高齢者の足の爪が分厚く硬くなる(肥厚爪:ひこうそう)に関する自分まとめ
先日、骨粗しょう症の治療でカルシウムの吸収を促すためにビタミンD製剤を飲んでいる患者様から
「私は骨粗しょう症でCaを増やす薬を飲んでいるから、足の爪が分厚く硬くなってしまうのよね?」
という質問を受けました。この患者様は爪がカルシウムで作られていると勘違いなさっている様でしたので
それに対しては「爪は髪の毛や皮膚と同じケラチンという成分で作られていますのでCaを増やすこととは関係ありませんので、これまで通り安心して骨粗しょう症の治療を続けましょう」
とご説明しました。
高齢者で肥厚爪が発症する要因と背景について自分まとめを記します。
爪の成分
爪は主にケラチンというタンパク質からできています。これは髪の毛や皮膚の角質層にも含まれる成分で、体の外側を保護する役割を担っています。
爪の主成分:ケラチンとは?
- ケラチンは18種類のアミノ酸から構成されるタンパク質の総称
- 特にシスチンというアミノ酸が多く含まれ、爪の硬さや強度に関与
- 爪や髪には「硬ケラチン」、皮膚には「軟ケラチン」が含まれる
爪は骨の一部ではなく、皮膚が角化して硬くなったものです。だからこそ、栄養状態や生活習慣が爪の質に直結します。もし爪が割れやすい、縦線が目立つなどの変化があるなら、体の内側からのサインかもしれません。
タンパク質やビタミンA、B群、ビオチン、亜鉛などの栄養素が爪の健康に寄与します。
高齢者の肥厚爪について
高齢になると爪が肥厚(分厚く硬く)なるのは、いくつかの生理的・環境的な要因が複合的に関係しています。以下に主な理由をまとめます。
外観
- 爪の変色:茶色や黒色、濁った白色
- 強度:分厚くなるが、もろくなり割れやすい、縦線がはいることもあります。
- 自覚症状:靴を履くと違和感、痛みを感じるケースがあります
加齢による生理的変化
- 爪の水分量が減少:年齢とともに爪が乾燥しやすくなり、弾力性が失われて硬く厚くなります。
- 血行不良:末端の血流が低下することで、爪の成長に必要な栄養が届きにくくなり、正常な爪の形成が妨げられます。
- 爪母(爪を作る部分)の機能低下:加齢により爪母の細胞分裂が鈍くなり、爪の成長が遅くなる一方で、角質が蓄積しやすくなります。
外的要因・生活習慣
- 長年の圧迫や摩擦:合わない靴や歩行時の衝撃が爪に繰り返し加わることで、爪が防御反応として厚くなります。
- 深爪の習慣:爪の成長が妨げられ、爪の下に新たな層が形成されて肥厚することがあります。
- 歩行量の減少:足の指に体重がかからなくなると、爪の役割が変化し、厚くなる傾向があります。
疾患・感染症の影響
- 爪白癬(爪水虫):白癬菌の感染により爪が濁り、分厚くなるケースもあります。
- 糖尿病や乾癬などの慢性疾患:爪の代謝や免疫反応に影響を与え、肥厚の原因となることがあります。
対応策
・こまめに爪を切る、入浴直後で爪がやわらかい時に切る、爪を磨いて薄くするといったセルフ
- こまめに爪を切る、入浴直後で爪がやわらかい時に切る、爪やすりで爪を磨いて薄くするといったセルフケア
- 入浴後に保湿クリームを足の爪にも塗る(観察を続ける)
爪白癬ガイドライン2019改訂
爪白癬ガイドランが10年ぶりに改訂されました。
ガイドライン推奨レベル
爪白癬治療に関する推奨度
ラミシール錠(テルビナフィン錠):A
イトリゾールカプセル(イトラコナゾール):A
ネイリンカプセル:A
クレナフィン爪外用液10%(エフィナコナゾール液):B
ルコナック爪外用液5%(ルリコナゾール爪外用液):B
外用薬の推奨度はどちらも”B”でした。

tinea-unguium
ラミシール錠を1日250mg、12週間使用した際の治癒率は58.5%
イトリゾールはテルビナフィンと比較して有意差なし
ネイリンカプセル100mgを12週間使用後、36週間の無治療後の完全治癒率は59.4%
グレナフィン爪外用液10%を48週間投与後の爪白癬完全治癒率は15.2~17.8%
ルコナック爪外用液5%を48週間投与後の爪白癬完全治癒率は14.9%
内服薬・外用薬ともに一定期間の継続治療が必要であるため、患者さん本人の自己判断による中止調節を行わないことが大切です。