負担になる食べ物・飲み物・薬を正しく理解する
私たちの体の中で「沈黙の臓器」と呼ばれている肝臓。文句ひとつ言わず、毎日黙々と働いてくれる健気な臓器ですが、実は私たちが何気なく口にしている食べ物や飲み物、そして病気を治すための薬によって、日々「過重労働」を強いられているかもしれません。
本記事では、食事から取り込まれた栄養がどのように肝臓へ運ばれ、どの成分が肝臓に「一生懸命働かせてしまう」のか、そして注意すべき医薬品について、分かりやすく解説します。
1. 肝臓は体の中の「巨大なリサイクル工場」
私たちが食べたものは、胃や腸でバラバラに分解されます。その後、小腸の壁から吸収されますが、実はここで吸収された成分は、いきなり全身に回るわけではありません。
吸収されたすべての成分は、まず「門脈(もんみゃく)」という、いわば「専用の搬入道路」を通って、一斉に肝臓へと運び込まれます。肝臓は、運び込まれた荷物(栄養や毒素)を仕分けし、エネルギーに変えたり、無害なものに作り替えたりする「巨大なリサイクル工場」なのです。
肝臓に流れ込む血液の約80%はこの搬入道路(門脈)からのものです。つまり、肝臓は私たちが食べたものの「良し悪し」を一番最初にチェックし、処理しなければならない、とても責任の重いポジションにいるのです。
2. 実はご飯より怖い?「果糖」が肝臓を追い詰める
炭水化物(糖質)は体の大切なエネルギーですが、実はその「種類」によって肝臓の忙しさが劇的に変わります。
2.1 ブドウ糖と果糖の決定的な違い
お米やパンに含まれる「ブドウ糖」は、肝臓を通った後、その約80%が筋肉や脳へと送られ、すぐにエネルギーとして使われます。肝臓が処理するのは残りの20%程度です。
しかし、清涼飲料水や甘いお菓子、果物に多く含まれる「果糖(フルクトース)」は、事情が全く異なります。臨床データによると、摂取した果糖のなんと90%以上が肝臓に直接担ぎ込まれます。果糖は他の臓器ではほとんど処理できないため、肝臓が一人でそのすべてをさばかなければなりません。
注)砂糖の97%はショ糖であり、ショ糖はブドウ糖と果糖が1:1でくっついたものです。そのためざっくり言いますと、砂糖の半分はブドウ糖で残りの半分は果糖です。
2.2 脂肪肝の隠れた主役
肝臓に持ち込まれた大量の果糖は、エネルギーとして使い切れない場合、速やかに「中性脂肪」へと作り替えられます。これが、お酒を飲まない人でも肝臓に脂肪が溜まる「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」の大きな原因です。
現在、日本人成人の約25%〜30%(4人に1人以上)が脂肪肝であると推定されています。甘い飲み物やデザートを毎日摂る習慣は、肝臓に「脂肪製造」という終わりのない残業をさせているのと同じなのです。
3. 油ものと肝臓:処理しきれない「脂」のゆくえ
脂っこい食事も肝臓の負担になります。肝臓は、油を分解するための「胆汁(たんじゅう)」という液体を作る工場でもあります。
3.1 飽和脂肪酸の「渋滞」
お肉の脂身やバター、加工食品に含まれる「飽和脂肪酸」を摂りすぎると、肝臓の中は荷物でパンパンになります。処理が追いつかなくなった脂は、肝臓の細胞の中に「脂肪の粒」として居座り始めます。
3.2 肝臓の「健康診断の数値」の意味
健康診断で「ALT(GPT)」という数値を見たことはありませんか?これは肝臓の細胞の中に含まれる酵素の名前です。肝臓が脂質の処理に疲れ果て、細胞が壊れ始めると、この酵素が血液中に漏れ出します。
数値が30 IU/Lを超えてきたら、肝臓が「もう限界、助けて!」とサインを出していると考えましょう。特に脂質の摂りすぎは、肝臓をサビつかせる(酸化させる)原因にもなり、炎症を悪化させてしまいます。
4. タンパク質と肝臓:有毒ガスの「掃除」に大わらわ
筋肉を作るために欠かせないタンパク質も、肝臓にとっては「掃除」の手間がかかる成分です。
4.1 アンモニアという「ゴミ」の処理
タンパク質が体の中で分解されると、副産物として「アンモニア」が発生します。アンモニアは体にとって有害な毒素です。肝臓は、このアンモニアを急いで「尿素」という無害な成分に作り替えるために、常にフル稼働しています。
4.2 タンパク質の「摂りすぎ」にご注意
最近、筋トレブームなどでプロテインを過剰に摂取する方が増えていますが、自分の処理能力を超えたタンパク質を摂り続けると、肝臓はアンモニアの掃除だけでヘトヘトになってしまいます。
肝臓の働きが弱っているときに高タンパクな食事を詰め込むと、掃除が追いつかず、血中のアンモニア濃度が上がって、意識がぼーっとするなどの悪影響(肝性脳症)が出ることもあります。「体に良いから」と極端に一つの栄養素を摂ることは、肝臓をブラック企業化させる原因になります。
5. お酒(アルコール):肝臓の「最優先・超特急」仕事
お酒が肝臓に悪いことは有名ですが、その理由は「肝臓が他の仕事をすべて投げ出してアルコール処理を優先するから」です。
5.1 猛毒「アセトアルデヒド」との戦い
アルコールが体内に入ると、肝臓はそれを「アセトアルデヒド」という物質に分解します。このアセトアルデヒドは非常に強い毒性を持っており、顔が赤くなったり、動悸や頭痛を引き起こしたりする原因になります。
肝臓はこの毒を一日も早く無害な「酢(酢酸)」に変えようと、全エネルギーを注ぎ込みます。この間、脂肪の燃焼などの「本来やるべき仕事」はストップしてしまいます。
5.2 どのくらいで肝臓は壊れる?
臨床データによると、純アルコール換算で1日平均60g(ビール中瓶3本、または日本酒3合)以上の飲酒を5年以上続けると、アルコール性肝障害のリスクが急激に高まります。
また、女性は男性の約半分(1日30g程度)の量でも、短期間で肝臓を壊しやすいことが分かっています。肝臓の大きさが男性より小さく、分解能力に差があるためです。お酒を飲むときは、肝臓が「毒消し」に専念できるよう、週に2回は休肝日を作ってあげることが大切です。
6. ミネラルの落とし穴:鉄分による「肝臓のサビ」
健康に良いとされるミネラルですが、実は「鉄分」は肝臓にとって注意が必要な成分です。
6.1 鉄が溜まると肝臓が錆びる
肝臓は鉄分を蓄えておく倉庫でもありますが、鉄は空気に触れると錆びるのと同じように、体内でも強力な酸化作用を持ちます。
特に肝臓に炎症がある人の場合、鉄分が過剰に溜まると、そこから活性酸素が発生し、肝臓の細胞を傷つけ、肝臓を硬く(線維化)させてしまいます。脂肪肝の人の約30%〜50%に、肝臓内の鉄過剰が見られるというデータもあり、レバーや赤身肉の極端な食べ過ぎには注意が必要です。
7. 薬と肝臓:薬も肝臓にとっては「分解すべき対象」
病気を治すための「薬」も、肝臓にとっては「外から入ってきた異物」です。多くの薬は、肝臓で分解されてから全身へ運ばれたり、排出されたりします。
7.1 肝臓で分解される代表的な薬
私たちがよく使う薬の中にも、肝臓に大きな負担をかけるものがいくつかあります。ここでは成分名と(よく知られている商品名)を挙げて説明します。
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解熱鎮痛薬:アセトアミノフェン(カロナール)
風邪や痛み止めとして非常にポピュラーな薬です。正しく使えば安全ですが、大量に服用したり、お酒と一緒に飲んだりすると、肝臓で無毒化できなくなり、重篤な肝障害を起こすことがあります。 -
コレステロールを下げる薬:アトルバスタチン(リピトール)、ロスバスタチン(クレストール)
脂質異常症の治療に使われる「スタチン系」と呼ばれる薬です。肝臓でコレステロールが作られるのをブロックするため、直接肝臓に作用します。臨床試験では、服用している人の約1%〜3%で肝機能の数値(AST/ALT)が上がることが分かっており、定期的な血液検査が欠かせません。(定期的に採血を実施して肝機能を検査していれば大丈夫) -
痛み止め:ロキソプロフェン(ロキソニン)、ジクロフェナク(ボルタレン)
これら「NSAIDs(エヌセイズ)」と呼ばれる痛み止めも、肝臓の血液の流れを変えたり、体質によっては肝臓にダメージを与えたりすることがあります。(定期的に採血を実施して肝機能を検査していれば大丈夫) -
抗生物質:アモキシシリン・クラブラン酸(オーグメンチン)
細菌感染を治す強い味方ですが、薬が原因で起こる肝障害(薬物性肝障害)の代表格でもあります。服用後、数週間経ってから異変が出ることもあります。

8. 医薬品を使用することによる副作用
薬が肝臓に負担をかけてしまったとき、どのような変化が起きるのでしょうか。これを「薬物性肝障害」と呼びます。
8.1 肝臓が発する「SOSサイン」
薬による肝臓への負担は、血液検査で見つかることが多いですが、自分でも気づける副作用の症状があります。
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ひどいだるさ: 寝ても疲れが取れないような、全身の倦怠感。
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食欲不振・吐き気: 食べ物を受け付けなくなる。
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黄疸(おうだん): 白目が黄色くなったり、皮膚が黄色っぽくなったりする。
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おしっこの色の変化: 紅茶やウーロン茶のような、濃い茶色の尿が出る。
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皮膚のかゆみ: 肝臓で処理しきれなかった物質が全身を巡り、かゆみを引き起こす。
臨床データでは、薬による肝障害の約60%〜70%が、胆汁(消化液)の流れが滞る「胆汁うっ滞型」というタイプです。もし複数の薬やサプリメントを自己判断で併用していると、肝臓の分解能力がパンクして、副作用のリスクが10%〜20%以上高まると言われています。新しい薬を飲み始めて「体調がおかしいな」と感じたら、すぐに医師や薬剤師に相談することが何より大切です。
9. まとめ:肝臓を一生のパートナーにするために
肝臓は、私たちが食べたもの、飲んだもの、そして飲んだ薬のすべてを受け止めてくれる「懐の深い臓器」です。しかし、その許容量には限界があります。
今回の内容をまとめると、肝臓を守るためのポイントは以下の通りです。
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甘い飲み物を減らす: 「果糖」は肝臓に直接脂肪を溜め込む、最も警戒すべき成分です。
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お酒には休息を: アルコール分解は肝臓にとっての最優先事項。週に2日は休ませて、本来の仕事(脂肪燃焼など)をさせてあげましょう。
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タンパク質・脂質は「適量」を: 「体に良い」と言われるものでも、摂りすぎれば肝臓にとっては「掃除の手間」が増えるだけです。
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薬との付き合い方を考える: 薬やサプリメントは、必要なものを必要なだけ。副作用のサイン(だるさ、黄疸)を見逃さないようにしましょう。
肝臓は、一度壊れてしまうと元に戻るのが難しい「線維化(硬くなること)」を起こすことがあります。しかし、脂肪肝の段階であれば、食事や生活習慣の見直しで高い確率で元の健康な状態に戻ることができます。
「今日食べるものが、私の肝臓の仕事量を決めている」
そう少しだけ意識するだけで、あなたの肝臓はもっと元気に、長くあなたを支えてくれるようになります。沈黙の臓器が悲鳴を上げる前に、日々の生活で「肝臓への思いやり」を始めてみませんか。
