ヒルドイド(ヘパリン類似物質)の保険適用問題
2017年10月18日にヒルドイドを販売しているマルホ株式会社のホームページに「ヒルドイドの適正使用についてのお願い」というお知らせが公開されました。その内容は、一部の雑誌やブログなどでヒルドイドを美容目的として推奨していることが報道されていますが、それは不適切であるという内容となっています。
同時期ですが、2017年9月に健康保険組合連合会による「レセプト分析による関する調査研究」において“ヒルドイドなどの保湿剤処方のあり方を見直す”ことが要望として挙げられました。
2015年以降、雑誌やメディアなどで“美容アイテムとしてのヒルドイド”が取り上げられてから、25歳~54歳までの女性に対する処方量が男性に比べて5倍以上に急増しているデータが公開されました。
病院から処方される医療用保湿剤の81%はヒルドイドかそのジェネリック医薬品であるという事実がありますので、健康保険組合連合会は“保湿剤の処方のあり方”という文字で提言を行っていますが、実際は“保湿剤=ヒルドイドまたはそのジェネリック医薬品”として、その使用実態にメスを入れる感じとなっています。
ヒルドイドの美容促進に関する誤報について言及はしませんが、インタビューフォームに記されている“瘢痕形成の改善”、“肥厚性瘢痕・ケロイドの治療と予防”という効能効果が誤認されたのではないかと私は推測します。
海外の保湿剤の状況を確認してみると、ヒルドイドを保険収載している国は少なく、イギリス・アメリカ・フランスではヒルドイドの主成分を含む保湿剤は市販薬として販売されております。
健康保険組合連合会の概算によるとヒルドイドおよびそのジェネリック薬品の年間薬剤費は1230億円程度と算出しており、国として医療費削減をうたっている現状において美容目的で処方されているかもしれないヒルドイドを見逃すわけにはいかないという見解なのでしょうか。
健康保険組合連合会としては「外来診療において、皮膚乾燥症に対して保湿剤(ヘパリン類似物質または白色ワセリン)が他の外皮用薬または抗ヒスタミン薬と同時処方されていない場合には、当該保湿剤を保険適用かが除外する」ことを政策提言としています。
2年に1回の診療報酬改定では、いわゆる“槍玉に挙げられる”対象があるように私は認識しています。2016年度の診療報酬改定では整形領域の“シップの70枚処方制限”が、その対象だったと記憶しています。2017年末にはある程度の診療報酬改定の方針が示されると思いますが、それを前にして“保湿剤“の処方実態、使用実態が医療費削減のポイントとして”槍玉の候補の一つ“に挙げられたかどうか・・・