痛み止めとして小児に対するカロナール(アセトアミノフェン)を使用する場合の量15mg/kgについて
2023年10月12日追記
以下の禁忌項目が削除となりました。
・消化性潰瘍のある患者
・重篤な血液の異常のある患者
・重篤な腎障害のある患者
・重篤な心機能不全のある患者[循環系のバランスが損なわれ、心不全が増悪するおそれがある。]
・ アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤による喘息発作の誘発)又はその既往歴のある患者[アスピリン喘息の発症にプロスタグランジン合成阻害作用が関与していると考えられる。]
尚、アスピリン喘息又はその既往歴のある患者に対する1回あたりの最大用量はアセトアミノフェンとして300 mg以下とすること。
カロナール錠の改定後禁忌項目は
・重篤な肝障害のある患者
・ 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
という2項目となります。
カロナール(アセトアミノフェン)は幼児や小児の発熱および軽度~中等度の鎮痛薬として使用されています。今回は解熱剤として使用される量と、痛み止めとして使用される量およびその安全性について調べてみました。
小児に解熱剤として使用されるカロナール(アセトアミノフェン)の量と効果について
国内の用量では体重1kgあたり1回10~15mgを使用し、投与間隔は4~6時間以上とされています。他国の使用量を見てみると、ドイト・フランスは日本と同じ量が設定されており、イギリスでは3ヵ月未満1 回 10 mg/kg、3ヵ月~1歳 60-120 mg、 1~5歳 120-250
mg、6~12 歳 250-500 mgとされておりましたので日本よりも若干ですが多いかなぁという感じですが、ほぼ同じ量と考えられます。
解熱効果に関する報告を調べてみると
体温38℃以上の小児(体重10kg)にカロナール100mgを使用すると一番薬が効いている時間帯(投与後1~3時間あたり)で1.6℃体温が低下し、8時間後には0.65℃体温が低下し、カロナール150mgを使用すると8時間後には1.35℃体温が低下するという報告があります。(カロナール150mgの方が100mgよりも長い時間体温を低下する効果があります。
38℃から36.5℃くらいまで熱が下がると親は安心します。その後、薬の効果が切れてくると熱は上がってきますが8時間後のデータでは38℃以下になるケースが多いです。カロナールを使用することで段階的に発熱の程度が下がっていき、症状が緩和していきます。
小児は発熱により不快感が強くなり、その子を看ている親の不安感も増すことがあります。子供が発熱をしたときにカロナールを使用することは双方の安心につながるケースがありますので、カロナールを使用する目的は解熱作用に加えて「子供の不快感を緩和するため」ということも念頭にいれておいていいのかもしれません。
小児に痛み止めとして使用されるカロナール(アセトアミノフェン)の量と効果について
一般的に発熱時に使用さえるカロナールの量では、痛み止めとしての効果は弱いと考えられています。整形手術後に小児に痛み止めとしてカロナールを使用する場合20mg/kgを投与すると報告しているものもあります。(解熱剤の2倍の量です)
カロナールは痛い部分(患部)において炎症を鎮める力が弱く、脳内の中枢神経に十分な量のカロナールが充満して、やっと鎮痛作用を示すことが報告されています。血液中のカロナール量で比較しますと痛み止めとして必要なカロナール量は最低でも11.8mg/Lという濃度が必要で、この濃度を超えると小児は傷みが緩和されたと感じることが報告されています。
痛み止めとして使用するカロナールの方法は頓服用法と1日〇回という継続服用用法があります。
頓服で使用する場合は、前述しました1回量あたり20mg/kgという量は非常に適切な量です。と言いますのも、1回に20mg/kg量のカロナールを使用すると1時間以内に血中濃度が11.8mg/Lを超えて有意な痛み止め効果が発揮されるためです。概算ですが、投与後2~3時間は痛み止めとしての効果が持続するものと思われます。
一方で、痛みが長く続く場合は継続的にカロナールを服用する場合があります。その際はカロナール15mg/kg(体重10kgの子で150mg)という量を6時間おきに(1日4回)使用すると、24時間にわたり安定して血中濃度が11mg/Lを超えて安定した鎮痛作用が期待できます。(服用を開始してから1日後には安定した鎮痛作用が維持されます)
他剤との比較データとしてはカロナール7~15mg/kgの頓服による鎮痛効果がブルフェン(イブプロフェン)4~10mg/kgと報告しているものがありました。
小児にカロナールを使用することへの安全性について
風邪薬の場合は数日程度で飲みきるケースが多いですが、術後の痛み止めとして使用する場合は長期間にわたってカロナールを飲み続ける場合があります。カロナールを継続的に使用することで体に対する毒性をしらべてみたところ、小児においては血中濃度が120~150mg/kgまで量を増やすと肝臓への毒性が報告されています。この量は前述しました整形領域における痛み止めで使用する量の10倍量です。
WHOのガイドラインを確認してみても小児に対する鎮痛薬としてはカロナール(アセトアミノフェン)が推奨されており、3か月未満の小児においては10mg/kg量を4~6時間おきに使用し、小児においては~15mg/kgが推奨量とされていおります。
まとめ
・発熱時に体重1kgあたり10mgのカロナール(アセトアミノフェン)を投与した場合、投与後1~3時間あたりで1.6℃ほど解熱作用を示す。投与8時間後には0.65℃ほど体温が低下して症状が緩和する報告があります。
・カロナール(アセトアミノフェン)は小児の発熱による不快感を軽減し、親の不安感も軽減する効果を期待するケースがあります。
・カロナール(アセトアミノフェン)は小児への鎮痛作用を期待して投与する場合、脳内の中枢神経領域に十分量なカロナールを満たす必要があるという報告があります。
・カロナール(アセトアミノフェン)の血中濃度が11.8mg/Lを超えると痛み止めとしてのう効果が現れる。頓服で使用する場合は20mg/kg量、維持量で使用する場合は15mg/kgを1日4回(6時間おき)に使用すると、上記の血中濃度を超えることが想定されます。